2022年08月11日

【焦点】財務省は政界工作官庁 省益と栄達のために血道をあげるエリート官僚=橋詰雅博

 岸田文雄政権は財務省の傀儡政権≠ニ言われている。なぜなのか。財務相を9年間務めた麻生太郎副総裁が安倍元首相亡き後のキングメーカーとして君臨し財務省が権力基盤を支えている。6人の首相秘書官のうち2人が財務省出身。政務首席秘書官の嶋田隆氏は元経産省事務次官だが、財政再建論を強く主張した故与謝野馨元財務相の側近で、財務省の考えに近い。岸田最側近の官房副長官の木原誠二衆院議員も財務省OBだ。そもそも岸田派(宏池会)は、旧大蔵省(現財務省)出身の池田勇人が初代会長で、第2代の前尾繁三郎、第3代の大平正芳、第5代の宮沢喜一も大蔵省OBだ。宏池会は、大蔵省・財務省と濃厚な関係を築いている。こうしたシフトを利用して財務省は念願の消費税増税に踏み出そうとしているが、なぜ消費増税にこんなにこだわるのか。

 7月下旬にJCJオンラン講演会に出演した元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩氏はこう解説した。
 「予算配分権を握る財務省は財政が緊縮の方が自分の権威を見せつけられる。
財政が大きく膨らめば、予算配分が増えてありがたみが薄れる。緊縮なら消費増税に賛成してくれるところには予算を多く与えて、そうでないところは少なくという差別を広げることが可能です。橋、ダムの建設や道路整備などいわゆる箇所付け(公共事業の予算や補助金をどの地域のどの事業にいくら配分するかを具体的に決める)では、賛成政治家の地元には多くの金を投入し、反対政治家にはその逆で投入する金は絞り込まれる。一方で減税により企業や業界を支援する代わりに消費増税に賛成してもらう。減税の穴埋めが消費増税だ。税収が薄いが広く課税できる消費税を基軸の財源と財務省は見ている。従って消費増税を一歩でも二歩でも進めたい。実施で手柄を得たエリート官僚は天下り先に困らず、OBとして権力もふるうことができる」

 このため財務省のエリート官僚は政界工作にまい進する。利用できそうな政治家に取り入るため例えば本や論文のゴーストライターをやり情報を得ていたという。情報量は下手な政治部記者よりはるかに多く、予算をつくる経済官庁というより政界工作に特化した官庁と見る向きもある。民主党政権時代、政治部記者として民主党に食い込んでいたという鮫島さんはこんな体験を明らかにした。
 「財務省官僚から民主政権のことを教えてほしいと逆取材≠受け、小沢一郎と鳩山由紀夫グループ、菅直人と仙谷由人グループを分断させる作戦を立てていた。財務省は支援する代わりに消費増税を進めてほしい管・仙谷側に要請していたようだ。増税に向かわせるためメチャクチャなことを平気である。予算書作成はノンキャリ役人に任せ、官僚は政界工作に血道をあげている」
 省益と自分の栄達を優先する財務エリート官僚は国民のためというマインドはゼロのようだ。
 橋詰雅博
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2022年08月09日

【お知らせ】9月24日 JCJ賞贈賞式 上西充子さんが記念講演

 JCJは9月24日午後に東京都文京区の全水道会館で2022年JCJ賞贈賞式を開く。記念講演を法政大学キャリアデザイン学部教授の上西充子さんにお願いした。信頼される報道のあり方などを語っていただく。
 上西教授の専門は労働問題・社会政策。国会審議を解説つきで街頭上映する国会パブリックビューイングを2018年6月に始めた。「ご飯論法」で18年の新語・流行語大賞トップテンを受賞。著書に『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)、『政治と報道』(扶桑社新書)などがある。
 今年のJCJ賞への応募総数は71点で、受賞作は9月初めまでに発表する予定です。
 JCJ賞事務局
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
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2022年08月08日

【JCJ声明】戦前の遺物「国葬」にメディアは明確に反対を

安倍晋三元首相が銃撃を受け死去した。これに対し岸田文雄首相が「国葬」を実施すると閣議決定したことに、批判が強まっている。だが主要メディアの「国葬」に対する姿勢はあいまいだ。「国葬」は天皇主権の明治憲法体制の遺物であり、国民主権・民主主義とは相いれないという立場を、報道機関は明確にし、人々に伝えるべきではないか。「国葬」とは何か歴史を踏まえて検証し、国民の「知る権利」に応え、「国葬」を実施するなと主張することを強く望みたい。

「国葬」は、明治憲法下において天皇の勅令「国葬令」に基づき実施されてきた。敗戦後、日本国憲法成立に伴い、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」第1条により1947年に失効した。日本国憲法の思想信条の自由、内心の自由、政教分離の原則と相いれないからだ。

現在、国葬を行うことにも、その経費を全額国費から支出することにも法的根拠はない。政府は内閣府設置法で内閣府の所掌事務とされている「国の儀式」として閣議決定すれば可能とするが、「国の儀式」に「国葬」が含まれるという法的根拠はない。

1967年10月に吉田茂元首相の国葬が行われた。この時も当時の佐藤栄作首相が閣議決定だけで実施した。翌年の衆議院決算委員会で根拠法がないことについて質疑があった。その後議論が深まることはなく、「国葬」ではない合同葬や「国民葬」が行われてきた。それが今なぜ唐突に「国葬」なのか。

今回の「国葬」に対する主要メディアの批判は、国会で説明していないこと、故人の業績への評価が分かれていることなどに重点を置いている。安倍元首相と旧統一協会との深いつながりが明らかにされてきた今、それらも重要な問題として追及しなければならないのは当然である。

しかし何よりも、「国葬」の最大の問題は、国民に対して特定の個人に対する弔意を事実上強制することにある。国費で行うため、国民は税負担も強制されることになる。「弔意を強制することはない」と政府は言う。しかし、吉田元首相の国葬では、全国でサイレンが鳴らされ、娯楽番組の放送が中止された。

近年でも「日の丸・君が代」を法制化した際、国民には強制しないと政府が説明したにもかかわらず、学校現場などで強制された例は数多い。教員らの処分が横行した。それと同様に、「国葬」への抗議行動が監視や取り締まりの対象になる恐れがないと言えるだろうか。また今後、「国葬」に類する政治的行事が乱発される危険はないだろうか。

「国葬」強行は、戦前回帰、異論封殺、国民総動員につながりかねないという危機感を持って、報道機関は取材に当たってほしい。戦後ジャーナリズムの原点に立ち返って「国葬」にきっぱり反対の論陣を張ることを呼びかける。

以上

2022年8月8日   日本ジャーナリスト会議(JCJ)
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【おすすめ本】琉球新報社+安田浩一―編著『沖縄発 記者コラム 沖縄の新聞記者』―沖縄の状況を照らし出す 記者の等身大のメッセージ=吉原康和(東京新聞編集委員)

 本書は、琉球新報社のデジタル版に2020年11月から1年余、不定期に連載されてきた記者コラムを編集して、単行本化したものだ。
 コラムに登場するのは、中堅からベテラン記者14人と編者でノンフィクションライターの安田浩一。今年5月、沖縄の施政権が返還されてから50年の節目を迎えたが、沖縄の記者たちは、現場で何を感じ、何を思い悩み、ニュースの核心にどう迫ろうとしたのか。「記者コラム」と銘打つことで、取材の内幕や記者個人の思いを形にしたのが琉球新報デジタルで発信した「沖縄発」だった。
 日米両政府に異を唱える沖縄の新聞記者というと、眼をぎらつかせ、眉間にしわをよせて、沖縄への蔑視や差別と闘っているイメージをもたれがちだが、一人ひとりの記者にプライベートがあり、配偶者でもあり、子を持つ親でもある。取材時には喜怒哀楽の感情もわき上がる。時には私生活をなげうったり、逆にプライベートの中で大切なことに気付かされたりするそんなふつうの人間たちだ。
 基地問題に横たわる不条理、沖縄に過重な負担を押しつけつつ、その核心をはぐらし続ける為政者と大手メディアの報道姿勢、沖縄戦の継承の在り方、ジェンダー平等と程遠い沖縄社会の病弊。コラムのそれぞれのテーマは、今の沖縄が置かれた状況を照らし出している。
 「沖縄の等身大の記者たちの息づかいを、肩肘張らずに感じていただければ」。琉球新報社編集局長の松元剛は、本書に寄せている一文で、こう訴える。編者の安田のコメントも、沖縄の新聞記者たちに彩り濃くエールを贈っている。(高文研1980円)
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2022年08月07日

【今週の風考計】8.7─統一教会と自民党の<癒着の闇>を究めるポイント

安倍晋三・元首相の銃撃事件から1カ月。事件の背景にあるカルト教団・統一教会と自民党との癒着が明らかになってきた。だが国会を3日間で閉じるように、この事件の解明を葬ろうと、報道への圧力も含め、様々な動きが出てきた。要警戒だ。復習もかねて、いま大事なポイントを押さえておきたい。

@ まだまだ闇の統一教会の実態
統一教会は1954年5月に韓国・ソウルで創立された。59年には「日本統一教会」が設立され、64年に宗教法人として認証された。その後、大学などでの「原理運動」の布教活動を通して、若者の学業放棄や家出などが社会問題になり、67年には朝日新聞が初めて「親泣かせの『原理運動』」と告発した(7/7付)。
68年には、統一教会が反共産主義運動を担う政治団体「国際勝共連合」を発足させ、70年安保闘争を意識した自民党や保守勢力とのつながりを強めていく。さらに70年代後半から80年代にかけて、信者に大理石の壺を30万円で売りつける霊感商法や合同結婚式などが、メディアで報じられ社会的批判を浴びる。
 しかし統一教会は巧みな変身で、メディアの批判をかわし信者獲得を続ける。まさに「空白の30年」が経過し、その間の活動の実態は、まだまだ明らかにされていない

A 系統的・組織的な自民党との癒着
統一教会の内部文書には、「安倍首相からじきじきに、自分の子飼い議員に対する選挙応援の依頼があった」との記述が見られる。昨年9月12日には、統一教会の関連団体・天宙平和連合(UPF)の集会に安倍首相がビデオメッセージを寄せ、「韓鶴子総裁をはじめ、みなさまに敬意を表します」と発言していたと報じられている。
 細田博之衆院議長も、今から3年前、統一教会の韓鶴子総裁を迎えた行事にゲスト出演し、スピーチのなかで「会議の内容を安倍(晋三)総理に報告したい」と発言している。
多額の税金が使われている安倍首相主催の「桜を見る会」にも、統一教会の関連団体・世界戦略総合研究所(世界総研)の幹部が、2013年〜2016年まで毎年招待されている。
まさに安倍政権は、閣僚や自民党の派閥の領袖が、反社会的カルト教団・統一教会や関連団体と関係を持ち、国政を動かしていたのだ。
 今や関係した国会議員は野党も含め78人、地方議員は17人に及ぶ。「知らなかった」「挨拶だけ」で済まされる問題ではない。また議員個人だけでなく、組織的に関与している政党としての責任が問われている。

B 統一教会のダミー組織の怖さ
統一教会には数えきれないほどの関連団体、友好団体がある。前川喜平さんが「カメレオンの改名」(<本音のコラム>東京新聞7/31付)と名付けたように、自分たちの正体を隠して信者獲得に走り、さらに政治家への食い込みを図る。まさにカルト宗教のお手本である。
 統一教会は、突如として2015年に名称変更が認められ、いまは「世界平和統一家庭連合」(略称:家庭連合)という。しかも名前を変えた別働隊が数多く組織されている。
「平和」を冠した天宙平和連合、世界平和連合、世界平和宗教連合、世界平和教授アカデミー、世界平和国会議員連合などなど、「平和」を隠れ蓑に、いかにも真面目な組織と思わせるカモフラージュだ。その実態は、文鮮明と韓鶴子を敬い統一教会の「原理」を浸透させることにある。
さらに巧妙なのは、2013年に天宙平和連合がサイクリングイベント「ピースロード」を企画し、地元選出の国会議員や地方議員、自治体に「後援」させるなどして、統一教会の創始者である文鮮明の没後1周年を記念した行事を開催している。以降、毎年開催し自転車に乗るライダーの多くは統一教会の信者2世である。
また学生たちの間にも「JAPAN Guardians」なる団体を創設し、安保法制に反対する学生団体・SEALDsに対抗するかたちで、安倍政権や改憲支持の活動をおこなっている。これまでの国際勝共連合の学生部隊「勝共 UNITE」や「国際勝共連合オピニオンサイトRASINBAN」の別働隊である。

C どう被害者家族の声を掬いあげるか
統一教会の霊感商法は例を見ない悪ドさだ。印鑑21万円、壷70万円、絵画美術品70万円、文鮮明・韓鶴子夫妻を崇める『聖本』3000万円など、信者に購入を義務づける。それのみならず財産は「神様に全てささげなさい」という統一教会の教えで、さらに献金、それも何千万円となれば家庭崩壊は必然だ。
1987〜2021年の35年間で、統一教会の霊感商法による被害額は、約1237億円といわれる。その悲惨な事態に、どう手を差し伸べるか。霊感商法対策弁護士連絡会の取り組みや援助の方法などについて、意見を集め協力することが急がれる。(2022/8/7)
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2022年08月06日

【オンライン講演】ウクライナと憲法9条 水島朝穂氏講演 軍事介入「仕組まれた」国家でなく諸国民に信頼=須貝道雄

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 ロシアのウクライナ侵攻が進む中、JCJは6月14日、「ウクライナの戦争と憲法9条」と題し、オンライン講演会を開いた。講師の水島朝穂・早大教授(憲法学)は、この戦争に多額の支援をする米国について@プーチンを挑発して、ウクライナに全面侵攻させ、事前にウクライナ側に準備させておいてこれをたたいたAコロナ禍で落ち込んだ米軍需産業の息を吹き返らせる機会にしている――と語り、仕組まれた戦争の側面を指摘した。
 ロシアのプーチン大統領がウクライナに侵攻する「口実」としたのは、親ロ派の多い東部ドンバス地域(ドネツク州・ルハンスク州)における「住民虐殺」だった。2014年から22年にかけて、ウクライナの武装部隊により「1万4千人殺された」(水島氏)とされる。

侵攻誘う狙いは
アフガンと同じ

 こうした東部での戦闘をウクライナが続ける中で、米国は西側の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大を進めた。これらがロシアを刺激し、軍事行動へと誘い込んでいった、と水島氏は分析する。
ロシアの戦車部隊はウクライナ北部から首都、キーウを狙った。しかし侵攻の前年からウクライナには英米の軍事顧問が入り、対戦車兵器「ジャベリン」の準備をしていた。待ち構えたウクライナ軍がジャベリンで戦車を破壊した。
「相手を軍事介入するように仕向ける、罠に引き寄せるやり方は、かつて旧ソ連がアフガニスタンに侵攻した時(1979年)も、米国が密かにとった作戦だ。アフガン侵攻の長期化で、ソ連の国力を衰えさせる狙いがあった。今回も同様だろう」

アゾフ連隊の
不都合な真実

  ロシア軍の侵攻後、ジャベリンを製造する米国のロッキード・マーチンとレイセオンの株価は上がった。バイデン米大統領はこれを秋の中間選挙に向け、有利な材料にしようとしている。「5月にバイデン氏は(ロッキード・マーチンの)工場視察をして激励しています。まさに選挙運動、票固めです」と水島氏は語った。
  激情的あるいは感情的に戦争を見て、冷静さを失うことにも警告を発した。ロシアが侵略しているのは紛れもない事実だが、住民に対する殺戮などがすべてロシア軍によるものかどうかは現時点で即断できない面がある。ロシア軍が子どもを多数連行したり、女性が性暴力を受けたという情報もあったが、その発信者だったウクライナの人権監察官、リュドミラ・デニソワ氏は、ウクライナ最高会議から「証拠が確認されていない」として解任された。
 またウクライナの武装組織、アゾフ連隊の「不都合な真実」にも目を向けるべきだという。アゾフ連隊のマークは、ナチスの第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」が使ったマークとそっくりだ。「この師団はフランス中南部の村で住民皆殺しをしたことで知られる。アゾフ連隊はそれらと親近性がある。笑ってはいられない問題だ」と話した。

国の内外から
平和の創造を

では、この戦争をどうしたら止めることができるか。水島氏は日本国憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し……」に注目する。「その国の「平和を愛するピープル」と連帯して、内側から平和を創造していくことが大切。ジャーナリズムにも求められる」。ロシアでは「兵士の母の会」が戦争反対の声を上げている。ウクライナでも「前線に立ちたくない」と良心的兵役拒否を訴える人がいる。その力に依拠して平和世論を醸成していく。
 もう一つは、NATOのような集団的自衛権機構(軍事同盟)ではなく、「ミンスク合意」をもたらした地域的集団安全保障の枠組みであるOSCE(欧州安全保障協力機構)の役割がさらに重要になる。日本は米国、G7・NATOに偏った対応に終始しているが、対外政策は、もっと多角的で多様なチャンネルを探るべきだと水島さんは強調した。
 須貝道雄 
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号         
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2022年08月05日

【おすすめ本】風間直樹 井艸恵美 辻麻梨子 東洋経済調査報道部『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』―世界に例のない閉鎖病棟 恐るべき実態と病巣=萩山拓(ライター)

 本書は精神病院に「強制入院」させられた当事者からの手紙を契機に、3年に及ぶ取材を続け、精神医療の「暗部」を暴 く衝撃的なルポである。
 そこは「身体拘束」「薬漬け」「虐待横行」など、驚くべき人権無視の収容所だった。日本の精神病床は34万床、28万人が入院(2017年時点)、世界でも断トツ。先進国では在宅や地域での治療が主流であり、強制入院などは例外である。
 ところが日本では「長期強制入院」のうえ、主治医の指示で、親・兄弟・子供との面会も禁止、電話やSNSも駄目。唯一できるのは手紙のみ。
 しかも「医療保護入院」を決定するのは、家族一人の同意と精神科医の診断だけ。本人の意思は無視。こんな規定があること自体に衝撃を受ける。
 だから信じられない実例が数多く出る。DV夫の策略で長期入院させられた看護師、拒食症を理由に77日も身体拘束された14歳の少女、認知症の診断で強制入院させられた会社の中堅幹部。その他、40年も入院している例すらある。

 重ねて強調するが精神神経症と診断されるや、強制移送・入院、身体拘束、薬漬けにする日本の現状は、世界標準から隔絶している。昨年、日弁連は精神医療について、人権問題として「強制入院制度の早期廃止」を求める決議を採択した。
 今から52年前、精神科病院に潜入取材した朝日新聞記者・大熊一夫さんが「ルポ・精神病棟」を新聞連載し、その後、単行本となり文庫化されているが、本書は、それ以来の画期的な書である。
 併せて先進的な取り組みをしているイタリア・トリエステの精神医療の現場を撮ったドキュメンタリー映画「精神病院のない社会」(監督・大熊一夫)も見てほしい。(東洋経済新報社1600円)
                          
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2022年08月04日

【JCJオンライン講演会】学生たちのウィーン報告「核兵器のない世界を選択する」――核兵器禁止条約の締約国会議に参加して8月27日(土)午後2時から4時

2022年6月、核兵器禁止条約の第1回締約国会議がウィーンで開催されました。核兵器の廃絶を目標に、核兵器を「使われる」側の視点で作られた条約の枠組みで各国は何を議論したのか。直接現地に行き、参加した私たちが核兵器禁止条約の今後の展望も含めてお話しします。
講師KNOW NUKES TOKYO(東京から核兵器廃絶をめざすグループ)の学生3人

中村涼香(なかむら・すずか)
共同代表。2000年、長崎県出身。上智大学総合グローバル学部在籍。

高橋悠太(たかはし・ゆうた)
共同代表。2000年、広島県出身。慶應義塾大学法学部在籍。

徳田悠希(とくだ・ゆうき)
2001年、東京都出身。上智大学総合グローバル学部在籍。

★参加費:500円=参加ご希望の方はネットのPeatixで参加費をお支払いください。手続きの仕方は裏面に書いています。
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)

【Peatixでの参加費の支払い方法】
(1) https://kakukinshi.peatix.com/ をクリックする
(2)参加券を求める
(3)支払いをカードかコンビニ払いにするかなどを選ぶ
(4)初めての方は途中、氏名、メールアドレスを入力し、独自のパスワードの設定をします。
(5)支払いを済ませた方に講演前日・8月26日までにZoomで視聴できるURLをメールで送ります。
【JCJ会員は参加費無料。onlinejcj20@gmail.com に別途メールで申し込んでください】

【お問い合わせなど】
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
 電話03・6272・9781(月水金の午後1時から6時まで)
     メール    office@jcj.gr.jp
      ホームページhttps://jcj.gr.jp/

【KNOW NUKES TOKYOのホームページ】
  https://www.know-nukes-tokyo.com/ 
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2022年08月02日

【JCJ声明】ミャンマー治安当局による日本人ジャーナリストの拘束に抗議する

 ミャンマーの治安当局は7月30日、最大都市のヤンゴンで民主化を求めるデモを撮影していた日本人ジャーナリストを拘束した。報道によれば、拘束されたのはフリーランスでドキュメンタリー映像を制作している久保田徹さん(26)だという。日本ジャーナリスト会議(JCJ)は不当に圧迫されたジャーナリストを守るために、ミャンマー治安当局に強く抗議するとともに、久保田さんを直ちに解放するよう求める。
同時に日本政府に対して、ジャーナリストの拘束という野蛮な行為を続けるミャンマーの軍・治安当局に抗議し、民主化を求める市民への残虐な弾圧をすぐに停止するよう、強く働きかけることを要求する。

 昨年2月以来、違法なクーデターで軍事支配を続けているミャンマーの軍部は市民の人権を無視し、言論の自由を奪い、弾圧を続けてきた。ミャンマー軍部は今年7月末に、アウンサンスーチー氏に近い元議員ら、民主化を求めてきた4人の死刑を執行した。世界各地から、この非道な行為に非難の声が上がった。
日本経済新聞によれば、その後、ミャンマー市民の反発が高まり、瞬時に集まって解散する「フラッシュモブ」型の抗議デモが起きていた。「久保田さんはこうした抗議デモの現場を取材して散り散りに逃げる最中に、現場に駆けつけた治安当局に拘束されたもよう」と伝えている。

 ミャンマー治安当局は昨年4月にも、取材中のジャーナリスト、北角裕樹さんを逮捕・拘束した。その後、釈放されたものの、海外からの取材者の目を封じ込めようとする強権的な方針は変わっていない。過去には2007年9月に取材中の映像ジャーナリスト、長井健司さん(50)を至近距離から軍隊が銃撃して殺害している。私たちはこのような弾圧を続けるミャンマー軍部を決して許すことはできない。
軍幹部を留学生として受け入れるなど、日本政府は民衆弾圧を続けるミャンマー軍部の行動を事実上、容認している。このような姿勢を改め、軍部の蛮行を止めるべく、積極的な行動に移ることを強く求める。
                                            
2022年8月2日
日本ジャーナリスト会議
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【フォトアングル】選挙ポスター掲示板は多いか否か=酒井憲太郎

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毎日新聞(6月26日)では「選挙ポスター掲示板は多すぎる?」と報じている。ポスター掲示場については、市区町村の選挙管理委員会の所管だ。兵庫県姫路市選挙管理委員会は姫路市内826箇所と、愛媛県東温市では市内88箇所と設置数を発表している。全国では30万6千と毎日新聞。総務省発表の2021年9月1日選挙人名簿登録者数は1億551万14人。約350人で1ヶ所は多いか否か。=6月26日、静岡県沼津市、酒井憲太郎撮影
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2022年08月01日

【沖縄リポート】「オール沖縄」薄氷の勝利=浦島悦子

 大激戦だった。参議院選沖縄選挙区。自民党が圧勝した全国の一人区で最後まで勝敗が決まらず、追いつ追われつの開票速報にハラハラし、ようやく結果が出たときは日付が変わっていた。「オール沖縄」候補(無所属・現職)伊波洋一氏27万4235票、自民党公認候補(新人)古謝玄太氏27万1347票。3000票足らずの差だった。
 今回、自民党は沖縄出身の元総務官僚、38歳の新人候補者に、これまでの選挙では曖昧にしていた「辺野古新基地容認」を明言させ、岸田首相をはじめ政府要人を次々と沖縄に送り込み、「新基地反対」の民意を徹底して圧し潰そうと狙っていることを、ひしひしと感じた。今年に入って行われた県内4市長選で自民党推薦候補が勝利した勢いを借り、今参議院選で自民党候補が当選すれば「新基地容認が民意」だと公言し、2か月後の知事選で「新基地容認」もしくは「推進」の知事を誕生させ、基地反対運動の息の根を止めるのが、政府の描くシナリオだろう。
 そんな並々ならぬ危機感を持って、私も今回、宣伝カーでの街宣、電話掛け、スタンディング、女性集会の開催等々、やれる限りのことをやった。
 新基地反対運動への影響に加え、「中国の脅威」や「台湾有事」を口実に進む南西諸島の軍事要塞化・訓練激化に拍車がかかり、沖縄が再び戦場にされるのではないかという危機感、「戦争はすべてを破壊する。平和でこそ暮らしも経済も成り立つ」ことを訴えた。
 政府の目論見が成功せず、ひとまずの勝利に安堵したが、票差は決して大きくない。古謝候補は、「若さ」を武器にした「即戦力」「明るい未来」を打ち出し、40代以下の多くの支持を得た。沖縄が抱える様々な問題を解決してこそ「明るい未来」が拓けるはずだが、(基地や戦争のような暗い)問題には蓋をして、バラ色の未来を見たい傾向に危惧を感じざるを得ない。10年後、20年後の沖縄はどうなるのだろう…?
 全国的には自民党の独り勝ちを止めたかったが、はるかに及ばなかった。安倍元首相の襲撃・死亡事件の選挙への影響がどれだけあったかわからないが、岸田政権の言う「民主主義への挑戦」「選挙への冒涜」という言葉はそっくりお返ししたいものだ。    
 浦島悦子
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号
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