マスクへの同調圧力
■「マスクを付けるか取るか、それが問題だ」─シェイクスピアも頭を抱えるほどの混乱が広がっている。学校での卒業・入学式のみならず、各種イベントや集会で、どう対応すべきか侃々諤々の議論が続く。
<一億総マスク時代>のなか、マスクを外して歩いていると、街で目線の合った人から受ける叱責の雰囲気に、慌てて口に手を当て、ポケットからマスクを取り出す。そんな<マスクへの恨み>を抱くのは筆者だけだろうか。
■これまでにマスクを巡り、何度、注意されたことか。「鼻マスクはだめ」「飲食時以外はマスク着用!」「図書館でもマスクを」などなど、直接・間接を問わずプレッシャーを感じた経験は数多い。「マスク! マスク!」と迫る、この同調圧力の怖さ、身に染みる。、
<アベノマスク>裁判の判決
■今から4年前、あの3億枚も用意した<アベノマスク>、どうなったか。まず安全・有効性に疑問がつき、ほぼ3分の1を廃棄することとなった。
さらに先月28日、大阪地裁はマスク単価の開示を求めるアベノマスク訴訟に対し、黒塗りにして開示を拒否してきた国へ「税金の使途に関する行政の説明責任を認定し、単価の開示命令」を下す判決を出した。
■この判決が確定すれば、随意契約による<アベノマスク>の単価を、国は公表せざるを得なくなる。それだけではない。配布も含めた総経費543億円を始め、安倍政権が続けてきた税金無駄遣いの<桜・森友・加計>などに、疑惑追及のメスを再び入れる絶好の機会が与えられることになる。まさに「マスク恐るべし」。
花粉と黄砂とマスクと
■そのマスクを再び「役に立つマスク」にする時季がやってきた。スギやヒノキから飛散する花粉である。マスクをすれば花粉の吸引量は30%減らせる。
すでに関東から九州を中心に広がり、花粉量が「非常に多い」日が4月中旬まで続く。しかも今年の花粉の飛散量は関東・甲信地方で例年の2倍と予想され、ピークの時期も長くなるという。
■また黄砂も襲ってくる。東アジアのゴビ砂漠・タクラマカン砂漠や中国の黄土地帯から、強風で吹き上げられた多量の砂塵が、ジェット気流に運ばれ、浮遊しつつ降下する。
今年も本格的な黄砂飛来シーズンを迎え、気象庁は「黄砂情報」を発信し警戒を呼びかける。防ぐには「マスク」が一番だ。
マスク不要か コロナ5類へ
■いま官邸や永田町ではコロナ規制・マスク着用の緩和に急ピッチだ。4月23日の統一地方選が終われば、5月8日からコロナ感染症の分類を季節性インフルエンザ扱いの5類に格下げし、患者に新たな負担を強いることになった。
これまで初診料を除けば無料だったのが、自己負担額:最大4170円に引き上げる。10月以降では治療薬ラゲブリオが併用されれば最大3万円を超える。
■これでは花粉症や黄砂被害の上に、さらにコロナの傷口に塩を塗る対応としか言いようがない。岸田首相は「さまざまな」との言葉を使いまわし、子育て、同性婚、敵基地攻撃などへの質問にはまともに答えず、肝心の中身はあいまいにし、かつ前言をトーンダウンさせ、「マスク」でフタをする。
その一方で、軍備拡張・敵基地攻撃・原発再稼働・コロナ5類への格下げなどは、「マスク」を外して即実行の決断だ。どこに顔を向けているのか。国会答弁で踏襲する「マスク」を外したり内ポケットに入れたり、まるで都合よく出し入れするみたいな対応は止めにせよ。(2023/3/5)