岸田文雄政権は財務省の傀儡政権≠ニ言われている。なぜなのか。財務相を9年間務めた麻生太郎副総裁が安倍元首相亡き後のキングメーカーとして君臨し財務省が権力基盤を支えている。6人の首相秘書官のうち2人が財務省出身。政務首席秘書官の嶋田隆氏は元経産省事務次官だが、財政再建論を強く主張した故与謝野馨元財務相の側近で、財務省の考えに近い。岸田最側近の官房副長官の木原誠二衆院議員も財務省OBだ。そもそも岸田派(宏池会)は、旧大蔵省(現財務省)出身の池田勇人が初代会長で、第2代の前尾繁三郎、第3代の大平正芳、第5代の宮沢喜一も大蔵省OBだ。宏池会は、大蔵省・財務省と濃厚な関係を築いている。こうしたシフトを利用して財務省は念願の消費税増税に踏み出そうとしているが、なぜ消費増税にこんなにこだわるのか。
7月下旬にJCJオンラン講演会に出演した元朝日新聞記者で政治ジャーナリストの鮫島浩氏はこう解説した。
「予算配分権を握る財務省は財政が緊縮の方が自分の権威を見せつけられる。
財政が大きく膨らめば、予算配分が増えてありがたみが薄れる。緊縮なら消費増税に賛成してくれるところには予算を多く与えて、そうでないところは少なくという差別を広げることが可能です。橋、ダムの建設や道路整備などいわゆる箇所付け(公共事業の予算や補助金をどの地域のどの事業にいくら配分するかを具体的に決める)では、賛成政治家の地元には多くの金を投入し、反対政治家にはその逆で投入する金は絞り込まれる。一方で減税により企業や業界を支援する代わりに消費増税に賛成してもらう。減税の穴埋めが消費増税だ。税収が薄いが広く課税できる消費税を基軸の財源と財務省は見ている。従って消費増税を一歩でも二歩でも進めたい。実施で手柄を得たエリート官僚は天下り先に困らず、OBとして権力もふるうことができる」
このため財務省のエリート官僚は政界工作にまい進する。利用できそうな政治家に取り入るため例えば本や論文のゴーストライターをやり情報を得ていたという。情報量は下手な政治部記者よりはるかに多く、予算をつくる経済官庁というより政界工作に特化した官庁と見る向きもある。民主党政権時代、政治部記者として民主党に食い込んでいたという鮫島さんはこんな体験を明らかにした。
「財務省官僚から民主政権のことを教えてほしいと逆取材≠受け、小沢一郎と鳩山由紀夫グループ、菅直人と仙谷由人グループを分断させる作戦を立てていた。財務省は支援する代わりに消費増税を進めてほしい管・仙谷側に要請していたようだ。増税に向かわせるためメチャクチャなことを平気である。予算書作成はノンキャリ役人に任せ、官僚は政界工作に血道をあげている」
省益と自分の栄達を優先する財務エリート官僚は国民のためというマインドはゼロのようだ。
橋詰雅博