今年も残すところあとわずか。来年のカレンダーも数々販売、配布されている。どんなものを購入しようか、あるいはいただいたカレンダーの中からどれを飾ろうか、などと悩む毎日である。
北朝鮮もカレンダーを発行しているが、韓国のKBSが入手したものを見ると、来年も金正恩総書記の誕生日である1月8日は祝日ではない。その代わり、「先代」である故金日成主席と故金正日総書記の誕生日は祝日になっている。
今年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会で総書記に就任した金正恩氏は、すでに祖父や父と同じ「領袖」の位置に就いたと考えられる。それなのになぜ、いまだに誕生日は祝日にならないのか。また、肖像画や肖像バッジが出回っているという話も聞かない。
理由は二つ考えられる。一つ目は、先代の指導者を敬う謙虚さを示すことの方が人々に受け入れられやすいという点だ。それが道徳的にも評価されるからだ。
二点目は、いまだ人民生活の向上という執権当初からの課題を解決できていない状況で、自身の誕生日を祝日にはできないことをアピールする狙いがあるのではないかと思う。むしろ、誕生日にも精力的に働くことを示すことの方が人民受けしやすい。もちろん、北朝鮮が祝日でない理由について明らかにはしておらず、あくまで推測にしか過ぎないのだが。
金正恩氏は12月1日に開かれた政治局会議で、経済が安定的に管理されたと発言した。農業部門と住宅建設などで成果が出ている模様だ。5カ年経済計画1年目に何としても成果をアピールしたい思惑が垣間見える。金正恩氏が自身の誕生日を心から祝ってもらうためにも、経済の立て直しは必須の課題だろう。
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「リアル北朝鮮」は今号で終わりです。このコラムを通じて、少しでも北朝鮮の人々の息吹を感じていただけたら幸いです。ありがとうございました。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号