今も続く「特異集団」の活動
★統一教会は、2009年以降、法令順守を徹底してきたという。だが「霊感商法」の被害救済に取り組む全国弁護団は「違法な献金強要や勧誘行為はなくなっていない」と指摘、その被害はコンプライアンス宣言後も13年間で138億円に上るという。
★公安調査庁は、2005年と06年の「内外情勢の回顧と展望」をまとめた報告書に、統一教会を「特異集団」と記載し、「社会通念とかけ離れた特異な主義・主張に基づいて活動を行う集団」と定義した。ところが第1次安倍政権が発足した2007年になるや、「特異集団」の項目が消えている。
★この経過から見ても統一教会への対応の甘さがもたらした弊害は大きい。統一教会と自民党との構造的な癒着や接触が、直近まで続いていた事例が続出している。まさに「特異集団」、いやカルト組織である統一教会が、霊感商法や多額の強制献金を続け、さらに国政に関与し影響力を及ぼしてきたのは間違いない。
フランスの「反カルト法」
★ヨーロッパでも1980年代に統一教会に入信した信者と家族との問題が頻発し、新興宗教に対する規制が真剣に議論されるようになってきた。日本で「霊感商法」や多額の献金が社会問題となっていたころだ。
そこへ1995年、日本でオウム真理教が起こした地下鉄サリン事件の深刻な事態が加わり、ヨーロッパ各国でも、カルト宗教に対する本格的な議論が始まったといわれる。
★なかでもフランスは、国は一切の宗教活動に関与してはならないと定め、厳格な政教分離を取っているにもかかわらず、そのフランスがカルト的な宗教活動に対して、どう国は対処すべきか、具体的な立法化の議論を本格化させた。
その努力が実って「反カルト法」が2001年6月に施行され、以降はカルト的な新興宗教は厳重に取り締りの対象となっている。その主な内容は、「社会に危害を及ぼす狂信的な宗教集団」および「反社会的かつ人権と基本的自由を侵害する宗教集団」を取り締まり、解散などを命ずることができるようになった。
★カルト宗教と認定するには10項目の「危険性の判断基準」があるという。主な項目を挙げると、「法外な金銭的要求」「社会に敵対する説教」「多くの訴訟問題」「国家権力への浸透の企て」などがある。
日本でも制定に向けた議論を
★肝心の日本では、1995年当時、オウム真理教をターゲットとした法律が交付されたものの、それ以上の立法化には至らず、問題が置き去りにされてしまった。
とりわけ同時期に統一教会の霊感商法や合同結婚式などが、オウム真理教と肩を並べて報道されていたにもかかわらず、オウム真理教の暴走により、逆に統一教会の存在が霞んでしまった。
★さらに1999年以降、創価学会を母体とする公明党が政権に加わり、宗教的な課題への立法化を避けてきたことにも原因がある。
フランスの反カルト法は、「信教の自由」を守りながら、カルト集団を抑止し被害者を救う法律である。それを参考にしながら、日本版「カルト規制法」をつくるべきだ。本気で法案をつくる議員の努力のみならず、超党派で市民とともに展開する活動が望まれる。(2022/8/21)