2022年01月25日

高校生の原発劇 放映中止 福井ケーブルTV「差別」口実に=伊藤洋子

 毎年秋開かれている福井県高校演劇祭では上演された全作品を地元の福井ケーブルテレビが放送してきた。今年の演劇祭はコロナ下のため無観客で開催され、唯一見てもらえる機会は同テレビ局の放送だったが、「差別用語の使用」を理由に県立福井農林高校の劇だけが放送されない事態になった。
 農林高の劇は、1948年の福井地震から原発が集中する福井の歴史をたどり未来へと、女子生徒2人の掛け合いで将来への不安と闘うというもの。題名は「明日のハナコ」。
 上演した翌日(9月20日)に、同テレビから同校の劇は「差別用語の使用、原発という繊細な問題の扱い方」に対し、県高校文化連盟(高文連)に意見を求める連絡があったという。高文連からはテレビ局の「意向を尊重する」とし、局が放送しないと決定したらそれに従うとした。理由は「放送後に生徒への非難が寄せられることを憂慮する」というもの。
 問題とされた表現は、83年福井県敦賀市の当時の市長が、原発誘致を主張する講演会での話言葉をそのまま紹介する中に身体障害者への差別用語を使っており、市長名とその言葉が個人を特定し、差別表現になるというものだ。
 脚本を書いた同校演劇部元顧問の玉村徹さん(60)は11月、放送見送りの撤回を求める要望書を高文連あてに提出。台本をネット上に公開するとともに、表現の自由を奪わないでと題するネット上での署名活動をはじめ、上演実行委員会代表として、12月12、19日には県内で再上演と人権及び原発学習会の開催を決めた。動きは広がり、1月には大阪、愛媛でも上演・学習討論会が決定している。
 12日同県内で開かれた上演と学習会には約50人が来場。劇は玉村さんと劇作家の鈴江俊郎さんが演じ、学習会は弁護士の小出薫氏を囲んで活発な議論が交わされた。席上、玉村氏は「(テレビ局に)音声を消してもいいと言ったが、それでもダメとなった」。上映不可となったとき「くやしい、つらい」と涙を流す生徒もいたが、問題が表面化してくる中で「テレビの放映は望んではいない」「注目を浴びたので怖い」といった意見が出てきたという。会場からは「原発立地県では原発問題の演劇はできないことになってしまうのでは」と危惧する声も出た。
 伊藤洋子
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 東海・中部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする