<12・8真珠湾攻撃>の悲劇
▼やっぱり公明党は、<下駄の雪>よろしく自民党につき従い、ミサイル発射拠点などをたたく「敵基地攻撃能力の保有」を容認した。これを受けて政府は年内に改定の「安保3文書」に保有を明記する。国会での論議も経ずに、戦争放棄を謳う「憲法9条」をズタズタにする暴挙の恐ろしさは極まりない。
▼いかに公明党が、「敵基地攻撃能力」を自衛権行使の「反撃能力」と言い換え、「先制攻撃」はしないと弁明しても、「相手国が攻撃に出る前に敵基地をたたく」自衛隊の軍事的行為を、どうやって「先制攻撃」でないと証明するのか。詭弁もいいところだ。
▼81年前の<12・8真珠湾攻撃>を思い浮かべたらいい。日本軍が敵国である米軍のハワイ・オアフ島の真珠湾にある米軍基地や艦隊へ、奇襲の「先制攻撃」をかけた。ところが米国の大反撃を食らい、泥沼の太平洋戦争から敗戦へと至った悲劇を、噛みしめたらいい。
購入するトマホーク500発
▼この太平洋戦争の苦い教訓など、どこ吹く風。岸田政権は前のめりに、「敵基地攻撃能力」強化へと突っ走る。長距離巡航ミサイル「トマホーク」500発(約1千億円) を、2027年までに米国から購入する。
トマホークの射程距離は1600キロ、日本に配備されれば北朝鮮を含む朝鮮半島全域、中国本土の一部も射程内に入る。トマホークは全地球測位システム(GPS)を搭載し、ピンポイントで目標を攻撃できる。
▼1991年の湾岸戦争でイラクの軍事施設を破壊するのに使用され、その後はシリア攻撃などの実戦で多用されてきた。そのトマホークを日本のイージス艦に搭載し、沖縄の南西諸島に配備する予定だ。
さらに政府は、陸海空からの発射を視野に、国産も含め10種以上の多様なミサイルの導入を図る。近いうちに国産改良型ミサイル(射程2千キロ)を富士山付近に、北海道にも射程距離3千キロの超音速ミサイルなど、総額5兆円かけて配備する計画を立てている。
▼宇宙空間の軍事利用にも拍車がかかる。2年後には軍事衛星50基を打ち上げ、一体的に運用して情報収集のうえ攻撃目標を特定する。この「衛星コンステレーション」計画により、敵国の軍事施設や海上にある艦艇の位置をリアルタイムで把握し、迅速な武力行使に役立てるという。
メディアと戦争責任
▼さてさて、こうした岸田政権による「防衛費GDP比2%」への暴走を、止めるどころか推進したのが「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」である。その10人のメンバーに、現役のメディア幹部・元幹部が少なくない数を占めているのを、私たちは見過ごしてはならない。
▼政権や軍部への迎合・癒着などの反省から、メディアは「戦争のためにペン・カメラ・マイクを持たない」と誓ったにもかかわらず、「憲法9条」を反故にする「敵基地攻撃能力の保有」を補完するため、さらに「5年以内に十分な数のミサイルを装備すべき」「武器輸出の解禁」「軍拡へ贈税」などの提言をまとめ同意するとは言語道断だ。(2022/12/4)