2022年08月31日
2022年08月30日
【お知らせ】「安倍国葬」強行は民主主義の汚点!〜メディアはさらに明らかにせよ!自民党・「旧統一教会」癒着の全貌〜9月5日(月)午後7時から9時
安倍元首相銃撃事件でパンドラの箱が開きました。メディアの追及によって反社会的宗教団体「旧統一教会」と自民党・政界との癒着が次々明らかにされています。しかし、事件が参院選投票日直前でもあったため大手メディアは、「宗教団体」「特定の団体」などと報じ、しばらく「旧統一教会」の名称は伏せられていました。また銃撃事件発生前は「旧統一教会」に関する報道がほとんどなく、「空白の30年間」がメディアにはありました。そして今、岸田内閣は根拠法もなく、憲法に保障された「思想・良心の自由」を踏みにじり、弔意と「安倍礼賛」を強要する国葬を決行しようとしています。
このシンポジウムでは、二人のジャーナリストと「旧統一教会」の霊感商法・高額献金による被害者救済に取り組んできた弁護士をパネラーに迎え、銃撃事件・国葬報道はこれでよかったのか、「旧統一教会」と自民党・政界の癒着はどこまで明らかにされ、これからの報道に何が求められるかなどを議論します。
<日時>9月5日(月)午後7; 00〜9:00 オンライン(後日、録画配信あり)
<パネラー>
金平 茂紀 ジャーナリスト・早稲田大学大学院客員教授(兼司会)
有田 芳生 ジャーナリスト・前参議院議員
山口 広 弁護士・全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人
★参加費:800円
参加ご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。
(1) https://againstkokuso.peatix.com/ をクリックする
(2) 参加券を求める
(3) 支払いをカードかコンビニ払いにするかなどを選ぶ
(4) 初めての方は途中、氏名、メールアドレスを入力し、独自のパスワードの設定をします。
(5) 支払いを済ませた方にシンポジウム前日・9月4日までにYouTubeで視聴できるURLをメールで送ります。
主催 NHKとメディアの今を考える会
問い合わせ=小滝一志 kotaki@h4.dion.ne.jp 090-8056-4161
協賛 NHKとメディアを語ろう・福島 日本ジャーナリスト会議 日本ジャーナリスト会議東海 放送を語る会 メディアの今を考える市民の会ぎふ
このシンポジウムでは、二人のジャーナリストと「旧統一教会」の霊感商法・高額献金による被害者救済に取り組んできた弁護士をパネラーに迎え、銃撃事件・国葬報道はこれでよかったのか、「旧統一教会」と自民党・政界の癒着はどこまで明らかにされ、これからの報道に何が求められるかなどを議論します。
<日時>9月5日(月)午後7; 00〜9:00 オンライン(後日、録画配信あり)
<パネラー>
金平 茂紀 ジャーナリスト・早稲田大学大学院客員教授(兼司会)
有田 芳生 ジャーナリスト・前参議院議員
山口 広 弁護士・全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人
★参加費:800円
参加ご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。
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(5) 支払いを済ませた方にシンポジウム前日・9月4日までにYouTubeで視聴できるURLをメールで送ります。
主催 NHKとメディアの今を考える会
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2022年08月29日
【裁判】五輪選手村訴訟の原告団、第5回総会を27日開催 控訴審に向け意思統一図る=橋詰雅博
最新会報誌
東京五輪選手村訴訟の原告団らが結成した「晴海選手村土地投げ売りを正す会」は9月27日(火)午後6時30分豊洲文化センターで第5回総会を開催する。
今回の総会は10月11日(火)に東京高裁101号法廷で午後1時40分から開かれる控訴審第1回口頭弁論に向け意思統一を図るのが大きな目的だ。
裁判の主な争点は@選手村要因を理由にした周辺価格の10分の1以下という破格の売却価格の異常さ、A都市再開発法を濫用・誤用し合法性を装って、129億6千万円という売却価格を都議会にも都財産価格審議会にもかけずに秘密裏に決定した地方自治法違反の財務会計行為、Bこうした違法まがいの行為を可能にした官製談合疑惑―。総会ではこれら3つのポイントを弁護団が解説する。
弁護団は売却価格の控訴理由書の補充として田原拓治不動産鑑定士の意見書を高裁に提出した。控訴審では田原氏の証人申請を行う。桐蔭横浜大学客員教授でもある田原氏は1974年に東京地裁鑑定委員に就任以来30数年間、定年退任までに1000件余の不動産価格や地代・家賃の鑑定人として裁判鑑定評価を行ってきた。日本不動産研究所の価格調査報告書を地裁が適法とした点について田原氏は「不動産評価に関する知識を十分に待っている裁判官の法的判断であるかと疑いたくなる」と強く批判している。
原告団は控訴審終了後に報告集会を開く予定。会場は当日傍聴者に伝えられる。
橋詰雅博
東京五輪選手村訴訟の原告団らが結成した「晴海選手村土地投げ売りを正す会」は9月27日(火)午後6時30分豊洲文化センターで第5回総会を開催する。
今回の総会は10月11日(火)に東京高裁101号法廷で午後1時40分から開かれる控訴審第1回口頭弁論に向け意思統一を図るのが大きな目的だ。
裁判の主な争点は@選手村要因を理由にした周辺価格の10分の1以下という破格の売却価格の異常さ、A都市再開発法を濫用・誤用し合法性を装って、129億6千万円という売却価格を都議会にも都財産価格審議会にもかけずに秘密裏に決定した地方自治法違反の財務会計行為、Bこうした違法まがいの行為を可能にした官製談合疑惑―。総会ではこれら3つのポイントを弁護団が解説する。
弁護団は売却価格の控訴理由書の補充として田原拓治不動産鑑定士の意見書を高裁に提出した。控訴審では田原氏の証人申請を行う。桐蔭横浜大学客員教授でもある田原氏は1974年に東京地裁鑑定委員に就任以来30数年間、定年退任までに1000件余の不動産価格や地代・家賃の鑑定人として裁判鑑定評価を行ってきた。日本不動産研究所の価格調査報告書を地裁が適法とした点について田原氏は「不動産評価に関する知識を十分に待っている裁判官の法的判断であるかと疑いたくなる」と強く批判している。
原告団は控訴審終了後に報告集会を開く予定。会場は当日傍聴者に伝えられる。
橋詰雅博
2022年08月28日
【今週の風考計】8.28─とんでもハップン! 原発再稼働の暴挙を許すな
なんで再稼働するのか
●突如、岸田首相は<3・11フクシマ>原発事故以来、11年にわたって堅持してきた「脱原発」政策を大転換し、次世代型原発7基の新設と既存10基の再稼働に向けて、本格始動の号令を発した。
コロナ感染により公邸で療養中の24日、官邸で開催された第2回「GX実行会議」に、わざわざオンラインで公邸から参加し、原発推進の進軍ラッパを吹いたのだ。
●この「GX実行会議」のGXとは、グリーン・トランスフォーメーションの略称で、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを議論する。だが討議内容は非公開、「原子力ムラ」の利益を擁護するメンバーが複数、参加している。
●そこでの岸田首相の発言内容は「次世代型原発の開発・建設」と「原発の運転期間40年を20年延長」の2つを挙げ、年末までに結論を得るよう、トンデモナイ指示を出した。
これまで他のテーマでも「検討する」としか言わなかった首相が、国会での議論も経ずに原発の新増設・再稼働の大号令を発するとは言語道断だ。自らに降りかかった統一教会との接点問題をそらすためか。あまりにも独裁的な判断は許されない。
福島原発事故は終わっていない
●「脱原発」を目指し地道な努力を続ける企業や国民からは、支持など得られようもない。福島原発事故の責任を巡って、東京地裁は東京電力元会長ら4人の過失を認め、史上最高額となる13兆円の賠償命令の判決が、わずか1カ月半前に出たばかり。
●政府が言う次世代型原発にしても、耐震性や炉心冷却の改善・強化を図る装置など、まだまだ実証試験の段階だ。海外でも商業発電として確立した次世代型原発はない。日本の各電力会社は既存原発の再稼働すらままならないのに、新型の原子炉など建設する余力などない、というのが実情だろう。
また政府は、検査基準は満たしたものの再稼働していない原発7基を、来年の夏以降に再稼働させるというが、テロ対策の不備や侵入検知器の故障、避難計画のズサンなどが挙げられ、稼働できる見込みが立たない。原発稼働の再延長60年を超す運転となれば、再び法改正が必要になる。
●「核のごみ」と呼ばれる、原発運転後に発生する高レベル放射性廃棄物・デブリについても、福島第1原発からの取り出しは難航し、目標期限の延長が続き、来年末になるという。その取り出したデブリを、どこに収容・処理するのか、受け入れ先も含め見通しすら立っていない。
読むべし、日野行介さんの最新刊
●つい最近、原発再稼働の危険性について著わした本が刊行された。日野行介『原発再稼働─葬られた過酷事故の教訓』(集英社新書)である。長年、原発の実態を丹念な調査で追究してきた著者が、悲劇に学ばない日本の政治家・官僚の実態を告発する。ぜひ読んでほしい。
●原発の恐ろしさを忘れてはならない。「安全神話」は吹っ飛んだのだ。なにも地震や大津波による自然災害による過酷事故だけではない。
ロシアのウクライナ侵攻でハッキリしたように、チェルノブイリ原発やザポリージャ原発を軍事的に占拠し、「原発人質」にして、人類の生命と地球環境を脅かす前代未聞の愚行が展開される、恐ろしき時代なのだ。(2022/8/28)
●突如、岸田首相は<3・11フクシマ>原発事故以来、11年にわたって堅持してきた「脱原発」政策を大転換し、次世代型原発7基の新設と既存10基の再稼働に向けて、本格始動の号令を発した。
コロナ感染により公邸で療養中の24日、官邸で開催された第2回「GX実行会議」に、わざわざオンラインで公邸から参加し、原発推進の進軍ラッパを吹いたのだ。
●この「GX実行会議」のGXとは、グリーン・トランスフォーメーションの略称で、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを議論する。だが討議内容は非公開、「原子力ムラ」の利益を擁護するメンバーが複数、参加している。
●そこでの岸田首相の発言内容は「次世代型原発の開発・建設」と「原発の運転期間40年を20年延長」の2つを挙げ、年末までに結論を得るよう、トンデモナイ指示を出した。
これまで他のテーマでも「検討する」としか言わなかった首相が、国会での議論も経ずに原発の新増設・再稼働の大号令を発するとは言語道断だ。自らに降りかかった統一教会との接点問題をそらすためか。あまりにも独裁的な判断は許されない。
福島原発事故は終わっていない
●「脱原発」を目指し地道な努力を続ける企業や国民からは、支持など得られようもない。福島原発事故の責任を巡って、東京地裁は東京電力元会長ら4人の過失を認め、史上最高額となる13兆円の賠償命令の判決が、わずか1カ月半前に出たばかり。
●政府が言う次世代型原発にしても、耐震性や炉心冷却の改善・強化を図る装置など、まだまだ実証試験の段階だ。海外でも商業発電として確立した次世代型原発はない。日本の各電力会社は既存原発の再稼働すらままならないのに、新型の原子炉など建設する余力などない、というのが実情だろう。
また政府は、検査基準は満たしたものの再稼働していない原発7基を、来年の夏以降に再稼働させるというが、テロ対策の不備や侵入検知器の故障、避難計画のズサンなどが挙げられ、稼働できる見込みが立たない。原発稼働の再延長60年を超す運転となれば、再び法改正が必要になる。
●「核のごみ」と呼ばれる、原発運転後に発生する高レベル放射性廃棄物・デブリについても、福島第1原発からの取り出しは難航し、目標期限の延長が続き、来年末になるという。その取り出したデブリを、どこに収容・処理するのか、受け入れ先も含め見通しすら立っていない。
読むべし、日野行介さんの最新刊
●つい最近、原発再稼働の危険性について著わした本が刊行された。日野行介『原発再稼働─葬られた過酷事故の教訓』(集英社新書)である。長年、原発の実態を丹念な調査で追究してきた著者が、悲劇に学ばない日本の政治家・官僚の実態を告発する。ぜひ読んでほしい。
●原発の恐ろしさを忘れてはならない。「安全神話」は吹っ飛んだのだ。なにも地震や大津波による自然災害による過酷事故だけではない。
ロシアのウクライナ侵攻でハッキリしたように、チェルノブイリ原発やザポリージャ原発を軍事的に占拠し、「原発人質」にして、人類の生命と地球環境を脅かす前代未聞の愚行が展開される、恐ろしき時代なのだ。(2022/8/28)
2022年08月27日
【22緑陰図書―私のおすすめ】ハーレムの闘う本屋の幸せ=落合恵子(作家)
子どもの本の専門店クレヨンハウスを開いて46年。「子どもの本」とは、子どもから楽しめる、年齢制限のない本のことである。そんな本が並ぶフロアから一冊の本を抜いてきた。『ハーレムの闘う本屋、ルイス・ミショーの生涯』(ヴォーンダ・ミショー・ネルソン著、原田勝訳、あすなろ書房)。
専門書店をやっているものとしては素通りできない一冊であり、差別に反対するひとりとしても、目を逸らすことのできない本である。
1938年、ニューヨーク7番街に風変わりな書店が誕生する。「ナショナル・メモリアル・アフリカン・ブックストア」。当時のことばで云うなら「黒人」が書いた「黒人」についての本を集めた書店である。
むろんわたしたちは反省と悔いをこめて、あるいは、歴史には蓋をし、単に習慣化した言葉として「アフリカ系アメリカ人」と呼んではいるが。「ニグロは本を読まない」と言われていたあの時代、ルイス(44才)は、この書店をオープンした。ブッカー・T・ワシントンの『奴隷より身を起こして』の他にあるのは、4冊と現金100ドル。「明日はいよいよ開店だ」。
この本の中に、ハリエット・ダブマンやソジャーナ・トゥルース等、アフリカ系アメリカ人の解放運動に、見事な思想と姿勢を貫いた女性たちの名が見えるのも、わたしにはうれしい。
時は流れて1975年。病を得、当局からの立ち退き要求と戦い続けることに困難を見つけたルイスは,店を閉じる決意する。
自分の人生は何だったのか…、そう考える彼に、ひとりの男が歩み寄って告げた。子どもの頃、あなたの書店で父に医学の本を買ってもらった、そしていま医師になった、と。
これだから本屋はやめられない!
2022年08月26日
【お知らせ】第 65 回JCJ賞贈賞式 記念講演 「何のために報じるのか」 講師:上西充子さん (法政大学キャリアデザイン学部教授) 9 月 24 日(土) 午後 1 時から2時
2時から5時・贈賞式 会場:東京の全水道会館・4 階大会議室 (会場からオンラインでも発信します) 「何のために報じるのか」。ジャーナリストの皆さんはこの問い に何と答えるでしょうか――。
法政大の上西充子教授は根源的な 問題を提起する。 「『知る権利』に応えるため」? けれど、「知る」ことの先に何 を想定しているでしょうか。それとも、「事実を伝えるため」? とはいえ、伝える事実も 選択されています。あるいは、「権力監視のため」? けれども、権力監視はジャーナリス トだけが独占的に担うものではありません。国民も権力監視を行います。そのために必要な 情報を報道は伝えているのか。 以上のような考察をする上西さんが、報道に携わる人たちに託す期待、願いとは何か、講 演でたっぷりと語っていただく。
【上西充子さん・略歴】法政大学キャリアデザイン学部教授。専門は労働問題・社会政策。 国会審議を解説つきで街頭上映する国会パブリックビューイングを 2018 年 6 月に始めた。 「ご飯論法」で 2018 年の新語・流行語大賞トップテンを受賞。著書に『呪いの言葉の解き かた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイテ ィブ)、『政治と報道』(扶桑社新書)など。 【第 65 回JCJ賞は 9 月初めに発表の予定。式では受賞者によるスピーチがあります】
法政大の上西充子教授は根源的な 問題を提起する。 「『知る権利』に応えるため」? けれど、「知る」ことの先に何 を想定しているでしょうか。それとも、「事実を伝えるため」? とはいえ、伝える事実も 選択されています。あるいは、「権力監視のため」? けれども、権力監視はジャーナリス トだけが独占的に担うものではありません。国民も権力監視を行います。そのために必要な 情報を報道は伝えているのか。 以上のような考察をする上西さんが、報道に携わる人たちに託す期待、願いとは何か、講 演でたっぷりと語っていただく。
【上西充子さん・略歴】法政大学キャリアデザイン学部教授。専門は労働問題・社会政策。 国会審議を解説つきで街頭上映する国会パブリックビューイングを 2018 年 6 月に始めた。 「ご飯論法」で 2018 年の新語・流行語大賞トップテンを受賞。著書に『呪いの言葉の解き かた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイテ ィブ)、『政治と報道』(扶桑社新書)など。 【第 65 回JCJ賞は 9 月初めに発表の予定。式では受賞者によるスピーチがあります】
2022年08月25日
【22緑陰図書―私のおすすめ】大国間の覇権闘争が世界を動かす=斎藤貴男(ジャーナリスト)
何をするにも、アメリカと中国の状況を知らないと話にならない時代になってきた。手当たり次第に読書するべき必要を感じるが、特に心惹かれた2冊をまず紹介しよう。
イアン・ブレマー『自由市場の終焉─国家資本主義とどう闘うか』(有賀裕子訳、日本経済新聞出版)。そして矢吹晋『中国の夢─電脳社会主義の可能性』(花伝社)だ。
ブレマー本は10年以上も前に出版されている。だが、たとえばロシアのウクライナ侵攻を機にやたら叫ばれる「専制主義VS民主主義」なる新冷戦構造の深層が、まざまざと描出されていた。
著者は世界最大の政治リスク専門コンサルティング企業の創業社長。アメリカの覇権を護持し、その“マニフェスト・デスティニー(明白な運命)を信ずる立場から、中国やロシア、湾岸諸国などによる政府主導の資本主義の実像と、近い将来における世界への悪影響を批判的に論じていく。
読み方次第で有益にも害毒にもなり得る。私にとっては、現在進行中の諸々が、詰まるところ大国間の覇権闘争でしかないのでは、という直感の裏付けになってくれた。
一方、IT革命からET(エネルギー・テクノロジー)革命へと移行しつつある中国の実態と未来を考察したのが矢吹本だ。デジタル・リヴァィアサンと呼ばれる怪物を飼い馴らすことは可能か。あるいはオーウェルの危惧した超管理社会に堕していくのか。
壮大な試みの原動力は習近平体制による、かつて欧米列強や日本に主権を侵害された屈辱の歴史ら脱却し、誇りを取り戻さんとする根源的目標「中国の夢」にある。この点の深堀りは同じ著者の『習近平の夢』や、その他の書籍で補いたい。
翻って日本。米中のダイナミズムに圧倒され、いかにもカルいのは、国の規模というより劣悪な政治家たちのせいか。
先ごろ65歳で亡くなったコラムニスト・小田嶋隆の『日本語を、取り戻す』(亜紀書房)の快刀乱麻がしっくり来た。安倍晋三政権の8年間で日本語は意味を失った、との指摘に心から共感。
2022年08月24日
2022年08月23日
【お知らせ】「安倍国葬」強行は民主主義の汚点!〜メディアはさらに明らかにせよ!自民党・「旧統一教会」癒着の全貌〜9月5日(月)午後7時から9時
安倍元首相銃撃事件でパンドラの箱が開きました。メディアの追及によって反社会的宗教団体「旧統一教会」と自民党・政界との癒着が次々明らかにされています。しかし、事件が参院選投票日直前でもあったため大手メディアは、「宗教団体」「特定の団体」などと報じ、しばらく「旧統一教会」の名称は伏せられていました。また銃撃事件発生前は「旧統一教会」に関する報道がほとんどなく、「空白の30年間」がメディアにはありました。そして今、岸田内閣は根拠法もなく、憲法に保障された「思想・良心の自由」を踏みにじり、弔意と「安倍礼賛」を強要する国葬を決行しようとしています。
このシンポジウムでは、二人のジャーナリストと「旧統一教会」の霊感商法・高額献金による被害者救済に取り組んできた弁護士をパネラーに迎え、銃撃事件・国葬報道はこれでよかったのか、「旧統一教会」と自民党・政界の癒着はどこまで明らかにされ、これからの報道に何が求められるかなどを議論します。
<日時>9月5日(月)午後7; 00〜9:00 オンライン(後日、録画配信あり)
<パネラー>
金平 茂紀 ジャーナリスト・早稲田大学大学院客員教授(兼司会)
有田 芳生 ジャーナリスト・前参議院議員
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このシンポジウムでは、二人のジャーナリストと「旧統一教会」の霊感商法・高額献金による被害者救済に取り組んできた弁護士をパネラーに迎え、銃撃事件・国葬報道はこれでよかったのか、「旧統一教会」と自民党・政界の癒着はどこまで明らかにされ、これからの報道に何が求められるかなどを議論します。
<日時>9月5日(月)午後7; 00〜9:00 オンライン(後日、録画配信あり)
<パネラー>
金平 茂紀 ジャーナリスト・早稲田大学大学院客員教授(兼司会)
有田 芳生 ジャーナリスト・前参議院議員
山口 広 弁護士・全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人
★参加費:800円
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(4) 初めての方は途中、氏名、メールアドレスを入力し、独自のパスワードの設定をします。
(5) 支払いを済ませた方にシンポジウム前日・9月4日までにYouTubeで視聴できるURLをメールで送ります。
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2022年08月22日
【焦点】会社側の妨害に負けず米国で労組が次々誕生 米国人の7割近くが支持=橋詰雅博
世界最大コーヒーショップチェーンのスターバックスでは米国内200店舗以上で労働組合が結成された。全米レストラン協会は「米国の大手飲食店チェーンのうち労組が一番強い会社になった」と評した。
会社側は組合結成に対してあの手この手で阻止した。@中心メンバーの一方的な解雇、A突然の店舗閉鎖、B新たに配置したマネージャーが予告なしにシフトを変更し指示に従わない従業員は解雇すると脅す、C作成した特別ウェブサイトに「労組はコーヒーを作る代わりに組合費を集めてももうけている」「求めたストに不参加なら労組は罰金を科す」などと反撃した――。
今年4月にニューヨーク市の倉庫で初の組合が生まれたアマゾンでも会社側は妨害行動に出た。アラバマ州では、組合結成の是非を問う投票が認められると(2020年8月)、反対票を投じるようにと書かれたポスターを倉庫内のトイレにまで貼った。「団体交渉は結果的に労働者の損失につながる」「労組幹部は組合費から毎年10万ドル以上を使い車の購入にあてた」と書いたメールを従業員に送信した。
根拠のない批判を流す一方では懐柔策も。最低でも時給15ドル(同州最低賃金の2倍)の賃金を支払い、医療健康保険にも加入させる。こうした待遇を提供するのだから年間50ドルの組合費を支払う必要はない。
従業員による投票は結局、コロナ禍の影響で郵便投票になったが、会社側は郵政公社に依頼し倉庫の入り口付近の監視カメラのそばに郵便箱を設置させた。従業員のだれが投票したのかなどを把握できるようにしたのだ。
アラバマ州でのアマゾンの組合結成は持ち越しになっている。しかし、同じ巨大IT企業のグーグルやアップルにも組合は誕生している。
賃上げを上回るすごい物価高騰が組合結成の主因だ。自分たちの暮らしをよくしたいため労組が拡大していることについて民主党のサンダース上院議員は「労働者は機械の歯車ではない」とツイッターで主張した。
昨年の米ギャラップ世論調査でも米国人の7割近くが労組を支持していて、1965年以来最も高い数値を記録した。
米国の労働運動は大きな転換点に突入しているようだ。
橋詰雅博
会社側は組合結成に対してあの手この手で阻止した。@中心メンバーの一方的な解雇、A突然の店舗閉鎖、B新たに配置したマネージャーが予告なしにシフトを変更し指示に従わない従業員は解雇すると脅す、C作成した特別ウェブサイトに「労組はコーヒーを作る代わりに組合費を集めてももうけている」「求めたストに不参加なら労組は罰金を科す」などと反撃した――。
今年4月にニューヨーク市の倉庫で初の組合が生まれたアマゾンでも会社側は妨害行動に出た。アラバマ州では、組合結成の是非を問う投票が認められると(2020年8月)、反対票を投じるようにと書かれたポスターを倉庫内のトイレにまで貼った。「団体交渉は結果的に労働者の損失につながる」「労組幹部は組合費から毎年10万ドル以上を使い車の購入にあてた」と書いたメールを従業員に送信した。
根拠のない批判を流す一方では懐柔策も。最低でも時給15ドル(同州最低賃金の2倍)の賃金を支払い、医療健康保険にも加入させる。こうした待遇を提供するのだから年間50ドルの組合費を支払う必要はない。
従業員による投票は結局、コロナ禍の影響で郵便投票になったが、会社側は郵政公社に依頼し倉庫の入り口付近の監視カメラのそばに郵便箱を設置させた。従業員のだれが投票したのかなどを把握できるようにしたのだ。
アラバマ州でのアマゾンの組合結成は持ち越しになっている。しかし、同じ巨大IT企業のグーグルやアップルにも組合は誕生している。
賃上げを上回るすごい物価高騰が組合結成の主因だ。自分たちの暮らしをよくしたいため労組が拡大していることについて民主党のサンダース上院議員は「労働者は機械の歯車ではない」とツイッターで主張した。
昨年の米ギャラップ世論調査でも米国人の7割近くが労組を支持していて、1965年以来最も高い数値を記録した。
米国の労働運動は大きな転換点に突入しているようだ。
橋詰雅博
2022年08月21日
【今週の風考計】8.21─「カルト規制法」の立案に向け議論を始めよう!
今も続く「特異集団」の活動
★統一教会は、2009年以降、法令順守を徹底してきたという。だが「霊感商法」の被害救済に取り組む全国弁護団は「違法な献金強要や勧誘行為はなくなっていない」と指摘、その被害はコンプライアンス宣言後も13年間で138億円に上るという。
★公安調査庁は、2005年と06年の「内外情勢の回顧と展望」をまとめた報告書に、統一教会を「特異集団」と記載し、「社会通念とかけ離れた特異な主義・主張に基づいて活動を行う集団」と定義した。ところが第1次安倍政権が発足した2007年になるや、「特異集団」の項目が消えている。
★この経過から見ても統一教会への対応の甘さがもたらした弊害は大きい。統一教会と自民党との構造的な癒着や接触が、直近まで続いていた事例が続出している。まさに「特異集団」、いやカルト組織である統一教会が、霊感商法や多額の強制献金を続け、さらに国政に関与し影響力を及ぼしてきたのは間違いない。
フランスの「反カルト法」
★ヨーロッパでも1980年代に統一教会に入信した信者と家族との問題が頻発し、新興宗教に対する規制が真剣に議論されるようになってきた。日本で「霊感商法」や多額の献金が社会問題となっていたころだ。
そこへ1995年、日本でオウム真理教が起こした地下鉄サリン事件の深刻な事態が加わり、ヨーロッパ各国でも、カルト宗教に対する本格的な議論が始まったといわれる。
★なかでもフランスは、国は一切の宗教活動に関与してはならないと定め、厳格な政教分離を取っているにもかかわらず、そのフランスがカルト的な宗教活動に対して、どう国は対処すべきか、具体的な立法化の議論を本格化させた。
その努力が実って「反カルト法」が2001年6月に施行され、以降はカルト的な新興宗教は厳重に取り締りの対象となっている。その主な内容は、「社会に危害を及ぼす狂信的な宗教集団」および「反社会的かつ人権と基本的自由を侵害する宗教集団」を取り締まり、解散などを命ずることができるようになった。
★カルト宗教と認定するには10項目の「危険性の判断基準」があるという。主な項目を挙げると、「法外な金銭的要求」「社会に敵対する説教」「多くの訴訟問題」「国家権力への浸透の企て」などがある。
日本でも制定に向けた議論を
★肝心の日本では、1995年当時、オウム真理教をターゲットとした法律が交付されたものの、それ以上の立法化には至らず、問題が置き去りにされてしまった。
とりわけ同時期に統一教会の霊感商法や合同結婚式などが、オウム真理教と肩を並べて報道されていたにもかかわらず、オウム真理教の暴走により、逆に統一教会の存在が霞んでしまった。
★さらに1999年以降、創価学会を母体とする公明党が政権に加わり、宗教的な課題への立法化を避けてきたことにも原因がある。
フランスの反カルト法は、「信教の自由」を守りながら、カルト集団を抑止し被害者を救う法律である。それを参考にしながら、日本版「カルト規制法」をつくるべきだ。本気で法案をつくる議員の努力のみならず、超党派で市民とともに展開する活動が望まれる。(2022/8/21)
★統一教会は、2009年以降、法令順守を徹底してきたという。だが「霊感商法」の被害救済に取り組む全国弁護団は「違法な献金強要や勧誘行為はなくなっていない」と指摘、その被害はコンプライアンス宣言後も13年間で138億円に上るという。
★公安調査庁は、2005年と06年の「内外情勢の回顧と展望」をまとめた報告書に、統一教会を「特異集団」と記載し、「社会通念とかけ離れた特異な主義・主張に基づいて活動を行う集団」と定義した。ところが第1次安倍政権が発足した2007年になるや、「特異集団」の項目が消えている。
★この経過から見ても統一教会への対応の甘さがもたらした弊害は大きい。統一教会と自民党との構造的な癒着や接触が、直近まで続いていた事例が続出している。まさに「特異集団」、いやカルト組織である統一教会が、霊感商法や多額の強制献金を続け、さらに国政に関与し影響力を及ぼしてきたのは間違いない。
フランスの「反カルト法」
★ヨーロッパでも1980年代に統一教会に入信した信者と家族との問題が頻発し、新興宗教に対する規制が真剣に議論されるようになってきた。日本で「霊感商法」や多額の献金が社会問題となっていたころだ。
そこへ1995年、日本でオウム真理教が起こした地下鉄サリン事件の深刻な事態が加わり、ヨーロッパ各国でも、カルト宗教に対する本格的な議論が始まったといわれる。
★なかでもフランスは、国は一切の宗教活動に関与してはならないと定め、厳格な政教分離を取っているにもかかわらず、そのフランスがカルト的な宗教活動に対して、どう国は対処すべきか、具体的な立法化の議論を本格化させた。
その努力が実って「反カルト法」が2001年6月に施行され、以降はカルト的な新興宗教は厳重に取り締りの対象となっている。その主な内容は、「社会に危害を及ぼす狂信的な宗教集団」および「反社会的かつ人権と基本的自由を侵害する宗教集団」を取り締まり、解散などを命ずることができるようになった。
★カルト宗教と認定するには10項目の「危険性の判断基準」があるという。主な項目を挙げると、「法外な金銭的要求」「社会に敵対する説教」「多くの訴訟問題」「国家権力への浸透の企て」などがある。
日本でも制定に向けた議論を
★肝心の日本では、1995年当時、オウム真理教をターゲットとした法律が交付されたものの、それ以上の立法化には至らず、問題が置き去りにされてしまった。
とりわけ同時期に統一教会の霊感商法や合同結婚式などが、オウム真理教と肩を並べて報道されていたにもかかわらず、オウム真理教の暴走により、逆に統一教会の存在が霞んでしまった。
★さらに1999年以降、創価学会を母体とする公明党が政権に加わり、宗教的な課題への立法化を避けてきたことにも原因がある。
フランスの反カルト法は、「信教の自由」を守りながら、カルト集団を抑止し被害者を救う法律である。それを参考にしながら、日本版「カルト規制法」をつくるべきだ。本気で法案をつくる議員の努力のみならず、超党派で市民とともに展開する活動が望まれる。(2022/8/21)
2022年08月20日
【オピニオン】記者守らぬ朝日に疑問 映画「標的」全国上映会=山田寿彦
元日本軍慰安婦が名乗り出た記事を巡り、「捏造記者」と激しいバッシングを浴びた元朝日新聞記者、植村隆さんの闘いを記録したドキュメンタリー映画『標的』(西嶋真司監督、99分)が全国各地で上映されている。朝日新聞社は検証紙面で「捏造」を否定しただけで、植村さんの闘いを支援する姿勢を全く示さなかった。映画に、それを問う視点が欠けていることが惜しまれる。
戦後、朝日は社史に汚点を残した記事捏造を2回犯している。伊藤律架空会見記(1950年)とサンゴ記事捏造事件(1989年)で、朝記者の名は今や忘れ去られている。だが、植村バッシングでは執筆した記者個人が「捏造」の事実がないのに執拗に「標的」とされ、勤務先(北星学園大学)や家族までもが「標的」とされた。矢面に立つべき朝日新聞「社」は最後まで後ろに隠れ続けた。
映画に、植村さんの名誉棄損訴訟の被告の一人でジャーナリストの櫻井よしこ氏の記者会見シーンがある。「植村さんに取材しなかったのはなぜか」と問われた櫻井氏はこう答えている。
「朝日新聞に取材を申し入れたら、木で鼻をくくった回答しかなかった。だから植村さんへの取材はしなかった」
新聞社は朝日に限らず、自身が取材対象になると、「紙面がすべて」という常套句で説明責任を回避する体質がある。朝日は検証紙面で「女子挺身隊」と「従軍慰安婦」の混同を訂正、植村さんの記事を「事実のねじ曲げない」と結論付けた。説明はしないという朝日の姿勢に驚きはない。しかし、自社の記事が「捏造」と誹謗された責任を記者個人に負わせ続けた朝日新聞「社」の卑劣さは歴史に刻まれるべきだろう。
バッシングの理不尽が知られ、反応した新聞・テレビは名誉棄損訴訟に転じて以降は冷淡になっていく。
北海道での『標的』連続上映会に先立つ6月7日、道政記者クラブ(加盟29社)で事前レクチャーがあった。道政記者クラブ(加盟29社)であった。だが取材に現れたのは朝日の記者1人だけだった。
朝日は告知記事に続き、「(慰安婦と告白した女性が)強制的に連行されたという印象を与えるもので、安易かつ不用意な記載」だったとして「その部分は誤りとして訂正した」と、植村さんが訂正が必要な「誤報」を書いたとも読める注釈≠わざわざ付けた。
経過の詳細を忘れたか知らない読者が、これをどう受け止めただろうか。
山田寿彦(北海道支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
戦後、朝日は社史に汚点を残した記事捏造を2回犯している。伊藤律架空会見記(1950年)とサンゴ記事捏造事件(1989年)で、朝記者の名は今や忘れ去られている。だが、植村バッシングでは執筆した記者個人が「捏造」の事実がないのに執拗に「標的」とされ、勤務先(北星学園大学)や家族までもが「標的」とされた。矢面に立つべき朝日新聞「社」は最後まで後ろに隠れ続けた。
映画に、植村さんの名誉棄損訴訟の被告の一人でジャーナリストの櫻井よしこ氏の記者会見シーンがある。「植村さんに取材しなかったのはなぜか」と問われた櫻井氏はこう答えている。
「朝日新聞に取材を申し入れたら、木で鼻をくくった回答しかなかった。だから植村さんへの取材はしなかった」
新聞社は朝日に限らず、自身が取材対象になると、「紙面がすべて」という常套句で説明責任を回避する体質がある。朝日は検証紙面で「女子挺身隊」と「従軍慰安婦」の混同を訂正、植村さんの記事を「事実のねじ曲げない」と結論付けた。説明はしないという朝日の姿勢に驚きはない。しかし、自社の記事が「捏造」と誹謗された責任を記者個人に負わせ続けた朝日新聞「社」の卑劣さは歴史に刻まれるべきだろう。
バッシングの理不尽が知られ、反応した新聞・テレビは名誉棄損訴訟に転じて以降は冷淡になっていく。
北海道での『標的』連続上映会に先立つ6月7日、道政記者クラブ(加盟29社)で事前レクチャーがあった。道政記者クラブ(加盟29社)であった。だが取材に現れたのは朝日の記者1人だけだった。
朝日は告知記事に続き、「(慰安婦と告白した女性が)強制的に連行されたという印象を与えるもので、安易かつ不用意な記載」だったとして「その部分は誤りとして訂正した」と、植村さんが訂正が必要な「誤報」を書いたとも読める注釈≠わざわざ付けた。
経過の詳細を忘れたか知らない読者が、これをどう受け止めただろうか。
山田寿彦(北海道支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
2022年08月19日
【22緑陰図書―私のおすすめ】教育への政治介入に警鐘を鳴らす=前川喜平(現代教育行政研究会代表)
斉加尚代監督のドキュメンタリー映画「教育と愛国」は、すでに見たという人も多いだろう。2017年にギャラクシー賞を受賞したテレビ番組に「表現の不自由展・その後」や日本学術会議の会員任命拒否問題など、その後の取材を加えて映画化したものだ。この映画に合わせて読むといいのが、斉加尚代・毎日放送映像取材班『教育と愛国 誰が教室を窒息させるのか』(岩波書店)だ。
第T部はテレビ番組の内容をより詳しく描く。育鵬社教科書の執筆者伊藤隆東大名誉教授の、映像では割愛された発言が興味深い。たとえば日本学術会議会員への任命を拒否された加藤陽子東大教授については、「彼女はぼくが指導した」「あれは本性を隠してたな」などと語る。
第U部は橋下徹大阪府知事(当時)ら大阪維新の会が学校現場に対して行った数々の強権的な介入の様子が描かれる。大阪では教員志望者が減少し、「僕は本を読まないんです」と言う国語教師まで出現したという。吉村洋文大阪市長(当時)の意向により、学力テストの結果が校長のボーナスに反映されることになった。悪しき成果主義の最たるものだ。
ジェリー・Z・ミュラー(松本裕訳)『測りすぎ―なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』(みすず書房)は、測定基準(メトリクス)による実績の測定に執着することが引き起こす弊害を、ふんだんな事例を挙げて説明する。「学業成績の測定結果に応じた報酬が良いと主張する側の自己満足は、本当に子どもたちを教育しようと努力する人々を犠牲にする」。まさに大阪で起きていることだ。原題は「The Tyranny of Metrics」。ところどころ誤訳があるので、原書と照らし合わせて読むといい。ただし、著者が諜報活動において透明性は致命的だとして、E・スノーデンの行動を批判しているのには賛同できない。
2022年08月18日
【映画の鏡】沖縄戦の苦悩 伝え続ける『島守の塔』復帰50年に描く戦争の愚かさ=鈴木賀津彦
c2022 映画「島守の塔」製作委員会
20万人以上が犠牲となった太平洋戦争末期の沖縄戦で、住人たちがどんな思いでいたのかを、沖縄県知事の島田叡(あきら=写真=左)、県警察部長荒井退造(同=右)ら主人公の苦悩を掘り下げながら丁寧に描いている。
完成披露試写会が6月30日に都内で開かれ、五十嵐匠監督、島田を演じた萩原聖人、荒井役の村上淳、知事付になった軍国少女の比嘉凜役の吉岡里穂、生き残った凛の晩年を演じた香川京子が挨拶。4人とも、コロナ禍で撮影が1年8カ月も中断されたのを乗り越え、遂に完成できたのは「作品へ込めたみんなの思いが奇跡を起こした」と振り返った。
この作品を本欄で取り上げたのは一昨年の8月号、その時は<製作の決意は揺るがず、新聞社が連携「命の尊さと平和」発信>という見出しで、撮影の中断にもかかわらず「サポーター」を募集して、製作委員会が「大きな平和事業に発展させていきます」と強い決意で動きだしていることを伝えた。そんな製作過程を見てきたこともあり、軍拡の動きなど現在の危機的な平和の状況を跳ね飛ばせる力強さを、本作から感じることができた。
五十嵐監督はメッセージで「ウクライナの戦争で製鉄所の地下に逃れた人々が、ガマの中で息をひそめる沖縄の方々とダブってしまう。かつて私達が経験した戦争の時代を知る人々がいなくなりつつある今、この映画は永遠に生き続けることを祈念する」と述べている。
ロードショーが終わっても本作を見続けてもらえる仕組みとして、沖縄へ修学旅行に行く学校で上映し続けてはどうだろう。伝え続けるために特に若い人たちに見てほしい。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
20万人以上が犠牲となった太平洋戦争末期の沖縄戦で、住人たちがどんな思いでいたのかを、沖縄県知事の島田叡(あきら=写真=左)、県警察部長荒井退造(同=右)ら主人公の苦悩を掘り下げながら丁寧に描いている。
完成披露試写会が6月30日に都内で開かれ、五十嵐匠監督、島田を演じた萩原聖人、荒井役の村上淳、知事付になった軍国少女の比嘉凜役の吉岡里穂、生き残った凛の晩年を演じた香川京子が挨拶。4人とも、コロナ禍で撮影が1年8カ月も中断されたのを乗り越え、遂に完成できたのは「作品へ込めたみんなの思いが奇跡を起こした」と振り返った。
この作品を本欄で取り上げたのは一昨年の8月号、その時は<製作の決意は揺るがず、新聞社が連携「命の尊さと平和」発信>という見出しで、撮影の中断にもかかわらず「サポーター」を募集して、製作委員会が「大きな平和事業に発展させていきます」と強い決意で動きだしていることを伝えた。そんな製作過程を見てきたこともあり、軍拡の動きなど現在の危機的な平和の状況を跳ね飛ばせる力強さを、本作から感じることができた。
五十嵐監督はメッセージで「ウクライナの戦争で製鉄所の地下に逃れた人々が、ガマの中で息をひそめる沖縄の方々とダブってしまう。かつて私達が経験した戦争の時代を知る人々がいなくなりつつある今、この映画は永遠に生き続けることを祈念する」と述べている。
ロードショーが終わっても本作を見続けてもらえる仕組みとして、沖縄へ修学旅行に行く学校で上映し続けてはどうだろう。伝え続けるために特に若い人たちに見てほしい。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
2022年08月17日
2022年08月16日
【月刊マスコミ評・新聞】暴力は自由な社会に対する挑戦=山田 明
参院選投開票2日前、衝撃的な事件が起きた。安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃され、亡くなった。卑劣極まるテロである。事件の背景や警備体制など、徹底した捜査・検証を求めたい。気になるのは、事件後「安倍政治」を一方的に礼賛する報道が目立つことだ。選挙への影響も懸念される。
その中で北海道新聞9日社説「言論封殺する卑劣なテロ」に注目した。安倍氏「自身の保守的・復古的な政治信条を押し通そうとした結果、国民の間の分断が深まった側面は否めない。森友・加計問題、桜を見る会など数々の疑惑も最後まで説明責任を果たさなかった。しかし、そうした「安倍政治」への批判や異議は、あくまでも健全な言論を通じてなされるべきだ。暴力で口を封じようとする行為は自由な社会に対する重大な挑戦である。」
息苦しさが漂う中で、参院選が終わった。選挙結果は、自民が改選議席の単独過半数を占め大勝した。非改選議席と合わせ、自民・公明で参院でも過半数を維持した。立憲は議席を減らし、維新は衆院選に続き伸長した。昨年の衆院選後の「野党分断」により、自民は1人区で圧勝した。野党は「共闘」しないことには、与党の厚い壁を崩すことなどできない。今回の選挙結果をシビアに検証、評価すべきだ。
自公と維新・国民の改憲勢力は参院でも3分の2の議席を確保した。憲法9条などの改憲、ウクライナ戦争に便乗した軍拡・「核共有」など、日本の平和を脅かす動きから目が離せない。
今年は1972年5月の沖縄の本土復帰から50年になる。琉球新報6月27日朝刊は、沖縄で開催されたシンポジウムの宮本憲一氏講演を詳しく伝えている。
沖縄戦を繰り返すなという主張が沖縄から出ているように、ウクライナ戦争は沖縄の危機を呼び起こす問題だ。今のまま日米軍事ブロック化を強化すれば、沖縄が再び戦場になることは避けがたい。沖縄戦を二度と起こさないという思いは日本人全体の決意でないといけないと、警鐘を鳴らす。
とかく好戦的なムードに流され、軍事同盟や軍拡に走りがちになるが、「外交を含めた総合的な戦略を構築することこそ、政治が果たすべき役割である」(朝日6月24日社説)。政治とともにメディアも真価が問われている。
山田 明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
その中で北海道新聞9日社説「言論封殺する卑劣なテロ」に注目した。安倍氏「自身の保守的・復古的な政治信条を押し通そうとした結果、国民の間の分断が深まった側面は否めない。森友・加計問題、桜を見る会など数々の疑惑も最後まで説明責任を果たさなかった。しかし、そうした「安倍政治」への批判や異議は、あくまでも健全な言論を通じてなされるべきだ。暴力で口を封じようとする行為は自由な社会に対する重大な挑戦である。」
息苦しさが漂う中で、参院選が終わった。選挙結果は、自民が改選議席の単独過半数を占め大勝した。非改選議席と合わせ、自民・公明で参院でも過半数を維持した。立憲は議席を減らし、維新は衆院選に続き伸長した。昨年の衆院選後の「野党分断」により、自民は1人区で圧勝した。野党は「共闘」しないことには、与党の厚い壁を崩すことなどできない。今回の選挙結果をシビアに検証、評価すべきだ。
自公と維新・国民の改憲勢力は参院でも3分の2の議席を確保した。憲法9条などの改憲、ウクライナ戦争に便乗した軍拡・「核共有」など、日本の平和を脅かす動きから目が離せない。
今年は1972年5月の沖縄の本土復帰から50年になる。琉球新報6月27日朝刊は、沖縄で開催されたシンポジウムの宮本憲一氏講演を詳しく伝えている。
沖縄戦を繰り返すなという主張が沖縄から出ているように、ウクライナ戦争は沖縄の危機を呼び起こす問題だ。今のまま日米軍事ブロック化を強化すれば、沖縄が再び戦場になることは避けがたい。沖縄戦を二度と起こさないという思いは日本人全体の決意でないといけないと、警鐘を鳴らす。
とかく好戦的なムードに流され、軍事同盟や軍拡に走りがちになるが、「外交を含めた総合的な戦略を構築することこそ、政治が果たすべき役割である」(朝日6月24日社説)。政治とともにメディアも真価が問われている。
山田 明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
2022年08月15日
【月刊マスコミ評・放送】低調な選挙戦とテレビの責任=岩崎貞明
本紙が発行される頃には参議院選挙の結果もすでに判明していることだろうが、今回はスタート前から「史上最も低調な選挙戦」と言われるほど、盛り上がりの感じられない選挙だった。野党共闘が不十分な形になってしまったことはもちろん大きな要因だと思われるが、マスメディア、とくにテレビの報道が精彩を欠いていたことも、その責任の一端を担っていたのではないか。
たとえば、選挙が公示された6月22日の、各局の夜のニュース番組を見比べてみる。NHK『ニュースウオッチ9』はさすがに参院選スタートをトップ項目に置き、有権者が最も重視する政策課題として1番目に経済対策、2番目に外交・安全保障をあげていることなどを紹介していたが、民放は、日本テレビ『NEWS ZERO』は「さいたま市で立てこもり男を逮捕」「23歳女性、別荘で監禁され死亡」「上司から“侮辱賞状”で自殺」「諸物価の値上げ」と来て、ようやく「参院選公示」となる。TBS『NEWS23』も「トー横のハウル逮捕」「さいたま市の立てこもり男逮捕」と事件ものが来て、特集「ラッパーAwichと沖縄」(これはなかなか好企画だったが)を挟んで「コロナ給付金10億円詐欺逮捕」の後、参院選関連の項目となっていた。テレビ朝日『報道ステーション』は「アフガニスタンで大地震」「世界各地で物価高反対デモ」の後、三番目に参院選だった。
いわゆる「改憲勢力」が三分の二以上の議席を占め、いつでも改憲を発議できるようになってしまうという重要な事態に直面しているのに、この体たらく。自民党議員からは「政治のことを考えなくていいのは良い国」「野党から来た話は聞かない」など、徹底的に批判すべき暴言も続発していたのに、テレビ報道は全体的に大人しかった。
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は5年前、「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」を公表、「放送局には選挙に関する報道と評論の自由がある」「選挙に関する報道と論評に求められているのは量的公平ではない」と明確に指摘している。また今回は「#選挙特番は投票日の前に放送を」とのネット署名も呼びかけられ、5万筆以上の署名が在京テレビ各局に提出された。
テレビの選挙報道に、まだ期待を寄せようという声がある。今回、テレビ東京は投票日前日に特番を編成したが、他局は今後、この声にどう応えるのか。
岩崎貞明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
たとえば、選挙が公示された6月22日の、各局の夜のニュース番組を見比べてみる。NHK『ニュースウオッチ9』はさすがに参院選スタートをトップ項目に置き、有権者が最も重視する政策課題として1番目に経済対策、2番目に外交・安全保障をあげていることなどを紹介していたが、民放は、日本テレビ『NEWS ZERO』は「さいたま市で立てこもり男を逮捕」「23歳女性、別荘で監禁され死亡」「上司から“侮辱賞状”で自殺」「諸物価の値上げ」と来て、ようやく「参院選公示」となる。TBS『NEWS23』も「トー横のハウル逮捕」「さいたま市の立てこもり男逮捕」と事件ものが来て、特集「ラッパーAwichと沖縄」(これはなかなか好企画だったが)を挟んで「コロナ給付金10億円詐欺逮捕」の後、参院選関連の項目となっていた。テレビ朝日『報道ステーション』は「アフガニスタンで大地震」「世界各地で物価高反対デモ」の後、三番目に参院選だった。
いわゆる「改憲勢力」が三分の二以上の議席を占め、いつでも改憲を発議できるようになってしまうという重要な事態に直面しているのに、この体たらく。自民党議員からは「政治のことを考えなくていいのは良い国」「野党から来た話は聞かない」など、徹底的に批判すべき暴言も続発していたのに、テレビ報道は全体的に大人しかった。
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は5年前、「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」を公表、「放送局には選挙に関する報道と評論の自由がある」「選挙に関する報道と論評に求められているのは量的公平ではない」と明確に指摘している。また今回は「#選挙特番は投票日の前に放送を」とのネット署名も呼びかけられ、5万筆以上の署名が在京テレビ各局に提出された。
テレビの選挙報道に、まだ期待を寄せようという声がある。今回、テレビ東京は投票日前日に特番を編成したが、他局は今後、この声にどう応えるのか。
岩崎貞明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
2022年08月14日
【今週の風考計】8.14─戦後77年「8・15」を顧みるに大事な出来事
「標的」にされた植村隆さんの苦闘
◆8月14日は「慰安婦」記念日だ。今から31年前の1991年8月11日、朝日新聞の記者・植村隆さんが日本軍慰安婦とされた金学順(キム・ハクスン)さんから、その被害事実を初めて聞き出し、朝日新聞大阪版にスクープ報道した。
韓国では、その日に由来して8月14日を「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」として、2018年以降、国の記念日に制定している。
◆ここで忘れてならないのは、植村さんのスクープ報道から23年もたった2014年、第2次安倍政権がスタートした直後、突如として植村隆さんに対し「捏造」バッシングが始まったことである。
西岡力氏が植村さんの記事を、「日本軍によって強制連行されたという内容になっている」と「週刊文春」誌上で問題視し、さらに右派系識者の論難やFAXやSNSによる脅迫・嫌がらせなど、家族にも被害が及ぶ攻撃が執拗に繰り返された事実である。
◆これに屈した朝日新聞社は同年12月23日、植村さん執筆の記事には<「『女子挺身隊』の名で戦場に連行され」とした部分は誤りであり、おわびして訂正します>と謝罪記事を掲載してしまった。自社の記者を切り捨てたのだ。
韓国で「女子挺身隊」といえば、「従軍慰安婦」を指すとの理解は常識である。
戦後77年の平和がズタズタにされる
◆15日は終戦記念日。明治維新(1868年)から敗戦(1945年)までの77年が「戦争の時代」だとすれば、敗戦後から平和憲法のもとに歩んできた戦後77年は「平和の時代」である。
しかし、いまその歩みに急ブレーキが掛けられている。専守防衛から敵基地攻撃にカジを切り、米国の核兵器を国内に配備し、日米で共同運用する「核共有」に向け、憲法9条をズタズタにする動きが強まっている。
◆第2次岸田内閣が発足しても、統一教会との関係では閣僚20人のうち7人、副大臣・政務官54人中19人が接点を持っていた。また安倍政権の大軍拡・改憲シフトは継承し、コロナ感染拡大・物価高騰・賃金格差・ジェンダー問題などなど、山積する課題への取り組みは「検討する」のみ。まさに「検討使」内閣だ。
ベーブ・ルースと大谷翔平
◆16日は「ベーブ・ルース忌」だ。あの野球の神様≠ニいわれた米国の大リーガー、ベーブ・ルースが、今から74年前の1948年に53歳で亡くなった日。
くしくもこの10日に、エンゼルス大谷翔平投手が、「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」を達成した。元祖二刀流のベーブ・ルースが1918年に達成して以来、104年ぶりである。その快挙への賞賛は世界に拡がる。
40歳になったベーブ・ルースは、戦前・1934年11月2日に来日している。米国大リーグ選抜チームの一員として、大凶作に見舞われた国内を巡回し全18試合を行った。日本チームは歯が立たず大敗した。
デッチあげられた松川事件
◆さて、もう一つ、今から73年前、1949年8月17日、松川事件が勃発した。当初から松川事件は、下山事件(7/6)、三鷹事件(7/15)と合わせ、国鉄労組への弾圧であり捏造の疑いが言われていた。
1963年9月12日、最高裁は無罪を言い渡した。裁判の流れを決定的に変え、無罪を勝ち取る経過には、新証拠の発見とともに、作家広津和郎らによる被告の救済支援活動をはじめ、学者・文化人、市民をも巻き込んだ国民運動の発展があった。日本ジャーナリスト会議も参加している。
◆こうして振り返ってみると、「8・15」前後には、エポックメイキングな出来事が起きていたのだ。歴史を見つめ今を考える良い機会をいただいた。(2022/8/14)
◆8月14日は「慰安婦」記念日だ。今から31年前の1991年8月11日、朝日新聞の記者・植村隆さんが日本軍慰安婦とされた金学順(キム・ハクスン)さんから、その被害事実を初めて聞き出し、朝日新聞大阪版にスクープ報道した。
韓国では、その日に由来して8月14日を「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」として、2018年以降、国の記念日に制定している。
◆ここで忘れてならないのは、植村さんのスクープ報道から23年もたった2014年、第2次安倍政権がスタートした直後、突如として植村隆さんに対し「捏造」バッシングが始まったことである。
西岡力氏が植村さんの記事を、「日本軍によって強制連行されたという内容になっている」と「週刊文春」誌上で問題視し、さらに右派系識者の論難やFAXやSNSによる脅迫・嫌がらせなど、家族にも被害が及ぶ攻撃が執拗に繰り返された事実である。
◆これに屈した朝日新聞社は同年12月23日、植村さん執筆の記事には<「『女子挺身隊』の名で戦場に連行され」とした部分は誤りであり、おわびして訂正します>と謝罪記事を掲載してしまった。自社の記者を切り捨てたのだ。
韓国で「女子挺身隊」といえば、「従軍慰安婦」を指すとの理解は常識である。
戦後77年の平和がズタズタにされる
◆15日は終戦記念日。明治維新(1868年)から敗戦(1945年)までの77年が「戦争の時代」だとすれば、敗戦後から平和憲法のもとに歩んできた戦後77年は「平和の時代」である。
しかし、いまその歩みに急ブレーキが掛けられている。専守防衛から敵基地攻撃にカジを切り、米国の核兵器を国内に配備し、日米で共同運用する「核共有」に向け、憲法9条をズタズタにする動きが強まっている。
◆第2次岸田内閣が発足しても、統一教会との関係では閣僚20人のうち7人、副大臣・政務官54人中19人が接点を持っていた。また安倍政権の大軍拡・改憲シフトは継承し、コロナ感染拡大・物価高騰・賃金格差・ジェンダー問題などなど、山積する課題への取り組みは「検討する」のみ。まさに「検討使」内閣だ。
ベーブ・ルースと大谷翔平
◆16日は「ベーブ・ルース忌」だ。あの野球の神様≠ニいわれた米国の大リーガー、ベーブ・ルースが、今から74年前の1948年に53歳で亡くなった日。
くしくもこの10日に、エンゼルス大谷翔平投手が、「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」を達成した。元祖二刀流のベーブ・ルースが1918年に達成して以来、104年ぶりである。その快挙への賞賛は世界に拡がる。
40歳になったベーブ・ルースは、戦前・1934年11月2日に来日している。米国大リーグ選抜チームの一員として、大凶作に見舞われた国内を巡回し全18試合を行った。日本チームは歯が立たず大敗した。
デッチあげられた松川事件
◆さて、もう一つ、今から73年前、1949年8月17日、松川事件が勃発した。当初から松川事件は、下山事件(7/6)、三鷹事件(7/15)と合わせ、国鉄労組への弾圧であり捏造の疑いが言われていた。
1963年9月12日、最高裁は無罪を言い渡した。裁判の流れを決定的に変え、無罪を勝ち取る経過には、新証拠の発見とともに、作家広津和郎らによる被告の救済支援活動をはじめ、学者・文化人、市民をも巻き込んだ国民運動の発展があった。日本ジャーナリスト会議も参加している。
◆こうして振り返ってみると、「8・15」前後には、エポックメイキングな出来事が起きていたのだ。歴史を見つめ今を考える良い機会をいただいた。(2022/8/14)
2022年08月13日
【安倍銃撃死事件】テレビ各社 特番競い12時間 旧統一教会の名 選挙後まで伏せる=河野慎二
安倍元首相銃撃死事件について、テレビ東京を除く各局は当日夜のゴールデンタイムの看板番組を休止し、特別報道番組に切り替えて放送した。
NHKは「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」を拡大し、午後7時から11時まで放送した。
日本テレビは午後7時から約4時間半「news every特別版」を放送。TV朝日は「報道ステーション」を、TBSは「Nスタnews23緊急版」をそれぞれ前倒しして4時間以上放送。最長の特番を組んだのがフジテレビで「FNN緊急特報」は午後7時から5時間10分に及んだ。フジは同日午前11時45分から特番に切り替えているから、通算12時間25分という異例の特別編成となった。
特番の内容は、銃撃の瞬間の映像や山上徹也容疑者が取り押さえられるシーンなどを繰り返し放送し、スタジオで記者や 関係者が話し合う構成で、各局ほぼ横並びだ。
ところが、各局特番はこの宗教団体の名前を明らかにしていない。事件解明の鍵につながる重要な問題だ。捜査当局をはじめ、容疑者の実家や関係先を取材すれば、簡単に分かるはずだが、取材はどうだったのか。
この宗教団体が「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)であることが11日に判明する。記者会見した田中富広会長は「(容疑者の)母親が会員である」ことを認め、「02年ごろ破産した」と説明したが、献金額については「把握していない」として明言を避けた。安倍元首相との関係に
ついては「天宙平和連合(UPF)」の行事に「安倍元首相からメッセージを送ってもらったことはある」と述べた。
その「行事」とは、21年9月12日に行われたUPFのイベントで、安倍元首相はUPFの活動を称賛するリモート演説を行っている。
安倍元首相は旧統一教会と深い関係にある。官房長官時代の2006年には、統一教会系団体の合同結婚式を兼ねた集会に祝電を送るなど、関与が指摘されている。
安倍氏の祖父である岸信介元首相が統一教会に協力して反共団体の「国際勝共連合」を日本に設立させたことはよく知られている。東京新聞は12日「山上容疑者が恨みを抱いていたとされる宗教団体について「(海外から日本に)招き入れたのが岸信介元首相。だから安倍氏を殺したと話している」と報じ、同日の「報道ステーション」も取り上げた。
日本テレビは13日午前のニュ−スで、安倍元首相銃撃死事件が参院選の結果に与えた影響について「大いに」32%と「多少は」54%を合わせて、86%に上ったと報道。暴力によって日本の民主主義が脅かされる不安を「感じる」と答えた人は73%に達したと伝えた。
河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
NHKは「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」を拡大し、午後7時から11時まで放送した。
日本テレビは午後7時から約4時間半「news every特別版」を放送。TV朝日は「報道ステーション」を、TBSは「Nスタnews23緊急版」をそれぞれ前倒しして4時間以上放送。最長の特番を組んだのがフジテレビで「FNN緊急特報」は午後7時から5時間10分に及んだ。フジは同日午前11時45分から特番に切り替えているから、通算12時間25分という異例の特別編成となった。
特番の内容は、銃撃の瞬間の映像や山上徹也容疑者が取り押さえられるシーンなどを繰り返し放送し、スタジオで記者や 関係者が話し合う構成で、各局ほぼ横並びだ。
ところが、各局特番はこの宗教団体の名前を明らかにしていない。事件解明の鍵につながる重要な問題だ。捜査当局をはじめ、容疑者の実家や関係先を取材すれば、簡単に分かるはずだが、取材はどうだったのか。
この宗教団体が「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)であることが11日に判明する。記者会見した田中富広会長は「(容疑者の)母親が会員である」ことを認め、「02年ごろ破産した」と説明したが、献金額については「把握していない」として明言を避けた。安倍元首相との関係に
ついては「天宙平和連合(UPF)」の行事に「安倍元首相からメッセージを送ってもらったことはある」と述べた。
その「行事」とは、21年9月12日に行われたUPFのイベントで、安倍元首相はUPFの活動を称賛するリモート演説を行っている。
安倍元首相は旧統一教会と深い関係にある。官房長官時代の2006年には、統一教会系団体の合同結婚式を兼ねた集会に祝電を送るなど、関与が指摘されている。
安倍氏の祖父である岸信介元首相が統一教会に協力して反共団体の「国際勝共連合」を日本に設立させたことはよく知られている。東京新聞は12日「山上容疑者が恨みを抱いていたとされる宗教団体について「(海外から日本に)招き入れたのが岸信介元首相。だから安倍氏を殺したと話している」と報じ、同日の「報道ステーション」も取り上げた。
日本テレビは13日午前のニュ−スで、安倍元首相銃撃死事件が参院選の結果に与えた影響について「大いに」32%と「多少は」54%を合わせて、86%に上ったと報道。暴力によって日本の民主主義が脅かされる不安を「感じる」と答えた人は73%に達したと伝えた。
河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
2022年08月12日
【リレー時評】民主主義否定の銃撃事件と参議院選挙=清水正文(JCJ代表委員)
この原稿の内容を参院選を中心に検討していたそのさなか、安倍晋三元首相が遊説先の奈良で演説中に、銃撃を受けて心肺停止状態になったというニュースが飛び込んできた。銃撃犯はその場で取り押さえられ、殺人未遂の現行犯で逮捕されたということである。安倍元首相は搬送先の病院で手当てを受けたが、数時間後に亡くなった。その後の報道で、犯人は奈良に住む41歳の男性で海上自衛隊に勤務していたことがあるなどがわかってきたが、犯行に至る背景や動機は今後の捜査にゆだねられる。参院選の投票日を間近に控えて、選挙戦でしのぎを削る与野党の各党首からも嘆きや憤りの声があげられた。
民主主義の根幹である選挙のただ中で、言論の自由を暴力で封殺する卑劣なテロ行為などあってはならない。メディアにかかわる私たちも、言論・表現の自由の大切さを、声を大にして訴えていく必要がある。
一方、安倍元首相の死は痛ましいことではあるが、彼が行ってきた集団的自衛権の一部容認などの憲法解釈の変更や、自衛隊の役割を広げる安全保障法制を成立させ米軍との協力を強めるなどの政策は平和憲法をないがしろにするもので、許されるべきではないことも訴えていく必要がある。
さて参議院選挙であるが、ロシアのウクライナへの侵略に端を発して「戦争か平和か」が大きな問題になっている。このウクライナ侵略をどう止めるのか、バイデン米大統領のいう「民主主義対専制主義のたたかい」という価値観による分断でいいのかが問われている。国際連合に加盟する各国が「国連憲章を守れ」の一点で国際世論がロシアを包囲することが今求められていると思う。
また、この動きに乗じて「核抑止論」や「核共有論」が横行しているが、唯一の戦争被爆国で憲法九条を持つ日本としてあってはならず、軍拡ではなく核兵器禁止条約へ参加し、核廃絶の先頭に立つことこそ求められている。
物価高騰から国民生活を守ることも大きな課題である。消費税を減税し、インボイスは中止する必要がある。また、大企業の内部留保に課税し中小企業を支援して「最低賃金を1500円」に引き上げることも緊急の課題であり、生涯で1億円もの男女の賃金格差をなくすこともジェンダー平等社会の土台である。
資本主義がもたらした気候危機から地球を守るために、石炭火力からの撤退や原発ゼロを進めるとともに100%国産の再生エネルギーの普及をはかることも必要である。
大阪ではカジノ誘致反対の住民投票を求める署名が約21万筆集まり、政府に認可しないよう要請する署名も始まった。
今回の参議院選挙は日本と世界の将来を決める選挙だと言っても過言ではない。選挙結果がどうあろうとも「戦争か平和か」をはじめとした問題や言論・表現の自由を守るたたかいは続く。私たちに今何ができるのかが鋭く問われることになるのは確かである。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
民主主義の根幹である選挙のただ中で、言論の自由を暴力で封殺する卑劣なテロ行為などあってはならない。メディアにかかわる私たちも、言論・表現の自由の大切さを、声を大にして訴えていく必要がある。
一方、安倍元首相の死は痛ましいことではあるが、彼が行ってきた集団的自衛権の一部容認などの憲法解釈の変更や、自衛隊の役割を広げる安全保障法制を成立させ米軍との協力を強めるなどの政策は平和憲法をないがしろにするもので、許されるべきではないことも訴えていく必要がある。
さて参議院選挙であるが、ロシアのウクライナへの侵略に端を発して「戦争か平和か」が大きな問題になっている。このウクライナ侵略をどう止めるのか、バイデン米大統領のいう「民主主義対専制主義のたたかい」という価値観による分断でいいのかが問われている。国際連合に加盟する各国が「国連憲章を守れ」の一点で国際世論がロシアを包囲することが今求められていると思う。
また、この動きに乗じて「核抑止論」や「核共有論」が横行しているが、唯一の戦争被爆国で憲法九条を持つ日本としてあってはならず、軍拡ではなく核兵器禁止条約へ参加し、核廃絶の先頭に立つことこそ求められている。
物価高騰から国民生活を守ることも大きな課題である。消費税を減税し、インボイスは中止する必要がある。また、大企業の内部留保に課税し中小企業を支援して「最低賃金を1500円」に引き上げることも緊急の課題であり、生涯で1億円もの男女の賃金格差をなくすこともジェンダー平等社会の土台である。
資本主義がもたらした気候危機から地球を守るために、石炭火力からの撤退や原発ゼロを進めるとともに100%国産の再生エネルギーの普及をはかることも必要である。
大阪ではカジノ誘致反対の住民投票を求める署名が約21万筆集まり、政府に認可しないよう要請する署名も始まった。
今回の参議院選挙は日本と世界の将来を決める選挙だと言っても過言ではない。選挙結果がどうあろうとも「戦争か平和か」をはじめとした問題や言論・表現の自由を守るたたかいは続く。私たちに今何ができるのかが鋭く問われることになるのは確かである。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号