8月28日は北朝鮮の「青年節」だ。今年は60周年とあって、とりわけ大きなイベントが開催された模様だ。地方も含め1万人以上の若者たちが平壌に集まり、大会などに出席しただけでなく、コンサートを観覧したり、夜会に参加したり。夜間営業が基本の遊園地で絶叫マシーンにも興じた。
そんな彼らにとって、一番の栄誉は金正恩朝鮮労働党総書記と会って写真を撮ったことだ。北朝鮮で最も栄誉とされるのは、「最高指導者との接見」だ。記念写真は家宝である。北朝鮮の家を訪れるとわかるが、歴代の最高指導者と写した写真は必ず家の一番良い場所に掲げられている。1万人といえば、本人の顔は米粒のようでほとんどわからないが、それでも一家の誉なのである。
ところで、この「青年節」に際し、金正恩総書記は、困難で過酷な経済建設現場に自ら志願して行くこととなった若者たちに祝賀文を送った。そこでこんなことを言っている。「私が何よりうれしいのは、立ち遅れた青年たちが愛国で団結した社会主義愛国青年同盟の一員らしく、母なる祖国のために自らを捧げる立派な決心を抱き、困難で韓国な部門に進出することで人生の再出発をしたことです」。
「立ち遅れた青年」とは、北朝鮮流にいえば、非社会主義行為を働いてきた若者たちを指すのであろう。非社会主義行為にはいろいろあるが、たとえば韓流ドラマをひそかに見ることも当てはまる。最近では服装の乱れなども非社会主義的行為とされる。それだけ当局が若者たちの非行に頭を痛めている証拠だろう。
金総書記は、困難で過酷な建設現場へと向かう、かつての不良青年たちに会い、写真まで撮った。何とかして若者たちの心をつかみ取りたいという気持ちが伝わってくる。
長引く経済制裁に相次ぐ自然災害、さらには新型コロナによる国境封鎖で経済的困難にある北朝鮮。最近の若者懐柔策を見ていると、北朝鮮の苦境が伝わってくる。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号