本書は新進気鋭の経済アナリスト、森永康平氏による、一般の国民に向けて書かれた経済書だ。
この本が特に着目しているのは「国の借金は問題ないのか」という点なのだが、実を言うとこの一点こそ、今、政府が何をなすべきなのかを占う上で最も¥d要な論点なのだ。そして本書はそんな重大な問題について、一般のサラリーマンは言うに及ばず、中高生でも苦も無く最後まで読み通す事ができる極めて秀逸な一冊だ。
しかしだからといって、論じられている内容のレベルが低いというわけではない。
世間には経済書が山ほど出回っているが、それらよりも本書の方が圧倒的に内容のレベルが「高い」。だから経済学部の学生は言うに及ばず、学者や評論家、そして何より経済政策に関わる政治家・官僚こそが、精読すべき一書でもある。なぜなら、多くの『専門家』達が信じて疑わない一般的な経済政策論は、銀行≠ニりわけ中央銀行≠ェどの様な役割を担っているのかを(驚くべき事に)『完全に無視』した上で作られたものである一方で、その点を明らかにした上で的確に論ずるものこそ、本書だからだ。
ちなみに本書は、現代貨幣理論(MMT)を様々に活用しながら、最新かつ豊富なデータと実例を紹介しつつ論じたものである。その意味において本書はMMT入門書としても極めて秀逸なものとなっている。
ついては是非、立場や思想信条の別を超え、あらゆる国民に読んでもらいたい。本書がベストセラーになれば日本人の経済政策についての認識が一変し、日本の歴史は確実に変わる――そう確信できる一書なのだ。(技術評論社1600円)