2021年08月26日

【緑陰図書―私のおすすめ】ミャンマー少数民族の生活を探る=岸田浩和(記録映画監督)

岸田浩和・顔写真.png

 民主化の象徴=アウン・サン・スー・チー氏が表舞台に登場したのは1988年。32年かけ少しずつ進んできた民主化の道が、今年2月に勃発した軍事クーデターにより、一夜にして瓦解。
 その後、ミャンマー全土で民主化を望む市民が大規模な抗議活動を展開したが、クーデター政権の容赦ない弾圧により、表面的には沈静化した。
 現在、民主派は国家統一政府(NUG)を樹立し、国民防衛部隊(PDF)を発足させた。山岳地帯に拠点を持つ、カレン族やカチン族の民兵組織が受け皿となり、参加を希望する市民に軍事訓練を行っている。
 ミャンマーには、135の少数民族が山間部を中心に暮らしている。総数は人口の3割。彼らは長年にわたり迫害を受け政府と対立してきた。だがクーデター後から、民主派の市民が少数民族の武装組織と連携し、今の軍事政権と対立する構図が浮かび上がってきた。
 ミャンマーの複雑な国情と将来を考える上で、少数民族と武装組織の関係、および彼らの資金源となる麻薬生産の長い歴史は、重要なテーマとなっている。
  高野秀行『アヘン王国潜入記』(集英社文庫)は、ゴールデントライアングルと呼ばれる、メコン川流域のアヘン生産地帯に潜入し、ワ族と呼ばれる少数民族の村で、ケシ栽培の種まきから収穫までを体験した貴重なルポだ。
 辺境に追いやられた少数民族が、生活のために麻薬生産に従事し、その資金で武装組織を作って政府と対立してきた構図がよくわかる。
 人情味溢れる村人の暮らしや、不注意で著者自身がアヘン中毒に陥る様子など、潜入ルポならではの驚きや展開で、一気に読み進んでしまう。精製されたアヘンが流通する過程で、中国マフィアが暗躍し、さらにミャンマー軍事政権の組織的な関与が浮かび上がる展開は圧巻だ。
posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする