2021年09月06日

【リレー時評】 沖縄との対話を拒否し暴走する公権力=與那原良彦(JCJ沖縄)

與那原良彦・写真.jpg 沖縄県内の基地問題では、常識を逸脱した公権力の暴走が後を絶たない。県北部の「やんばるの森」での米軍と日本政府の自然破壊を告発してきたチョウ類研究者、宮城秋乃さんのやむにやまれない抗議行動に対する強制捜査はその実態をあらためて明らかにした。
 北部訓練場返還地で見つけた米軍のものとされる廃棄物を訓練場メインゲートに置いて全面回収を訴えた抗議が、通行を妨害する威力業務妨害にあたるというのだ。県警は6月4日、宮城さんの自宅を家宅捜索し、タブレット端末やパソコン、ビデオカメラなどを押収。8月3日に那覇地検に書類送致した。
 宮城さんは2016年に返還された訓練場跡地から空砲やドラム缶、ゴムシートなどを発見。沖縄防衛局がごみの回収を終えたと発表した後も次々と見つけ出し、米軍や国に回収するよう求めゲート前に置き、抗議していた。
 通常であれば、使用した者が廃棄物を撤去し、現状を回復して、返還するのが筋である。日米地位協定には米軍が原状回復する義務はなく、日本側がその役割を担う。その費用は日本国民の税金で賄われる。
 作家の目取真俊さんは「宮城さん弾圧を問う」と題した寄稿(6月16日付沖縄タイムス朝刊)で「戦時や敗戦後の混乱の中で、沖縄県民から強制的に接収した土地を米軍は好き勝手に使った揚げ句、汚し放題のまま返して終わりなのだ」と指摘。「宮城さんが暴き出しているのは、米軍の廃棄物放置問題を通して、米国に当たり前の義務を求めることができない日本という国の卑屈な姿なのである」と批判した。
 宮城さんが発見した金属製の部品類から放射性物質のコバルトが検出されたこともあった。元々自然にない物質による動植物への影響に強い懸念を示し、廃棄物の回収を米軍、政府に求めてきただけである。
 書類送検された宮城さんは「これまで訓練場返還地での米軍廃棄物の残留と片付けを訴えてきたが国も米軍も警察も全く取り合わなかった。このような方法を取らざるを得なかった」とコメントした。「法に触れない手段で訴えても相手にされず、実力行使で抵抗すれば法律違反とされる。対話を拒否する権力に対して実力行使は市民の権利。今回の強制捜査は不当だと考えている」と抗議した。
 宮城さんへの強制捜査は、米軍基地や自衛隊基地など安全保障上の「重要地域」周辺の土地取引や利用を規制する土地利用規制法を先取りしたものだという批判が出ている。「重要施設」への「機能を阻害する行為」を疑われ、中止命令を拒めば同法違反容疑で捜査される可能性がある。
 市民運動への威嚇を狙ったといえる動きは宮城さんだけ、沖縄だけの問題ではない。「ナチスは最初共産主義者を攻撃した時」で始まるドイツのマルティン・ニーメラー牧師の警句が脳裏に浮かんだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年8月25日号
posted by JCJ at 01:00 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする