2023年01月27日

【オピニオン】憂慮すべき子どものスポーツ離れ=大野晃

  正月は、高校生の全国大会が集中した。新型コロナウイルス感染症の拡大防止策が緩和され、3年ぶりに正常化した大会が多かったが、ラグビーのように、部や部員不足で都道府県代表戦が行われず、不戦勝で全国大会出場権を得たケースが2県で報告された。複数校の合同チームに大勝しての出場権獲得もあった。
  少子化の深刻化に加え、コロナ禍で部活動が思うようにできず、部や部員減少が急速に進んだようだ。特徴的なのは、公立校での減少が極端に進んでいながら、私立の有力校には100人を超す部員が集中し、地域や学校の格差が顕著に拡大したことだ。

 野球やサッカーと、その他の競技の競技間格差も激しい。競技に挑戦する高校生の特殊専門化が、かつてないほどの広がりを見せ、先細りが懸念される。コロナ禍で競技に親しむ条件が極度に制限されて、気楽に、競技に取り組めなくなったことが大きな要因だろう。
 それだけ、子どもたちのスポーツ離れが進んでいる。全国高校体育連盟が、高校総体への合同チームの参加を認めるなど合同チームを容認する競技が増えたが、小手先の対策でしかない。 
 
 文科省は、教員の負担軽減のため、中学部活動の地域への移行を方針として示したが、地域の受け皿が少なく、頓挫した。1970年代に国民スポーツ振興を目指して各地の公共スポーツ施設つくりを推進した文科省が、1980年代に方針転換して、地域スポーツの主力を民間企業に任せ、商業主義的な国民スポーツ施策を後押しして、地域でのスポーツ組織つくりを放棄したため、自主的な地域スポーツが大きく制限された。

 文科省の先導で、自主的な地域スポーツを育てる環境条件が極端に劣悪化したことを忘れてはなるまい。これに沿って、地方自治体によるスポーツ振興の後退が一般化し、地方公共施設は、民間企業の運営となるとともに、高額を求められる民間企業のジムや教室が、地域スポーツの拠点化した。
  しかし、全国的に、少子化や長引く不景気が、文科省が頼りとすり民間企業の撤退や減少に拍車をかけている。 中学部活動の地域移行は、いわば、文科省が公共的な地域スポーツ振興を捨ておいて、苦し紛れに、地域に任せるというのだから、失政の責任を子どもたちに押しつけるようなものだ。
 子どもたちのスポーツ参加の極端な減少は、将来の国民のスポーツ離れを促進する危険性がある。 働く世代のスポーツ参加は、相変わらず散歩か軽い体操程度だ。 職場でのスポーツ機会は、皆無に近くなった。
 マスメディアは、商業主義的に、トップ競技者の競い合いだけに目を向けて、「スポーツの力」なるものを煽ることに専念しているが、トップ競技者を育てる基盤の危うさには沈黙を決め込んでいる。

 商業主義の暴走で、色あせたオリンピックの再生すら課題にはしていない。文科省、スポーツ庁、そして何にでも沈黙する日本オリンピック委員会、日本スポーツ協会、さらに商業主義的利益しか眼中にない地方自治体の沈黙。
 そして、公共スポーツ組織への批判を回避して、商業主義的利益にまい進するマスメディアの逃避。 これでは、日本スポーツは減退するばかりだろう。
 日本人から、スポーツに親しむ豊かな生活を奪う動きに違いない
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする