2022年01月15日

ネオ自民∴ロ新が台頭 多党制時代に移り野党再編も 元朝日記者の鮫島さんが語る=橋詰雅博

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 元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩さん(写真)が11月のJCJオンライン講演会で総選挙後の政治情勢や先行きの展望などを語った。
 10月の総選挙の結果で「ヤバイ」と思ったのは日本維新の会が公示前の11議席から41議席に増やしたことだ。国政選挙初挑戦した2012年の54議席に及ばないものの14年に獲得した議席と並んだのである。維新は衆院で野党第二党に。自民党よりも右寄りであらゆる分野で競争原理を導入する新自由主義の政党ゆえに危険だ。

一過性でない

ネオ自民≠ェ台頭した理由を鮫島さんは「行政組織や労働組合、マスコミなどの既得権益打破という明確な政策が当たっている。朝日新聞記者時代、私の取材に応じた生みの親の橋下徹は、既得権益に対し怒りと憎しみを強く抱いていた。このとんがった政策が投票率の高い高齢者寄りの政策を掲げる自民党と立憲民主党の2大政党に不満を持つ20代から40代に支持されている。地盤の大阪から全国に支持が広がっている維新の勢いは一過性ではない」と分析した。
 維新の次の狙いは野党第一党である。そのためには立民つぶし≠徹底的に行う作戦だ。立民副代表の辻元清美が落選した原因は、「辻元は何も仕事をしていない」などと維新の猛攻を受けたからである。この先の国政選挙でも立民候補者が出馬する選挙区に狙いを定め落選運動に取り込むだろう。維新の組織力は侮れない。
 「維新は野党第一党の座をつかんだ後、自民党との二大政党政治の実現を目論む。連立も否定できないが、ただ維新は(大阪維新の会含め党歴11年と短く)党内統治能力が弱い不完全な政党だ」。実力以上に議席を獲得すると制御不能に陥るかも。
 改憲勢力の維新は憲法改正論議の促進を岸田文雄政権に提示している。岸田政権も改憲に慎重な与党・公明党へのけん制にもなるので乗ってくるだろう。両党の連携は改憲に向けて弾みがつく恐れがあり要警戒だ。

麻生が牛耳る

 岸田政権は麻生太郎・自民党副総裁が牛耳る。
 「党総裁選の1回目投票で支援した岸田がトップに立ったことで麻生は自信をつけた。党閣僚人事で安倍は最側近の萩生田光一を官房長官に、総裁選で推した高市早苗を幹事長に押し込もうとしたが、実現できなかった。岸田から相談を受けた麻生が拒否したと思う。8年近い長期安倍政権の間、ガマンしてきた麻生は、これからは好きなようにやらせてもらうと思っている。安倍と麻生は盟友関係と言われるが、打算の産物。関係は軋み始めた」
 麻生の野望は同じ宏池会を源流とする岸田派と麻生派の合流により大宏池会≠結成し、キングメーカーとして君臨することだ。チャンス到来と麻生は意気込む。

立民は埋没か

 野党第一党の立民は共産党や山本太郎率いるれいわ新選組に選挙区で譲歩し、強い野党共闘を築くのが役目だ。自分の党だけ議席を増やせばいいという考えは捨てる。しかし一枚岩ではなく展望は開けず。
 来年夏の参院選挙はどうなるのか。
 「自民党は大負けせず、維新と弱者救済に徹するれいわは、それぞれ議席を伸ばす。立民は下手をすると埋没、公明、共産、国民民主は議席減か。選択的夫婦別姓制度の導入などワンイシューに賭ける新党が比例区で議席を獲得する可能性がある」
 多党制時代に移行の政治情勢下で野党再編もあり得る。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
posted by JCJ at 01:00 | オンライン講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする