大相撲をリードした横綱・白鵬が引退した。 横綱として15年間にわたり、野球賭博問題や八百長問題、東日本大震災やコロナ禍など、大相撲が揺れ動いた苦境の時代を乗り越え、45回の優勝など数々の記録を樹立した。
少年時代にモンゴルから来日し、厳しい環境の中で、鍛錬を積んで頂点に立ち、米国ハワイ出身の高見山以来続く外国人力士が日本伝統の大相撲を支え発展させた象徴的な存在になった。
にもかかわらず、立ち合いの強引さなどで、横綱の品格を批判されることもしばしばだった。
モンゴル出身の後輩横綱・照ノ富士など外国人力士抜きに興行は成り立たないのだが、大相撲関係者などに、外国人力士への差別意識が根深いようだ。
米国大リーグで、大谷翔平投手が2桁勝利、2桁本塁打で本塁打王の、二刀流の偉業に迫った。 神様ベーブ・ルース以来、103年ぶりの快挙をファンは固唾をのんで見守った。日本人競技者の躍進に拍手を惜しまなかった。
海外で活躍する日本人競技者が多くなったが、海外のファンは喜んで迎え入れている。
なのに、日本では、海外での成果には大騒ぎはするが、伝統を強調する競技を中心に、外国人競技者を素直に受け入れようとはしない。 スポーツに国境はないはずだが、日本人のスポーツ観には、垣根があるようだ。
五輪で、日本代表のメダル獲りばかりを追うのは、そのためだろう。ひいきの応援に熱心なあまり、高い能力による競い合いの面白さや競技の醍醐味を、見逃す観戦者が少なくない。
自ら競技を体験することが、極端に少ないからではないか。学校卒業後は、資金がなければ、挑戦する機会や場がほとんどない。
「誰もが、いつでも、どこでも」の国のスポーツ振興策が、かけ声倒れになっているからだ。
国際化を喜ぶファンが多くはなったが、競技は見るだけに限定される状態が続くと、身勝手な国際感覚の温床になりかねない。
大野晃(スポーツジャーナリスト)