2021年08月14日

【緑陰図書─私のおすすめ】─LGBTを正しく理解するために=東 優子 (大阪府立大学教授)

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 LGBTとは性的マイノリティのうち「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」の4つの頭文字をとった総称である。
 一見すると日本社会はLGBTに対してフレンドリ―であるかのような印象が持たれている。
 2015年ごろ東京都渋谷区や世田谷区が「パートナーシップ制度」の導入を発表してから、同制度を導入した自治体の数も三桁を超えている。
 また「性同一性障害者特例法」により、戸籍上の性別を変更した成人は一万人を超え、戸籍上とは異なる性別での入学・通学を希望する児童生徒への対応も進んでいる。
 こうした社会的変化に伴い、「正しい知識・正しい理解」の普及を目的とした講演・研修も、全国各地で開催されるようになった。

 LGBTを理解するうえで、何を読めばいいか迷ったときには、原ミナ汰・土肥いつき編著『にじの本棚 LGBTブックガイド』(三一書房)が良い。さまざまなジャンルの関連本について46人の執筆者が解説を加えたガイドブック。
 LGBT人口について「意外と多い」ことが強調されることも珍しくないが、マイノリティの人権を議論する際に、数の多少は本質的問題ではない。
 石田仁『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』(ナツメ社)は、多様にして複雑な問題をわかりやすく解説している。豊富なデータを駆使するだけでなく、数字のひとり歩きに警鐘を鳴らすことも忘れないなど、一般的な啓発本より深く考察している。
 森山至貴『LGBTを読み解く クィア・スタディーズ入門』(ちくま新書)は、LGBTを入り口に、性の多様性をより深く、理論的に学べる良書だ。
 偏見・差別を解消するためには「良心(だけ)ではなく知識が必要」であるという著者が、丁寧に紐解く歴史を通じて、「正しい知識・正しい理解」が流動的なもので、個人や社会の都合で「事実」さえも変色することがあることに、気づかされる。
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posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする