2021年10月07日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】ラジオ視聴者増える ラジコ人気が貢献

                           
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 ラジオを聞く人がコロナ禍で増えていることが伝えられたのは、2020年2月ごろからだ。
ビデオリサーチによると首都圏のラジオ局5局の週別平均聴取人数(1分当たりのラジオ聴取人数、推計)では20年2月から3月では80万人だったのが、4月に入ると週90万人に増加したことがわかっている。その後も90万人前後が続いるとみられる。
 同社が12歳〜69歳の男女5000を調査したところ、コロナ禍での行動の変化について「ラジオを聞く時間が増えた」人は2.6%だった。
 
900万人
 ラジオは従来AMやFMのラジオチューナーでしか聴けなかったが,2010年ラジオがインターネット機器で聴ける「ラジコ」が始まった。ラジコは当初居住している地域のローカルラジオに限定されていたが、2014年から月350円で全国のラジオが聴ける「ラジコ・プレミアム」が始まった。さらに2016年には1週間以内であれば放送時間外の番組も聞ける「タイム・フリー」機能が追加された。
 ラジコによると、月間ユーザー数はコロナ禍以前の昨年2月から約1ヵ月の間で約150万人増加し、900万人を超えた。 さらに、10代リスナーの30%が昨年3月以降にラジコの利用を開始しているという。
 ラジコはiPhoneなどのケータイはもとより、家庭でパソコンでもアプリを入れれば聞くことができる簡便さで大きく伸びた。加えて、多数のラジオ番組がSNSやYouTubeと連携した番組作りをしているのも、ラジコの存在があってのことだ。ラジコの大幅増加の背景には外出自粛や休校、加えてテレワークの広がりなどがある。
 日経ビジネスのアンケートでは、コロナ禍でラジオを聴く機会が大幅に増えた14.3%、やや増えた 34.1%と、ラジオを聞き始めた人の半数はコロナ以降だ。
 どのような機器でラジオを受信しているか調べてみた。据え置き型ラジオ、CDカセット付ラジオ、カーラジオ、カーナビ。ケータイ端末、パソコンなどだ。ラジコはカーナビ、ケータイ、パソコンなどで横断的に聴取できる。

聴取者像は
 ラジオを聴く時間帯はこれまでのカーラジオ時代であれば出退勤時や受験生向けの深夜そして日中も主婦、高齢者の一定の高さが続いていた。しかし今回の日経調査では21時以降、24時以降が他の時間帯を大きく超えるという特徴を見せた。
  関西で人気のラジオ局FMCOCOROでは、大阪府に初めて緊急事態宣言が出された2020年4月上旬頃から、「新たに聴き始めた」、「今までも聞いていたが、リクエストするのは初めて」などといったメールなどによる反応が急激に増えたという(読売新聞大阪版、20年7/11夕刊)。またTokyo FMでは、ある番組が番組放送後、不定期に「オンライン飲み会」を開催しているのだが、時に参加者が1万人をこえることがある(朝日新聞東京版21年5/24夕刊)。これらの情報はラジコが威力を発揮し始めていることを示している。
 また15〜19歳の若者のうち3割が「コロナ禍以降ラジコで番組を聞き始めた」という調査もある。20代から30代も「日常的にラジオを聴いている」という。好きな芸能人やアーティストの生の声を聴きたいという若者を呼び込んだとみられる。在宅勤務でテレワーク中の中年世代でもラジオを聴く習慣が身に付き始めているようだ。

特集が相次ぐ
 ラジオの魅力に着目、大型の特集を組む雑誌が相次いで刊行されているとの報道が伝えられた。「RUTUS」3月号で「なにしろラジオ好きなもので」、「TV Bros.」2月号、ラジオ特集、「日経トレンディ」2月号、ヒットをなぜ生み出せるか、「週刊金曜日」8月20日号、ラジオが面白い、などである。ラジオと雑誌は規模や受け手との距離が似ている。コロナ禍で改めてラジオの双方向性やリスナーとの距離感に着目した企画が多く、報道系の番組では話し手がのびのびと語れる、などの記述があった(民間放送9/22)
 21年6月、関西圏のラジオ聴取率調査が行われた。明らかになった事実は、FM Cocolo765とFM802が地上波局(ABC, MBS, NHK大阪)を抑えて聴取者の支持を得ていることであった。50代男女の場合の関西ラジオ支持率を例示してみよう。
1,FMCOCOLO765 20.3%、2.FM802 15.7%、3,MBS 15,6%、4,ABC 14.6%、5,FM大阪 6.7%、6,NHK第1 6.6%。ちなみに、FMCOCOLOの20.3%という数字は、一週間に135万人の視聴者がいることを示している。
 以上のデータで見る限りAM局を上回るFM局の活躍が目立つ。現在のAM局は数年後には新たなFM周波数に転換するが、その備えが出来ているかを問う必要があるだろう。
 ともあれ、ラジオは新たなメディアに再生しつつある。しかも聴取者の身近に存在するという特性を持つメディアでもある。今後のラジオの新たな発展に注目する必要がある。
 
番組ベストテン
  最後にどんな番組に人気が集中しているのか、見ていただきたい(日経ビジネス2/19)。
 ワイド系
1. ニッポン放送、オードリーのオールナイトニッポン。2.ニッポン放送、Creepy Nutsのオールナイトニッポン。3.Tokyo FM、福山雅治 福のラジオ、4.ニッポン放送 菅田正暉のオールナイトニッポン、5.Tokyo FM、山下達郎の楽天カード サンデー ソングブック。6.TBSラジオ、赤江珠緒たまむすび。
 アイドル系
1. ニッポン放送、Six Tonesのオールナイトニッポン。2.ニッポン放送、藤ヶ谷太輔 Peaceful Days。3.NHKラジオ第一、らじらー!。 
隅井孝雄(ジャーナリスト)
 
 
posted by JCJ at 01:00 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする