2021年10月31日

【今週の風考計】10.31─原則「防衛費はGDP比1%以内」を壊す倍増化の妄動!

この11月5日、98歳になる作家の佐藤愛子さん、『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(小学館)が面白い。私たちもまた、<選挙戦すんで10月終えて>─家計や商売のやりくり、<戦いやまず日は暮れず>の猛烈な日々が続く。愛子センセイの怒りにシンクロして、めげずに立ち向かおう。

まずガソリンの高騰が直撃する。レギュラーガソリンの店頭価格が、全国平均1リットル167.3円、8週連続で値上がり。長崎県の五島列島・福江島では1リットル185円だ。
 経済活動の再開で原油需要が増えるのに、中東・ロシアなどの主要産油国が、増産ペースを抑えているため、世界の原油価格が値上がりし、約7年ぶりに1バレル=85ドル台をつけた。年内に1バレル=100ドルに達するとも言われている。
 暖房用灯油の値上がりも続く。18リットルあたり1910円、前週より50円高い。これも7年ぶり。

ガソリンや灯油だけじゃない! 火力発電の燃料に使う石炭や液化天然ガスの輸入価格が上昇したのを理由に、11月の電気・ガス料金が、3カ月連続してアップする。
 鉄骨などに使われる鋼材も上昇、マンションも最高値が付く。一都三県では、新築マンション1戸当たりの平均価格が6702万円と高嶺の花。
気候変動がもたらす地球環境の悪化は、さまざまな分野に影響をもたらしている。小麦類も不作で19%値上げ。パンやパスタ・うどん、ケーキ類の値段も上がる。コーヒーや大豆油も追随する。
 北海道に赤潮・沖縄に軽石で、漁業に甚大な被害が出ている。サンマとサケは記録的な不漁。サケの切り身(100g)が270円(10%アップ)。野菜・果物類も1割ほど高くなる。

こうした家計への影響を、どう緩和するのか。岸田政権は本当に「聞く耳」を持っているのか、真価が問われる。
 経済対策を盛り込む補正予算を組んでも、追加の財政支出が効果を発揮するのは、どんなに早くても来年2月以降になる。
2022年度予算案も年内編成を目指すという。中国の戦力増強・北朝鮮からの脅威を理由に、総選挙で掲げた「敵基地へのミサイル攻撃能力の開発、防衛費をGDP比 2%に倍増する軍備増強」の行き着く先がどうなるか、不安は増すばかり。

日本の2021年度防衛費は5兆3422億円、7年連続で過去最大を更新した。新型ミサイルや次期戦闘機の開発を強化し、自衛隊の指揮通信システムを守る「サイバー防衛隊」も新設される。さらに極超音速(ハイパーソニック)兵器の開発・研究費として90億円が計上されている。
今から45年前の1976年11月5日、三木武夫内閣で「防衛費は国民総生産(GNP)比1%を超えない」と閣議決定した。以来、日本の歴代内閣は、防衛費を国内総生産(GDP)比で、ほぼ1%以内に収めてきた。
 2020年のGDPは538.7兆円、2021年度の防衛費もギリギリ1%を守ってきた。この原則を、岸田政権はぶち壊すのか。倍増の10兆6800億円の軍事費など、トンデモナイ。絶対に許してはならない。(2021/10/31)
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2021年10月30日

多様性問う東京パラが遺したもの 超高齢化社会を先取り オリパラの遺産と政治=徳山喜雄

 東京パラリンピックが閉幕した。新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、開催賛成と反対の人たちが相半ばし、社会が分断、亀裂が深まることとなった。
 主催者側の菅義偉首相や小池百合子・東京都知事らは、五輪についてもパラについても「開催の意義」を語り、国民に説明を尽くそうとしなかった。このためアスリートたちは釈然としない思いのなか、「参加の意義」を懸命に自問することになったのではないか。
 競技に向かうアスリートの純粋な気持ちを政治利用しようとしたことが、ありありと透けたのも今回の大会だった。
 支持低迷にあえぐ菅首相は、五輪・パラがはじまれば国民が夢中になって空気が変わると高を括っていた。
コロナ対応については、ワクチンの成果を「呪文」のように唱えたが、これまでに経験したことのない勢いでコロナが感染拡大し、医療崩壊に直面。多くの国民が入院を拒否され、適切な医療を受けられないまま、自宅で亡くなるというケースが相次いだ。
 菅氏は自らの強い意思で開催したパラリンピックの期間中に政権を投げだした。せめてパラが終わってから、辞意を表明するという節度を持ち合わせていなかったのだろうか。

 中高年が活躍

 体力のある10代、20代の選手が参加する五輪と違い、多くの中高年が活躍したのがパラリンピックの大きな特徴だ。51歳の成田真由美は中学生のときの病気がもとで下半身まひになり、水泳をはじめたのは23歳だった。
 6度目のパラとなる今大会は、3種目が予選落ちし、競泳女子50b背泳ぎで決勝にのぞみ、6位入賞を果たした。34歳で出場した2004年アテネ大会より2秒近く記録を縮めた。
 1996年アトランタ大会から4大会連続出場、計20個のメダルを獲得。「水の女王」と呼ばれたが、過去の成果にとらわれることなく泳ぐことを楽しんだ。同時に両方の腕がない14歳の山田美幸は背泳ぎで銀メダルを獲り、中高年と若手が一つの競技で力をだしきった。
  パラ日本最高齢で66歳の西島美保子は、女子マラソンに出場。生まれつきの弱視で40代半ばからマラソンをはじめた。16年リオ大会は暑さなどで途中棄権、今大会は42・195`を走り抜き、国立競技場に8位でもどってきた。
 自転車女子個人の杉浦佳子は、日本最年長となる50歳で金メダルに輝いた。健常の自転車レース中に転倒、右半身にまひが残り、脳障害の後遺症で記憶も途切れがち。大会の1年延期で緊張の糸が切れて引退も考えたが、コーチらに助けられ、やり抜いた。

 多様性と調和

 大会の理念である「多様性と調和」の観点からみれば、東京パラ大会に性的少数者のLGBTを公言している選手が、過去最多の28人に。前回のリオ大会の2倍以上になった。しかし、報道はかぎられ、もう少し手厚く扱ってもよかったのではないか。
 ザンビア唯一のパラ選手モニカ・ムンガ(22)は、生まれつき肌や瞳の色素が薄い遺伝子疾患「アルビノ」で、視覚障害がある。陸上女子400b予選に出場した。アフリカではアルビノの切断された身体を呪術に用いることで、幸福をもたらすという迷信があり、いまも高値で売買されているという。
  国連の報告によると、2006〜19年、アフリカ28カ国で208人のアルビノが殺害され、襲撃されたのはその3倍近くにのぼる。知る人ぞ知る話だろうが、ムンガは予選落ちしたものの、力強く走ることで改めてその恐るべきアルビノへの偏見や差別の解消を訴えた。読売新聞(9月2日夕刊・1社)や朝日新聞(同3日朝刊・1面)が大きく扱い、目を引いた。

 将来像の示す

 東京パラは9月5日、13日間の熱戦の幕は閉じた。国連広報センターによると、世界人口の約15%、約10億の人々が何らかのかたちの障害があるとされる。
  日本は超高齢化社会を迎え、多くの高齢者が生活するが、老いると視力や聴力が衰え、足腰が弱くなる。年齢を重ねることで、「健常者」であっても徐々に「障害者」になっていく。もはや障害者は特別な存在ではなく、超高齢化社会を先取りする人たちで、障害に合わせた工夫や生きがいなど、将来像を示してくれているように思えた。(→続きを読む)
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2021年10月29日

迷走「スーパーシティ構想」自治体提案に国がダメ出し 大胆な規制改革と引き換え 住民ニューズと隔たる危険性=橋詰雅博

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 デジタル庁と連携
未来都市のモデルと夢を振りまくスーパーシティ構想。政府は新発足のデジタル庁と連帯しながら取り組みを加速化させるという。ところが政府の公募に応じて31自治体が提示した計画案は8月の専門調査会で(会長・坂本哲志地方創生担当相)ダメ出しされた。そして再提出を求められたのである。迷走気味の同構想はどうなるのか。
 政商≠ニ揶揄される竹中平蔵・慶応大学名誉教授が旗を振り2018年当時の安部晋三首相が成長戦略として打ち出したスーパーシティ構想は、AIやビッグデータなどを駆使し、車の自動走行、ドローンでの配送、行政サービスのデジタル化、オンライン医療・教育、スマホ決済など少なくても5つの領域を同時に実施する。これには大幅な規制緩和が必要なため国家戦略特区として指定された地域で行う。この地域を措定するのが専門調査会。

 「補助金ねらい」
 しかしスーパーシティの問題点は少なくない。@これまで実施された12の地域指定のほとんどは経済効果が小さく成長戦略として失敗、その教訓を生かしてないA非参加の住民への手当がなく、嫌なら出ていけという姿勢が見受けられるB個人データ漏洩の防止策が徹底していない―などだ。
 こうした問題点のほとんどは未解決のままだが、専門調査会のダメ出しについてスーパーシティ構想に詳しいアジア太平洋資料センター代表理事の内田聖子さんはこう見る。
 「各自治体は、プロジェクト担当の内閣府役人や職員、計画を実質的に立案する民間コンサルタントの3者によって計画案を練り上げています。住民の合意を得て、国の意向を入れ込み自治体ができる範囲内で作成した案が専門調査会で突き返されたわけで、国に対し迷走していると思っているはずです。一体どうやれば国は納得してくれるのか思い悩んでいるのではないでしょうか」
 8月6日の専門調査会で見直しを求められた主な理由は「大胆な規制改革がない」「アイデア不足」「補助金狙いの印象を受けた」。竹中平蔵氏らとともに専門調査会委員の村井純・慶応大学教授は6日の調査会でこんな発言している。

 バスターズが登場 
<規制改革には専門性がある。サイバーセキュリティではWEBページをどのように攻撃して穴をあけるということには専門的なノウハウが必要です。これと同じで岩盤規制という壁をみれば穴のあけ方が分かる人がいるのです。専門的な「岩盤規制バスターズ」のような人がもっとメンタリングに関わる。それがすごく大事です>(議事要旨)
 岩盤規制バスターズとして役目を担いそうなのは、新しい内閣府IT役人とか民間コンサルタントなど。バスターズが介入すると仰天案≠ェ作成される可能性がある。
 「例えば『ドローンをどこでも飛ばしてよい』『住民の多くが車を自動走行できるシステムをつくる』『ある程度加工するが個人データを民間事業者に積極的に提供する』といったプランが考えられます。大胆な規制改革を進めようとすれば住民のニューズから隔たるものが出てくる危険性がある」(内田さん)
 再提出の締め切りは10月15日。年内に何カ所かの第一次地域指定が決まる。計画案を再提出した自治体に住む住民はその案をチエックし、不利益をこうむりそうなものが入っているなら自治体にどうしてそうなったかを厳しく問いただすべきだ。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
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2021年10月28日

【おすすめ本】中島京子『やさしい猫』─スリランカ出身の新しい父親のために母子2人が闘う奮戦記=鈴木 耕(編集者)

 これは、マヤという活発で感受性の豊かな少女が「ある人」に向けて語る物語です。「ある人」とは誰なのか、それは物語の最後に明かされますが、そこへ辿り着くまでが波乱万丈なのです。マヤのお母さんはミユキさん。ミユキさんとマヤはお父さんが亡くなってから、ふたり肩を寄せ合って小さなアパートに暮らす母子家庭。
 そんなミユキさんも恋をします。恋の相手がクマさんです。でも、その 恋が一筋縄ではいかないんです。なぜって、クマさんがスリランカ人だったからです。
 しかも、ある事情でクマさんは「不法滞在」という境遇になってしまいます。必死になって、ミユキさんとマヤを守ろうとするあまり、陥ったクマさんの苦境。恋の行く手に立ちはだかるのは、あの「入管」。

 ここからは、もう恋物語ではなく、母と子が新しい父親を救おうとして闘う奮戦記です。
 徒手空拳の母娘に、それでも救いの手を差し伸べる人たちがいます。マヤの親友のナオキくんはゲイの少年ですが、そのたぐいまれなる才能で、何度もマヤの心を温めます。
 マヤが憧れる美少年ハヤトはクルド人で難民申請中。そしてマヤ母娘と一緒に闘ってくれるハムスター弁護士(恵浩一郎)が登場して、物語はついに法廷ミステリの様相を呈します。
 もう、読んでいてドキドキハラハラ。さすがに結末は書けません。とにかく読んでください。こんな面白い小説は久しぶり。あ、「やさしい猫」ってタイトルはクマさんの故郷スリランカの話。それにしても「入管」って、いったい何なんだあ!と叫びたくなります。(中央公論新社1900円)
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2021年10月26日

【お知らせ】保健所の「終わりの見えない闘い」〜ドキュメンタリーを撮った監督に聞く〜=JCJ神奈川支部 

 昨年初めから世界を覆った新型コロナウイルス禍。日本ではこの秋ひとまず収束の傾向にあるが、いつまた第6波に襲われるかは誰にもわからない。
 そんなコロナ禍の第一線で頑張る「現場」は、いったいどのような状況にあるのだろう。病院での看護師や医師の奮闘は少しずつテレビ番組などで紹介されているが、では、保健所の状況は?。最近完成した映画「終わりの見えない闘い」は、中野区保健所にほぼ1年間カメラを据え、保健師や医師たちの日々を追った現場ドキュメンタリーだ。都が対応しきれない患者の入院先探し、在宅療養者の電話や訪問でのケア、クラスターへの対応など、彼ら、彼女らは家に帰る時間も惜しみ、栄養ドリンクを飲んで頑張っている。だが、まだ終わりは見えない。
 コロナ禍を第一線の保健所で撮り続けた映画監督に、制作過程で見たことや思いを聞きます。

日時11月6日(土) 午後6時〜8時

会場 かながわ労働プラザ(Lプラザ)4階 第5・6・7会議室 
横浜市中区寿町1-4(JR石川町駅 徒歩3分) TEL045-633-5413 

講師 宮崎信恵さん(映画「終わりの見えない闘い」の監督)
宮崎さんは、他にもハンセン病をテーマにした「風の舞 闇を拓く光の詩」などの監督作品があります。
参加費 500円 主催 日本ジャーナリスト会議(JCJ)神奈川支部
            
参加ご希望の方は、下記の電話かメールアドレスまでお申し込みください。

申込み・問合せ 080-8024-2417(保坂)
メールアドレス fdhosaca@theia.ocn.ne.jp

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2021年10月25日

被爆76年 どう引き継ぐ長崎 「市民の歴史」愚直に綴れ 二番手に悩み、資料館も=橋場紀子

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  首相の1分遅刻が注目された平和祈念式典から1か月後の9月9日、長崎市の平和公園では恒例の「反核9の日」の座り込みが行われた。原水禁の共同議長で被爆者の川野浩一さんはマイクを握り、平和祈念式典後の菅義偉首相とのやりとりに触れた。「広島の原爆資料館には総理をはじめ、閣僚もあわせこれまでに50数名が訪れている。では、長崎の資料館には何人が来たのかー」。

首相の訪問なし
  原爆投下の翌年の「慰霊祭」以降、8月9日の「平和式典」に現職の首相が参列したのは1976年が初めてで、広島から5年遅れた。長崎原爆資料館によると、96年の開館からこれまで現職の首相が同館を訪問・視察したことはない(前身の国際文化会館には84年に中曽根康弘首相(当時)が来訪。現資料館には延べ4人の閣僚が訪れている)。「海外では『広島・長崎に来て、原爆被害の実態を見てほしい』と訴えながら、総理はなぜ、誰一人として長崎には来ないのか」、川野さんは語気を強める。

相次いで鬼籍に
 今年、地元メディアは盛んに被爆者団体の活動継続への不安を書きたてた。被爆者援護と核兵器廃絶運動、そして被爆体験の継承をけん引してきたいわゆる「被爆地の顔」となる被爆者がここ数年、相次いで鬼籍に入った。あわせて、長崎被災協の場合、コロナ禍で修学旅行生や観光客がぱったりと止み、事務所1階に入った土産物屋が撤退。テナント収入を見込んでいた活動資金に大打撃を与えた。また、県被爆者手帳友愛会は、前会長の後任選びが難航した経緯を持つ。
 「怒りの広島」「祈りの長崎」と長く言われ、長崎は都市の規模が大きな広島の「次」、後塵を拝するイメージがつきまとう。オバマ米大統領は長崎には来ず、ローマ教皇は広島にも寄る。常に二番手であるものの、人数が少ないからこその平和活動の「まとまり」(田上市長が「チーム長崎」と評した)は長崎の強みであった。しかし、被爆者団体だけでなく、被爆二世や労働組合までも高齢化し、平和活動を支えられなくなりつつある。
 被爆二世で、平和活動支援センターの平野伸人所長は長崎の現状について、「基礎体力がなくなっている」と憂う。平野さんの活動は幅広く、在外被爆者や中国人強制連行被害者、被爆体験者の救済・支援に加え、高校生平和大使など若い世代のサポート役も担う。8月9日を前に、メディア取材が最も集中する一人だ。しかし、ここ数年、様相が変わってきたと平野さんは感じている。

本質ぼけている
 「『被爆』という言葉がつかなければメディアは興味も示さない。全国で報道されるが、広島・長崎はこうでなければいけない、と凝り固まってしまっている」と指摘する。分かりやすく共感を呼びやすいストーリーが描けたとしても、内外の戦争被害者を追い続けたり、読者・視聴者に多様な視点を提供したりはできず、「問題の本質がぼけているのではないか」(平野さん)と手厳しい。
 もはや、被爆者、戦争体験者の声が聴ける本当に最後の時代だ。原爆被害だけでなく、いったい先の戦争は何だったのか、「市民の歴史」を愚直に綴れ、「取り残された者は本当にいないのか」と長崎は問われている。被爆者と共に在る残り少ない「8月9日」だったのに、政権末期を象徴したとはいえ全国からは「首相の1分遅刻」で描かれてしまう−その溝もまた、長崎の課題である。
 橋場紀子
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
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2021年10月24日

【今週の風考計】10.24─本当にコロナ感染拡大は治まったのか、油断大敵!

飲食店の短縮営業が、25日から全面解除! 酒の提供制限・夜8時も撤廃。11月に入れば「Go To イート」食事券の利用まで再開する。
 観光業界が手ぐすね引いて待つ「Go Toトラベル」も、装いを新たにして始まるだろう。それもこれもコロナ感染拡大が収まり、経済を回していく措置の引き金にするためという。

22日の新規コロナ感染者数は日本全国で325人、死者は12人と激減。東京都ではここ1週間連続で新規感染者が50人を下回り、22日は26人、今年の最少水準となっている。
なぜか。8月以降、急速にワクチン接種が進み、感染拡大にブレーキがかかった、それが減少の要因だと指摘されている。だが医者や感染・疫学の専門家も確定的な理由が挙げられず首を傾げている。
 政府のコロナ対策が急激に進んだとも、繁華街への人流が急減したとも思えないのに、ワクチン接種だけで、こうも激減するのか、もう一つ、頷けない気持ちが誰しも残る。

その一方、北海道や青森などでは「リバウンド」、すなわち再拡大への兆候が見られると、警鐘が鳴る。冬を迎え気温と湿度が下がるにつれ、コロナ感染が広がりやすい環境になるからだ。
 また早めにワクチン接種を受けた人は6カ月が経過、感染予防効果が下がって感染の度合いが高まる。いわゆる「ブレークスルー感染」の危険も増す。
専門家は「第6波は必ず来る!」という。この兆候を早期に掴んで抑え込むには、ワクチン接種の加速、PCR検査の徹底が重要だと呼びかけている。
 あわせてコロナ感染による軽症・中等症への治療対策、宿泊療養の体制を充実させる取り組みが重要になっている。

世界全体でみれば、感染者は1日あたり47万人、死者8千人と増え続ける。ワクチン接種率が高い英国でも再拡大が進み、1日に新規感染者が5万人、若い世代の感染は深刻だ。
ロシアでは、デルタ株より感染力の強い新しい変異型ウイルスが猛威を振るっている。20日、1日あたり新規感染者数は3万4千人を超え、死者も1028人と過去最悪を更新。30日から1週間、ロシア全土で出勤を禁ずる「非労働日」が実施される。
 まだまだコロナは抑え込むどころか、感染拡大が止まらない。日本も世界の現実を直視し、万全を期すべきだ。

期待していいニュースがある。米国のメルク社が開発中の「モルヌピラビル」である。コロナウイルスの増殖を抑える飲み薬で、発症初期の患者が重症化するのを防ぐ効果がある。
 認可されれば世界で初めて実用化される。外来で診断された患者に対し使えれば、医療機関の負担は大幅に軽減できる。
 日本でも導入に向け、政府は力を尽くしてほしい。(2021/10/24)
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2021年10月23日

【映画の鏡】『屋根の上に吹く風は』─冒険に満ちた自由な教育 主体的・対話的で深い学びとは=鈴木賀津彦

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 コロナ禍の今、オンライン教育で四苦八苦している都会の学校教育と対比しながら見ると、とてもタイムリーな映画だと感じた。
 鳥取県智頭町の山あいの里山にある新田サドベリースクールという「学び舎」の素顔を、1年以上にわたり追ったドキュメンタリー。子どもたちが屋根の上に助け合いながら登り、怖がりながらも飛び降りにチャレンジするシーンから始まるのが象徴的だ。

 スクールの説明書には「先生・カリキュラム・テスト・評価のない学校。子ども達の好奇心に沿った遊びや体験から学んでいく学校です。何をして遊ぶか、何を学ぶか、すべて自分で決める自由があります」とある。それで学校なの?と言われるかもしれないが、ご指摘の通り学校としては認められず、いわゆるフリースクールである。

 少々型破りにも見えるが、子どもの主体的な学びを重視して、ルールづくりからサポートの大人のスタッフを選挙で決めることまで、子供の意思を尊重する徹底ぶりはみごとだ。「なんでもやってみたらいいんよ」「みんなで話し合ってみたら」。大人が指示を出さないように悩みながら子どもと対話する様子は、従来の「教えるプロ」としての教師像を打ち破ってくれる。

 大人の対応に、実は子どもたちも悩む。自由って何だろう? 指示されないので何もしなければ、ただ退屈な時間だけがすぎていく。「案外、自由って難しい?」

 この子どもと大人の葛藤、これって新しい学習指導要領が強調する「主体的、対話的で深い学び」の実践だよね、と気付かされる。指導要領の解説映像にしてほしい作品だ。浅田さかえ監督。2021年10月 ポレポレ東中野ほか全国順次公開予定
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
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2021年10月22日

【フォトアングル】朝鮮人追悼式典 伝統舞踏家・金順子さんが鎮魂の舞を献じる=酒井憲太郎

                            
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「6千余名の朝鮮人の命が奪われた」1923年の関東大震災から98年。朝鮮人犠牲者追悼式典(同実行委員会主催)がコロナ対策のため一般参加なしの、オンライン生中継開催となった。5年連続で追悼文を出さなかった小池百合子都知事を批判する挨拶が続いた後、韓国無形文化財の伝統舞踊家・金順子さんが追悼碑の前で鎮魂の舞を献じた=1日、東京都墨田区・横網町公園、酒井憲太郎撮影
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
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2021年10月21日

【おすすめ本】謝花直美『戦後沖縄と復興の「異音」 ─米軍占領下 復興を求めた人々の生存と希望 』─復興と生活の軋みから漏れ出る「異音」を掬い出す=栗原佳子(新聞「うずみ火」記者)

 「沖縄タイムス」記者 として沖縄戦、沖縄戦後史を長年取材してきた著者は2010年、1年間休職し、大阪大学大学院の門を叩いた。本書は18年に博士号を取得した論文を再構成した労作だ。
 沖縄戦から米軍占領下で生き延びた命をつなぎ「復興」を目指した市井の人々を主人公として描く。 例えば「ミシン業」の女性たち。戦争で夫を失ったり、米軍基地に土地を奪われたりした人々が生活の糧とした。手内職の「既製品」を立ち売りする商売は「新天地市場」へと結実した。
 故郷を那覇軍港に接収された那覇市「垣花」の人々の軌跡も辿る。軍労働に伴う移動を繰り返した結果、離散。
 一方、那覇の「復興」の陰で旧真和志村(1957年那覇市編入)の農村復興の希望は潰えた。米軍の占領施策が、全てに優先される時代とはいえ、「抗うべき相手は占 領下で同様に苦しむ沖縄の人々だった」のだ。

 しかし56年、人々の怒りは「島ぐるみ闘争」として爆発した。著者は米軍住宅で働いた女性たちの「気持ちまでは取られない」という言葉に象徴される、人々の気持ちが島ぐるみ闘争へつながったのだと述べる。
 沖縄戦、沖縄戦後史の体験者や不条理に泣く人々の声に耳を傾けてきた著者だからこそ、女性のつぶやきを聞き留め、主流の歴史には表出してこない無数の「異音」を 聞きわけたのだろう。
 来年は復帰50年という節目。復帰とは何だったのか。いまを考えるには沖縄戦後史を知ることの大事さを、改めて教えられた。沖縄からの「異音」は聞こえるか。私たちが問われている。(有志舎2600円)

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2021年10月19日

【スポーツ】3大懸念の北京冬季五輪=大野晃

 来年2月4日の北京冬季五輪開幕まで3カ月余りに近づいた。2008年夏季五輪に続く、史上初の夏冬五輪同一都市開催であり、2018年韓国の平昌冬季五輪から東アジアでの3五輪連続開催の締めくくりとなる。
  東京五輪の教訓が生かされるか注目される。新型コロナウイルス感染症の感染収束が見えない中で、国際オリンピック委員会と同五輪組織委員会は海外からの観客受け入れを断念した。
  熱烈な応援の中国観客が圧倒的に取り巻く中でのメダル争いとなる。
 海外の競技者が参加してテスト大会が始まっているが、東京五輪と同じ隔離と検査漬けを特徴とする感染防止対策が徹底されるようだ。東京五輪が都民の感染爆発を招いたように、地元民の感染拡大に不安はないのか。
 競技は混合種目が増えて7競技109種目と史上最多に膨らんだ。会場は3地域に分かれ、スケートなど屋内競技は北京市内に集中し、アルペンスキーとそり競技は北部の延慶区で、ノルディックスキーなどは北 京市から約160`離れた万里の長城に近い張家口市で行われる。

  近年の冬季五輪で最大の課題は、雪不足など温暖化による自然環境対策。人工雪で克服するというが、スムーズに競技できるかは未知数だ。 
 しかも、米中対立の厳しい国際情勢が左右しかねない。バイデン米政権には政府関係者の参加ボイコットの声もあり、中国の人権問題が障害になる恐れがある。
  国際政治に振り回され、政府がボイコットを言い出したら、日本オリンピック委員会は、どう対応するのか。
  夏季五輪で中国批判を繰り返したマスメディアだが、踏襲するだけで、メダル獲りに大騒ぎか。
北京で2度目の五輪開催は、コロナ禍での社会問題、温暖化の自然環境問題、そして複雑な国際問題と、3大懸念を抱えた、むずかしさを示す。
 3五輪連続開催が、アジアのスポーツ発展に何をもたらしたかを見つめ直す場でもある。
大野晃(スポーツジャーナリスト)


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2021年10月18日

【支部リポート】神奈川 「カジノはいらない」横浜市長選に市民の思い=伊東良平

 神奈川支部では横浜におけるカジノを含むIRを反対する立場から、横浜カジノの是非を自ら決めようという「市民の会」などの活動を追跡取材して支部通信に掲載してきたが、その審判となったのが、8月22日に投開票が行われた横浜市長選挙であった。
 大きく報道されたように、カジノの「断固反対、即時撤回」を訴えた立憲民主党推薦の元横浜市立大学教授・山中竹春氏が現職閣僚を辞めて立候補した自民党の小此木八郎氏をはじめ過去3回当選の現職市長、元県知事の2人らを抑えて当選を決めた。菅首相のお膝元で全面的に支援した小此木氏の敗北はその後の菅首相の総裁選不出馬=事実上の退陣につながったのはご存じのとおりである。
 山中氏は医学部教授の立場でコロナについてテレビのワイドショーにゲスト出演していたとはいえほとんど無名の新人である。その知名度アップのために「市民の会」などの諸団体や労組、市民ボランティアが一体となって草の根的な宣伝活動を行った。多くの駅前でのビラ配布や政策チラシのポスティングなど、押し上げに力を発揮した。
 自民・公明が事実上応援した小此木氏が「IR誘致取りやめ」を表明したために、自民党の一部市議がIR推進の林前市長を支持して保守分裂に助けられた面もあるが、IRを反対する候補者も田中康夫氏など知名度のある人が立って票が割れたことを考えると、山中氏の善戦は際立っている。
 コロナ対策が後手となった菅政権の中で、横浜市はさらにワクチン接種が遅れるなどの状況であり、専門の立場で「データと科学的知見に基づくコロナ対策」を政策に掲げて、カジノだけでなく、コロナで得票を伸ばしたのが大きかったと言える。
 山中新市長は9月10日市議会で、IR誘致の撤回を正式に表明した。ここに2014年以来8年間続いてきたカジノ反対運動にピリオドが打たれた。結果が出た後で敗戦の辞を述べた林前市長は「IR誘致表明以来、反対の嵐のなかを生きてきた」と述べたが、反対の嵐を呼び寄せたのは、カジノはいらないという一人ひとりの市民の熱い思いが作った大きな台風の眼であった。
伊東良平
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
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2021年10月17日

【今週の風考計】10.17─総選挙のテーマに忘れてならぬ食料自給率37%

★岸田政権が解散・総選挙に打って出た。だが、この4年間、民主主義をことごとく踏みつぶしてきた安倍・菅政権の「悪弊」は、未解決のままだ。
 森友学園問題での公文書改ざんに始まり、<桜を見る会>では安倍元首相の118回に及ぶ国会での虚偽答弁、河井議員夫妻の選挙買収事件など「政治とカネ」に絡む不正、学術会議の6名任命拒否などなど、ほったらかしでよいわけがない。

★岸田政権は、本当に「悪弊」を断ち切れるのか。残念にも、もういち早く「岸田<3Aリモコン>政権」は、解明や説明責任に背を向け、逃げの姿勢へと走っている。
 しかも「所得倍増論」は消え「金融所得への課税強化」も行方不明、その代わり憲法改定には早期の実現を目指し、さらにGDP比2%への軍備増強、敵基地攻撃能力の開発・強化など、タカ派政策を打ち出している。まさに安倍・菅政権の継承ではないか。

★31日の投開票日に向けて、じっくり岸田政権の政策を吟味しよう。アベノミクスの弊害、原発依存、ジェンダー平等社会への取り組み、気候変動とCO2 削減、どう対処し解決への処方箋が示されるのか、野党共闘の力を結集しての論戦も大いに期待したい。そして国民の声が生きる政治へと切り替えたい。
★その際、日本の農業問題もクローズアップしてほしい。16日は国連が定めた「世界食料デー」、月末まで飢餓や食料問題を考え、2030年までに「飢餓ゼロ」の目標に向け行動する。
 いま日本は、コロナ禍で米価の大暴落が農村を襲っている。貯蔵されている過剰米がダブつき、米価が昨年と比べ2割から3割下落し、1俵(60キロ)1万円を下回る銘柄も続出。生産コストに1万5千円を要するのに、これでは破産するしかない。
★米価の回復には、過剰米と新米との連動性を絶ち、米価下落を防ぐ措置、すなわち過剰米を政府が買い上げることがどうしても必要だ。15万トンの買い上げでは追いつかない。

★しかも国内需要の1割に及ぶ77万トンものミニマムアクセス米を、外国から輸入し続けるのは不条理そのもの。もっと日本のコメ農家の悲鳴に向き合うべきではないか。
 もともと国民が必要とし消費するコメなどの食料は、できるだけその国で生産するという、「国消国産」の考え方が根本になければならぬ。
★現在、日本の食料自給率は37%、過去最低の水準だ。安倍政権が進めた「官邸農政」は、世界の競争に強い農業を謳い、大規模化と外国企業の参入に道を開き、日本農業を壊滅状況に追い込んでいる。
★外国や多国籍企業の利益のために、種子法の廃止や種苗法の改悪など、日本の食料主権を譲り渡す農業政策はやめさせねばならぬ。
 減反政策などで一度荒れてしまった農地から、農作物を収穫するには、最初から土づくりや水の管理、病害虫対策など、一からやり直しだ。まさに「農業枯れて国滅ぶ」。(2021/10/17)
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2021年10月16日

【沖縄リポート】安部―菅支配が遺した惨憺たる現状=浦島悦子

                         
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 菅総理大臣の突然の辞任表明には驚いたが、同時に当然の自滅だと思った。権力に固執する最後の悪あがきが「墓穴」をより深く掘ったのだろう。
 安倍政権誕生以来、長期間続いてきた安倍―菅強権支配は、日本という国に多大な禍根を残したが、沖縄ではそれがよりいっそう露骨かつ過酷に表れた。それは惨憺たる現状を見れば明らかだ。
 民意も地方自治も一顧だにせず、国が「粛々と」強行する米軍新基地建設工事では、サンゴ移植に、水生生物にも人にも有害な接着剤が使われていることが明らかになった。
 米国におもねり、米軍のやりたい放題を追認したツケはすべて県民に押し付けられている。相次ぐ米軍事故や米兵犯罪に加え、宜野湾市や県の猛反対にもかかわらず米軍が普天間基地から強行放出したPFAS(ピーファス=有機フッ素化合物)汚染水は、半永久的に地域住民の命の水を汚染し、低体重児の出生、免疫力の低下、ガン化などの健康被害が危惧されている。

  9月2日、この暴挙に対し宜野湾市・うるま市の市民らが、米軍司令部(北中城村石平在)前で緊急抗議集会を行った(写真)。コロナ禍の中、平日の午後にもかかわらず150人以上が集まったことは危機感の大きさを物語っている。
 陸上自衛隊がうるま市勝連分屯地にミサイル連隊本部を置くことも報道された。琉球諸島4か所のミサイル部隊を指揮統括するという。米国の対中国戦略の楯として沖縄を差し出そうというのだ。
 国策に従わない民にどんな仕打ちをしてきたかも沖縄ではよく見える。わが名護市は来年1月に市長選を控えているが、前回選挙で、新基地建設に反対する前市長を何としても潰すために、菅官房長官(当時)が自ら采配を振るったことを忘れるわけにいかない。
 私たちが望む政権交代も今衆議院選では厳しいだろう。せめて自民党議席を大幅に減らし、政権の暴走を止めたい。
浦島悦子
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
 
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2021年10月15日

【JCJオンライン講演会】「メディアの地殻変動」――ゼロベースで新たなジャーナリズムを―― 10月30日(土)午後2時から4時まで

                           
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講師:ジャーナリスト・神保哲生氏
(日本ビデオニュース株式会社代表取締役、インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』代表・編集主幹)

司会・進行役:立教大学教授・砂川浩慶氏(ジャーナリズム論)
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 新聞やテレビなど既存の大手メディアは十分に報道の役割を果たしているか。首相会見の場に流れる「お行儀の良い」空気。視聴者が知りたいことを突っ込んで聞く質問も少ない。自民党総裁選報道でも「劇場」を演出することに、メディアが場を貸したような形になった。コロナ問題を含む根本的な政策批評と検証は極めて少ない。このままでは報道は劣化する一方だ。神保氏は根本的に、ゼロベースからジャーナリズムを構築し直すべきと語る。そこにある意図、考え、具体策などを立大の砂川教授を聞き役に、引き出してもらう。

参加費:500円
peatix(https://chikakuhendo.peatix.com/)で申し込まれた方々に講演前日の10月29日までに、Zoomで視聴できるURLをメールでお送りします。
【JCJ会員は参加費無料。onlinejcj20@gmail.com に別途申し込んでください】
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)電話03・6272・9781(月水金の午後1時〜6時)
メール office@jcj.sakura.ne.jp  ホームページ http://www.jcj.sakura.ne.jp/
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2021年10月14日

【おすすめ本】原 武史『歴史のダイヤグラム 鉄道に見る日本近現代史』─鉄路にまつわる大事件から列車での小さな出来事まで=萩山 拓(ライター)

 歴史は鉄路で作られる─といっても過言ではない。本書の内容は副題が的確に表している。
 今年は満州事変から、ちょうど90年。1931年9月18日の夜、中国東北部・奉天(現在の瀋陽)近郊の柳条湖で、南満州鉄道の線路が爆破された。当初、中国兵による 不法な襲撃とされたが、実は日本の関東軍が仕組んだ謀略だった。
 本書は、まさに鉄路が絡む大きな事件から、鉄道を介して展開される小さな出来事まで、まったく知られなかった近現代史の実相が、著者の豊富な鉄道知識を通して、浮かび上がってくる。

 「第一章 移動する天皇」では、「神を載せる車両」「御召列車の政治的効果」に触れて、次のような記述がある。
 「御召列車とすれ違う列車の便所は使用禁止になったばかりでなく、名古屋や京都などの停車駅は構内の便所などが幕でおおわれた。聖なる天皇の視界に便所が入ってしまうこと自体が、おそれ多いと見なされたのだ」
 以下、「郊外の発見」「文学者の時刻表」「事件は沿線で起こる」「記憶の車窓から」と章題をつけ、荷風が見た井の頭線の田園風景、ダイヤ改正と「点と線」の4分間トリック、丸山眞男が聞いてメモした車中の政治談義、 最後はポーランドを訪れた際のワルシャワのトラムと食堂車での体験が綴られている。

 私事で恐縮だが、筆者も5年前、ポーランドを旅して体験した記憶が、著者の記述で甦る。クラクフからワルシャワヘ行く特急列車ペンドリーノに乗り、連結されたビュッフェで、ビール「ジヴィエツ」を瓶から飲み、サラダとケバブを挟んだ丸いパンにかぶりついた。その味が忘れられない。
 本書は朝日新聞の土曜別刷り「be」に連載のコラムを新書化。各テーマ3ページ・写真付きで、どこから読んでも面白い。(朝日新書850円)

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2021年10月12日

【スポーツ】身勝手な国際感覚=大野晃

 大相撲をリードした横綱・白鵬が引退した。 横綱として15年間にわたり、野球賭博問題や八百長問題、東日本大震災やコロナ禍など、大相撲が揺れ動いた苦境の時代を乗り越え、45回の優勝など数々の記録を樹立した。
 少年時代にモンゴルから来日し、厳しい環境の中で、鍛錬を積んで頂点に立ち、米国ハワイ出身の高見山以来続く外国人力士が日本伝統の大相撲を支え発展させた象徴的な存在になった。
 にもかかわらず、立ち合いの強引さなどで、横綱の品格を批判されることもしばしばだった。
モンゴル出身の後輩横綱・照ノ富士など外国人力士抜きに興行は成り立たないのだが、大相撲関係者などに、外国人力士への差別意識が根深いようだ。
 米国大リーグで、大谷翔平投手が2桁勝利、2桁本塁打で本塁打王の、二刀流の偉業に迫った。 神様ベーブ・ルース以来、103年ぶりの快挙をファンは固唾をのんで見守った。日本人競技者の躍進に拍手を惜しまなかった。
 海外で活躍する日本人競技者が多くなったが、海外のファンは喜んで迎え入れている。
 なのに、日本では、海外での成果には大騒ぎはするが、伝統を強調する競技を中心に、外国人競技者を素直に受け入れようとはしない。 スポーツに国境はないはずだが、日本人のスポーツ観には、垣根があるようだ。

 五輪で、日本代表のメダル獲りばかりを追うのは、そのためだろう。ひいきの応援に熱心なあまり、高い能力による競い合いの面白さや競技の醍醐味を、見逃す観戦者が少なくない。
 自ら競技を体験することが、極端に少ないからではないか。学校卒業後は、資金がなければ、挑戦する機会や場がほとんどない。
 「誰もが、いつでも、どこでも」の国のスポーツ振興策が、かけ声倒れになっているからだ。
 国際化を喜ぶファンが多くはなったが、競技は見るだけに限定される状態が続くと、身勝手な国際感覚の温床になりかねない。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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