2021年08月16日

【隅井孝雄メディアウオッチ】キューバでSNS活用の大規模デモ 政権崩壊も=隅井孝雄

                       
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 キューバ全土で、SNSと連動して反政府デモの波が7月11日、国中で一斉に起きた。この国では、反政府をスローガンに市民が立ち上がったことは珍しいが、市民の武器がSNSだったことも初めてだ。11日は日曜だった。そしてキューバのネット上にはこの日一日街頭デモの動画であふれた。しかしキューバ系の市民が多数いるアメリカ以外あまり伝えられていないので、私の知ることを、この場を借りてお伝えしたい。
 
数十年ぶり
 SNSと連動した抗議デモはキューバ全土で100か所に及んだとみられる。勇気をもって街頭に出た市民は3,000~6,000人に達するものとみられる
キューバでケータイを使ったデーター通信が使えるようになったのは2018年12月だった。政府は「近代化」の証として導入したとみられる。しかしその結果市民の側は政府の思惑を超えて「横のつながりを強める道具」としてネットを活用するようになり、情報統制と市民分断に風穴があくに至った。
  ワシントンポスト紙の報道によれば、人口の4割に当たる420万人の市民が携帯電話でネットを利用しているという(キューバの総人口、1132万人)。2019年にはLGBTの権利確立を求めるデモ,ゲーム好き集団SNETをつぶすな、デモなどがあった。また20年11月と21年1月には若手アーチストや知識人による文化省庁舎前での、表現の自由を求める大規模集会などが、ひんぱんに開かれていた。
活動家や独立系ジャーナリストはフェイスブックよりも、ワッツアップ、シグナル、テレグラムのアプリを好んで使っている。通信内容の暗号化しやすく警察や政府に傍受・妨害されにくいという特徴があるからだ。

日曜日早朝
 今回の7月11日のデモは3GのSNSにつながったキューバ市民が国中で一斉に街頭に繰り出し、政府への抗議の声をあげた。政治的自由と抑圧への抗議はもとよりだが、食料不足、コロナの感染拡大など、政府への批判の矢が放たれた。キューバでは停電が珍しいことではない。国の財政不足から、停電がひんぱんに起きている。医療品不足も深刻だ。病院に運ばれても薬がない。特にペニシリンやアスピリンなど、基本的な医薬品が全く不足している、

政府強権的
 こうした市民の行動に対し、キューバ政府は抑圧に乗り出した。キューバ内務省は13日、ハバナ郊外で暴徒となった複数の市民を拘束、うち一人が死亡したと発表した。しかし反政府グループは行方不明者が100人以上に達していると反論している。
 11日の街頭デモは当初は平穏な行動だった。しかしミゲル・ディアスカネル国家評議会議長が国営テレビに現れ、抗議の市民を「反革命分子、アメリカに操られて虫けら」と呼んだことで事態は一変した。治安部隊が出動、市民を次々に拘束する一方、デモ参加者はパトカーを転覆させ、政府の運営する店舗を略奪、放火の対象にした。
 SNS上には警察官や私服警察官らが、デモ参加の市民を殴る動画や、デモ後に行方が分からなくなった子供を捜している母親たち」と名乗る、警察署前の女性たちの動画などがみられたが、この日の夕方までにはインターネットがつながらなくなった。

 米強硬姿勢
 米国、バイデン大統領は12日、声明を発表,「われわれは、キューバの人々の自由への明確な呼びかけに賛同する。キューバ政府は、人々の声を封じ込める行動や暴力を控えるように求める」とのべた。また国務省プライス報道官は、13日の会見で「キューバ政府はインターネットの遮断、ジャーナリストや活動家への恣意的な拘束など、抑圧的な方法で人々の声を封じ込めている」と強い懸念を表明した。
 オバマ元大統領の時期に、一時的に両国関係の緊張が緩和の方向に向かったものの、今回のキューバ政権の抑圧的姿勢は許しがたいものと市民は受け止めている。

 国民の信えず
 キューバ当局は「国民は彼らの苦しみを食い物にする外国のプロパガンダに操られてきた」と主張する。ロドリゲス外相は11日の会見で「必ずしも意図的にネットを遮断しているわけではない。状況は複雑だ。停電が通信サービスに影響した可能性もある」とのやり取りがあった。
 表面で強権姿勢に見えるキューバ政府も、国民の痛みを意識していることが想像される。フィデル・カストロが亡くなった後、弟ラウル・カストロが一時継いだ。しかし、現政権を率いるディアスカネル政権は国民の信を得ているとはいいがたい。
アラブの春の再現もありうるように思われる。
隅井孝雄(ジャーナリスト)

posted by JCJ at 01:00 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする