NHK北海道が夕方の『ほっとニュース北海道』内で毎週木曜に放送している番組『ローカルフレンズ滞在記』が昨年8月、NHKの地方局として初めて「2022年度グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた。
同番組は、NHKのディレクターが道内のある地域に1カ月滞在し、番組に応募してきた地元住民(=ローカルフレンズ)に知り合いを紹介してもらいつつ、その土地の魅力や暮らしを発信する企画。『滞在記』と並行して、地域の人が自らの言葉で地域情報を伝える『ローカルフレンズニュース』というコンテンツもある。2021年4月以来、これまでの滞在地は15カ所を超える。
受賞の際の「経緯とその成果」によると、発案者は道内出身でネットメディアなどを運営する佐野和哉氏で、この提案から旅番組を試作したところ好評だったため不定期の番組化が決定。その際、地域の案内役=ローカルフレンズをNHKが選ぶのではなく「公募」制にしたところ、ライター、僧侶、ネイチャーガイド、地域おこし協力隊、ゲストハウスやカフェの店主、主婦、サラリーマンなど多種多様な人が応募、「既存のニュースや番組とは一線を画すディープな情報発信につながった」という。さらに、番組を契機に、町づくりの提案イベントや食と音楽を発信するフェスなど、数多くの地域活動が生まれたそうだ。
審査委員の評価は、「ニュース性の高いトピックを短期間で取材・編集・発信していたこれまでのマスメディアのあり方を問い直し、その地に暮らす方が主体的に番組作りに携わり、観光ではなく日常の風景を丁寧に切り取る番組を協働しながら制作するという意義深いプログラム。マスメディアとしての情報発信・編集・制作力と、ある意味ニッチな地域の情報を掬い上げていく地域住民の力が統合され、地域そのものの活動をエンパワーしていく好例。マスメディアの新たな役割・地域との関わり方も大変示唆的である。」というもの。
プロジェクトが昨年道民三千人にアンケート調査したところ、番組を見た人の50%が「地域により関心を持った」「地域活動を新たに始めた」と回答、特に20代男性の3割が「地域活動を新たに始めた」と答えたという。
読売新聞と大阪府の包括協定などとは対照的な、公共放送が地域「住民」の協働の触媒となる試み、互いに耳を傾け、手を携えることで民主主義を日々涵養してゆく取り組みとして、大いに注目したい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年1月25日号