2023年01月25日

【オピニオン】統一教会追及、監視を メディアは改めて奮起を=河野慎二

  統一教会の被害者救済をうたった「被害者救済」新法が12月10日、会期末の国会で成立した。
与野党間では、マインドコントロール下での献金の禁止を主張する野党と、勧誘側に「当事者の自由意思を抑圧しないようにする」ことを「配慮義務」にとどめる政府の主張が対立、配慮義務の規定に「十分に」と文言を追加することで与野党が妥協した。
 だが、全国霊感商法対策弁護士連絡会は「配慮義務では『配慮した』との言い逃れが可能。『十分に』と修正しても効果は乏しいのでは」と危惧する。それは、今回の法律が、寄付(献金)の規制であり、統一教会問題の本質である、正体を隠した伝道によって引き起こされたさまざまな人権侵害などの被害を防げないからだ。

 16日法務省が公表した政府から日本司法支援センター(法テラス)に移管した霊感商法など宗教問題の窓口に寄せられた被害相談は、運用開始の11月14日から月末までの半月で428件の相談があり、統一教会関係は約4割の172件。「金銭トラブル」が最も多く6割を占めた。それ以外では「心の悩み」が14%、「親族関係」が11%と続き、養子縁組に関する相談もあったという。

 統一教会問題で政府は関係省庁連絡会議を設け、9月5日に合同電話相談窓口を開設。同月28日までに2251件の相談が殺到。22日時点の1952件について9月末に公表した分析資料によれば統一教会がらみの被害相談は1317件で、その7割が「金銭トラブル」。相談者の寄付(献金)の支出期間でもっとも多かったのは20年以上の37%。2〜5年の7%とあわせ5年以内は25%に達し、「1年以内」との回答も18%を占めた。
 「祝福結婚や先祖解怨といった名目で10年にわたり10万程度〜数百万円の献金を多数繰り返したが取り戻せるか」「家族がこれまで1億円を超えて献金し借金で自己破産した」などの訴えは、統一教会が、メディアの統一教会追及が低迷したのをいいことに「悪行」を重ねてきた事実を物語る。

 シンポ「統一教会の実像に迫る」(本紙11月号で既報)で藤森研氏が「統一教会の悪行は、まだ全然解明されていない。組織を持っているところは、韓国に取材に行って調べることが出来る。もっと調査報道をやらないと、社会的責任を果たせない」と指摘し、大手メディアに奮起を促した。
 その「空白の30年」に統一教会は国政、地方政治にも浸透。鈴木エイト氏は「(教団との)関係を断つ」と表明している自民党への監視報道の継続を求め、金平茂紀氏は「国会は機能せず、統一教会の本質的な問題がおざなりに扱われていると警鐘を鳴らした。メディアには反省と改めて奮起が問われている。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2022年12月25日号

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする