2021年11月04日

【リレー時評】俵義文さんのJCJ賞特別賞受賞に思う=清水正文(JCJ代表委員)

2021年のJCJ賞特別賞に俵義文さんの「日本の教科書と教育を守り続けた活動」が選ばれた。俵さんとごいっしょに出版労連や「子どもと教科書ネット21」の運動にかかわってきた一人としてたいへん感慨深い。
 残念ながら今年6月7日に亡くなられたが、活動の集大成ともいえる『戦後教科書運動史』が昨年末に出版され、病の床でできた本をじっと眺めておられたと聞き、ほんとうによかったと思った。

 俵さんへの惜別の記事が、しんぶん赤旗の「潮流」や朝日新聞にも掲載されたが、活動の評価が、国内だけでなく韓国や中国との交流にも力を注ぎ、近現代史の三国共通教材「未来をひらく歴史」をつくるまでに発展した教科書問題への取り組みなどが際立っていたからだと思う。
 思えば1980年代から40年近くのお付き合いになる。出版労連の中央執行委員・書記次長に就任された俵さんは一貫して教科書問題を担当し、家永教科書裁判支援にも役員としてかかわってこられた。私も副委員長として何年かごいっしょに出版労連の運動に携わり、彼の教科書問題へのライフワークともいえる取り組みに敬服させられた。

 俵さんは2000年3月に勤めていた教科書会社を早期退職し、「子どもと教科書全国ネット21」の専従の事務局長となり教科書問題の専門家として歩むことになった。それ以来彼とは「教科書ネット」の運動を通じて活動してきたが、私は「子どもと教科書大阪ネット21」の代表委員として事務局長の平井美津子さんらとともに、今も教科書問題にかかわっている。
 平井さんは長年中学校教員として歴史の授業を通じて「慰安婦」問題を子どもたちに教えてきた。その授業に対して、大阪府議会では自民党や大阪維新の会の議員が平井さんへの個人攻撃を行ったが、「教育への政治介入に屈するべきではない」と毅然として対応した人である。

 その「慰安婦」問題について、政府は今年4月に日本維新の会の質問主意書に対して、「従軍慰安婦」や「強制連行」という用語を不適切だとする答弁書を閣議決定し、教科書会社に記述の削除や訂正を求めた。
 この政府の求めに応じて教科書会社5社が訂正申請をし、文科省が9月8日に承認したが、その理由に2014年に改訂された教科書の検定基準を挙げ、閣議決定に沿った記述を教科書会社に求めたのである。
 この問題について、俵さんのあとを継いだ「子どもと教科書全国ネット21」の鈴木敏夫事務局長は、「歴史用語を権力が定め、それ以外を禁じるのは学問の自由に反する」「教育基本法も禁じる教育への政治介入で違法だ」と指摘し、「ネット21」の常任運営委員会として9月10日に政府に抗議した。
 今後も右派からの教科書攻撃が続くと思われるが、憲法の保障する学問の自由、言論・表現・出版の自由を守るために、私も微力を尽くそうと決意を新たにしている
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年10月25日号
posted by JCJ at 01:00 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする