2022年11月22日

【22年度JCJ賞受賞者スピーチ】『ルポ・収容所列島』人権無視の実態に衝撃 東洋経済新報社 風間直樹さん

                              
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        写真左から風間直樹、井艸恵美、辻麻梨子の3氏 
 週刊東洋経済は経済メディの中で、社会性のある幅広いテーマを取り上げてきました。医療に関する問題では2000年代初頭に、全国各地の大学当局から若い医師が離れていく医療崩壊を報じました。同時に経済にとらわれない週刊誌の問題意識と、多いときは月間3億ページビュー(PV)を記録したウェブメディア『東洋経済オンライン』の拡散力を一体的に制作する狙いで19年1月に調査報道部が立ち上がりました。この報道部が取材した薬漬けが広がる児童養護施設や生活保護者が住む劣悪な無料定額宿泊施設の実態、『ルポ・収容所列島』もオンラインで記事を連載しました。
 精神医療取材のきっかけは、編集局に届いた精神科病院に入院中の女性からの手紙でした。その内容は主治医の指示で親、兄弟、子どもと面会禁止、電話もできません。手紙のやり取りだけが許されていました。そんな閉鎖された状態に衝撃を受けました。主治医が変わり退院に向けた動きがある中で彼女に接触しました。閉鎖病棟の面会で2、3時間話しても、意思の疎通ができる普通の人が4年近くも強制入院させられていたことがショックでした。
 彼女が入院させられた肝は精神科特有の「医療保護入院」制度が背景にあります。家族一人の同意と、精神科医の診断というゆるい要件で身体拘束が可能なことに驚きました。
「精神科移送業」の存在も書きました。民間会社の見知らぬ男たちが突然、自宅に乗り込んできて、強制的に人を精神科病院に連れて行くのです。診察の際、強引に連れてこられ正常とは言えない精神状態ですので本人が反発すると攻撃性や多弁、多動があるとして統合失調症の疑いと診断される事例が多々ありました。財産や子どもの親権目当てに悪用するケースが多かった。
 こうした問題に対して、行政機関のフォローがあるものだろうと思っていたのですが、全くないのです。つまり家族、病院、行政のトライアングル状態の中に当事者が閉じ込められています。本来、患者側に立つべき行政機関が逆に、地域社会で問題を抱えている方を厄介払いしてくれる大変便利な施設として、精神科病院を利用している状況が見えてきました。
 朝日新聞の大熊一夫記者が潜入取材して書いた『ルポ・精神病棟』は1970年の新聞連載でした。その後、50年間、時は止まっています。精神医療がまったく変わらない実態を提起したいと思います。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年10月25日号

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 22年度JCJ賞受賞者スピーチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする