2022年01月13日

【おすすめ本】合田 寛『パンデミックと財政の大転換   GAFA支配と租税国家の危機をこえて』─4つの危機に立ち向かう財政大転換への処方箋を提示=竹信三恵子(和光大学名誉教授)

コロナ禍は、働き手や医療への公的支えの手薄さを、改めて照らし出した。一方で企業の内部留保は膨らみ、資産という「溜め」がある人々との格差は拡大の一途だ。
 本書は、このような貧困と極端な不平等という危機、その修復のためにあわてて出動された財政と金融の危機、パンデミックによる公衆衛生と医療の危機、気候変動と地球温暖化の危機という4つの危機を挙げ、これに立ち向かう財政大転換の必要性を、事実に即して丹念に説き明かす。

 背景にあるのは、すべての事物を企業利益の手段として食い尽くしていく新自由主義の拡大だ。そんな中で、人々の生活を支える財政は、節約すべき無駄として「緊縮」 の対象になってきた。
 こうして企業や富裕層に蓄積された富は、大規模な税逃れの「タックスヘイブン」へ流入し、生活者へは還元されない。
 本書はこうした構造に触れつつも、怒り嘆くだけではない。すでに始まっている国際的な反転の取り組みを紹介し、具体的な処方箋を提示しているからだ。

 たとえば、気候変動を引き起こす野放図な経済活動に対し、政府が規制力を取りもどす「グリーン・ニューディール」政策は、そのひとつだ。
 また「デジタル革命」 による企業の新しい寡占化と徴税難に対し、国際的なデジタル課税の動きも進んでいる。
 巨大企業や富裕層の応分の負担を回復するための税制改革の様々な手法も提案されている。
 無力感に陥る前に、私たちがすべきことはたくさんある。そしてそれはすでに始まっている。本書は、そんな展望と自信を与えてくれる「格差時代の必読書」である。(新日本出版社2000円)
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posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする