c2022 映画「島守の塔」製作委員会
20万人以上が犠牲となった太平洋戦争末期の沖縄戦で、住人たちがどんな思いでいたのかを、沖縄県知事の島田叡(あきら=写真=左)、県警察部長荒井退造(同=右)ら主人公の苦悩を掘り下げながら丁寧に描いている。
完成披露試写会が6月30日に都内で開かれ、五十嵐匠監督、島田を演じた萩原聖人、荒井役の村上淳、知事付になった軍国少女の比嘉凜役の吉岡里穂、生き残った凛の晩年を演じた香川京子が挨拶。4人とも、コロナ禍で撮影が1年8カ月も中断されたのを乗り越え、遂に完成できたのは「作品へ込めたみんなの思いが奇跡を起こした」と振り返った。
この作品を本欄で取り上げたのは一昨年の8月号、その時は<製作の決意は揺るがず、新聞社が連携「命の尊さと平和」発信>という見出しで、撮影の中断にもかかわらず「サポーター」を募集して、製作委員会が「大きな平和事業に発展させていきます」と強い決意で動きだしていることを伝えた。そんな製作過程を見てきたこともあり、軍拡の動きなど現在の危機的な平和の状況を跳ね飛ばせる力強さを、本作から感じることができた。
五十嵐監督はメッセージで「ウクライナの戦争で製鉄所の地下に逃れた人々が、ガマの中で息をひそめる沖縄の方々とダブってしまう。かつて私達が経験した戦争の時代を知る人々がいなくなりつつある今、この映画は永遠に生き続けることを祈念する」と述べている。
ロードショーが終わっても本作を見続けてもらえる仕組みとして、沖縄へ修学旅行に行く学校で上映し続けてはどうだろう。伝え続けるために特に若い人たちに見てほしい。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年7月25日号