寂聴さんにインタビューする松井監督
昨年末の「徹子の部屋」に出演したタモリが、2023年がどんな年かを問われ、「新しい戦前になるんじゃないですかね」と発言して話題になった。岸田内閣が安全保障政策の大転換を進める今だからこそ、改めてこのドキュメンタリー 映画を観て、多様な視点から憲法対話を広げる必要を感じている。
様々な角度からのインタビュー取材を重ね2016年に公開した。松井久子監督は「映画を広めていくうちに『9条の文言と現実の矛盾』という、私自身が避けて通れない問題につきあたっていた」と、2018年に「私たちが抱えている矛盾について、本質的な議論が広がることを願って、9条にまつわる様々な意見を並列的に提示した」とリニューアル版を発表。
この追加取材で韓国のソウル大学・日本研究所の南基生教授のインタビューが盛り込まれた。「平和憲法と日米安保の奇妙な同居が、戦後の日本人の心を不安定にしてきたのではないか?」と話す南教授は、「安倍改憲が、東アジアの平和に積極的に取り組む方向でなく、アメリカの基地国家としての機能を深化させる方向での過程を踏めば、その試みは必ず失敗するだろう」と強調した。なるほど今、米国の基地国家へと突き進んでいるではないか。この2018年版を翌年にDVDで販売した際には、特典映像として立憲的改憲論の2人の主張も加え、さらに議論を深める工夫をしている。
松井監督自身の考え方が「現実との矛盾」に揺れ動く様子も映像から伝わって、憲法の原点を一緒に確認したくなる。対話を促進するために活用したい。DVDは税込み2500円。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年2月25日号