2023年03月29日

【オンライン講演】米の侵攻が日本の安保政策を大転換に! タリバン政権の現状 高世仁さん報告=鈴木賀津彦

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 昨年11月にアフガニスタンでタリバン政権下の現状を取材してきたジャーナリストの高世仁さん=写真=を講師に1月21日、JCJオンライン講演会「タリバン政権の現状と故中村哲氏のレガシー〜アフガン取材報告」を開いた。録画視聴を含めて約100人が参加した。
 
 11月14日から13日間取材。タリバン政権の幹部や様々な人にインタビューし、深刻な失業・生活困難、食糧不足で飢餓の危機にある現地を歩いた。高世さんは、「この危機はタリバン政権の権力復帰で起きたのではない」と強調。「現地では長く干ばつ被害による農村破壊が続いており、そこに国際社会からの制裁が追い打ちをかけた」と説明。また、「深刻な麻薬・薬物の蔓延は20年前のタリバン政権崩壊後、ケシ栽培が急増した結果だった」と語った。

地域に思い根付く<
 3年前に凶弾に倒れた医師の中村哲さん(享年73歳)の遺志が、現地の人々に受け継がれて、新たな灌漑プロジェクトが始動している様子も取材した。「中村先生は『政権は変わるが民衆は変わらない。政権を見るな。民衆とともにあれ』と教えてくれた。それを守って進みます」と語ったディダール技師は中村さんの愛弟子。中村さんの思いは地域に根付き、現地のタリバンも中村さんのプロジェクトを高く評価し、協力姿勢を打ち出していた。

ジェンダーに落差
 ジェンダーをめぐるタリバンの対女性政策は田舎では違和感を持たれていない。昨年12月の女子の大学教育禁止措置など、女性の教育・就労などの権利制限は広がるが、首都カブールでは女性たちが学びに取り組む。個人宅に少人数を集めた教室や、「研修組織」の認定で半公然の「地下学校」を取材できた。
 「学校」を黙認し、娘を通わせるタリバン幹部もおり、政権が一枚岩ではないことも分かった。 

復権したタリバン
 タリバンの基盤は人口の9割を占める農村部、大多数の国民がタリバン復権を受け入れたとみるべきだろうとも高世さんは分析する。
 「アフガニスタン侵攻はアメリカと世界の秩序の転機を招いた。巨額を注いだ日本にとり、『遠い国の関係のない話』ではない」と話し、「20年におよぶアフガン戦争とイラクで国力を消耗した米国は同盟国、特に日本に負担を求めた。それが今回の日本の安全保障政策の大転換をもたらした」とも指摘した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年2月25日号

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