前著『国体論』(集英社新書)で、天皇とアメリカという「国体の正体」を見事に腑分けしてみせた著者が、本書では現在の「体制」を考察する。タイトルが内容をズバリと表している。意味するところは安倍長期政権がこの国にもたらしたもの、である。著者はそれを「二〇一二年体制」と名づけ、安倍政権下でいかに政治が捻じ曲げられていったかを丁寧に検証する。いわゆる「安倍一強腐敗体制」が出来上がっていく過程を、細部にわたって読み解いていくのだ。
例えば安倍の経済政策としてのアベノミクスという虚構。「三本の矢」なる政策は、何の成果ももたらさず、残されたのは惨憺たる庶民の暮らしの崩壊だったということを、数字を挙げて実証する。
では、「外交の安倍」などと呼ばれた外交面で、日本が得たものはあったのか。安保政策の要として対米従属路線をとった外交が、結局すべての足を引っ張ることになる。岸信介から中曽根康弘へ受け継がれながら、対米交渉のカードそのものを放棄していくという無様な様相を呈していく。冷戦秩序の崩壊後も変わらぬ、ひたすらな対米従属路線は、言ってみれば米国にすべてを捧げる朝貢外交の延長で、それが安倍外交の本質だった。
安倍外交の失敗の極めつけは「対ロ外交」だ。プーチンに手玉に取られ、不気味な情緒的つき合いに終始した安倍は、結局、北方4島すべてを差し出すことになる。それが「安倍外交」の実態だった。
安倍から菅、岸田へと受け継がれた「長期腐敗体制」は、安倍の死後にどうなるのか。統一教会問題で揺れる日本政治が新たな道へ踏み出せるかどうかを、著者は次の課題とするだろう。(角川新書920円)