2022年01月31日

「絶望45%」に届く言葉を 野党共闘 安保政策も重要 市民連合@新潟 佐々木寛氏に聞く=須貝道雄

                          
オンラインでのインタビューに答える佐々木寛さん(21年12月29日).jpg
   
 国政選挙で野党共闘が4連勝した新潟県。そのキーマンとされる市民連合@新潟の共同代表で、新潟国際情報大学教授の佐々木寛さん=写真=に、政治と野党共闘のあり方を聞いた。
 ご祝儀相場の面
◆昨年の総選挙では日本維新の会が増え、憲法改悪を叫んでいる。
「維新の会を過大にも過小にも評価してはいけない。今回の結果は前回衆院選(2017年)で希望の党がとった約1千万票を、維新の会と国民民主党が分け合った形だ。現状のシステムを維持しながら何とかしてくれと望む『改革保守』の人々の素朴な心理をくすぐった。盤石な支持ではなく、一種のご祝儀相場といえる」
「一方で、甘く見てはならない。メディアを取り込み、ワンフレーズで大衆の心理をすくい取る。たとえば『身を切る改革』。自分たちの政治は自己利益のためにしているのではないと訴えた。大阪ではコロナ対策でも経済対策でも客観的には維新の会は結果を出していない。しかし、既存システムに漠然たる違和感を持つ層の支持を吸収している」

ファシズムの危険
◆投票率が約56%と戦後3番目の低さだった。
「だれが政権をとっても世の中は変わらないと政治に絶望している人は投票に行かなかった。その層が45%近くいる。貧富の差が拡大し、不安は募っているのに」
「今の日本は、ファシズムの予兆という点で、第2次世界大戦前のドイツに似ている。賠償金問題で社会不安が増すなか、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)が選挙で勝った。名前だけ見れば左翼(革新)政権だ。不安にさいなまれた人たちから大喝采を浴びた。火をつけるきっかけさえあれば、日本でも同様のことが起こり得る。維新の会の大衆操作政治は油断できない」
◆絶望の根源には何があるのか。
「大学で思うのだが、今の若い人たちは公的な場で必要とされ、称賛された経験が皆無だ。公的なことは遠い存在で、意味のないものと見ている。公的空間から排除され、最初からゲームに参加できていない。貧困とともに大きな問題だ。総選挙の投票日(21年10月31日)にハロウィンでうかれる若者らがいた一方で、電車内で刃物をふるった男がいた。今の絶望の社会現状を象徴している」

新味いかに出すか
◆野党共闘は効果がないのか。今後の方向は。
「先の総選挙では与党の自民・公明と野党共闘は各選挙区で四つ相撲となり、差しでよい勝負をした。新潟に限れば野党は4勝2敗だ。共闘が無かったら、こんな結果は出ない。それを失敗と見るのは科学的な評価ではない。メディアの論調もしかりで、自分で考える力のある記者が減った気がする」
「今後の野党共闘は従来のやり方を踏襲するだけではだめだ。新味を出さなければ魅力を失う。与野党の枠組みを超えて、永田町(既存の政治体制)そのものを撃つ、高次の新しいアプローチをしないと、絶望する45%の人たちに届かない」
「国家主義、ナショナリズムの台頭に手が付けられない事態になる前に、野党共闘の側が『国をどう守り、立て直すか』を先に提起し、主導権を握ることも重要だ。安全保障についても、地球の気候危機についても、厚みを持った政策を訴え、今後、米国や中国とどう付き合うのかも明らかにする。代案を示して有権者に浸透させることが欠かせない。新潟の体験から大切と思うのは、人間関係の網の目を密に作り上げる地道な努力。それがリアルな力を生む」
聞き手・須貝道雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年1月25日号
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2022年01月30日

【今週の風考計】1.30─大阪府・市政の実態を知るにつけ思い起こす政治家

立憲民主党の菅直人・元首相が、一民間人・橋下徹氏について「弁舌の巧みさではヒトラーを思い起こす」と指摘するや、ご本人の橋下氏が「ヒトラーにたとえるのは国際的にはご法度」とかみついた。
 何を思ったか、維新のお歴々を初め国会議員までもが「人権問題だ」と騒ぎ出し、「民間人の橋下氏」に代わって、公党として抗議文を立憲民主党へ提出するなど、頓珍漢な攻撃をしている。
過去にさかのぼるが、橋下氏に対し、石原慎太郎・元東京都知事から「彼の演説のうまさ、迫力っていうのは若いときのヒトラーですよ」「ヒトラーの伝記を読んでもそうだけどね、彼に該当する政治家だね、橋下徹ってのは」と称賛された際には反論せず、橋下氏の「ダブルスタンダード」が問われている。

さて、この橋下氏が率いた維新主導の大阪府・市が進める「カジノを中核とする統合型リゾート」計画(IR)が、“泥沼”化している。人工島・夢洲の用地がヒ素やフッ素で汚染しているだけでなく、地震による液状化を防ぐ対策が必要になり、790億円もの公費を支出する事態に陥ったからだ。
 松井一郎市長は、知事時代の住民向け説明会で「IR、カジノに税金は一切使いません。民間投資で行う観光振興策だ」と大見得を切った。だが過去の約束にそむいて、大阪市民の税金を投入してまで、米国のカジノ企業MGMとオリックスに優遇措置をしてやる理由は、どこにあるのか。

新たに790億円もの支出を図るカジノ「整備計画案」が出たのが、昨年12月23日。府・市民への告知もゆきわたらぬまま、年明け直後の1月7日から「公聴会」と「説明会」を開催している。
 「公聴会」には政策決定権者が出席せず、問題点を指摘する公述人しかいない。参加者も少なく4回開いて、この29日に終了。市民への「説明会」といっても、2月14日には終了という性急さだ。
松井市長は、税金投入の批判を避けるため、借地権契約とか特別会計の港営事業会計からの支出だとか、言いつくろっているが、巨額な市民負担である事実に変わりはない。算定資料すら「黒塗り」では、790億円で収まる保障すらない。

こうも強引な大阪府・市政が続けられるのは、「二重行政」の解消を口実に、維新の会・知事と市長が歩調を合わせ、府・市民の税金や有形無形の資産を、私物のように処分する事態が常態化しているからだ。例えば大阪の二つの大学合併はどうか。
まず府・市長の権限で予算・決算を専決処分ができる実態を見てほしい。吉村大阪府知事や松井大阪市長の専決処分の行使率は、大阪府46.8%(2位の埼玉県が19.8%)、大阪市86.9%(2位は市長が維新の堺市84.2%)、ともに全国ワースト・ワン。これを見ても議会を軽視し、府・市長の権限で予算・決算を専決処分している事態が分かるというもの。

いま大阪府議会は定数88、大阪維新の会が51人、圧倒的過半数を握る。大阪市議会は定数83、大阪維新の会が40人、過半数までに2人足りない。加えて昨年10月の総選挙では、大阪府内の19全選挙区で、日本維新の会が立候補した14人が全員当選。まさに維新の会の独壇場となっている。
 加えて2月の大阪市議会には、定数83を2つ削減の81とし、大阪維新の会が絶対過半数を握るべく、来春の市議選からの適用を目指す。大阪府議会も定数88を9減らし79へともくろむ。この事態こそ、あの独裁政治家が目指した絵図ではないか。(2022/1/30)
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2022年01月29日

【映画の鏡】市民のための役所とは 『ボストン市庁舎』トランプ政策と対極の現場を描写=鈴木賀津彦

 4時間34分の大作、途中休憩を入れ5時間近くを映画館で過ごすことになるが、ぜひ時間をつくって見てほしいドキュメンタリーだ。特に公務員は必見?なのだろう、「市役所割」なる料金も実施しており、市民のための市役所とは、行政が果たす役割とは何かを考え直す好機になるはずである。
 『ニューヨーク公共図書館』でも知られる米国ドキュメンタリー界の巨匠フレデリック・ワイズマン監督の最新作。91歳の彼の集大成とも、最高傑作とも評されている。舞台は彼の生まれたマサセッチュー州のボストン市。警察、消防、保健衛生、高齢者支援、出生、結婚、死亡記録など、数百種類ものサービスを提供する市役所の仕事ぶりが映し出され、その舞台裏に迫る。
  注目は、市長を先頭に職員が各所に出向き、市民とあらゆる問題で対話していることだ。マーティン・ウォルシュ市長の市民に寄り添う姿勢に好感、見終わって調べたら、今年3月からバイデン政権の労働長官に就任しているというので妙に納得した。
  「アメリカがたどってきた多様性の歴史を典型的に示すような人口構成をもつ米国屈指の大都市で、人々の暮らしに必要なさまざまなサービスを提供している市役所の活動を見せている。(略)トランプが体現するものの対極にある」とワイズマン監督は語る。
 全ての住民の声を聴き、多様な人種を認め合った「まちの姿」。映画館を出るとニュースは偶然、外国人の投票を可能にする武蔵野市の住民投票条例案に反対する政治家たちの騒ぎぶりを伝えていた。なるほど、本作が示した公共の在り方を、身近な日本の課題として捉える必要がありそうだ。全国公開中。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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2022年01月28日

【おすすめ本】望月衣塑子『報道現場』─事実を究め本質に迫る、愚直な記者の現場日記=河原理子(東大大学院情報学環特任教授)

報道現場は「端境期」にある。情報の流れは激変し、さらにコロナ禍で取材も制約されている。けれども「事実を明るみに出す」記者の仕事は変わらないのだと、愚直に質問を重ねる東京新聞記者の著者の、現場日記のような本だ。
 テーマは広い。一昨年春「感染対策」のため1社1人に制限され、ついに著者が出られなくなった官房長官会見のありよう。その秋、日本学術会議会員候補6人の任命拒否。翌春、入管施設でウィシュマ・サンダマリさんが衰弱して亡くなった事件など。

 更新されるニュースを追いきれなかった読者も、おさらいしながら、根底にある問題に触れ、著者が何に怒りどんな時に達成感を覚えたのか、追体験できる。
 <本書を読むのに、政治や社会問題の知識はいらない。「記者ってこん なことをしているのか」などと楽しみながら(略)読んでもらえたらうれしい>と初めにある。専門的な解説を目指した本ではない。
 そのなかでも「日本学術会議問題と軍事問題」の章は読み応えがある。著者は、軍事研究をめぐり学術会議を前から取材してきた。任命を焦点にした官邸との攻防が、実は2014年には始まっていたことは、著者にも打撃だったろう。

 官邸の不当な介入を公にして抗議しなかった当時の学術会議の対応を批判する。とともに、16年と18年には欠員のままになっていたのに、著者を含め報じなかったことを「恥を忍んで記す」。
 明るみに出すのは、他者の不都合な事実だけではない。その率直さが本書の骨格を支えている。(角川新書900円)
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2022年01月27日

【オンライン講演】「入管行政の闇」をなくせ 約100人が参加 JCJ12月集会=藤森研

  今年のJCJ12月集会として、「入管行政の闇」をテーマに12月12日、オンライン・シンポジウムを開いた。学生24人を含め98人が参加した。
 パネリストは、今年のJCJ大賞を受けた信濃毎日新聞の牛山健一さんと共同通信の平野雄吾さん。それに、外国人・難民支援活動をしている国際基督教大学1年生の宮島ヨハナさんを含めた3人。進行は藤森研(代表委員)が務めた。
 外国人技能実習生らを取材した信濃毎日の連載「五色のメビウス」デスクの牛山さんは、「日本社会はもう、技能実習生ら外国人の労働に頼らざるをえない。しかし実習生たちは低賃金やパワハラの下で働かされているのが現状だ。母国の送り出し機関に70万円以上の借金を負っており、返す目途が立たずに失踪する人も毎年6千人に上る。多額の借金には、送り出し機関が日本の受け入れ団体に渡す裏金も上乗せされている」と話した。
 失踪した人は非正規滞在者となり、捕まれば入管施設に収容される。平野さんは、入管施設の実態を、ちくま新書『ルポ入管』で明らかにした。
 「コロナで最近は減ったが、2019年6月時点で全国17の入管施設に1253人が収容されていた。施設内では、暴力的な『制圧』や、医療放置が横行している。司法審査なしの無期限収容で、最も長い人の収容は8年に及ぶ」と平野さん。裁判で表に出た「制圧」時の動画も紹介した。被収容者1人を、入国警備官の男たちが数人がかりで押さえつけている場面だった。
 入管施設から「仮放免」で社会に戻る人もいるが、医療保険はなく、就労禁止など制約は大きい。     
 宮島さんは、父親が牧師で仮放免者の保証人を引き受けていたため、幼時から外国人と接していたという。英語の家庭教師をしてくれたカメルーン人女性のマイさんは、一時はホームレスも経験していた。がんに罹患し、高額の治療費は支援者たちが支えたが、今年1月に亡くなった。
 「一人ひとりに人権はあると思う。『不法残留』と呼ぶが、在留資格がないというだけで犯罪者のように呼ぶのはおかしい」と宮島さんは言った。
 平野さんが応じて「メディアも変わらなければと思う。共同配信記事で、私は『非正規滞在』と書くことを押し通して、今は社にも認められた」。牛山さんも「『メビウス』では不法残留や不法滞在でなく、非正規滞在と書くことに決めた」と話した。
 今年3月、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが、名古屋入管の医療放置で死亡した。
 平野さんは「ある調査では、被収容者が病院に行きたいと申請してから実際に病院に行くまでにかかる日数は平均14・4日。病院に連れて行くかは『容体観察』と称して職員が判断する。医療放置の大きな要因は、詐病を疑う職員の心理だ」。
 ウィシュマさんの痛ましい死もあって、今年の通常国会で、政府の入管法改正案は廃案となった。
 この改正案の問題を、宮島さんは3点に整理して説明した。「問題の1つ目は送還を拒否した人に刑事罰を科す点。2つ目は監理措置制度の導入。保証人に行動報告を求めるもので、それでは仮放免者と保証人の信頼関係は崩れてしまう。3つ目は、3回以上の難民申請をした人は強制送 還できるとするもので、国際原則に反する。日本の難民認定率はとても低い。改正するなら、抜本改正でなければおかしい」。
 2年前に新設された、労働者として受け入れる「特定技能」については意見が分かれた。「現在の延長上に制度をつくってもあまり変わらないと思う」と平野さんは懐疑的だ。牛山さんは「問題もあるが、特定技能制度をより良くしていく方法もあるのでは」と話した。
 最後に、入管問題に対して、私たちは何をしたらいいのかを聞いた。
 牛山さんは「外国人も私たちもお互いを知り合うこと。各地のボランティアの日本語教室に関わるのもいいし、自治体の交流イベントも知り合うきっかけになる」。
 平野さんは「行政の透明化が大事。情報公開で市民が関心を持ち、みんなが見ているよ、ということが入管も変える」。
 宮島さんは「難民認定を第三者機関がするようにしてほしい。個人個人の向き合い方も大事。さまざまなバックグラウンドの人が日本社会を築き上げているということを認識したい」と話した。
 参加者からは多くの質問が出され、パネリストが丁寧にそれに答えた。
 藤森研
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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2022年01月25日

高校生の原発劇 放映中止 福井ケーブルTV「差別」口実に=伊藤洋子

 毎年秋開かれている福井県高校演劇祭では上演された全作品を地元の福井ケーブルテレビが放送してきた。今年の演劇祭はコロナ下のため無観客で開催され、唯一見てもらえる機会は同テレビ局の放送だったが、「差別用語の使用」を理由に県立福井農林高校の劇だけが放送されない事態になった。
 農林高の劇は、1948年の福井地震から原発が集中する福井の歴史をたどり未来へと、女子生徒2人の掛け合いで将来への不安と闘うというもの。題名は「明日のハナコ」。
 上演した翌日(9月20日)に、同テレビから同校の劇は「差別用語の使用、原発という繊細な問題の扱い方」に対し、県高校文化連盟(高文連)に意見を求める連絡があったという。高文連からはテレビ局の「意向を尊重する」とし、局が放送しないと決定したらそれに従うとした。理由は「放送後に生徒への非難が寄せられることを憂慮する」というもの。
 問題とされた表現は、83年福井県敦賀市の当時の市長が、原発誘致を主張する講演会での話言葉をそのまま紹介する中に身体障害者への差別用語を使っており、市長名とその言葉が個人を特定し、差別表現になるというものだ。
 脚本を書いた同校演劇部元顧問の玉村徹さん(60)は11月、放送見送りの撤回を求める要望書を高文連あてに提出。台本をネット上に公開するとともに、表現の自由を奪わないでと題するネット上での署名活動をはじめ、上演実行委員会代表として、12月12、19日には県内で再上演と人権及び原発学習会の開催を決めた。動きは広がり、1月には大阪、愛媛でも上演・学習討論会が決定している。
 12日同県内で開かれた上演と学習会には約50人が来場。劇は玉村さんと劇作家の鈴江俊郎さんが演じ、学習会は弁護士の小出薫氏を囲んで活発な議論が交わされた。席上、玉村氏は「(テレビ局に)音声を消してもいいと言ったが、それでもダメとなった」。上映不可となったとき「くやしい、つらい」と涙を流す生徒もいたが、問題が表面化してくる中で「テレビの放映は望んではいない」「注目を浴びたので怖い」といった意見が出てきたという。会場からは「原発立地県では原発問題の演劇はできないことになってしまうのでは」と危惧する声も出た。
 伊藤洋子
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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2022年01月24日

【スポーツ】揺れるラグビー再出発=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の中で、ラグビーのジャパン・ラグビー・リーグ・ワンが、1月8日にスタートした。7日夜に東京・国立競技場で予定された開幕戦は、競技者の感染で中止され、揺れる船出となった。
  昨年までのトップリーグを衣替えして、サッカーJリーグにならった地域密着のプロ化を目指す新リーグで、トップリーグとトップチャレンジの計24チームが企業名に本拠地域名をつけて、5月まで1部から3部の王座を争う。1部は、昨年の第18回トップリーグ上位12チームで構成。2部以下は、その他の各6チーム。
  日本一を競う1部は、2組に分かれた2回戦総当たりと他組チームとの1回戦総当たり。上位4チームによるトーナメントで、頂点を決める。日本ラグビーの再出発だ。
  南半球や欧州の最高峰リーグに近づけようと、昨年のトップリーグに各国代表経験のある有力外国出身者を集めたが、継続者が多く、昨年の世界トップ国代表を含め、2019年のワールドカップ(W杯)出場者が20人そろい、国際的な質の高い争いを目指す。
  各チームが協賛、協力の企業や地域自治体との協定などにより、経営安定化と地域貢献を図るが、成功のカギは観客動員。W杯でブームを呼び、直後のリーグは、観衆1万人を超える試合が、21を数えたが、コロナ禍の昨年は1試合平均3500人程度。平均8000人が目標で、各地で大宣伝を展開しているが、コロナ禍の収束が見えず、厳しい環境にある。
 今年は、プロ野球やJリーグが正常化を目論むが、2年間の観客制限の影響で、規制が消えても、ファンが戻るかは予測できない。しかも、感染再拡大は見通しを暗くした。
 無観客や観客制限の3年目となっては、多くの競技の経営や競技者の生活に、計り知れない深刻な影響を与える。2月に開幕する北京冬季五輪も、中国の人権問題に加えて、世界的な感染再爆発に揺れている。
 年頭の危険な状況に、政府の本腰を入れた対策が急務である。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2022年01月23日

【今週の風考計】1.23─直木賞受賞の今村翔吾さんと出版界

いま大型書店に行くと、「直木賞」を受賞した今村翔吾『塞王の楯』(集英社)と米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA)が、うず高く積まれている。町の本屋さんにとっても、『鬼滅の刃』以降、本の売れ行きがパッとしなかっただけに恵みの雨だ。
 筆者も夢中になって読んだ。とりわけ『塞王の楯』は迫力満点。琵琶湖畔・大津城を舞台に、崩れない石垣を作る石工とどんな城でも落とす鉄砲づくりが、職人の意地を賭けて挑む戦国小説だ。
今村翔吾さんは1984年京都府生まれ。2017年デビューから5年足らずのうちに、ノミネート3回で受賞。「受賞の一報に号泣してしまった。しかも憧れの作家、池波正太郎先生と同い年37歳での受賞は感慨深い。これからも面白い小説を届けていく」と、語っている。

37歳の若さとは知らなかった。2020年の直木賞候補作『じんかん』(講談社)も、戦国の梟雄・松永久秀のイメージを覆す圧巻の歴史ドラマだが、そこで叙述される松永久秀の信念、その道を貫き通すには謀反も辞さず、この高邁な精神を織田信長は認めたとして展開する筆の冴えは、もう老大家の域だ。
しかも今村さんは元ダンス講師で、現在は書店経営も行う異色の作家。大阪・箕面駅近くの書店「きのしたブックセンター」の社長である。昨年4月に閉店寸前までいった書店の事業を引き継ぎ、11月にリニューアルオープンした。今村さんは「ここで100年続く書店を目指したい」と語っている。

書店をめぐる状況は深刻だ。ネットで本を買う人が増えたため、町の本屋さんに行く人が激減している。全国の書店数は2001年に2万1千店あった書店が2020年には1万1024店と半減した。
 本屋さんに来てもらおうと、店頭でイベントを開催したり陳列を工夫したり、懸命な努力が続いている。また取次からのパターン配本でなく、自らの選択による本揃えで営む「独立系書店」も増え、それぞれ健闘している。
その一つが、<Readin' Writin' BOOK STORE>(リーディン・ライティン・ブックストア)だ。2017年4月にオープンした。東京・台東区寿2丁目4−7にある。店主兼従業員の落合博さんは、1958年甲府市生まれ。毎日新聞社での論説委員(スポーツ・体育担当)を最後に退社し本屋を開業。
 昨年9月中旬、『新聞記者、本屋になる』(光文社新書)を出版した。「定年目前58歳、子どもは3歳、書店員経験0からの本屋開業記!」という帯の効果もあって、すぐに重版となった。また本屋を続けていくには「低く、長く、遠く」をモットーにしているという。

何も書店だけではない。小さな出版社も同じだ。永江朗『小さな出版社のつづけ方』(猿江商會)が、10社11人へのロングインタビューから、外からは覗い知れない「小さな出版社」の内幕に迫っていて参考になる。(2022/1/23)
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2022年01月22日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】世界のジャーナリズムの状況は

 米バイデン大統領主催する「民主主義サミット」が開催された(12/9〜20)。バイデン大統領にとっては以前からのことだが、集まった国は110カ国だった。バイデン氏は主催者であり代表格者だった。
 世界の自由な国の住民が「民主主義内の人口は前年の39%から20%に低下している」(ニューズ・ウイーク12/21)ことが明かされた。言論の自由が守られている国など少数派だ。昨年1年間で投獄されているジャーナリストが最大の293と過去最高を記録した。
 拘束ジャーナリストは中国で50人、ミャンマー26人、ヴェトナム23人、ベラッルーシー10人、エジプト。ヴェトナム、ベラルーシ(米国際NPOジャーナリスト保護委員会調べ、)。ロシアではプーチン大統領が12月下中に、スパイ意味する「外国のエージェント」という言葉をわざわざメディアに言わせる手法をとり、独立系の「メドゥーサ」などが標的になった。                         
 12/29日香港国家安全当局ネットメディア「立場新聞」編集幹部を、扇動的情報だとして逮捕、運営会社の資産6100役割0万香港ドル(日本円換算で約9億円)、凍結を余儀なくされた。「立場新聞は」6月に「りんご日報」香港国家安全維持法で廃刊に追い込まれたように、中国本土の政権はリベラル紙を徹底的に追い込みしている。「立場新聞」それぞれの立場によって、投稿を埋めていくスタイルで人気が高かった。
 ポーランドでは12/19、外国企業のメデイア所有規制を強化ことに全面的に反対するデモが全国各地で行われた。反政府的な実はポーランドのテレビ局民放TVN24の出資者である米ディスカバリー排除を狙ったものとみられる。
  国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RBF、本部パリ)は、米軍撤退後に成立したタリバン政権の下でジャーナリスト6割に当たる6200人が職を失ったと発表した。特に女性の失職は8割を超えた。昨年8/15前には新聞、テレビ、では報道機関数543社ジャーナリスト働いていた。新聞、ラジオ、テレビが国内117,900人いたが、しかし今では報道機関数312、ジャーナリスト4,360に減少した。
 隅井孝雄(ジャーナリスト)

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2022年01月21日

【焦点】五輪選手村訴訟、不当判決と高裁へ 25日に報告集会開く=橋詰雅博 

                           
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          原告団が中心の「晴海・正す会」1月17日号ニュース
 東京地裁が昨年12月23日に下した「譲渡価格は適正」という不当判決に対して五輪選手村訴訟の原告団は、25日(水)午後3時から江東区文化センターで判決内容の報告と控訴審に向けた意思統一を図る集会を開く。
 この訴訟は、東京・晴海の選手村用地を東京都がデベロッパーに投げ売り≠オたとして都民32人が小池百合子都知事らに周辺地価との差額約130億円を請求するように都に求めたものだ。
 住所側の訴えを退けた判決について、「違法性を認めず、極めて不当な判断」と批判した原告代理人は声明で問題点をこう指摘した。
 「脱法的な都市再開発制度が許されるならば、自治体の財産の直接譲渡行為では、地方自治法の規制をすり抜け、自由な価格で売却できることになり、再開発事業制度の公共性も、土地価格の公平性を担保する不動産鑑定制度も骨抜きになる」
 また都とデベロッパーとが事前に綿密な協議を行った記録を都に情報公開を求めたが、「破棄済みで公開できない」と拒否したことについて、公正であるべき行政が担保されていないと訴えた。
  報告集会に先立ち原告団と弁護団が12日行った会議では、裁判官の判断に多くの疑義が出た。
 建設工事費をわざと高くするため地下駐車場建設に関して明らかに事実誤認がある、官製談合について被告側証人の嘘と分かるような証言をもとに談合はなかったとする判断など多岐にわたっている。
 4年間審理された地裁から五輪選手村訴訟の舞台は東京高裁に移る。
 橋詰雅博
                          
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2022年01月20日

【おすすめ本】山田健太『ジャーナリズムの倫理』─いまのメディア状況を踏まえた現場と市民への教科書=福元大輔(沖縄タイムス編集委員)

 著者の研究仲間から冗談で取材を頼まれたことがある。
「山田先生は化け物だ。大学の仕事だけでも忙しいのに、新聞やテレビにコメントを出し続け、その上、本まで出版する。いつ、何をしているのか調べてほしい」
 専修大学のジャーナリズム学科で教える著者がコメントを求められる、あるいは書かなければならない事項が多岐にわたるということは、言論表現の自由やジャーナリズムが危機に瀕している証左であるといえよう。

 同時期に出版した『法とジャーナリズム』第4版(勁草書房)は言論表現の自由に関する法や制度の解説書で、それと対をなす本書を「ジャーナリズムの現場で直面するであろう数々の問題への処方箋」と位置づける。
 本書の見開き・左ページには「自主規制の意義と歴史」「編集の独立」「メディアアクセス権」「取材源の秘匿」など、基本的な事項を解説している。右ページでは具体的な事例、実態などの「資料」を掲載しており、理解を助けてくれる。
 たとえば左のページで「誤報、虚報、ねつ造」を解説。右のページでは沖縄の米軍基地に抗議する人たちが、救急車の走行を妨害したなどと報じた「ニュース女子事件」を取り上げ、番組独自の検証、放送倫理検証委員会の審査内容、テレビ局の検証と対応などの経緯を明らかにしている。
 メディアの多様化で発信する手段が増え、為政者(統治機構)がメディアを選別、排除する時代に、権力を監視し、民主主義を守るには何が必要か。ジャーナリズムの役割を認識するとともに、市民の信頼を得るための教科書のような一冊だ。(勁草書房2500円)
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2022年01月18日

【オンライン講演】ミャンマーの民主化回復のために―「2度の難民」となった私の体験 講師:ソー・ティ・ナイン(Soe Tint Nain)さん 1月29日(土)午後2時から4時まで

                            
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ソー・ティ・ナインさんは1988 年の民主化運動に参加後、タイを経て来日し、難民認定を得た。ミャンマーの民政移管に伴い、2012 年に帰国。日本とミャンマーの橋渡しを志し、JICA や日系企業の通訳・翻訳をしながら活動を広げてきた。しかし、2021年2月1日の軍事クーデター後、身の安全が脅かされ、2021年10月、再び難民として来日した。その体験を踏まえ、日本の人々にミャンマー情勢を報告し、悲願である民主化の重要性を訴える。
★コメンテーター:ジャーナリスト・竹内幸史さん(月刊『国際開発ジャーナル』編集委員)
★司会・進行:水野孝昭さん(神田外語大学教授)

参加費:500円 
参加ご希望の方はPeatixを通じてお支払いください。段取りは下記の通りです。
(1) https://jiyujinken.peatix.com/ をクリックする
(2) 参加券を求める
(3) 支払いをカードかコンビニ払いにするかなどを選ぶ
(4) 初めての方は途中、氏名、メールアドレスを入力し、独自のパスワードの設定をします。
(5) 支払いを済ませた方に講演前日・1月28日までにZoomで視聴できるURLをメールでお送りします。
◎ソー・ティ・ナインさん略歴
1969 年 ミャンマー・サガインで生まれる
1988 年 ヤンゴン工科大学在学中に⺠主化運動に参加。
1993 年 タイのバンコクに逃れ、日本の新聞社の助手として働く。
1996 年 来日
2007 年 日本政府から難民認定を受ける
2012 年 ミャンマーに帰国。会社を設立し、JICA や日系企業、世界銀行、FAOやUNEP などの国連機関の国際会議に通訳として参加。
2021年10月 再び難民として来日
写真はアウン・サン・スーチーさんとの記念撮影=2015年、ミャンマー国会で
◎竹内幸史(たけうち・ゆきふみ)さん略歴
慶大卒業後、朝日新聞社に入り、ニューデリー、バンコク特派員、編集委員などを務め、2011年に退社。米ライシャワー東アジア研究所客員研究員、東京財団アソシエイト、岐阜女子大学南アジア研究センター客員教授など経て、2014年から国際協力専門誌の月刊『国際開発ジャーナル』編集委員。主な専門分野は開発問題と南アジア・東南アジア地域研究。拓殖大学大学院国際協力学研究科講師。共著書に『脱原発の比較政治学』(法政大学出版局)、『東アジア連携の道をひらく』(花伝社)など。
◎水野孝昭(みずの・たかあき)さん略歴
神田外語大学教授(国際関係論、ジャーナリズム論)。1982年朝日新聞入社、ハノイ支局長、ワシントン特派員、ニューヨーク支局長、外報部、政治部の各デスク、論説委員を経て現職。1988年以降に来日した在日ビルマ人難民コミュニティーを取材。95年にアウサンスーチー氏とヤンゴンで会見。

  主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
      東京都千代田区神田三崎町3-10-15 富士ビル501号
      電話03・6272・9781(月水金の午後1時から6時まで対応)
      ホームページ:http://www.jcj.sakura.ne.jp/

【JCJ会員は参加費無料。onlinejcj20@gmail.com にメールでお申込みください】
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2022年01月17日

【スポーツ】オミ株感染爆発で戦々恐々=大野晃

  年明けからの新型コロナウイルス感染症の感染再拡大に、日本スポーツ界が揺れている。
昨年11月の感染激減で、年末年始の競技会の正常化を目指し、動き出した矢先の感染再拡大だから、感染力の高いオミクロン株のまん延で再び感染爆発が起こるのではないかと戦々恐々である。
  昨年12月19日のサッカー天皇杯決勝は、観客制限を撤廃し、東京・国立競技場に5万8000人近くの観衆を集め、同年のプロ競技最多観客数を記録した。 ラグビーは年が明けた1月2日の全国大学選手権準決勝で、同競技場に2万2000人を超える観衆を集めた。
 ところが3が日を過ぎると感染は急拡大し、7日の新リーグ開幕戦は競技者の感染で中止。目論見が大揺れを始めた。コロナ禍対策が後手に回った菅前政権とポーズを変えて、岸田政権は早めに手を打つが、甘い見通しで朝令暮改が連続。混乱に拍車をかけるばかり。
  欧米のパンデミックは爆発的であり、北京冬季五輪に黄信号が灯る。国際オリンピック委員会が、東京五輪同様の強引な開催に走れば、五輪そのものの存続の危機に見舞われる恐れがある。
 日本オリンピック委員会にも難問続出である。 いつもは、多くの国民に華やかで新鮮な息吹を感じさせる正月競技会だが、今年は、コロナ対策を継続しながら、国民のスポーツ離れに対し、競技団体による人気掘り起こしの積極的な訴えかけが必要になった。
 チーム経営や競技者の取り組みは限界に近い。無観客や観客制限の3年目に入ると影響の深刻さは大幅に増加する。
 マスメディアは、東京五輪の大騒ぎで国民の反発を招いたことを気にしてか、北京冬季五輪の幕開け目前とはいえ、正月は、メダル獲りの扇動を控えめに、中国の人権問題など政治的扱いを先行させていた。
 とはいえ、新春の競技会で五輪ムード高揚を狙っていただけに、国民の支持を獲得できるかの正念場だ。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2022年01月16日

【今週の風考計】1.16─「EABO」で南西諸島にもくろむ危ない日米の軍事計画

通常国会が明日17日から始まる。会期は6月15日までの150日間。コロナ変異株「オミクロン」の急拡大に、どう対応するのか論戦となる。
 政府・与党は7月10日投票の参院選をにらみ、野党の反発が強い法案は見送り、61本に絞り込んで22年度予算の早期成立を目指し、実績づくりに躍起だ。

さらに沖縄は秋まで連続する県・市の首長選挙や議会選挙など、「選挙イヤー」を迎える。その初戦となる名護市長選が16日告示され23日投票に向けて闘われる。
 与党が推薦し辺野古の米軍新基地建設を容認する現職の渡具知武豊氏と玉城デニー知事が支援し辺野古新基地建設に反対する岸本ようへい氏による一騎打ちの「天王山」の戦いとなる。
とりわけ在沖米軍基地内のコロナ感染者が急拡大し、累計6700人(1/13現在)を超える。辺野古の米軍新基地建設への怒りや疑問のみならず、「日米地位協定」の改定を求める声が噴出するのは当然だ。

政府は、ここにきて露骨な「アメと鞭」を使い分けた交付金の支給操作を繰り広げている。たとえば沖縄振興予算を前年度より約300億円も削り、10年ぶりに3千億円を下回る露骨な「玉城県政」ツブシを仕掛ける。これも9月末の沖縄県知事選挙を視野に入れての、汚い対応に他ならない。
過去にも、2010年の名護市長選で、辺野古への基地移設に反対する稲嶺進氏が当選すると、交付金の支給を止めている。そして4年ほど前の2018年4月、辺野古基地建設を容認する現職の市長が当選するや、米軍再編交付金2年分まとめて約30億円を支給した。
 以降、毎年15億円に近い交付金が支給されている。ここまで沖縄を愚弄した「金で面をひっぱたく」差別を続けるとは、怒りも極まる。

沖縄県や名護市だけではない。南西諸島に連なる鹿児島県・馬毛島や沖縄県・石垣市にも及ぶ。
 種子島の西12キロにある約8平方キロの無人島・馬毛島に、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)を移す計画および自衛隊基地整備に伴い、防衛省が米軍再編交付金を支給する計画だ。「アメと鞭」の交付金支給を餌に、反対する現在の西之表市長に受け入れを迫る。
 石垣市でも、昨年6月、平得大俣に陸上自衛隊のミサイル基地建設の容認への報償として、防衛予算からゴミ焼却施設の改修費用が支給されている。

台湾有事を視野に、日米両国は鹿児島県の大隅諸島から沖縄県の先島諸島へと連なる南西諸島に軍事網を広げるため、自衛隊と米軍の基地増強・一体化を図る「遠征前進基地作戦」(EABO)の具体化が急速に進んでいる。
 石垣島へ陸自の地対艦・地対空ミサイル両部隊を配備するだけでなく、奄美大島や宮古島にも地対艦ミサイル部隊を置く動きが強まる。今や南西諸島が米中の軍事衝突の最前線、戦場になる危険が迫っている。(2022/1/16)
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2022年01月15日

ネオ自民∴ロ新が台頭 多党制時代に移り野党再編も 元朝日記者の鮫島さんが語る=橋詰雅博

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 元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩さん(写真)が11月のJCJオンライン講演会で総選挙後の政治情勢や先行きの展望などを語った。
 10月の総選挙の結果で「ヤバイ」と思ったのは日本維新の会が公示前の11議席から41議席に増やしたことだ。国政選挙初挑戦した2012年の54議席に及ばないものの14年に獲得した議席と並んだのである。維新は衆院で野党第二党に。自民党よりも右寄りであらゆる分野で競争原理を導入する新自由主義の政党ゆえに危険だ。

一過性でない

ネオ自民≠ェ台頭した理由を鮫島さんは「行政組織や労働組合、マスコミなどの既得権益打破という明確な政策が当たっている。朝日新聞記者時代、私の取材に応じた生みの親の橋下徹は、既得権益に対し怒りと憎しみを強く抱いていた。このとんがった政策が投票率の高い高齢者寄りの政策を掲げる自民党と立憲民主党の2大政党に不満を持つ20代から40代に支持されている。地盤の大阪から全国に支持が広がっている維新の勢いは一過性ではない」と分析した。
 維新の次の狙いは野党第一党である。そのためには立民つぶし≠徹底的に行う作戦だ。立民副代表の辻元清美が落選した原因は、「辻元は何も仕事をしていない」などと維新の猛攻を受けたからである。この先の国政選挙でも立民候補者が出馬する選挙区に狙いを定め落選運動に取り込むだろう。維新の組織力は侮れない。
 「維新は野党第一党の座をつかんだ後、自民党との二大政党政治の実現を目論む。連立も否定できないが、ただ維新は(大阪維新の会含め党歴11年と短く)党内統治能力が弱い不完全な政党だ」。実力以上に議席を獲得すると制御不能に陥るかも。
 改憲勢力の維新は憲法改正論議の促進を岸田文雄政権に提示している。岸田政権も改憲に慎重な与党・公明党へのけん制にもなるので乗ってくるだろう。両党の連携は改憲に向けて弾みがつく恐れがあり要警戒だ。

麻生が牛耳る

 岸田政権は麻生太郎・自民党副総裁が牛耳る。
 「党総裁選の1回目投票で支援した岸田がトップに立ったことで麻生は自信をつけた。党閣僚人事で安倍は最側近の萩生田光一を官房長官に、総裁選で推した高市早苗を幹事長に押し込もうとしたが、実現できなかった。岸田から相談を受けた麻生が拒否したと思う。8年近い長期安倍政権の間、ガマンしてきた麻生は、これからは好きなようにやらせてもらうと思っている。安倍と麻生は盟友関係と言われるが、打算の産物。関係は軋み始めた」
 麻生の野望は同じ宏池会を源流とする岸田派と麻生派の合流により大宏池会≠結成し、キングメーカーとして君臨することだ。チャンス到来と麻生は意気込む。

立民は埋没か

 野党第一党の立民は共産党や山本太郎率いるれいわ新選組に選挙区で譲歩し、強い野党共闘を築くのが役目だ。自分の党だけ議席を増やせばいいという考えは捨てる。しかし一枚岩ではなく展望は開けず。
 来年夏の参院選挙はどうなるのか。
 「自民党は大負けせず、維新と弱者救済に徹するれいわは、それぞれ議席を伸ばす。立民は下手をすると埋没、公明、共産、国民民主は議席減か。選択的夫婦別姓制度の導入などワンイシューに賭ける新党が比例区で議席を獲得する可能性がある」
 多党制時代に移行の政治情勢下で野党再編もあり得る。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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2022年01月14日

【出版界の動き】年末年始の販売状況からトレンドを読む=出版部会

★21年11月の出版物販売金額955億円(前年比0.6%増)、書籍542億円(同11.0%増)、雑誌412億円(同10.4%減)、月刊誌344億円(同10.8%減)、週刊誌68億円(同8.1%減)。書籍の2ケタ増は、10年ぶりの改訂『総合百科事典ポプラティア第三版』(ポプラ社、全18巻セット)12万円で刊行による。21年11月までの出版物販売金額1兆1104億円(前年比0.4%減)。
★2021年の電子出版市場4889億円、22年も成長が持続。電子メディアが紙メディアと違うのは、「商品展示スペース」が不要なため、ユーザーが書店に行って探す必要はなく、容易にアクセスし購入できる。ラインアップは増える一方。しかも再販適用商品ではないので、値下げ販売ができる。
★2022年度の出版トレンドは、@埋もれていた名著の再発見と復刻が進む Aメディアミックス展開が拡大する B電子図書館の普及でコンテンツ供給が急増する C映像を活用したマーケティング活動が広がる─こうした流れが強まる。
★日販とトーハンの単体売上─日版単体は売上高2010億6500万円(前年比3.5%増)、営業利益4億3700万円、純利益3億4800万円と黒字転換。トーハン単体は売上高1994億9800万円(同10.1%増)、営業利益5億200万円、純利益2億7100万円(同70.6 %減)。両社とも取次事業が黒字化して入るが、グループ書店が苦戦しているのは明白。
★紀伊國屋書店の単体売上高978億9000万円(前年比0.3%減)、営業利益7億7300万円(同3.8%増)、純利益6億8800万円(同15.9%増)の14年連続黒字決算。
★有隣堂の売上高668億6600万円(前年比29.8%増)、営業利益8億4500万円(同228.1%増)、純利益3億7400万円と増収増益で、書籍や雑誌などの13部門中、11部門で前年実績を上回り、過去最高の売上高。
★CCCは2020年度の出版物販売金額1427億円の過去最高。店舗数1060店。だがCCCのフランチャイズのトップカルチャーは売上高264億700万円(前年比12.3%減)、純損失19億3900万円(前期は3億7100万円の純利益)。蔦屋書店の事業売上高257億2700万円(同12.7%減)。
 出版部会
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2022年01月13日

【おすすめ本】合田 寛『パンデミックと財政の大転換   GAFA支配と租税国家の危機をこえて』─4つの危機に立ち向かう財政大転換への処方箋を提示=竹信三恵子(和光大学名誉教授)

コロナ禍は、働き手や医療への公的支えの手薄さを、改めて照らし出した。一方で企業の内部留保は膨らみ、資産という「溜め」がある人々との格差は拡大の一途だ。
 本書は、このような貧困と極端な不平等という危機、その修復のためにあわてて出動された財政と金融の危機、パンデミックによる公衆衛生と医療の危機、気候変動と地球温暖化の危機という4つの危機を挙げ、これに立ち向かう財政大転換の必要性を、事実に即して丹念に説き明かす。

 背景にあるのは、すべての事物を企業利益の手段として食い尽くしていく新自由主義の拡大だ。そんな中で、人々の生活を支える財政は、節約すべき無駄として「緊縮」 の対象になってきた。
 こうして企業や富裕層に蓄積された富は、大規模な税逃れの「タックスヘイブン」へ流入し、生活者へは還元されない。
 本書はこうした構造に触れつつも、怒り嘆くだけではない。すでに始まっている国際的な反転の取り組みを紹介し、具体的な処方箋を提示しているからだ。

 たとえば、気候変動を引き起こす野放図な経済活動に対し、政府が規制力を取りもどす「グリーン・ニューディール」政策は、そのひとつだ。
 また「デジタル革命」 による企業の新しい寡占化と徴税難に対し、国際的なデジタル課税の動きも進んでいる。
 巨大企業や富裕層の応分の負担を回復するための税制改革の様々な手法も提案されている。
 無力感に陥る前に、私たちがすべきことはたくさんある。そしてそれはすでに始まっている。本書は、そんな展望と自信を与えてくれる「格差時代の必読書」である。(新日本出版社2000円)
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