2021年09月10日

【東京オリパラ】五輪ボランティアに参加 後ろめたさと楽しさと=小石勝朗

五輪ボランティア.jpg 東京五輪のボランティアは楽しかった。だからこそ、後ろめたい気持ちで参加するのではなく、忌憚なく堪能できるタイミングで開催してほしかったと改めて思う。
 ボランティアに応募したのは、一生に一度のイベントに興味があり、未知の世界の内側をのぞいて多くの人と交流したいと考えたからだ。コロナ禍での開催に不安は募ったが、逆に「こういう状況だからこそ運営の様子を間近で見ておくべきだ」との結論に至った。
 私の役割は「移動サポート」。要するに運転手で、外国を中心とする関係団体の役員クラスが無料で乗れる大会車両を運転した。会期の前後を含めて13日間活動した。
 午前6時から午後11時すぎの間に1日7時間か9時間。築地市場跡の車庫を拠点に、競技会場や選手村、ホテルなどへ車を走らせた。すべてスポンサーのトヨタ車で、ハイブリッドの乗用車やミニバン、それに水素で走る「ミライ」もあった。
 運行はトヨタが開発した「T−TOSS」と呼ばれるシステムが管理した。配車や待機の場所、休憩や帰庫などが、貸与されたスマートフォンとカーナビゲーションの画面で指示される。乗客のIDカードに運転手のスマホをタッチすれば、行き先とルートが車のナビに表示された。
 大会関係者の来日が大幅に減ったせいか、乗り場や車庫での待機時間が長くなった。車庫から出ないまま活動開始から4時間が経ち、休憩になったりもした。
 回送も頻繁にあった。競技会場に多めに車両を手配するため車が余るのだ。休憩時間になると遠くにいても築地の車庫まで戻らなければいけないルールも影響した。私も埼玉県・霞ケ関カンツリー倶楽部(往復約150`)や横浜スタジアム、幕張メッセとの間を誰も乗せずに行き来した。
 システムが指示する配車先はコロコロ変わる。有明で待機中に横浜へ向かうよう指示が出た時には、首都高速に乗った途端に有明の競技場へ行き先が変わり、羽田空港でUターンした。
 待機する運転手は車内にとどまり、季節柄、エンジンと冷房をかけっ放しにする。環境に優しくないことは確かだった。回送は交通量を減らす要請にも逆行し、燃料や有料道路の費用がムダになった。大会車両は約2700台とされ、小さな積み重ねが開催経費を膨らませている気がした。
 安全対策には疑問が残った。ボランティア運転手の条件は普通免許だけで、実技講習は5〜6月に1時間足らず。私は大型2種免許を持つが、一般人がタクシーのような運行をするのは危険だ。実際、8月にはボランティアが首都高速で当て逃げ事件を起こした。
 語学力のなさにコロナ禍が重なり、車内での会話は少なかったが、降車時に感謝の言葉をかけてもらったり、バッジや菓子を渡されたりと小さな交流はあった。普段乗れない車で滅多に訪れない場所へ行けるし、世界的イベントを支えている小さな誇りと高揚感があった。
 運転ボランティアは競技会場に入れず、選手やマスコミ関係者を乗せる機会もない。報道に登場するのは「組織委批判」がテーマの時だけだった。開催に複雑な感情を抱きつつ縁の下で支える普通の人たちの姿を、大会の一断面としてきちんと伝えてほしかった。
  小石勝朗(ライター)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号 
posted by JCJ at 01:00 | 東京五輪・パラリンピック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月09日

【おすすめ本】雨宮処凛『コロナ禍、貧困の記録 2020年、この国の底が抜けた 』─凄まじい実態・非道な対応への告発=鈴木 耕(編集者)

コロナ感染が止まらない。だが「東京五輪」の開催強行。まるでコロナという大火へ、ガソリンを注ぎ込むような菅政権のやり口。人命を賭ける蛮行の陰で、いったい何が進行していたか。
 サブタイトルにあるように、本書は昨年来の安倍〜菅政権が求める「自助」が引き起こした貧困の凄まじいばかりの記録である。

 2020年の「春・夏・秋・冬」と4章にわたってコロナ禍で追い詰められていく人々を追い、彼らに寄り添いながら、必死に活動する著者の悲しみが横溢している。
 その様相は、まるで戦時中だ。所持金13円の男性、コロナ不況がもたらすホームレスの増加。冬に向かうにしたがい、過酷さは増す。寒風の中で身を縮める切なさ。バス停で殴り殺された女性の事件。そして、従来にはなかった女性の貧困が目立つようになる。
 コロナの蔓延は、飲食業や風俗店の女性従業員たちを直撃する。中でも子どもを抱えた女性たちは、行き場を失い食をも絶たれる。だが役所の対応は冷酷だ。援けを求める人たちに缶詰めを渡して追い返す。

 生活保護申請に対して「親族への照会」という無慈悲さで扉を閉ざす。街頭に追われた人から、生きる支えのペットさえも取り上げようとする。
 著者たちは、必死に抗う。少しずつではあるが拒否の扉をこじ開ける。その意味で、これは政権の貧困者切り捨てに立ち向かった著者たちの闘いの記録でもある。
 なお本書はウェブ上の週刊誌「マガジン9」の 連載を編集したものである。(かもがわ出版16 00円)
E3808CE3本.jpg
posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月07日

【お知らせ】21年度JCJ賞贈賞式・記念講演のご案内。25日(土)午後1時から、ぜひオンラインでご視聴を

記念講演「私と沖縄」午後1時から2時まで

講師:佐古忠彦さん(TBSテレビ報道局、映画監督)

TBSテレビ報道局で様々な取材の仕事を続けるかたわら、映画監督として沖縄を題材にしたドキュメンタリー映画を制作している佐古忠彦さん。「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」は数々の賞を受賞し、今また「生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事」を上映中です。なぜ沖縄をテーマに取り上げるのか、沖縄とのかかわりや映画の内容に触れていただきます。今のメディア状況、表現の自由の問題などに懸念が広がる中で、ジャーナリズム精神を発揮する佐古さんの取材と表現に注目します。

○21年度JCJ贈賞式:午後2時から5時まで(受賞者スピーチ)
 JCJ賞・作品一覧。

JCJ大賞2点(順不同)

● キャンペーン連載『五色(いつついろ)のメビウス ともにはたらき ともにいきる』(信濃毎日新聞社)

農業からサービス産業、製造業まで、「低賃金」の外国人労働者の存在なくして明日はない、日本の産業界。新型コロナ禍によって、その現実が改めて浮き彫りにされた。「使い捨て」にされ、非人間的な扱いをされている彼らの危機的な実態に迫ったのが、本企画である。「命の分岐点に立つ」外国人労働者の迫真ルポ、送り出し国の機関から日本の入管、雇用先、自治体など関連組織への徹底取材。半年にも及ぶ連載は、日本ではとかく軽視されがちな外国人労働者問題の深刻さを、私たち1人1人が真剣に考えていくための新たな視座を提供してくれる。

● 平野雄吾『ルポ入管―絶望の外国人収容施設』(ちくま新書)

外国人を人間扱いしない入国管理制度の現場の実態を生々しく伝えるとともに、憲法や国際的な常識を逸脱した各種の判決を含め、入管制度が抱える法的な問題点をも明らかにしたルポである。日本の政治と人権をめぐる状況の象徴のひとつといえる入管制度であるが、入管制度の法改悪はいったん頓挫した。それはスリランカ人女性の死という犠牲があったうえのことだ。出入国在留管理庁という機関が誕生したいま、今後も改悪の動きは出てくることが予想される。そのためにも多くの人に読んでほしい1冊であり、グローバルな視点を持ったルポとして賞にふさわしい。

JCJ賞3点(順不同)

● 菅義偉首相 学術会議人事介入スクープとキャンペーン (しんぶん赤旗) 

● ETV特集「原発事故“最悪のシナリオ”〜そのとき誰が命を懸けるのか〜」(NHK)

● 映画「標的」(監督・西嶋真司 製作・ドキュメントアジア)

JCJ特別賞1点

● 俵義文氏 日本の教科書と教育を守り続けた活動

◆今回はコロナ感染の問題から、会場参加とオンライン視聴の二通りの参加方法にしました。記念講演と贈賞式は9月25日(土)午後1時から5時まで。東京のJR水道橋駅に近い全水道会館(東京都文京区本郷1-4-1)の4階大会議室で開きます。
【1・会場参加】会場参加ご希望の方は別途、office@jcj.sakura.ne.jp  に氏名、メルアド、電話番号を明記してメールでお申し込みください。先着30人。参加費1000円。当日、会場でお支払いください。(ただし感染状況によっては会場参加を取りやめる場合もあります。その時は事前にお伝えしますので、下記のオンライン視聴を検討してください)
【2・オンライン参加】https://21jcjsyou.peatix.com/ を通じて参加費800円をお支払いください。ZoomのURLを前日の9月24日までにメールでお送りします。

【お断り:録画について】
JCJの贈賞式の模様を録画し、事後に参加者の皆様にメールなどでお送りします。
ただ冒頭の記念講演(約1時間)については録画をお送りしません。実際の講演時刻に視聴するようにしてください。

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ) 電話03-6272-9781
posted by JCJ at 01:00 | お知らせ&行動要請 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月06日

【リレー時評】 沖縄との対話を拒否し暴走する公権力=與那原良彦(JCJ沖縄)

與那原良彦・写真.jpg 沖縄県内の基地問題では、常識を逸脱した公権力の暴走が後を絶たない。県北部の「やんばるの森」での米軍と日本政府の自然破壊を告発してきたチョウ類研究者、宮城秋乃さんのやむにやまれない抗議行動に対する強制捜査はその実態をあらためて明らかにした。
 北部訓練場返還地で見つけた米軍のものとされる廃棄物を訓練場メインゲートに置いて全面回収を訴えた抗議が、通行を妨害する威力業務妨害にあたるというのだ。県警は6月4日、宮城さんの自宅を家宅捜索し、タブレット端末やパソコン、ビデオカメラなどを押収。8月3日に那覇地検に書類送致した。
 宮城さんは2016年に返還された訓練場跡地から空砲やドラム缶、ゴムシートなどを発見。沖縄防衛局がごみの回収を終えたと発表した後も次々と見つけ出し、米軍や国に回収するよう求めゲート前に置き、抗議していた。
 通常であれば、使用した者が廃棄物を撤去し、現状を回復して、返還するのが筋である。日米地位協定には米軍が原状回復する義務はなく、日本側がその役割を担う。その費用は日本国民の税金で賄われる。
 作家の目取真俊さんは「宮城さん弾圧を問う」と題した寄稿(6月16日付沖縄タイムス朝刊)で「戦時や敗戦後の混乱の中で、沖縄県民から強制的に接収した土地を米軍は好き勝手に使った揚げ句、汚し放題のまま返して終わりなのだ」と指摘。「宮城さんが暴き出しているのは、米軍の廃棄物放置問題を通して、米国に当たり前の義務を求めることができない日本という国の卑屈な姿なのである」と批判した。
 宮城さんが発見した金属製の部品類から放射性物質のコバルトが検出されたこともあった。元々自然にない物質による動植物への影響に強い懸念を示し、廃棄物の回収を米軍、政府に求めてきただけである。
 書類送検された宮城さんは「これまで訓練場返還地での米軍廃棄物の残留と片付けを訴えてきたが国も米軍も警察も全く取り合わなかった。このような方法を取らざるを得なかった」とコメントした。「法に触れない手段で訴えても相手にされず、実力行使で抵抗すれば法律違反とされる。対話を拒否する権力に対して実力行使は市民の権利。今回の強制捜査は不当だと考えている」と抗議した。
 宮城さんへの強制捜査は、米軍基地や自衛隊基地など安全保障上の「重要地域」周辺の土地取引や利用を規制する土地利用規制法を先取りしたものだという批判が出ている。「重要施設」への「機能を阻害する行為」を疑われ、中止命令を拒めば同法違反容疑で捜査される可能性がある。
 市民運動への威嚇を狙ったといえる動きは宮城さんだけ、沖縄だけの問題ではない。「ナチスは最初共産主義者を攻撃した時」で始まるドイツのマルティン・ニーメラー牧師の警句が脳裏に浮かんだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号
posted by JCJ at 01:00 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月05日

【今週の風考計】9.5─20年目の「9・11」:タリバン政権復活が示唆するもの

「9・11」米国同時多発テロをきっかけに、米国が始めた「米国史上最長の戦争」にピリオドが打たれた。
 20年前の9月11日、炎上するニューヨーク世界貿易センタービル、その衝撃的な映像が今でも甦る。国際テロ組織アルカイダのメンバーが、航空機をハイジャックしビルに突撃した。米国の中枢部が外国から攻撃される事態は、初めてだけに衝撃は大きかった。

当時のブッシュ政権は、アフガニスタンのタリバン政権に、テロを計画したアルカイダ指導部の引き渡しを要求したが拒否され、2001年10月、アフガニスタン攻撃を開始。12月、タリバン政権を壊滅させた。
 以降、米国や同盟国による「対テロ戦争」が、「不朽の自由」作戦と称して展開され、激化のうえ泥沼化していく。日本も自衛隊を派遣し米軍へ洋上給油し、協力した「参戦国」の一つである責任を忘れてはならない。
米国はアルカイダの最高指導者オサマ・ビン・ラディンを執拗に追いかけ、2011年5月2日、パキスタンのアボッタバードで米軍の特殊部隊によって殺害した。だが、そのビン・ラディンを育てたのは、米国ではないかといわれている。
 ソ連が1979年にアフガン侵攻を始めた際、それに対抗するイスラム戦士の支援を目的に、米国は「敵の敵は味方」という思惑で、ビン・ラディンに武器の供与や資金援助を行い、アルカイダ結成に一役買っているのだ。その「飼い犬」に手をかまれたのが、米国に他ならない。

さらにはテロを支援し、大量破壊兵器の獲得を目指す国家を「悪の枢軸」と呼び、北朝鮮・イラン・イラクの3国を名指しで非難した。
 イラクには「大量破壊兵器」を隠し持っているとの理由で、イラク各地で大規模な空爆を行った。
そしてフセイン政権を崩壊させ、イラク国内では米占領軍に対する自爆テロなどを惹起し、多数の民間人が犠牲となった。
 その後、イラクには大量破壊兵器は存在せず、開発計画もなかったと、米国の調査団による最終報告書が結論づけている。まさにデッチアゲの理由で戦争を仕掛けたことになる。

アフガニスタンでも「テロ組織の掃討」という大義がどこかに行って、イスラム教徒の心情や価値観を無視し、米国流の十字軍的発想による「自由主義国家」の建設を、政権に押し付けてきたのではないか。
 中村哲医師が地元の人びと共に灌漑工事を進めてきたのも、自国民の手で国を作り上げていくという地道な作業と段取りに他ならない。米国はその努力を省いて、外からのフレームをはめ込もうとした悲劇が、今のアフガニスタンの姿ではないか。
皮肉にも米軍が撤退した今、アフガニスタンではタリバン政権が復活し、撲滅を目指したアルカイダは残存し、タリバンはその勢力と友好関係を築いている。
 米国が対テロ戦争に要したコストは、20年で8兆ドル(880兆円)、戦争による死者は米兵7千人、敵兵30万人、市民38万人という。代償はあまりにも大きい。(2021/9/5)
posted by JCJ at 06:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月04日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】視聴者激減のNBC、先行き五輪放送続けられるか=隅井孝雄

2109 .jpg アメリカの3大テレビネットワークの一つNBCネットワークが五輪放送権の独占を続け、五輪に支配的な影響力を発揮していることは今では知らない人はいない。
IOCは「無観客でも、NBCの放送がありさえすればいい」として、緊急事態宣言下でも開催に固執した。その判断を菅首相は歓迎し、開催一筋に邁進したのだった。

強気一筋だった

 NBCのジェフ・シェルCEOは開会前次のように強気の姿勢を語っていた。「前回2016年のリオ五輪でジカ熱感染症の問題があり人々は不安を抱えていた。だが開会式が始まるとすべての人々がそのことを忘れて17日間の五輪を楽しんだ。今回の東京五輪も開幕すれば同じようになる」(6/14ロサンゼルス・タイムズ)
 同じ日、NBCの東京五輪の広告収入が12億5000万ドル(約1370億円)に達し、記録を更新すると見込んでの発言だった。NBCによるとプライムタイムの30秒CM料はリオ五輪の15%増、12万ドル(約132万円)に達した。
 ところが世界の中で最も視聴人口が高いはずのアメリカ国内でNBCの視聴率が激減し最大スポンサーとして威力をふるっていたテレビ会社NBCに衝撃を与える結果となった。

視聴者42%減
 
 NBCは放送権として、IOC収入の75%を負担しているスポンサーだ(22~32年冬夏6大会の放送権料、120億ドル日本円換算約1兆3200億円)。IOCの五輪収入にも影響を与えかねない。東京五輪でNBCが負担し、IOCに支払っている放送権料は12億ドル(約1,300億円)と推定される。
 ところが、東京五輪の米プライムタイムの視聴者数は1550万人にとどまった。2016年のリオデジャネイロ五輪との比較では、42%の減少だった。開会式の視聴者数も1700万人弱、過去33年間で最低だった。
  NBCは広告主との間で、補償策について、五輪中の8月上旬から交渉を始めていると米メディアが報じ始めた(米ブルームバーグ通信)。 プライムタイムの体操女子のシモーン・バイル選手の棄権や、人気種目である陸上400メートルリレーの予選敗退など盛り上がりを欠いた、とNBCは説明している。またその他諸のテニスのココ・ガウラ(米)、ジョン・ラーム(米)、クレー射撃のアンバー・ヒルなどなど人気アスリートが数多く欠席したしたことも挙げられるだろう。
 また直前に感染増加で無観客になったことや、日本とアメリカの時差(東部時間で13時間,西部時間で16時間、いずれも夏時間)の影響もあり、プライムタイムに録画の放送が多かったことも、少なからぬ影響をもたらしたようだ。

無料動画に流れる
 
 視聴者がテレビ画面を離れ、「ピーコック」というストリーミングサービスで視聴する人々が増大したことも原因の一つに挙げられている。この会社は2020年4月、NBCの親会社「NBCユニバーサル」が発足させた無料動画配信だ。NBCは地上波テレビ、ケーブルテレビ、に加えて、ピーコックストリーミングも合わせて過去最長の7000時間放送をおこなった。地上波テレビの番組視聴者がじりじりと減少しつつあることに備えてのことだとみられる。若い世代がTikTokなどのソーシャル・メディアを通じて東京五輪を追ったことも伝えられている。また他のスポーツなどでも視聴率は落ち込み始めているとも報じられている。
 オリンピックも北京(2022冬)、パリ(2024夏)、ミラノ/コルティナ・ダンペッツオ(2026冬)、ロサンゼルス(2028夏)、インド、ムンバイ(2030冬)、オーストラリア、ブリスベン(2032夏)までは決まっている。しかしそれから先、果たして順調に開かれるのかどうか、放送権を巨額負担しているNBCがテレビ放送を続けることができるのかどうか、コロナの余波を考えると、オリンピックをめぐる混迷がどうなるのか、予想がつかない事態だ。   
 隅井孝雄(ジャーナリスト)
posted by JCJ at 01:00 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月03日

【沖縄リポート】執行停止の手口でサンゴ移植すぐ再開=浦島悦子

                             
oki.jpg

 辺野古の海でまたも、国による暴挙が強行された。海の生態系を支えるサンゴの大量破壊・殺戮が続いている。
 新基地建設工事のためのサンゴ移植を巡る最高裁での敗訴判決(7月6日、前号で報告)に、不本意ながら従わざるを得ないと判断した沖縄県は28日、沖縄防衛局に移植(サンゴ約4万群体)を許可した。但し、サンゴの生存率を高めるため、高温期や台風時期、繁殖期を避けるという条件付きで。
 ところが防衛局は、条件などハナから無視して翌29日から移植作業を開始。県の行政指導にも応じなかったため、玉城デニー知事は30日、許可を撤回。31日から作業は止まった。県の「許可」に忸怩たる思いだった県民は、知事の素早い「撤回」に拍手喝采した。
 しかし、この国ではもはや、真っ当な理屈は通らない。案の定、防衛局は8月2日、撤回の執行停止を農水大臣に申し立て、県は撤回の正当性を主張する意見書を提出した(4日)が、農水大臣は翌5日に執行停止を決定した。3年前、沖縄県による埋め立て承認撤回を、行政不服審査法を悪用して執行停止したのと同じ「手口」だ。

 間髪を置かず翌日から作業再開というのも「あの時」と同様だった。作業が止まったのはわずか1週間足らず。台風接近で波の高まる中、6日から再開された移植作業を監視する(コロナ感染拡大により抗議行動は休止中)海上行動チームの胸は悔しさでいっぱいだ(写真)。
 それにしても国は、何をそんなに焦っているのだろう…? サンゴの移植が保全に役立たないことは、専門家のみならずほぼ常識となっている。たとえうまくいったとしても、最高裁判決で反対意見を述べた裁判官が言ったように「設計変更が不承認になれば移植は無駄になる」のだ。もしかして国は、こんな(真っ当な)裁判官が増えないうちに強行したい? 血税の壮大なる無駄遣いによる自然と水産資源の破壊。こんなバカげたことを許してはならない!
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 九州・沖縄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月02日

【焦点】バイデンがアフガン米軍撤収で犯した2つの大きなミス 米ワシントン・ポスト記者が指摘=橋詰雅博

 米国での同時多発テロ9・11から20年を迎える。バイデン米大統領はこの20年周年を前にアフガニスタンからの米軍の完全撤収を実行した。軍事力による民主主義維持には懐疑的なバイデンは、オバマ大統領が2010年にアフガンへの米軍増派を実施する際、副大統領として反対したという。膨らむ一方のアフガンでの米軍事費のカットを強いられた財政的な理由もあり、20年戦争終結に突き進んだわけだが、果たして正しい選択だったのだろうか。

 朝日新聞オンラインイベント記者サロンに8月28日に出演した米ワシントン・ポスト記者のデビット・ナカムラさんは(10年から10年間ホワイトハウス担当)、バイデン大統領は撤収作戦実行を焦ったため2つミスを犯したと指摘した。デビットさんはこう続けた。
 「まずCIAなど情報機関からの報告を真に受けてしまったこと。米軍が完全撤収してもアフガン政府の支配は簡単に崩れないという内容でした。ところがイスラム組織タリバンは短時間で首都カブールを制圧し、政府は崩壊した。(撤収に気持ちが傾いているため)バイデンは完全読み間違えた。大きなミステイクでした。
 もう一つは計画が不十分のまま見切り発車した。滞在する米国人や米国に協力したアフガン人などもっと早い段階から出国させるべきでした。準備不足のせいで多くの民間人を巻き込むカオス状態にしてしまった」
 10年の米軍増派のとき、アフガンで4カ月間取材活動をしたデビットさんに協力したアフガン人は、ノルウェーに脱出した。デビットさんに同国ではアフガン難民は厳しい状況に置かれていると近況を伝えた彼は「14年にアフガンからの米軍撤収を当時のオバマ大統領が言い出したとき、実行されたらアフガンは内戦状態になりタリバンが実権を握ると思った。予想通りの事態になっている」と告げた。

 アフガンをカオス化させたバイデン大統領はピンチに立たされている。
 「アフガン失態にコロナのデルタ株感染急拡大が加わり、不支持が支持を上回っている。『これはいい材料だ』と思ったトランプはバイデン批判を一層強めている。『俺ならうまく乗り切れる』と盛んにPRしている。来年11月の中間選挙を見据えて落ち気味だった勢力を再び拡大させようと目論んでいる」(デビットさん)
 バイデン大統領はいつも上着の右ポケットには、イラクとアフガンで戦死した米兵のリストを入れている。先だってIS系勢力による自爆テロで犠牲になった米兵13人の名前がこのリストに加えられたことだろう。
橋詰雅博
posted by JCJ at 01:00 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする