2022年11月04日

【おすすめ本】岩倉 博『吉野源三郎の生涯 平和の意志 編集の力』─「激動の真相 見抜く眼を」─JCJ初代議長の足跡を辿る=坂巻克巳(元岩波書店編集委員)

 吉野源三郎の名は、名著『君たちはどう生きるか』(新潮社1937年 刊、岩波文庫1982年刊ほか)と共に広く知られている。五年前には、その漫画版(画・羽賀翔 一、マガジンハウス2017年刊)が、ミリオン セラーとなり、話題を呼んだのも記憶に新しい。
 他方で、ほかならぬJCJの初代議長(1955〜59年)であり、死去の前年の本紙(1980年8月号)には、その絶筆「激動の真相 見抜く眼を」が載った。
 だが、少年少女向けの読み物作家、そしてジャーナリスト団体のリーダーという顔は、その82年の生涯のわずか一部を照らすに過ぎない。では、 吉野源三郎はどのように育ち、何を学び、何と闘い、何をめざして生きてきたのか。それを丹念な資料探索にもとづいて描き出したのが本書 である。

 すでに著者は『ある哲学者の軌跡―古在由重と仲間たち』(花伝社2012年刊)を刊行している。 その古在由重が「生涯の親友」と評したのが吉野源三郎である。著者が吉野源三郎の生き方に迫るのは、ごく自然なことだったであろう。
 吉野源三郎が治安維持法違反で三度検挙された30代前半、岩波書店に入って岩波新書創刊に携わったその後半、そして40代半ばの雑誌『世界』創刊・初代編集長へと続く活躍の足跡を辿る。
 編集者として論壇をリードしたが、その活躍は言論の領域にとどまらない。原水禁、日米安保、 ベトナム反戦など、戦争と平和を巡る諸運動の推進に最後まで尽力した。その多彩な行動とそれを支えた深い思索の軌跡を丁寧に辿った本書の一読を強く勧めたい。(花伝 社2000円)

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