2022年01月29日

【映画の鏡】市民のための役所とは 『ボストン市庁舎』トランプ政策と対極の現場を描写=鈴木賀津彦

 4時間34分の大作、途中休憩を入れ5時間近くを映画館で過ごすことになるが、ぜひ時間をつくって見てほしいドキュメンタリーだ。特に公務員は必見?なのだろう、「市役所割」なる料金も実施しており、市民のための市役所とは、行政が果たす役割とは何かを考え直す好機になるはずである。
 『ニューヨーク公共図書館』でも知られる米国ドキュメンタリー界の巨匠フレデリック・ワイズマン監督の最新作。91歳の彼の集大成とも、最高傑作とも評されている。舞台は彼の生まれたマサセッチュー州のボストン市。警察、消防、保健衛生、高齢者支援、出生、結婚、死亡記録など、数百種類ものサービスを提供する市役所の仕事ぶりが映し出され、その舞台裏に迫る。
  注目は、市長を先頭に職員が各所に出向き、市民とあらゆる問題で対話していることだ。マーティン・ウォルシュ市長の市民に寄り添う姿勢に好感、見終わって調べたら、今年3月からバイデン政権の労働長官に就任しているというので妙に納得した。
  「アメリカがたどってきた多様性の歴史を典型的に示すような人口構成をもつ米国屈指の大都市で、人々の暮らしに必要なさまざまなサービスを提供している市役所の活動を見せている。(略)トランプが体現するものの対極にある」とワイズマン監督は語る。
 全ての住民の声を聴き、多様な人種を認め合った「まちの姿」。映画館を出るとニュースは偶然、外国人の投票を可能にする武蔵野市の住民投票条例案に反対する政治家たちの騒ぎぶりを伝えていた。なるほど、本作が示した公共の在り方を、身近な日本の課題として捉える必要がありそうだ。全国公開中。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年12月25日号
posted by JCJ at 06:27 | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする