子どもは社会の宝
▼年末年始、孫たちが我が家にやってきて、にぎやかにおせち料理やお雑煮を食べ、楽しい日々を過ごした。育ち盛りの子どもの声や興ずる姿から、日頃の生活では得られないエネルギーを、我が身に注入された思いがする。そして子どもの成長は、日本の社会に活力を与える大切な宝だ。
▼この大切な宝をどう育てるか。政治の役目は限りなく大きい。新年4日、岸田首相は「政教分離」の原則も顧みず、伊勢神宮を参拝した後、年頭記者会見に臨み、「異次元の少子化対策に挑戦する」と宣言した。
2022年の出生数が80万人を割り込む事態に衝撃を受け、@児童手当などの経済的支援の強化、A学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充、B働き方改革の推進―を3本柱に掲げ、6月末までに具体策を取りまとめると強調した。言葉だけはすごいが、中身がないだけに空疎に響く。
あまりにも低い公的支援
▼いま日本は、想定以上の少子化が進む。戦後すぐの1946年、1年間の出生数は270万人だった。しかし69年後の2015年は100万人、その7年後の2022年は77万人。その減少率はとどまるところを知らない。
しかも出生減に加え、死亡者が出生者を上回る自然減で、1年間に64万人の人口が減り続けている。このまま行けば国の存続危機にもつながる。
▼これを踏まえた岸田首相の宣言だが、ツイッター上では「<異次元>とか銘打つが、まず今の次元にいる子どもたちを大切にしてほしい」と、厳しい反応が相次いでいる。
さもありなん。いま日本の子ども・子育て支援に投ずる公的支出はGDP比1.7%、OECD諸国では平均2.24%、首位のフランスは3.6%、日本はフランスの半分にも及ばない。軍備費に43兆円を投ずる前に、子ども・子育て支援に、せめて今の3倍の予算を計上するのが先ではないか。
「こども家庭庁」とは
▼4月1日、「こども家庭庁」が総員430人、予算4兆8104億円でスタートする。その名称に「家庭」の2字が挿入されたのも、統一教会の圧力があったと指摘されている。これからの動向には用注意だ。
▼その庁内には「こども大綱」など政策を立案する部署のほか、保育所や放課後児童クラブの整備などを進める「こども成育局」、障害児やヤングケアラーの政策と虐待対策などを担う「こども支援局」が置かれる。
だが、文科省や厚労省のみならず、経産省・財務省までが介入・口出しを始めたら、<船頭多くして船山に登る>の迷走にならないか、もう危惧されている。
東京都・子どもへ月額5千円
▼そこへ東京都の小池百合子知事は、少子化対策として都内に住む0〜18歳の子ども1人に月5000円を給付する方針を明らかにした。東京都の出生率は2021年1.08、全国の1.30を下回る事態を受けての対策だ。
養育者の所得額は問わず、約193万7000人の子どもに支給する。関連経費も含め総額は1200億円、2023年度当初予算案に計上する。「国の来年度予算案では、ただちに少子化から脱却して反転攻勢に出るぞという勢いになっていない」と小池知事は批判し、都が先駆けて着手すると強調した。
▼東京都が打ち出した新たな子育て支援策は、国の児童手当が適用されない16歳以上や高所得世帯をカバーする内容だけに、全国に類を見ない独自策だ。
また都は、都内の保育料・平均月額3万円に関し、「第3子」以降は無料だが、「第2子」の保育料も無料化に向け検討を始めた。実現できれば、うれしい限りだ。
大阪も見習ったらどうか。万博会場の埋め立て費に788億円、カジノ開設に血道を挙げるより、子ども・子育て支援に力を注ぐのが先だ。(2023/1/8)