2022年01月24日

【スポーツ】揺れるラグビー再出発=大野晃

 新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の中で、ラグビーのジャパン・ラグビー・リーグ・ワンが、1月8日にスタートした。7日夜に東京・国立競技場で予定された開幕戦は、競技者の感染で中止され、揺れる船出となった。
  昨年までのトップリーグを衣替えして、サッカーJリーグにならった地域密着のプロ化を目指す新リーグで、トップリーグとトップチャレンジの計24チームが企業名に本拠地域名をつけて、5月まで1部から3部の王座を争う。1部は、昨年の第18回トップリーグ上位12チームで構成。2部以下は、その他の各6チーム。
  日本一を競う1部は、2組に分かれた2回戦総当たりと他組チームとの1回戦総当たり。上位4チームによるトーナメントで、頂点を決める。日本ラグビーの再出発だ。
  南半球や欧州の最高峰リーグに近づけようと、昨年のトップリーグに各国代表経験のある有力外国出身者を集めたが、継続者が多く、昨年の世界トップ国代表を含め、2019年のワールドカップ(W杯)出場者が20人そろい、国際的な質の高い争いを目指す。
  各チームが協賛、協力の企業や地域自治体との協定などにより、経営安定化と地域貢献を図るが、成功のカギは観客動員。W杯でブームを呼び、直後のリーグは、観衆1万人を超える試合が、21を数えたが、コロナ禍の昨年は1試合平均3500人程度。平均8000人が目標で、各地で大宣伝を展開しているが、コロナ禍の収束が見えず、厳しい環境にある。
 今年は、プロ野球やJリーグが正常化を目論むが、2年間の観客制限の影響で、規制が消えても、ファンが戻るかは予測できない。しかも、感染再拡大は見通しを暗くした。
 無観客や観客制限の3年目となっては、多くの競技の経営や競技者の生活に、計り知れない深刻な影響を与える。2月に開幕する北京冬季五輪も、中国の人権問題に加えて、世界的な感染再爆発に揺れている。
 年頭の危険な状況に、政府の本腰を入れた対策が急務である。
大野晃(スポーツジャーナリスト)
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2022年01月23日

【今週の風考計】1.23─直木賞受賞の今村翔吾さんと出版界

いま大型書店に行くと、「直木賞」を受賞した今村翔吾『塞王の楯』(集英社)と米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA)が、うず高く積まれている。町の本屋さんにとっても、『鬼滅の刃』以降、本の売れ行きがパッとしなかっただけに恵みの雨だ。
 筆者も夢中になって読んだ。とりわけ『塞王の楯』は迫力満点。琵琶湖畔・大津城を舞台に、崩れない石垣を作る石工とどんな城でも落とす鉄砲づくりが、職人の意地を賭けて挑む戦国小説だ。
今村翔吾さんは1984年京都府生まれ。2017年デビューから5年足らずのうちに、ノミネート3回で受賞。「受賞の一報に号泣してしまった。しかも憧れの作家、池波正太郎先生と同い年37歳での受賞は感慨深い。これからも面白い小説を届けていく」と、語っている。

37歳の若さとは知らなかった。2020年の直木賞候補作『じんかん』(講談社)も、戦国の梟雄・松永久秀のイメージを覆す圧巻の歴史ドラマだが、そこで叙述される松永久秀の信念、その道を貫き通すには謀反も辞さず、この高邁な精神を織田信長は認めたとして展開する筆の冴えは、もう老大家の域だ。
しかも今村さんは元ダンス講師で、現在は書店経営も行う異色の作家。大阪・箕面駅近くの書店「きのしたブックセンター」の社長である。昨年4月に閉店寸前までいった書店の事業を引き継ぎ、11月にリニューアルオープンした。今村さんは「ここで100年続く書店を目指したい」と語っている。

書店をめぐる状況は深刻だ。ネットで本を買う人が増えたため、町の本屋さんに行く人が激減している。全国の書店数は2001年に2万1千店あった書店が2020年には1万1024店と半減した。
 本屋さんに来てもらおうと、店頭でイベントを開催したり陳列を工夫したり、懸命な努力が続いている。また取次からのパターン配本でなく、自らの選択による本揃えで営む「独立系書店」も増え、それぞれ健闘している。
その一つが、<Readin' Writin' BOOK STORE>(リーディン・ライティン・ブックストア)だ。2017年4月にオープンした。東京・台東区寿2丁目4−7にある。店主兼従業員の落合博さんは、1958年甲府市生まれ。毎日新聞社での論説委員(スポーツ・体育担当)を最後に退社し本屋を開業。
 昨年9月中旬、『新聞記者、本屋になる』(光文社新書)を出版した。「定年目前58歳、子どもは3歳、書店員経験0からの本屋開業記!」という帯の効果もあって、すぐに重版となった。また本屋を続けていくには「低く、長く、遠く」をモットーにしているという。

何も書店だけではない。小さな出版社も同じだ。永江朗『小さな出版社のつづけ方』(猿江商會)が、10社11人へのロングインタビューから、外からは覗い知れない「小さな出版社」の内幕に迫っていて参考になる。(2022/1/23)
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2022年01月22日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】世界のジャーナリズムの状況は

 米バイデン大統領主催する「民主主義サミット」が開催された(12/9〜20)。バイデン大統領にとっては以前からのことだが、集まった国は110カ国だった。バイデン氏は主催者であり代表格者だった。
 世界の自由な国の住民が「民主主義内の人口は前年の39%から20%に低下している」(ニューズ・ウイーク12/21)ことが明かされた。言論の自由が守られている国など少数派だ。昨年1年間で投獄されているジャーナリストが最大の293と過去最高を記録した。
 拘束ジャーナリストは中国で50人、ミャンマー26人、ヴェトナム23人、ベラッルーシー10人、エジプト。ヴェトナム、ベラルーシ(米国際NPOジャーナリスト保護委員会調べ、)。ロシアではプーチン大統領が12月下中に、スパイ意味する「外国のエージェント」という言葉をわざわざメディアに言わせる手法をとり、独立系の「メドゥーサ」などが標的になった。                         
 12/29日香港国家安全当局ネットメディア「立場新聞」編集幹部を、扇動的情報だとして逮捕、運営会社の資産6100役割0万香港ドル(日本円換算で約9億円)、凍結を余儀なくされた。「立場新聞は」6月に「りんご日報」香港国家安全維持法で廃刊に追い込まれたように、中国本土の政権はリベラル紙を徹底的に追い込みしている。「立場新聞」それぞれの立場によって、投稿を埋めていくスタイルで人気が高かった。
 ポーランドでは12/19、外国企業のメデイア所有規制を強化ことに全面的に反対するデモが全国各地で行われた。反政府的な実はポーランドのテレビ局民放TVN24の出資者である米ディスカバリー排除を狙ったものとみられる。
  国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RBF、本部パリ)は、米軍撤退後に成立したタリバン政権の下でジャーナリスト6割に当たる6200人が職を失ったと発表した。特に女性の失職は8割を超えた。昨年8/15前には新聞、テレビ、では報道機関数543社ジャーナリスト働いていた。新聞、ラジオ、テレビが国内117,900人いたが、しかし今では報道機関数312、ジャーナリスト4,360に減少した。
 隅井孝雄(ジャーナリスト)

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2022年01月21日

【焦点】五輪選手村訴訟、不当判決と高裁へ 25日に報告集会開く=橋詰雅博 

                           
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          原告団が中心の「晴海・正す会」1月17日号ニュース
 東京地裁が昨年12月23日に下した「譲渡価格は適正」という不当判決に対して五輪選手村訴訟の原告団は、25日(水)午後3時から江東区文化センターで判決内容の報告と控訴審に向けた意思統一を図る集会を開く。
 この訴訟は、東京・晴海の選手村用地を東京都がデベロッパーに投げ売り≠オたとして都民32人が小池百合子都知事らに周辺地価との差額約130億円を請求するように都に求めたものだ。
 住所側の訴えを退けた判決について、「違法性を認めず、極めて不当な判断」と批判した原告代理人は声明で問題点をこう指摘した。
 「脱法的な都市再開発制度が許されるならば、自治体の財産の直接譲渡行為では、地方自治法の規制をすり抜け、自由な価格で売却できることになり、再開発事業制度の公共性も、土地価格の公平性を担保する不動産鑑定制度も骨抜きになる」
 また都とデベロッパーとが事前に綿密な協議を行った記録を都に情報公開を求めたが、「破棄済みで公開できない」と拒否したことについて、公正であるべき行政が担保されていないと訴えた。
  報告集会に先立ち原告団と弁護団が12日行った会議では、裁判官の判断に多くの疑義が出た。
 建設工事費をわざと高くするため地下駐車場建設に関して明らかに事実誤認がある、官製談合について被告側証人の嘘と分かるような証言をもとに談合はなかったとする判断など多岐にわたっている。
 4年間審理された地裁から五輪選手村訴訟の舞台は東京高裁に移る。
 橋詰雅博
                          
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2022年01月20日

【おすすめ本】山田健太『ジャーナリズムの倫理』─いまのメディア状況を踏まえた現場と市民への教科書=福元大輔(沖縄タイムス編集委員)

 著者の研究仲間から冗談で取材を頼まれたことがある。
「山田先生は化け物だ。大学の仕事だけでも忙しいのに、新聞やテレビにコメントを出し続け、その上、本まで出版する。いつ、何をしているのか調べてほしい」
 専修大学のジャーナリズム学科で教える著者がコメントを求められる、あるいは書かなければならない事項が多岐にわたるということは、言論表現の自由やジャーナリズムが危機に瀕している証左であるといえよう。

 同時期に出版した『法とジャーナリズム』第4版(勁草書房)は言論表現の自由に関する法や制度の解説書で、それと対をなす本書を「ジャーナリズムの現場で直面するであろう数々の問題への処方箋」と位置づける。
 本書の見開き・左ページには「自主規制の意義と歴史」「編集の独立」「メディアアクセス権」「取材源の秘匿」など、基本的な事項を解説している。右ページでは具体的な事例、実態などの「資料」を掲載しており、理解を助けてくれる。
 たとえば左のページで「誤報、虚報、ねつ造」を解説。右のページでは沖縄の米軍基地に抗議する人たちが、救急車の走行を妨害したなどと報じた「ニュース女子事件」を取り上げ、番組独自の検証、放送倫理検証委員会の審査内容、テレビ局の検証と対応などの経緯を明らかにしている。
 メディアの多様化で発信する手段が増え、為政者(統治機構)がメディアを選別、排除する時代に、権力を監視し、民主主義を守るには何が必要か。ジャーナリズムの役割を認識するとともに、市民の信頼を得るための教科書のような一冊だ。(勁草書房2500円)
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2022年01月18日

【オンライン講演】ミャンマーの民主化回復のために―「2度の難民」となった私の体験 講師:ソー・ティ・ナイン(Soe Tint Nain)さん 1月29日(土)午後2時から4時まで

                            
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ソー・ティ・ナインさんは1988 年の民主化運動に参加後、タイを経て来日し、難民認定を得た。ミャンマーの民政移管に伴い、2012 年に帰国。日本とミャンマーの橋渡しを志し、JICA や日系企業の通訳・翻訳をしながら活動を広げてきた。しかし、2021年2月1日の軍事クーデター後、身の安全が脅かされ、2021年10月、再び難民として来日した。その体験を踏まえ、日本の人々にミャンマー情勢を報告し、悲願である民主化の重要性を訴える。
★コメンテーター:ジャーナリスト・竹内幸史さん(月刊『国際開発ジャーナル』編集委員)
★司会・進行:水野孝昭さん(神田外語大学教授)

参加費:500円 
参加ご希望の方はPeatixを通じてお支払いください。段取りは下記の通りです。
(1) https://jiyujinken.peatix.com/ をクリックする
(2) 参加券を求める
(3) 支払いをカードかコンビニ払いにするかなどを選ぶ
(4) 初めての方は途中、氏名、メールアドレスを入力し、独自のパスワードの設定をします。
(5) 支払いを済ませた方に講演前日・1月28日までにZoomで視聴できるURLをメールでお送りします。
◎ソー・ティ・ナインさん略歴
1969 年 ミャンマー・サガインで生まれる
1988 年 ヤンゴン工科大学在学中に⺠主化運動に参加。
1993 年 タイのバンコクに逃れ、日本の新聞社の助手として働く。
1996 年 来日
2007 年 日本政府から難民認定を受ける
2012 年 ミャンマーに帰国。会社を設立し、JICA や日系企業、世界銀行、FAOやUNEP などの国連機関の国際会議に通訳として参加。
2021年10月 再び難民として来日
写真はアウン・サン・スーチーさんとの記念撮影=2015年、ミャンマー国会で
◎竹内幸史(たけうち・ゆきふみ)さん略歴
慶大卒業後、朝日新聞社に入り、ニューデリー、バンコク特派員、編集委員などを務め、2011年に退社。米ライシャワー東アジア研究所客員研究員、東京財団アソシエイト、岐阜女子大学南アジア研究センター客員教授など経て、2014年から国際協力専門誌の月刊『国際開発ジャーナル』編集委員。主な専門分野は開発問題と南アジア・東南アジア地域研究。拓殖大学大学院国際協力学研究科講師。共著書に『脱原発の比較政治学』(法政大学出版局)、『東アジア連携の道をひらく』(花伝社)など。
◎水野孝昭(みずの・たかあき)さん略歴
神田外語大学教授(国際関係論、ジャーナリズム論)。1982年朝日新聞入社、ハノイ支局長、ワシントン特派員、ニューヨーク支局長、外報部、政治部の各デスク、論説委員を経て現職。1988年以降に来日した在日ビルマ人難民コミュニティーを取材。95年にアウサンスーチー氏とヤンゴンで会見。

  主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
      東京都千代田区神田三崎町3-10-15 富士ビル501号
      電話03・6272・9781(月水金の午後1時から6時まで対応)
      ホームページ:http://www.jcj.sakura.ne.jp/

【JCJ会員は参加費無料。onlinejcj20@gmail.com にメールでお申込みください】
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2022年01月17日

【スポーツ】オミ株感染爆発で戦々恐々=大野晃

  年明けからの新型コロナウイルス感染症の感染再拡大に、日本スポーツ界が揺れている。
昨年11月の感染激減で、年末年始の競技会の正常化を目指し、動き出した矢先の感染再拡大だから、感染力の高いオミクロン株のまん延で再び感染爆発が起こるのではないかと戦々恐々である。
  昨年12月19日のサッカー天皇杯決勝は、観客制限を撤廃し、東京・国立競技場に5万8000人近くの観衆を集め、同年のプロ競技最多観客数を記録した。 ラグビーは年が明けた1月2日の全国大学選手権準決勝で、同競技場に2万2000人を超える観衆を集めた。
 ところが3が日を過ぎると感染は急拡大し、7日の新リーグ開幕戦は競技者の感染で中止。目論見が大揺れを始めた。コロナ禍対策が後手に回った菅前政権とポーズを変えて、岸田政権は早めに手を打つが、甘い見通しで朝令暮改が連続。混乱に拍車をかけるばかり。
  欧米のパンデミックは爆発的であり、北京冬季五輪に黄信号が灯る。国際オリンピック委員会が、東京五輪同様の強引な開催に走れば、五輪そのものの存続の危機に見舞われる恐れがある。
 日本オリンピック委員会にも難問続出である。 いつもは、多くの国民に華やかで新鮮な息吹を感じさせる正月競技会だが、今年は、コロナ対策を継続しながら、国民のスポーツ離れに対し、競技団体による人気掘り起こしの積極的な訴えかけが必要になった。
 チーム経営や競技者の取り組みは限界に近い。無観客や観客制限の3年目に入ると影響の深刻さは大幅に増加する。
 マスメディアは、東京五輪の大騒ぎで国民の反発を招いたことを気にしてか、北京冬季五輪の幕開け目前とはいえ、正月は、メダル獲りの扇動を控えめに、中国の人権問題など政治的扱いを先行させていた。
 とはいえ、新春の競技会で五輪ムード高揚を狙っていただけに、国民の支持を獲得できるかの正念場だ。
 大野晃(スポーツジャーナリスト)

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2022年01月16日

【今週の風考計】1.16─「EABO」で南西諸島にもくろむ危ない日米の軍事計画

通常国会が明日17日から始まる。会期は6月15日までの150日間。コロナ変異株「オミクロン」の急拡大に、どう対応するのか論戦となる。
 政府・与党は7月10日投票の参院選をにらみ、野党の反発が強い法案は見送り、61本に絞り込んで22年度予算の早期成立を目指し、実績づくりに躍起だ。

さらに沖縄は秋まで連続する県・市の首長選挙や議会選挙など、「選挙イヤー」を迎える。その初戦となる名護市長選が16日告示され23日投票に向けて闘われる。
 与党が推薦し辺野古の米軍新基地建設を容認する現職の渡具知武豊氏と玉城デニー知事が支援し辺野古新基地建設に反対する岸本ようへい氏による一騎打ちの「天王山」の戦いとなる。
とりわけ在沖米軍基地内のコロナ感染者が急拡大し、累計6700人(1/13現在)を超える。辺野古の米軍新基地建設への怒りや疑問のみならず、「日米地位協定」の改定を求める声が噴出するのは当然だ。

政府は、ここにきて露骨な「アメと鞭」を使い分けた交付金の支給操作を繰り広げている。たとえば沖縄振興予算を前年度より約300億円も削り、10年ぶりに3千億円を下回る露骨な「玉城県政」ツブシを仕掛ける。これも9月末の沖縄県知事選挙を視野に入れての、汚い対応に他ならない。
過去にも、2010年の名護市長選で、辺野古への基地移設に反対する稲嶺進氏が当選すると、交付金の支給を止めている。そして4年ほど前の2018年4月、辺野古基地建設を容認する現職の市長が当選するや、米軍再編交付金2年分まとめて約30億円を支給した。
 以降、毎年15億円に近い交付金が支給されている。ここまで沖縄を愚弄した「金で面をひっぱたく」差別を続けるとは、怒りも極まる。

沖縄県や名護市だけではない。南西諸島に連なる鹿児島県・馬毛島や沖縄県・石垣市にも及ぶ。
 種子島の西12キロにある約8平方キロの無人島・馬毛島に、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)を移す計画および自衛隊基地整備に伴い、防衛省が米軍再編交付金を支給する計画だ。「アメと鞭」の交付金支給を餌に、反対する現在の西之表市長に受け入れを迫る。
 石垣市でも、昨年6月、平得大俣に陸上自衛隊のミサイル基地建設の容認への報償として、防衛予算からゴミ焼却施設の改修費用が支給されている。

台湾有事を視野に、日米両国は鹿児島県の大隅諸島から沖縄県の先島諸島へと連なる南西諸島に軍事網を広げるため、自衛隊と米軍の基地増強・一体化を図る「遠征前進基地作戦」(EABO)の具体化が急速に進んでいる。
 石垣島へ陸自の地対艦・地対空ミサイル両部隊を配備するだけでなく、奄美大島や宮古島にも地対艦ミサイル部隊を置く動きが強まる。今や南西諸島が米中の軍事衝突の最前線、戦場になる危険が迫っている。(2022/1/16)
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2022年01月15日

ネオ自民∴ロ新が台頭 多党制時代に移り野党再編も 元朝日記者の鮫島さんが語る=橋詰雅博

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 元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩さん(写真)が11月のJCJオンライン講演会で総選挙後の政治情勢や先行きの展望などを語った。
 10月の総選挙の結果で「ヤバイ」と思ったのは日本維新の会が公示前の11議席から41議席に増やしたことだ。国政選挙初挑戦した2012年の54議席に及ばないものの14年に獲得した議席と並んだのである。維新は衆院で野党第二党に。自民党よりも右寄りであらゆる分野で競争原理を導入する新自由主義の政党ゆえに危険だ。

一過性でない

ネオ自民≠ェ台頭した理由を鮫島さんは「行政組織や労働組合、マスコミなどの既得権益打破という明確な政策が当たっている。朝日新聞記者時代、私の取材に応じた生みの親の橋下徹は、既得権益に対し怒りと憎しみを強く抱いていた。このとんがった政策が投票率の高い高齢者寄りの政策を掲げる自民党と立憲民主党の2大政党に不満を持つ20代から40代に支持されている。地盤の大阪から全国に支持が広がっている維新の勢いは一過性ではない」と分析した。
 維新の次の狙いは野党第一党である。そのためには立民つぶし≠徹底的に行う作戦だ。立民副代表の辻元清美が落選した原因は、「辻元は何も仕事をしていない」などと維新の猛攻を受けたからである。この先の国政選挙でも立民候補者が出馬する選挙区に狙いを定め落選運動に取り込むだろう。維新の組織力は侮れない。
 「維新は野党第一党の座をつかんだ後、自民党との二大政党政治の実現を目論む。連立も否定できないが、ただ維新は(大阪維新の会含め党歴11年と短く)党内統治能力が弱い不完全な政党だ」。実力以上に議席を獲得すると制御不能に陥るかも。
 改憲勢力の維新は憲法改正論議の促進を岸田文雄政権に提示している。岸田政権も改憲に慎重な与党・公明党へのけん制にもなるので乗ってくるだろう。両党の連携は改憲に向けて弾みがつく恐れがあり要警戒だ。

麻生が牛耳る

 岸田政権は麻生太郎・自民党副総裁が牛耳る。
 「党総裁選の1回目投票で支援した岸田がトップに立ったことで麻生は自信をつけた。党閣僚人事で安倍は最側近の萩生田光一を官房長官に、総裁選で推した高市早苗を幹事長に押し込もうとしたが、実現できなかった。岸田から相談を受けた麻生が拒否したと思う。8年近い長期安倍政権の間、ガマンしてきた麻生は、これからは好きなようにやらせてもらうと思っている。安倍と麻生は盟友関係と言われるが、打算の産物。関係は軋み始めた」
 麻生の野望は同じ宏池会を源流とする岸田派と麻生派の合流により大宏池会≠結成し、キングメーカーとして君臨することだ。チャンス到来と麻生は意気込む。

立民は埋没か

 野党第一党の立民は共産党や山本太郎率いるれいわ新選組に選挙区で譲歩し、強い野党共闘を築くのが役目だ。自分の党だけ議席を増やせばいいという考えは捨てる。しかし一枚岩ではなく展望は開けず。
 来年夏の参院選挙はどうなるのか。
 「自民党は大負けせず、維新と弱者救済に徹するれいわは、それぞれ議席を伸ばす。立民は下手をすると埋没、公明、共産、国民民主は議席減か。選択的夫婦別姓制度の導入などワンイシューに賭ける新党が比例区で議席を獲得する可能性がある」
 多党制時代に移行の政治情勢下で野党再編もあり得る。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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2022年01月14日

【出版界の動き】年末年始の販売状況からトレンドを読む=出版部会

★21年11月の出版物販売金額955億円(前年比0.6%増)、書籍542億円(同11.0%増)、雑誌412億円(同10.4%減)、月刊誌344億円(同10.8%減)、週刊誌68億円(同8.1%減)。書籍の2ケタ増は、10年ぶりの改訂『総合百科事典ポプラティア第三版』(ポプラ社、全18巻セット)12万円で刊行による。21年11月までの出版物販売金額1兆1104億円(前年比0.4%減)。
★2021年の電子出版市場4889億円、22年も成長が持続。電子メディアが紙メディアと違うのは、「商品展示スペース」が不要なため、ユーザーが書店に行って探す必要はなく、容易にアクセスし購入できる。ラインアップは増える一方。しかも再販適用商品ではないので、値下げ販売ができる。
★2022年度の出版トレンドは、@埋もれていた名著の再発見と復刻が進む Aメディアミックス展開が拡大する B電子図書館の普及でコンテンツ供給が急増する C映像を活用したマーケティング活動が広がる─こうした流れが強まる。
★日販とトーハンの単体売上─日版単体は売上高2010億6500万円(前年比3.5%増)、営業利益4億3700万円、純利益3億4800万円と黒字転換。トーハン単体は売上高1994億9800万円(同10.1%増)、営業利益5億200万円、純利益2億7100万円(同70.6 %減)。両社とも取次事業が黒字化して入るが、グループ書店が苦戦しているのは明白。
★紀伊國屋書店の単体売上高978億9000万円(前年比0.3%減)、営業利益7億7300万円(同3.8%増)、純利益6億8800万円(同15.9%増)の14年連続黒字決算。
★有隣堂の売上高668億6600万円(前年比29.8%増)、営業利益8億4500万円(同228.1%増)、純利益3億7400万円と増収増益で、書籍や雑誌などの13部門中、11部門で前年実績を上回り、過去最高の売上高。
★CCCは2020年度の出版物販売金額1427億円の過去最高。店舗数1060店。だがCCCのフランチャイズのトップカルチャーは売上高264億700万円(前年比12.3%減)、純損失19億3900万円(前期は3億7100万円の純利益)。蔦屋書店の事業売上高257億2700万円(同12.7%減)。
 出版部会
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2022年01月13日

【おすすめ本】合田 寛『パンデミックと財政の大転換   GAFA支配と租税国家の危機をこえて』─4つの危機に立ち向かう財政大転換への処方箋を提示=竹信三恵子(和光大学名誉教授)

コロナ禍は、働き手や医療への公的支えの手薄さを、改めて照らし出した。一方で企業の内部留保は膨らみ、資産という「溜め」がある人々との格差は拡大の一途だ。
 本書は、このような貧困と極端な不平等という危機、その修復のためにあわてて出動された財政と金融の危機、パンデミックによる公衆衛生と医療の危機、気候変動と地球温暖化の危機という4つの危機を挙げ、これに立ち向かう財政大転換の必要性を、事実に即して丹念に説き明かす。

 背景にあるのは、すべての事物を企業利益の手段として食い尽くしていく新自由主義の拡大だ。そんな中で、人々の生活を支える財政は、節約すべき無駄として「緊縮」 の対象になってきた。
 こうして企業や富裕層に蓄積された富は、大規模な税逃れの「タックスヘイブン」へ流入し、生活者へは還元されない。
 本書はこうした構造に触れつつも、怒り嘆くだけではない。すでに始まっている国際的な反転の取り組みを紹介し、具体的な処方箋を提示しているからだ。

 たとえば、気候変動を引き起こす野放図な経済活動に対し、政府が規制力を取りもどす「グリーン・ニューディール」政策は、そのひとつだ。
 また「デジタル革命」 による企業の新しい寡占化と徴税難に対し、国際的なデジタル課税の動きも進んでいる。
 巨大企業や富裕層の応分の負担を回復するための税制改革の様々な手法も提案されている。
 無力感に陥る前に、私たちがすべきことはたくさんある。そしてそれはすでに始まっている。本書は、そんな展望と自信を与えてくれる「格差時代の必読書」である。(新日本出版社2000円)
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2022年01月11日

「市長裁量」で大阪市の財産の流出 高校移転問題 住民訴訟勝利で阻止を=幸田泉

 大阪市では、2022年4月1日に市立の高校が大阪府に移管され、府立高校になることが決まっている。これについて、21年10月7日、大阪地裁に「差し止め」を求める住民訴訟が提訴された。筆者も原告の1人である。住民訴訟は通常、1審判決が出るまでに2、3年かかるが、原告側からは「移管前に判決を」と求めていた。同年11月15日の第1回口頭弁論で森鍵一裁判長は「差し止め請求なので裁判所の職責として年度内に判決を出す」と明言。異例のスピード審理で22年1月末に結審し、2〜3月に判決言い渡しが行われる。

■大財産を無償譲渡
 大阪市立の高校は現在21校。22年4月時点では統廃合の関係で22校となる。住民訴訟で問題にしているのは、高校の土地、建物、備品等が大阪府に「無償譲渡」されることだ。これら不動産に高校施設としての使用に限るという用途指定はない。大阪府が大阪市から「ただでもらった高校」を廃校にして売却すれば、売上金は大阪府の収入になるのだ。
大阪府は府立学校条例で「3年連続で定員割れしている高校は再編整備の対象とする」と規定している。大阪市から移管された高校は府の「3年ルール」に基づき、次々に廃校になって「現金化」されるのは容易に想像がつく。
大阪市公有財産台帳で、市立の高校の土地、建物の総額は約1500億円。しかも、1500億円は台帳価格であり、市場価格は倍ぐらいだとも言われる。だとすると、31年に開業する「なにわ筋線」、大阪市内の中心部を走る鉄道新路線の事業費3300億円に匹敵する。この巨額財産が経費ゼロで転がり込んでくるのだから、大阪府は濡れ手で粟なのである。
 生徒数の減少で、大阪市も市立高校の再編整備を進めており、現時点で三つの工業高校は近く一つにすることが決まっている。これら3工業高も大阪府に無償譲渡するのだから、「処分OK」の許可証を付けて不動産をプレゼントするようなものだ。

■「府市一体」の美名
 この高校移管、不動産の無償譲渡は、松井一郎・大阪市長と吉村洋文・大阪府知事の意向で決まった。松井市長は「大阪維新の会」の前代表、吉村知事は現・代表。維新政治家として親分と子分の関係にある2人の間で、「大阪市の財産と権限を大阪府に移し替える」という政治目的のために教育機関まで巻き込んだのだ。
 維新は10年前に大阪府市両首長ポストを抑えてから、「大阪都構想」という看板で大阪市廃止に向け突き進んできた。大阪市廃止は住民投票で2度も否決されたので棚上げし、大阪市の都市計画権限を大阪府に「委託」する条例を作ったり、高校のような大規模不動産を大阪府に無償譲渡したりするなど、大阪都構想をパーツごとに分割実施しようとしている。
 維新の目的は大阪市という大都市の行政を大阪府が握ることにある。大阪府議会は維新会派が過半数を抑えているので、数の力で何でも決められるからだ。地方分権の流れに逆行する先祖返りの方針を、松井市長と吉村知事は「二重行政の解消」「府市一体化」という言葉で粉飾しているに過ぎない。

■市長の裁量で画策
 台帳価格で1500億円の大阪市の財産を手放すのに、市議会は関与していない。高校移管は府市両議会で議決したが、不動産の無償譲渡は大阪市財産条例の適用による「市長の裁量」で行われようとしている。この方法がまかり通るなら、松井市長は今後も大阪市の巨額財産をどんどん大阪府に無償譲渡するはずだ。大阪市の財産流出を食い止めるためにも、住民訴訟で原告は何としても勝たねばならない。この高校無償譲渡のやり方が「違法」と判決で認定されれば、現在の市長独裁にくさびを打ち込むことになる。
 幸田泉(ジャーナリスト)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号

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2022年01月10日

【フォトアングル】玉城沖縄県知事を支援する「ブル―アクション」実行=酒井憲太郎

                            
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11月25日に玉城デニー沖縄県知事は辺野古新基地の埋め立て工事設計変更承認申請を「不承認」と発表した。知事の「不承認」を支持し、アピールしましょう、とオール沖縄会議は毎月第1土曜日にブルーアクションを行なうと発表した。これに呼応して、沖縄の「ブルーアクション」と同じ時間に、ブルーの服やスカーフを身につけるアピールが東京でも取り組まれた。主催は沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックで100数十名が参加した.。4日、東京・新宿南口、酒井憲太郎撮影
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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2022年01月09日

【今週の風考計】1.9─コロナ「第6波」と米軍基地そして日米地位協定

★コロナ感染拡大は「第6波」に突入した。今日から沖縄・山口・広島の3県に、「まん延防止・重点措置」が、31日まで適用される。
 沖縄県では6日の1日だけで、コロナ新規感染者が981人。昨年12月12日〜18日の1週間を累計した新規感染者は27人、この数字を見ても急拡大の恐ろしさは桁はずれだ。
★沖縄にある米軍基地で発生した昨年12月末のクラスター(感染者集団)は、1月6日現在、合計4027人に達した。米国でクリスマスを過ごし、沖縄の9基地に帰ってきた海兵隊員は、PCR検査もないまま、マスクもつけず基地外に出て飲食を続けてきた。
 沖縄県民の新規感染も、この米軍基地からの「染み出し」感染によるとみられ、基地周辺の住民からは怒りの声が噴出している。

★この事態は、沖縄だけでなく日本全国の米軍基地周辺で広がる。6日までの米軍基地内の感染者は、山口県・岩国基地で529人、静岡県・御殿場の「キャンプ富士」46人。神奈川県の横須賀基地213人、東京都・横田基地85人、青森県・三沢基地133人、ここからの「染み出し」感染が、「第6波」に拍車をかけている。
★これまで米兵や軍関係者には、日本での検疫が免除されていた。まさに「穴の開いたバケツ」状態で入国し、在日米軍基地に着任していたのだ。
 昨年末になってやっと、日本政府の申し入れにより、米軍は日本到着後24時間以内のPCR検査を実施するようになった。

★こうした事態を招いたのも「日米地位協定」があるからだ。在日米軍に対しては、日本の国内法が適用されず、警察の捜査や裁判権が及ばない特権を保障している。1960年に制定されたまま、以来62年間、改定されていない。
 米軍は世界中の80カ国に800カ所を超える軍事基地を持つが、ドイツ・イタリア・ベルギー・イギリスなどの国々は、米軍基地に対して国内法を適用させている。日本だけが唯一、国内法の適用外とは、あまりにも日本の主権を疎かにしてはいないか。
★いまから18年前、日本の全国市長会が<日米地位協定の見直しに関する要望書>を国へ提出している。沖縄県もドイツやイタリアに調査団を派遣し、「日米地位協定」の不平等性を告発し、見直しを強く求めている。

★「日米地位協定」に基づき設置されている日米合同委員会もクセモノだ。日米幹部が米軍や基地の具体的な運用を図るため、実務者協議を隔週で行っている。
 そこでの合意事項は日米双方に拘束力をもつが、協議の内容は非公開、国会への報告義務もない。国民の知らない密約が数多く結ばれているといわれる。
★まさに「日米地位協定が憲法の上にあって、日米合同委員会が国会の上にある」のが実態だ。その実態を、吉田敏浩『追跡! 謎の日米合同委員会』(毎日新聞出版)が、明らかにしている。とりわけ本書の第5章で、<新型コロナと検疫と日米合同委員会の合意と米軍特権>を詳述していて参考になる。(2022/1/9)
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2022年01月08日

【月刊マスコミ評・出版】「遺族」として戦争を見る視点=荒屋敷 宏

 『週刊東洋経済』12月11日号の「稼ぐ集英社と消える書店 出版界であらわになる格差」の記事に注目した。書店や取次の苦境をよそに、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』などのコミックスが大ヒットする集英社、『進撃の巨人』を抱える講談社、ライトノベルに強いKADOKAWAが業績好調だという。
 出版社や取次、書店にとって、書籍で33%、雑誌で40%という返品率は、悩ましいかぎりだろう。総合商社の丸紅と講談社、集英社、小学館の4社が出版流通の新会社設立に向けて協議を始めた。AI(人工知能)を使って配本・発行の「適正化」や在庫管理の改革に取り組むのも時代の要請なのかもしれない。
 街の書店が減少し、日販やトーハンなど「取次2強外し」と、出版業界、波高し≠セが、本当に問われているのは、出版物の量よりも企画や内容の質を高めることではないだろうか?
 『ニューズウィーク日本版』12月14日号の「桜井翔と『戦争』 戦没した家族の記憶」は、最近の週刊誌では意外性があり、意義のある企画と内容だと感じた。アイドルでありテレビのニュースキャスターでもある桜井翔氏は、海軍士官として戦没した大伯父、桜井次男氏の「遺族」として戦争の取材を続けているという。
 桜井翔氏の祖父は、戦後、上毛新聞社の記者をしていた桜井三男氏で、戦死した次兄のことを本にまとめていた。しかし、祖父は家族に戦争のことをほとんど話しておらず、ただ一つだけ「人間扱いじゃなかった」と祖母や叔母に語っていたという。
 旧帝大を出て、商工省に入省した後に海軍経理学校に入校し、海軍主計中尉となった大伯父の謎に迫る櫻井翔氏本人の記事は、読み応えがある。2年間の「短期現役主計科士官」(短現)を務めれば、元の職場に戻れるはずのところ、兵役が延長され、桜井氏の大伯父はベトナム東岸沖で、26歳の若さで戦死してしまったのである。この記事の後編は12月21日号に掲載されるが、本にまとめてほしいところだ。
 『週刊金曜日』12月3日号の特集「筑紫哲也とその時代」も興味深い記事だった。金平茂紀氏の新著『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』(講談社)をめぐり金平氏と望月衣塑子氏が対談している。権力に対する監視役を果たすこと、少数派であることを恐れないこと、多様な意見や立場をなるべく登場させて、この社会に自由の気風を保つこと。ジャーナリズムとして当たり前の作法を復活しなければならない。 
荒屋敷 宏
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2022年01月07日

【沖縄リポート】設計変更「不承認」をめぐる闘い=浦島悦子

                          
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 11月25日、玉城デニー知事は、沖縄防衛局による辺野古新基地建設のための設計変更承認申請(軟弱地盤改良工事等)について「不承認」の判断を下し、同局に通知した。昨年4月、県に提出されてから1年半、私たち県民が一日千秋の思いで待っていた判断だ。
「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」は翌26日昼休み、県庁前で、これを支持する緊急集会=写真=12月3日夜には同じく県庁前での集会と国際通りデモ行進(参加500人)を行い、辺野古ゲート前の座り込み抗議行動でも連日、「知事の不承認を支持するぞ‼ 工事を即刻中止せよ‼」のシュプレヒコールが響いた。
 4日には、コロナ禍で休止されていたゲート前県民大行動(毎月第1土曜)が1年2か月ぶりに開催された。デニー知事も駆けつけ、不承認判断の根拠や「新基地を自ら提供しない」決意を述べ、800人の参加者の熱烈な支持を受けた。
 これに対し国=沖縄防衛局は7日、行政不服審査法による審査請求(不承認の取り消し)を国土交通大臣に行った。2018年、沖縄県の埋め立て承認撤回を取り消した時と同じ手口だ。当時、行政の不当な処分に対する国民(私人)の権利救済のための法律を国家権力が悪用・濫用するものだと、全国の行政学者から非難を浴びた手法を、再び使ったのだ。全国知事会も、地方自治を脅かすものだと懸念を示している。
 国の対抗手段は県も県民も織り込み済みで、出来レースを見せられているようなうんざり感があるが、しかし国の「やりたい放題」を許せば「法治国家」は崩壊する。司法の在り方も含め、全国民的課題として取り組む必要があると思う。
 来年1月23日に投開票される名護市長選に向けても自公政権は攻勢を強めている。5日に行われた渡具知武豊現市長の選挙事務所開きには菅義偉前首相や、このほど当選した島尻安伊子衆院議員が駆け付け、また辺野古周辺3区の区長とも面談するなどテコ入れを行った。 
浦島悦子
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
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2022年01月06日

ゲノム編集食品ラッシュだが 未知の部分置き去り禍根残す恐れも=橋詰雅博

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 本紙10月号記事でゲノム編集技術によって作られたトマトと肉厚マダイが人体に有害の可能性があると指摘したが、ゲノム編集食品の開発は止まらず大学などが市場に続々と参入中だ。
 京都大発ベンチャー企業「リージョナルフィッシュ」は肉厚マダイに続き急速成長させたトラフグ販売=写真=も開始した。
大学や研究機関などが開発中の食品はほかにもある。
 ・芽に含まれる天然毒素が少ないジャガイモ=大阪大と理化学研究所
 ・生んだ卵にアレルギー物質が少ないニワトリ=産業技術総合研究所
 ・収穫量が多いイネ=農研機構
 ・品質低下を起こしにくい小麦・大麦=岡山大など
 ・同量のエサで大きく育つ豚=徳島大発ベンチャー「セツロック」 
 ・攻撃性を弱め共食いしにくいサバ=九州大など
 ・糖度が高いトマト=名古屋大・神戸大など
  これらはやがて販売される予定だ。ゲノム編集食品に詳しい元名古屋大学理学部助手で分子生物学者の河田昌東さんは「世界で最初のゲノム編集食品は、2年前に販売されたコレストロール値を下げる米国の大豆油です。そのあと日本のトマト、肉厚マダイ、トラフグが続いた。さらに相次いで商品化が見込まれるので、日本はゲノム編集食品の最も多い国」と語る。
 ゲノム編集は、特定の遺伝子の塩基配列を切断しその遺伝子の機能を失わせる技術だ。しかし標的外遺伝子の破壊などが問題視されている。にもかかわらずゲノム編集食品は安全性の審査がない。
 「開発者は販売の1年ほど前から資料などを提出した厚労省専門調査会と話し合っている。ここで『厚労省に届け出てOK』と判定されると販売に。ところがこの事前相談≠フ内容はほとんど非公開です。外部から検証ができず、これは問題です」(河田さん)
 河田さんは警告する。
「今の状況は原発の電力が福井県の若狭湾から大阪万博に送られた1970年の時とよく似ている。当時、すでに原発事故や放射能廃棄物問題が指摘されていたが、政府や電力会社は『事故は起きない』『廃棄物は処理できる』と強弁した。それが嘘だったことは証明済み。未知の部分を置き去りのまま経済優先で進めるゲノム編集技術は未来に大きな禍根を残す恐れがあります」
 橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号

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2022年01月05日

【リアル北朝鮮】来年も金正恩氏の誕生日は平日 経済の立て直しを優先?=文聖姫

  今年も残すところあとわずか。来年のカレンダーも数々販売、配布されている。どんなものを購入しようか、あるいはいただいたカレンダーの中からどれを飾ろうか、などと悩む毎日である。
 北朝鮮もカレンダーを発行しているが、韓国のKBSが入手したものを見ると、来年も金正恩総書記の誕生日である1月8日は祝日ではない。その代わり、「先代」である故金日成主席と故金正日総書記の誕生日は祝日になっている。
 今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会で総書記に就任した金正恩氏は、すでに祖父や父と同じ「領袖」の位置に就いたと考えられる。それなのになぜ、いまだに誕生日は祝日にならないのか。また、肖像画や肖像バッジが出回っているという話も聞かない。
 理由は二つ考えられる。一つ目は、先代の指導者を敬う謙虚さを示すことの方が人々に受け入れられやすいという点だ。それが道徳的にも評価されるからだ。
 二点目は、いまだ人民生活の向上という執権当初からの課題を解決できていない状況で、自身の誕生日を祝日にはできないことをアピールする狙いがあるのではないかと思う。むしろ、誕生日にも精力的に働くことを示すことの方が人民受けしやすい。もちろん、北朝鮮が祝日でない理由について明らかにはしておらず、あくまで推測にしか過ぎないのだが。
 金正恩氏は12月1日に開かれた政治局会議で、経済が安定的に管理されたと発言した。農業部門と住宅建設などで成果が出ている模様だ。5カ年経済計画1年目に何としても成果をアピールしたい思惑が垣間見える。金正恩氏が自身の誕生日を心から祝ってもらうためにも、経済の立て直しは必須の課題だろう。
※  ※
 「リアル北朝鮮」は今号で終わりです。このコラムを通じて、少しでも北朝鮮の人々の息吹を感じていただけたら幸いです。ありがとうございました。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
 


 
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