ジャーナリストの死者67人
★米国のNGO「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)が、2022年の1年間で職務中に死亡したジャーナリストは世界で67人に上り、前年の2倍を超えたと発表した。地域別での死者は中南米がトップで30人を超える。国別にみるとウクライナが最多の15人、メキシコで13人、ハイチで7人が死亡。
★またパリに本部があるNGO「国境なき記者団」の調査によると、昨年12月1日時点で、投獄されているジャーナリストは533人、過去30年間で最大となった。国別でみると中国が110人でワースト1位、次いでイランが47人、3位にミャンマー26人が続く。
ウクライナ侵攻などの紛争地の取材で命を落とすケースに加え、犯罪や汚職、さらには政権に対する取材が起因して拘束される事例が、ここにきてとみに高まっている。
日本人ジャーナリストとミャンマー
★とりわけ日本とも交流の深いミャンマーを考えてみよう。2年前の2021年2月1日、国軍のクーデターにより、民主的な選挙で樹立のアウンサンスーチー政権が転覆された。それ以降、ミャンマーでは市民や少数民族の人びとが殺され、また内外のジャーナリストが相次いで拘束され、収監・投獄が続いている。
★フリー・ジャーナリストの北角裕樹さんは、クーデター以前から現地で取材を続け人々の声を日本に伝えてきた。ところが国軍のクーデター後、民主化を求める人々の様子を報道するや否や、ミャンマー警察に一時拘束、すぐに解放されたが、2021年4月18日にはミャンマー国軍情報部に再び拘束され、ヤンゴン市内のインセイン刑務所に収監されてしまった。
日本政府の働きかけにより5月14日に解放されたものの、日本への帰国が強いられた。
★続いて日本人ジャーナリストの久保田徹さんが昨年7月30日、ヤンゴンで抗議デモを撮影中に拘束された。その後、扇動罪と電子通信に関する違反などの罪で起訴され、刑務所内で行われた非公開裁判で、禁錮10年の有罪判決を受け、ヤンゴン刑務所に収監されるに至った。だが国際的な非難や日本政府の要請もあり、11月17日に釈放され日本へ帰国した。
糾弾されるミャンマー国軍への資金援助
★この2月1日は、ミャンマー国軍によるクーデターから、ちょうど2年がたつ。ミャンマーの人権団体「ジャスティス・フォー・ミャンマー」(JFM)は報告書を公表し、あらためて64の外国政府・国際機関がミャンマー国軍に支援を続けていると糾弾した。特に国軍への接近・支援が目立つ国として中国とロシアを挙げている。
★日本については、防衛省が日本国内で行っているミャンマー国軍士官らの教育訓練そのものが国軍への支援であり、また日本の政府開発援助(ODA)による最大都市ヤンゴンとティラワ経済特区を結ぶバゴー橋建設事業も、ミャンマー国軍系企業への資金投入を通じて国軍への資金援助だと指摘している。
政府へODA見直しを求める署名
★日本国内にあるNGO 5団体が、「#ミャンマー国軍の資金源を断て」キャンペーンを行ってきたが、さらに運動を強化するため、政府に対して対ミャンマー政策の再構築を求める共同声明を発表し、賛同署名の呼びかけ運動を開始している。
★その中身は、まず国軍の暴力停止、続いて国軍との政府開発援助(ODA)の見直し、さらに国軍や国軍系企業が関与するビジネスの停止、ミャンマー市民や内外のジャーナリストらの「表現の自由」への保障などを挙げている。市民や市民団体から広く賛同署名を集め、2月1日に日本政府に提出するという。(2023/1/29)