2022年01月23日

【今週の風考計】1.23─直木賞受賞の今村翔吾さんと出版界

いま大型書店に行くと、「直木賞」を受賞した今村翔吾『塞王の楯』(集英社)と米澤穂信『黒牢城』(KADOKAWA)が、うず高く積まれている。町の本屋さんにとっても、『鬼滅の刃』以降、本の売れ行きがパッとしなかっただけに恵みの雨だ。
 筆者も夢中になって読んだ。とりわけ『塞王の楯』は迫力満点。琵琶湖畔・大津城を舞台に、崩れない石垣を作る石工とどんな城でも落とす鉄砲づくりが、職人の意地を賭けて挑む戦国小説だ。
今村翔吾さんは1984年京都府生まれ。2017年デビューから5年足らずのうちに、ノミネート3回で受賞。「受賞の一報に号泣してしまった。しかも憧れの作家、池波正太郎先生と同い年37歳での受賞は感慨深い。これからも面白い小説を届けていく」と、語っている。

37歳の若さとは知らなかった。2020年の直木賞候補作『じんかん』(講談社)も、戦国の梟雄・松永久秀のイメージを覆す圧巻の歴史ドラマだが、そこで叙述される松永久秀の信念、その道を貫き通すには謀反も辞さず、この高邁な精神を織田信長は認めたとして展開する筆の冴えは、もう老大家の域だ。
しかも今村さんは元ダンス講師で、現在は書店経営も行う異色の作家。大阪・箕面駅近くの書店「きのしたブックセンター」の社長である。昨年4月に閉店寸前までいった書店の事業を引き継ぎ、11月にリニューアルオープンした。今村さんは「ここで100年続く書店を目指したい」と語っている。

書店をめぐる状況は深刻だ。ネットで本を買う人が増えたため、町の本屋さんに行く人が激減している。全国の書店数は2001年に2万1千店あった書店が2020年には1万1024店と半減した。
 本屋さんに来てもらおうと、店頭でイベントを開催したり陳列を工夫したり、懸命な努力が続いている。また取次からのパターン配本でなく、自らの選択による本揃えで営む「独立系書店」も増え、それぞれ健闘している。
その一つが、<Readin' Writin' BOOK STORE>(リーディン・ライティン・ブックストア)だ。2017年4月にオープンした。東京・台東区寿2丁目4−7にある。店主兼従業員の落合博さんは、1958年甲府市生まれ。毎日新聞社での論説委員(スポーツ・体育担当)を最後に退社し本屋を開業。
 昨年9月中旬、『新聞記者、本屋になる』(光文社新書)を出版した。「定年目前58歳、子どもは3歳、書店員経験0からの本屋開業記!」という帯の効果もあって、すぐに重版となった。また本屋を続けていくには「低く、長く、遠く」をモットーにしているという。

何も書店だけではない。小さな出版社も同じだ。永江朗『小さな出版社のつづけ方』(猿江商會)が、10社11人へのロングインタビューから、外からは覗い知れない「小さな出版社」の内幕に迫っていて参考になる。(2022/1/23)
posted by JCJ at 05:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする