●22年11月の出版物販売金額915億円(前年比4.2%減)、書籍508億円(同6.3%減)、雑誌406億円(同1.5%減)。月刊誌345億円(同0.3%増)、週刊誌61億円(同10.5%減)。返品率は書籍34.7%、雑誌40.4%、月刊誌39.3%、週刊誌46.1%。
●22年1年間の出版物(紙製)販売金額は1兆1,300億円(前年比6%減)となる見込み。書籍は落ち込みが大きく、雑誌は前年比10%減。コロナ特需は完全に終息。電子出版はコミック4533億円、書籍447億円、雑誌86億円で総計5066億円。
●出版科学研究所が発行する「出版月報」が来春に季刊化。月次データについてはPDF版で「出版指標マンスリーレポート」として、定期購読者には配信する。従来の第三種郵便による配送より情報鮮度は高まる。
●出版社直営のサイトで書籍の読み放題サービスを有料会員に提供。「有斐閣Online」、佼成出版社「ちえうみ」やGakkenやオーム社などの事例がある。講談社「メフィスト」は定期刊行の電子版を止め、定額会員制の読書クラブを展開、紙版が年4回届く試みを開始。新潮社「yom yom」も定期刊行の電子版を止め、全作品無料のウェブマガジンへ移行。
●出版DX基盤「MDAM」の共同利用─集英社・小学館・講談社による「雑誌コンテンツを使った新サービス創出」を目指す戦略的業務提携が、大日本印刷の支援を受けて進む。集英社が開発した出版DX基盤「MDAM」を版元の壁を越え、広く採用されたのが理由。
●「週刊文春」の掲載記事を、発売前日の12時に前倒しして電子版へ配信。双方の価値を相乗的に高める施策が効果を上げている。とりわけ政治スキャンダルに関する記事は、永田町の関心を呼び政界への激震にもつながる。
●埋もれていた名著の再発見と復刻の進展─国立国会図書館が「個人向けデジタル化資料送信サービス」を開始し、絶版本や埋もれた名著へのアクセスが容易になった。そのため昨年半年で約3万3000人、約35万回の閲覧、利用は飛躍的に高まっている。
なお年末には「国立国会図書館デジタルコレクション」がリニューアル、全文検索可能なデジタル化資料が大幅に増加、閲覧画面の改善、保護期間満了資料を対象とした画像検索機能の追加、シングルサインオン対応、検索画面のモバイル対応など、大幅な機能改善がなされている。年明け1月18日には印刷機能も追加される。
●小林昌樹『調べる技術─国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』(皓星社)が好評。著者は国立国会図書館の元職員、レファレンス業務などに従事。12月23日に3刷、1月10日に4刷。
●滋賀県長浜市に120年の歴史がある小さな私立図書館がある。「江北(こほく)図書館」が、野間出版文化賞特別賞を受賞。受賞理由は「個人が設立して100年以上ものあいだ地域住民が運営を続けてきた、他に類を見ない私立図書館」。館内閲覧は無料、館外貸し出し、近隣の小学校への「巡回図書」も開始。