大激戦だった。参議院選沖縄選挙区。自民党が圧勝した全国の一人区で最後まで勝敗が決まらず、追いつ追われつの開票速報にハラハラし、ようやく結果が出たときは日付が変わっていた。「オール沖縄」候補(無所属・現職)伊波洋一氏27万4235票、自民党公認候補(新人)古謝玄太氏27万1347票。3000票足らずの差だった。
今回、自民党は沖縄出身の元総務官僚、38歳の新人候補者に、これまでの選挙では曖昧にしていた「辺野古新基地容認」を明言させ、岸田首相をはじめ政府要人を次々と沖縄に送り込み、「新基地反対」の民意を徹底して圧し潰そうと狙っていることを、ひしひしと感じた。今年に入って行われた県内4市長選で自民党推薦候補が勝利した勢いを借り、今参議院選で自民党候補が当選すれば「新基地容認が民意」だと公言し、2か月後の知事選で「新基地容認」もしくは「推進」の知事を誕生させ、基地反対運動の息の根を止めるのが、政府の描くシナリオだろう。
そんな並々ならぬ危機感を持って、私も今回、宣伝カーでの街宣、電話掛け、スタンディング、女性集会の開催等々、やれる限りのことをやった。
新基地反対運動への影響に加え、「中国の脅威」や「台湾有事」を口実に進む南西諸島の軍事要塞化・訓練激化に拍車がかかり、沖縄が再び戦場にされるのではないかという危機感、「戦争はすべてを破壊する。平和でこそ暮らしも経済も成り立つ」ことを訴えた。
政府の目論見が成功せず、ひとまずの勝利に安堵したが、票差は決して大きくない。古謝候補は、「若さ」を武器にした「即戦力」「明るい未来」を打ち出し、40代以下の多くの支持を得た。沖縄が抱える様々な問題を解決してこそ「明るい未来」が拓けるはずだが、(基地や戦争のような暗い)問題には蓋をして、バラ色の未来を見たい傾向に危惧を感じざるを得ない。10年後、20年後の沖縄はどうなるのだろう…?
全国的には自民党の独り勝ちを止めたかったが、はるかに及ばなかった。安倍元首相の襲撃・死亡事件の選挙への影響がどれだけあったかわからないが、岸田政権の言う「民主主義への挑戦」「選挙への冒涜」という言葉はそっくりお返ししたいものだ。
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号