2021年10月11日

【オンライン講演会】台湾有事の危険指摘 「対中、けんか買う行為だ」半田滋さん=須貝道雄

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 JCJは8月22日、防衛ジャーナリストの半田滋さん(元東京新聞論説兼編集委員)を講師に「日本は再び戦争をするのか?」の題でオンライン講演会を開いた。
 台湾海峡をめぐって現在、米中の緊張が高まっている。半田さんは、米国が対中国に備えて開発している新型の中距離ミサイルの詳細を解説した。地上発射型の超音速滑空ミサイル(LRHW)で、軍事専門サイトによると射程は約2775`を超える。23会計年度までに開発を終える予定だ。
 米国のインド太平洋軍は日本円で約2兆9千億円の予算を投じ、沖縄からフィリピンを結ぶ線に沿って、対中ミサイル網を築くとしている。そのミサイルがLRHW。日本や韓国、台湾に配備すれば、中国本土の約1610`以上の目標を攻撃できる。日本には沖縄本島や宮古島、奄美、石垣島への配備を米軍は求めてくるだろと半田さんは見ている。
 台湾有事について米軍高官の発言が相次いでいる。今年3月にインド太平洋軍のデービットソン司令官は「台湾への脅威は今後、6年以内に明白になるだろう」と明言。次期司令官のジョン・アキノリー海軍大将は同月、中国が台湾に侵攻する可能性は「大半の人が考えているよりもはるかに近いと思う」と議会で話した。制服組トップのミリー統合参謀本部議長も「台湾侵攻がここ1、2年で起きる可能性は低い。ただ6年後、8年後は分からない」と述べた。

 こうした環境の中、4月の日米首脳会談でバイデン大統領と菅首相は52年ぶりに台湾に触れた共同声明を発表。「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記した。
 並行して現場が動いている。海上自衛隊は2018年から3年続けて南シナ海、インド洋に訓練部隊を長期に派遣。日米共同作戦に加えて、中国軍を想定した対潜水艦訓練も実施している。
半田さんは「米中対立の南シナ海に、海上自衛隊は護衛艦や潜水艦を恒常的に派遣している。日米の連携は進むものの、けんかを買って出る行為」と危険性を指摘した。
 敵基地攻撃能力を持つ兵器の準備も日本で進んでいる。1988年4月、時の防衛庁長官・瓦力氏は、相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる攻撃的兵器の保有は憲法が禁じていると国会で答弁。禁止兵器として@大陸間弾道ミサイル(ICBM)A長距離戦略爆撃機B攻撃型空母などを挙げた。
 半田さんによれば、現在は@のICBMは島嶼防衛用高速滑空弾の開発で、Aの長距離戦略爆撃機はスタンド・オフ・ミサイル(射程500〜1000`)の導入で、B攻撃型空母は護衛艦「いずも」の空母化と垂直離着陸ができるF35Bの搭載で、禁止の壁を突破しつつある。
 今、喫緊の課題は米国が対中ミサイル網を築くため、沖縄などに中距離ミサイルの配備を求めたとき、日本はどうするかだ。米中対立に日本が巻き込まれ、参戦するような事態を避けるため「注文をつけることができるはずだ」と半田さん。韓国やASEAN(東南アジア諸国連合)とも連携して、米国と中国に対し無謀な軍事強化、武力行使を辞めるよう働きかけることが大事になると強調した。    
須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年9月25日号
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posted by JCJ at 01:00 | オンライン講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする