2023年01月23日
【22読書回顧】―私のいちおし 沖縄問題を固定化するもの、その正体に迫る 黒島美奈子(沖縄タイムス論説副委員長)
在日米軍基地が集中し、事件・事故など基地問題の解決は遅々として進まない。沖縄の子どもの3人に1人は相対的貧困で、その割合は全国に比べ多い。
沖縄が日本に復帰して50年がたっても変わらぬ二つの景色。その理由のすべては「本土優先―沖縄劣後」の構造から発生する「自由の不平等」にあった―。
安里長従さんと志賀信夫さんの共著「なぜ基地と貧困は沖縄に集中するのか?」(堀之内出版)は、琉球処分から現代まで沖縄を取り巻く事象が、なぜ、どのように発生し、どんな影響を沖縄に与えたのかを紐解く一冊である。
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著者2人の出会いが面白い。安里さんは石垣市出身で那覇市在住の司法書士。志賀さんは宮崎県出身で県立広島大学の准教授。2人を結びつけたのは貧困問題だった。
司法書士として多重債務問題の解決に取り組んできた安里さんは、貧困問題にもまなざしを向けるようになる。そこで出合ったのが志賀さんの提唱する「貧困理論」だ。
「沖縄の深刻な貧困問題は、基地問題を避けては説明ができないのではないか」と考えていた安里さんは、貧困の背景に社会的排除があるとする理論の中に、沖縄の基地問題と貧困問題を一体的に解決する道筋を見いだしていく。
貧困理論が沖縄の基地問題の構造を明らかにするという視点は、志賀さんにとっては新たな挑戦であったようだ。
沖縄振興、沖縄ヘイト、沖縄論など、沖縄の基地問題や貧困問題を巡って派生するさまざまな事象についても解説。どんな構造の下で、何を目的に生まれてきたのか、さまざまな理論を用いて丁寧にほどいていく。
復帰50年の節目の年はもうすぐ終わる。ポスト復帰の時代、次の50年ではきっと違う景色を見たい。「沖縄問題」の解決を阻む正体を知り、挑むため読むべき一冊である。