2022年11月18日

【寄稿】無理に無理を重ねた国葬 広がる反対 はりぼて°V式 メディアは検証続けて=永田浩三さん 

 どの世論調査でも6割以上の人々が「反対」だったにもかかわらず、儀式は強行された。だが6000人の招待者の4割は欠席した。
 9月27日の同じ時刻、国会議事堂前に抗議のために結集した市民は15000人に上った。
 反対の声が顕著になったのは、8月16日の新宿西口での集会の頃からだろうか。鎌田慧さん、落合恵子さん、前川喜平さん、わたしもいた。新宿の街をデモする私たちを見つめる表情は共感にあふれていた。それから1か月半、人々の怒りは各地で膨れ上がった。

 安倍氏が殺害されたのは7月8日。長年被害に苦しんできた統一教会信者二世の銃弾に倒れた。以来、安倍氏を頂点とした自民党政治家と統一教会との深い関係が、次々に明らかになっていく。民放のワイドショーだけでなく、いつもは高齢者の健康や金の記事であふれる週刊誌も競うように問題を取り上げた。読売テレビ『ミヤネ屋』は、統一教会の被害について長年取り組んできたジャーナリストや弁護士を連日スタジオに呼び、ことの重大さを知らしめた。

 国葬とは、天皇が臣下の軍人や政治家の功労を称える、統治のための装置。平等や思想信条の自由を謳う日本国憲法の精神にそぐわず、法的な根拠すらない。
モリカケ桜だけでなく、統一教会というさらなる闇。それを知った国民の半分以上が国葬に反対する中、大手メディアが何事もないかのように参列してよいのか。

 9月18日、マスコミ人の有志たちは、在京新聞とNHKとキー局に対して、国葬参加の有無とその理由の説明を求めるネット署名を始めた。呼びかけ人にはわたしも参加した。
 初日の署名はわずか500。だが3日目は一気に29000に増え、5日目の締め切り時点で40745筆に達した。それを各社に送り返事を求めた。回答したのは毎日新聞のみ。「毎日新聞社は社長以下の役員や編集幹部の参列を見合わせます。ただし不幸な事件で殺害された安倍元首相への弔意を否定するものではなく、社長室次長と東京本社代表室長が参列します。また、本社会長は日本新聞協会会長を務めていることから参列する予定」とあった。

 他社はどうだったのか。欠席したのは朝日新聞と中日・東京新聞。テレビ局はNHKを含めて在京キー局は出席した。視聴者に向き合う誠実な態度と言えるのだろうか。
 27日の当日、わたしは大学のゼミがびっしり詰まっており、国会前にたどり着いたのは17時前。議事堂の前には集会の余韻が残っていた。
 この日、テレビはどのように伝えたのか、録画しておいたものを深夜に点検した。
 JCJが編集した『マスコミ黒書』によれば、1967年の「吉田国葬」では、フジテレビが13時間1分、NHK総合は5時間35分。各社故人を顕彰する特集番組を多く並べた。
 だが今回はそこまで追悼一色とはならなかった。視聴者からの批判を気にしたからだろうか。NHKは13時45分から放送を始めたが、反対集会をしっかり紹介し、世論調査の結果やモリカケ桜・統一教会問題についても伝えた。
 肝心の国葬中継はどうだったのか。わたしはスタジオ番組を多く経験したが、看板や祭壇は、安手でペラペラな感じが漂う。武道館で流された「故人を偲ぶビデオ」。安倍氏本人が弾くピアノに合わせて、震災復興に尽力し外交で成果をあげたことが称えられていた。NHKは丸ごと紹介したが、映像は政府がつくったものでNHKは関係ないことを明言するクレジットが表示されていた。

 岸田首相の言葉は何一つ響かなかった。おっと思ったのは、友人代表・菅義偉前首相の弔辞だった。安倍氏の机に一冊の本が置かれており、開いたページには伊藤博文を失った山縣有朋が、故人を詠んだ短歌があったとして、二度その歌を読み上げた。いつもの菅氏に似つかわしくないウエットな言葉。
 国葬から4日後、「リテラ」が、このくだりは当の安倍氏がJR東海・葛西敬之会長を送った弔辞の一節だったことを明らかにし、「日刊ゲンダイ」も大きく取り上げた。
 菅氏やスピーチライターは安倍氏の弔辞があることを知りながら、何事もないように流用したのか。批判が集まり世間が注視する中での堂々たるコピペ。安倍・菅・岸田3代にわたる政権がいかにはりぼてかを物語る。
 無理に無理を重ねた「国葬儀」。メディアは顕彰ではなく検証を続けてほしい。
  永田浩三
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 寄稿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする