中国は2027年までに軍事力で台湾に攻め込み統一を実現するのではないかと米国や日本などで喧伝されている中で、台湾の政治情勢に注目が集まっている。というのは2024年1月に総統選挙(1996年直接選挙が行われて以降4年に1回実施)が行われるからだ。この選挙で中国と距離を置き独立志向が根強い与党・民進党から親中国派の最大野党・国民党に政権が交代したら、
声高に言われている今の台湾有事の勢いが止まる可能性がある。
次の総統選では民進党は頼清徳副総裁が最有力候補だ。昨年11月の統一地方選で敗北した責任を取り主席を辞任した蔡英文総統の則近で、20年5月から副総裁を務める。副総裁就任前は、「一つの中国」を認めない対中強硬派と見られていたが、主席就任の記者会見では「台湾はすでに独立国家だと現実的に位置付けている。改めて台湾独立を宣言する必要はない」と述べ、蔡総統路線を継承する方針だ。
一方、国民党はまだ正式な候補者は決まっていないが、朱立倫主席や新北市長の候友宣、大手電機メーカー・ホンハイ精密工業の創業者・郭台銘らの名前が挙がっている。
対中関係が争点となる総統選では、統一地方選の結果がそのまま反映しないという見方があるが、国民党の政権奪還はあり得る。
1月下旬にオンライン講演した元共同通信論説委員でジャーナリスト・岡田充氏(香港、台北、モスクワ各特派員を務めた)はこう言った。
「統一地方選で民進党が惨敗したのは、蔡政権の抗中保台$ュ策が国民の離反を招いたからです。従って来年1月の総統選でも対中関係の見直しの世論が高まれば、政権交代の可能性はあります。そうなったら緊張関係を続けてきた中台関係は大きく改善する。『有事』が宙に浮きます。まさに総統選はゲームチェンジャーになる」
となると米国の戦略に沿い大軍拡に走る岸田政権への風当たりが強まり、軍事力増強路線に疑念が生まれる。岡田氏は「進めるべきは、中国敵視をやめて、停止状態の日中首脳交流を再開して信頼醸成を図ること。外交を正常に戻すことです」と強調した。
台湾有事を煽り中国の台頭を阻む米戦略への追従は日本の国益を大きく損なうのである。