2022年01月04日

【月刊マスコミ評・新聞】防衛費増 補正予算計上は姑息=白垣詔男

 今年度補正予算案などを審議する臨時国会が12月6日から開かれた。会期は2週間と短かった。これでは、過去最大の約36兆円、なかでも7738億円を計上した防衛費についての審議時間は足りなかった。
 この補正予算案は11月26日に閣議決定された。その際、各紙は「防衛費も最大 初の年6兆円超」(27日付毎日朝刊)などと一般記事で報じた。しかし、あまり目立った記事にはなっておらず、読者に問題意識を起こさせる効果はあまりなかった。
 社説では、中日・東京が29日朝刊で「防衛費補正予算 膨張に歯止めかけねば」との見出しで「審議が限られる補正予算案に計上する手法自体が適切とは、とても言えない」と、政府の姑息さを訴えた。
  同じ29日、共同通信配信の「資料版論説」を転載したと思われるいくつかの県紙の社説が政府の手法に「補正で増額する手法は『抜け道』とも言える」と指弾した。
  朝日は11月30日社説で取り上げた。見出しは「補正予算案 財政規律を無視するな」と財政規律に焦点を当てた。その中で「当初予算で財政規律を守っているかのごとく装うため、あふれる事業を補正に回す手法…ルール無視の姿勢はコロナ禍を機に一段と加速」と書き「その代表例が…防衛費だ。昨年度の3次補正の倍で、哨戒機や迎撃ミサイルの新規取得などに充てる。…主要装備品まで堂々と補正でまかなうのは、財政法の趣旨に反する」と政府を強く批判した。しかし、他紙には「防衛費の補正予算」についての社説は見当たらない。

  自民党の中には日本の防衛費をGDP(国内総生産)の2%を確保すべきだという意見がある。米国から同盟国に対しての「要望」を受けて、にわかに起こってきたが、日本の国是としてきた「専守防衛」を逸脱して「敵基地攻撃論」を声高に叫んでいる岸田文雄首相も、米国に押されたものか、安倍・菅政権を踏襲したものと考えるのが自然だろう。
 予算に限らず、「モリ、カケ、サクラ」問題など安倍・菅政権の運営には随所で「姑息さ」が付きまとっていたことを忘れるわけにはいかない。これ以上、「姑息さ」を許さないためには世論を喚起する必要がある。
白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
posted by JCJ at 01:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする