2023年01月07日

【焦点】洗脳から目覚めた二世 旧統一教会信者、過酷な体験 『カルトの花嫁』に綴る 「いのちの電話」で再生へ=橋詰雅博

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                  音声だけで出演
 旧統一教会元信者が自らの過酷な体験を綴った『カルトの花嫁』(合同出版社)が話題を呼んでいる。信者の母親の強要により高校生の頃に入信し、合同結婚式に2度参加した著者の冠木結心さん(かぶらぎ・けいこ=写真上=)は、いずれも韓国人男性とマッチングされた。最初の夫にはDVで、2度目はアルコール依存症で借金漬けの夫に苦しめられ壮絶な結婚生活を送る。2012年9月、教祖・文鮮明の死亡を機に洗脳から目覚め脱会した彼女は翌13年に2人の子ども(異父姉妹)と共に韓国から逃げるように帰国した。40代の今はシングルマザーとして暮らす冠木さんと、元信者で脱会支援活動を37年間も続けている牧師の竹迫之さん(たけさこ・いたる==)が11月19日オンラインで対談(合同出版主催)した。
 1995年8月25日ソウルオリンピックスタジアムでの合同結婚式に参加した冠木さんは21歳の当時を振り返ってこう語った。

子どもを守るため

 「統一教会では男女間の自由恋愛は禁止していますので、1回も恋愛経験はありません。19歳の韓国人とマッチングされた時、愛する人を与えてくださったのでうれしかったです。幸せな毎日が待っていると思いましたが、幻想でした。韓国で住む家も仕事もない彼との結婚生活は私が働き日本でスタートしましたが、夫は自分の気に入らないことがあると、私を殴り、蹴ったりした。信仰の信の字もない夫に驚いた。日本で悪霊(サタン)がついたから夫は暴力をふるうと韓国人教区長などから諭され日本人として罪の意識もありじっと耐えました。でも結婚3年目に生まれた子どもに夫の暴力が向かうと心配になり離婚を母に伝えました。『祝福家庭が壊れるのは、サタンが一番喜ぶこと』と反対されましたが、子どもの身を守るため離婚を決意しました」
 だが彼女は2002年2月の2度目の合同結婚式に参加。なぜ再婚したのかについて「御父母様(文鮮明夫婦、教会内での愛称)から祝福を受けたいという洗脳を解くことをできずにいたから」とその時の心境を述べた。相手は14歳年上で日雇いの仕事をしていた。マッチングの際、年齢、学齢、仕事を偽っていた。
                       
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 「万物復帰」(信仰の訓練として福祉ボランティアを装った信者が一般の人に物を売りつける行為。売り上げは統一教会に入る)と呼ばれる活動として竹迫さんはハンカチを売った。
 「ホーム(献身した男女が宿泊施設で共同生活を送る)で朝5時に起きると、皆、今日の売り上げ目標を自己申告する。昨日2万円売れたから3万とか4万と言うと『そんなはした金で世界が救えるか』と幹部から恫喝される。20万、30万と無理な目標を申告してしまう。訪問販売が恥ずかしいという気持ちが生まれるのは堕落でありサタンにつけこまれるとマインドコントロールされているので、訪問先で歌なんか歌い芸を披露する。精神を集中して売った」

母親と縁を切った

 12年肺炎であっさり死亡した文鮮明がただの人間だと気づいた冠木さんは洗脳から目覚め脱会し、ダメ夫を捨て去り2人の子どもと共に帰国した。20年に及んだ洗脳と、元夫が彼女のクレジットカードを使いつくった多額の借金の返済から抜け出すきっかけは「いのちの電話」の相談員から受けた2つのアドバイスだった。大学の心理療法室と法テラスの利用だ。紹介された心理療法室に通う一方で弁護士の力を借りて自己破産し経済的なピンチを脱した。
 脱会支援をサポートする竹迫さんは「かつては信者の脱会に専念したが、うまくいかなかった。今は、信者とその家族とが再び交流できるように努め、両者の分断が修正されて信者の脱会につながれば」と話した。
 子どもが旧統一教会に引きずり込まれるのを阻むため母親とは縁を切った冠木さんは、心理療法士のカウンセリングを受けながら再生の道を歩んでいる。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年12月25日号
 
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする