2022年11月25日

【おすすめ本】日野行介『調査報道記者 国策の闇を暴く仕事』―権力を監視し理不尽を伝えるノウハウ=栗原俊雄(毎日新聞編集委員)

 権力を監視すること。そして権力に理不尽に苦しめられている人たちの存在を世に伝えること。評者はそれがジャーナリズム・ジャーナリストの存在価値だと思っている。新聞記者ら表現者は世の中にたくさんいるが、この役割を果たせる者は多くない。著者はこの点、まさにジャーナリストだ。
 報道に「調査」はつきもの。しかし筆者がしているそれは独特で、<捜査当局が個人の刑事責任を追及するには複雑難解すぎる問題で、役所や企業による自浄作用が望めない場合に独自の調査で切り込むもの>だ。誰も逮捕されない。しかし社会正義上、許されないこと。権力が闇に葬ろうとすることを、白日のもとにさらす。それが筆者のいう「調査報道」である。

 今は組織に所属しない著者が、毎日新聞在籍中からテーマとしているのは原発だ。福島第1原発事故の被害を小さくみせようとする。起きるかもしれない大規模災害の可能性は不当に低く評価する。そのためには議事録を改ざんする。著者は行政のそうした不正を明らかにし、「何が何でも原発を動かす」という国のテーゼ=命題をあぶり出す。その手法は@公表資料の分析A情報公開請求B関係者の聞き取りであり、著者は<職業記者としての基本作業>という。だが中身が凡百の記者の「基本」とは違う。たとえばB。正面からいったら取材に応じないであろう者の口をこじあける過程には、すごみを感じる。
 調査報道のノウハウが具体的に記される。ジャーナリストを志す者にとってかっこうのテキストになろう。(明石書店2000円)
『調査報道記者』.jpg
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする