2022年01月20日

【おすすめ本】山田健太『ジャーナリズムの倫理』─いまのメディア状況を踏まえた現場と市民への教科書=福元大輔(沖縄タイムス編集委員)

 著者の研究仲間から冗談で取材を頼まれたことがある。
「山田先生は化け物だ。大学の仕事だけでも忙しいのに、新聞やテレビにコメントを出し続け、その上、本まで出版する。いつ、何をしているのか調べてほしい」
 専修大学のジャーナリズム学科で教える著者がコメントを求められる、あるいは書かなければならない事項が多岐にわたるということは、言論表現の自由やジャーナリズムが危機に瀕している証左であるといえよう。

 同時期に出版した『法とジャーナリズム』第4版(勁草書房)は言論表現の自由に関する法や制度の解説書で、それと対をなす本書を「ジャーナリズムの現場で直面するであろう数々の問題への処方箋」と位置づける。
 本書の見開き・左ページには「自主規制の意義と歴史」「編集の独立」「メディアアクセス権」「取材源の秘匿」など、基本的な事項を解説している。右ページでは具体的な事例、実態などの「資料」を掲載しており、理解を助けてくれる。
 たとえば左のページで「誤報、虚報、ねつ造」を解説。右のページでは沖縄の米軍基地に抗議する人たちが、救急車の走行を妨害したなどと報じた「ニュース女子事件」を取り上げ、番組独自の検証、放送倫理検証委員会の審査内容、テレビ局の検証と対応などの経緯を明らかにしている。
 メディアの多様化で発信する手段が増え、為政者(統治機構)がメディアを選別、排除する時代に、権力を監視し、民主主義を守るには何が必要か。ジャーナリズムの役割を認識するとともに、市民の信頼を得るための教科書のような一冊だ。(勁草書房2500円)
「ジャーナリズムの倫理」.jpg


posted by JCJ at 10:20 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする