2022年12月05日

【映画の鏡】対立を対話に変えた住民参加 『下北沢で生きる』 SHIMOKITA 2013to2017 改訂版 これからの街づくり示す記録=鈴木賀津彦

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     NOBUYOSHI ARAKI ライカで下北沢

  シモキタが今、これからの街づくりの成功モデルとして注目を集めている。今年5月、2013年に地下化された小田急線下北沢駅(東京都世田谷区)周辺の線路跡地1・7`で進められた「下北線路街」の整備が完成。都心の再開発と言えば、どこも同じようなビルが建ち個性が失われがちだが、劇場やライブハウス、古着屋などの個性的な店舗が路地にひしめく「シモキタらしさ」を生かした形で魅力を発信し、コロナ禍にもかかわらず、にぎわいを一段と増し、高く評価されている。

 そんな「らしさ」を打ち出した街づくりが何故できたのか、本作品を見れば、それを解説してくれる。2003年に東京都が小田急線の地下化を決めた際、終戦直後に決めた「補助54号線」という道路計画が復活し、商店街を貫く道路整備など大規模再開発を行政側が決定した。これに反対する市民運動が巻き起こる。開発阻止を訴えるデモや集会には、国内外から作家や演劇人、音楽家らが集まり、見直しの提案や行政訴訟なども起こしていく。

 それを追ったドキュメンタリーの前半は、賛否の対立の構図なのだが、世田谷区長に保坂展人氏が当選した2011年からは、「北沢デザイン会議」などが設けられ、区が住民から意見を聞く「対話」へと変わっていく様子が描かれていく。後半は「住民参加の街づくり」とはどういうものかを示してくれている。

 2017年に住民らが製作した映画が今年、街への関心の高まりから掘り起こされ、各地で小さな上映会が広がり始めている。案内のチラシには「下北沢の民主主義を知っていますか?」とある。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年11月25日号
 

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする