2023年04月29日

【月刊マスコミ評・放送】安倍政権「負の遺産」が明るみに=岩崎貞明

 安倍政権の「負の遺産」がまた一つ明るみに出た。立憲民主党の小西洋之参院議員が放送法の政治的公平性について、安倍政権下で首相官邸側と総務省側でやりとりした内容を示す政府の内部文書とされる資料を公表した。政府は当初、文書の信憑性に疑問を投げかけたが、3月7日に松本剛明総務相が同省の行政文書であることを確認。2014年から15年にかけ、当時の礒崎陽輔首相補佐官らが、番組の政治的公平性をめぐる放送法の解釈について、総務省側に解釈の変更を執拗に求めた過程が詳しく記されている。

 2014年と言えば、当時の安倍晋三首相が11月18日夜に生出演したTBS系『NEWS23』で、アベノミクスの効果に疑問を示す街頭インタビューをめぐり、「選んでいる」「おかしいじゃないですか」などと反発。それから間もなく、当時の萩生田光一自民党広報局長名で、NHKや在京民放テレビ5局の報道局長・編成局長あてに、選挙報道の「公平中立」を求めて番組出演者の選定やインタビューの編集まで、番組制作の手法にまで詳細に立ち入って注意を促す文書が示されていた。

 今回明らかになった文書は、やはり2014年11月、礒崎補佐官がTBS『サンデーモーニング』を名指しして「コメンテーター全員が同じ主張の番組は偏っているのではないか」と、総務省側に対策を求めたことからやりとりが始まっている。文書では、難色を示す総務省幹部に対して礒崎氏が「局長ごときが言う話ではない」「この件は俺と総理が2人で決める話」「俺の顔をつぶすようなことになれば、ただじゃあ済まないぞ。首が飛ぶぞ」などと、恫喝発言を繰り返している。総務省出身の山田真貴子首相秘書官は「今回の話は変なヤクザに絡まれたって話ではないか」「どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか」と懸念を表していたが、結果的には強引に辻褄を合わせるようにして、官邸の横車が通ってしまう形となったのだった。

 総務相だった高市早苗経済安全保障担当相は自身の発言部分について「ねつ造」と全面否定、国会論戦は文書の真贋論争に終始している感があるが、問題の本質は政権による放送メディア弾圧の実態である。そもそも、番組の政治的公平性を政府が判断できるとする考え方そのものが、表現の自由を保障した憲法・放送法に抵触するのではないか。ここはやはり、世界の常識である放送の独立行政機関化を改めて議論すべきだ。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
  
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2023年04月28日

【お知らせ】「原発と人権」全国集会 9月2・3日 福島で開催 全体集会と分科会 Zoomも併用=編集部

 JCJも参加している第6回「『原発と人権』全国研究市民集会inふくしま」の実行委員会は、3月2日、今年の集会を9月2、3日(土,日)に、福島大学で開催することを決めた。
 原発事故から12年。2012年から2年おきに続けてきた集会も、改めてこれまでの集会の成果や今後の課題、展望を確認し、今後の運動をつくっていきたい、という。
 特に第5回はコロナ問題で,ズームでしかできなかったため、今回は基本はリアルで実施。運動の連携を図ろうと計画。会場について、福島大学と折衝を続けてきた。
 その結果、9月最初の土、日で、会場を借りる見込みがついたため、貸せるという福島大学の了承が得られたため、今回はリアルに戻って,ズームを併用で、集会を開く。
分科会と全体集会を計画し、分科会については、@復興再生、森林、コミュニティA訴訟の現状」するがB反核エネルギー問題C再稼働問題Dマスコミ、メディア、原発報道―を予定。これまでのような懇親会は省略、実質的な会にする方針だ。
 特に、岸田内閣が「原発依存」に大転換する中で、世論形成をどうしていくかは大問題。「世論転換」をどう図っていくか、はJCJの課題だ。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号

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2023年04月27日

【好書耕読】エラ・フランシス・サンダース『翻訳できない世界のことば』―「ヒラエス」を噛みしめて=吉田千亜(ノンフィクション作家)

 3月初旬、福島の友人に連れていってもらった福島市の小さな書店「Book&Caféコトウ」で、一冊の本と出会った。コーヒーの香りと穏やかな音楽。陳列本は、「これも読みたい」「これも」と次々に思う、大切な本ばかりだった。五感が優しく解放されるような不思議な店だ。
  その頃、「震災から12年」の文字がテレビや新聞で飛び交っていた。「3月ジャーナリズム」という言葉が、もう、あって良いだろうとも思う。
 原発事故の被害を受けた人たちから「3月頃になると体調が悪くなる」「そわそわする」といった思いを聞く。報道してほしい思いと、なぜ今だけなの、というもどかしさ。その報道を見たい、見たくない、の狭間で悶々とする、と。「希望」のみ強調する物語に、静かに傷つく人もいる。被害を覆い隠す報道には、自分の存在が否定されるように思う人もいる。特に、政府が被害を認めない地域の人たちにとっては。
 
  エラ・フランシス・サンダース『翻訳できない世界のことば』(前田まゆみ訳、創元社)を手に取ったのも、その、彼ら、彼女たちのもやもやした気持ちを考えていたからだ。
 スペイン語で「ヴァシランド」とは「どこへ行くかよりも、どんな経験をするかということを重視した旅をすること」を指す。あるいはドイツ語で「ヴァルトアインザームカイト」とは「森の中で一人、自然と交流するときのゆったりとした孤独感」を指す。
 こんな風に、心の「あわい」を、言葉にしていく作業が、世界中で営まれている。言葉の解説と共に描かれた絵にも、彩や形にふと笑みが溢れる。
 
  ウェールズ語の「ヒラエス」は「帰ることができない場所への郷愁と哀切の気持ち。過去に失った場所や、永遠に存在しない場所に対しても」と書かれていた。この「ヒラエス」を、避難者の集う団体が団体名に使っている。そういう意味だったのか、と改めて噛み締める。
 この「ヒラエス」を抱えて、3月をやり過ごす人たちがたくさんいるのだろう。言葉を紡ぐ作業を、諦めないために、いま、この本を机に飾っている。
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2023年04月25日

【おすすめ本】伊藤詩織『裸で泳ぐ』―「生き延びる」から「生きる」へ 新たな一歩の決意の書=鈴木耕(編集者)

 著者の2冊目の本。前著『Black Box』は性被害を告発するという意図があったためか、文章はやや硬く、真実を訴えようという気持ちが前面に出て痛々しかった。だが本書には、そこから「別の世界」へ踏み出した雰囲気が伝わる。日記体で日常を淡々と綴るやわらかな文章が主体で、読むものを温かな気分にさせてくれる。

 とはいえ、そう一筋縄ではいかない。時折、ようやく固まった瘡蓋が剥げかけて、血が滲むこともある。ことに山口敬之氏と対峙しなければならない裁判の後の記述などは、唇を嚙んで耐えなければならない記憶の甦りが切ない。それでも著者はサバイブからライヴへ、「生き延びる」ことから「生きる」ことへと歩を進める。新たな模索が始まっていく過程を、本書は極めて丁寧に書き綴っていくのだ。
 むろん、あんな事件に遭遇したことを記憶から消し去りたい。しかし、一方で、もしあの事件がなければ、いま自分を支えてくれている素晴らしい人たちとの邂逅もあり得なかった。そう思えば起きたことをを丸ごと引き受けようとも考えるのだ。

 人間のつらさは、分かりあうことが難しいということでもある。著者は恋をする。そして一緒に住むことを決めた男性と、同居寸前に別れることになる。なぜ別れなければならなかったのかについても、著者は隠さずに記す。明るいだけの日記風エッセイに終わらせない決意と、知らなかった世界へ踏み出す意欲がそこから見えてくる。
 本書は、ジャーナリストとして歩み始めた女性の、不退転の決意の書であるともいえる。(岩波書店1600円)
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2023年04月24日

【フォトアングル】「ウクライナに平和を」―ロシア侵攻から1年、抗議行動を実施=酒井憲太郎撮影

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ロシアのウクライナ侵略から1年となる日、侵略に反対し、平和を求める行動が取り組まれた。東京では雨の中、集会とデモを行った。「ウクライナから撤退を!」「ロシアは侵略をやめろ」のプラカード掲げ、演壇上の野党国会議員とともにアピール「ウクライナに平和を」「戦争の標的になる原発はいらない」「軍拡と防衛費増額は許さない」を一千人で唱和した。主催はさよなら原発1000万人アクション実行委員会と総がかり行動実行委員会=2月24日、東京・日比谷野音
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
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2023年04月23日

【今週の風考計】4.23─9連休が迫る4月末に起きた世界的トピックを顧みる

26日〜28日の世界的な出来事
今週末から9連休という大型のゴールデンウイークに入る。予定を立てるに忙しいことだろう。筆者もカレンダーを見ながら、連休前の3日間に目が行き、この欄を執筆するうえで何が起きていたかクロニクルを繰ってみた。
 40年、50年、70年のスパンで歴史を遡るのも一興か。いくつかのトピックに惹かれ考えを巡らしてみた。

チェルノブイリ原発事故とドイツの脱原発
まず4月26日、今から37年前、ウクライナにあるチェルノブイリ原発で爆発事故が起きた。爆発から14日後の5月10日、やっと収束したが、広島に投下された原子爆弾の数百倍もの放射性物質が大気中へ放出され、近隣諸国の人々にまで甚大な被害をもたらした。今も甲状腺ガンなどの後遺症が続く。
そして再び12年前の<3・11フクシマ>。東日本大震災の津波で運転中の福島原発が水素爆発を起こし、放射性物質を大量に放出する重大事故を招いた。いまだに炉心は溶融し燃料デブリはそのままだ。原発の恐ろしさが身に染みているはずなのに、なんと岸田首相は原発の60年稼働・新設に躍起だ。
ドイツは15日、最後の原子炉3基を止め、<3・11フクシマ>を教訓として踏み切った脱原発が完了した。60年にわたる原子力事業に終止符が打たれ、2035年までに再生可能エネルギーのみによる電力供給を目指す。
 この両国の違いは何なのか。地球や国の未来に対する政治の責任を自覚するドイツと、放棄する日本の政権政党の無残な姿ではないか。

50年前、日本で初のゼネスト
さて働くものへの「賃上げ」は、どこまで実現したのか。大手企業の正社員は潤っても、非正規雇用や中小企業の社員へのアップは微々たるものだ。昔は「国民春闘」と位置づけ、こぞって労働組合はストライキを打ち、会社や経団連と交渉したものだ。
今から50年前の4月27日には、国民生活擁護の「世直し」春闘として、310万人の労働者が参加する初の統一ストライキが決行されている。「春闘にストを打つ」のは常識だったが、今や見る影もない。
目を世界に転ずれば、米国ではアマゾンやアップル、スターバックスなどに働く労働者が、「賃上げ」を要求して堂々とストライキを打っている。フランスでは年金支給の改悪に労働組合のストに連帯し国民こぞってデモを繰り広げている。スリランカでは1年前の4月28日、政権の無策に抗議して初のゼネストが実施されている。
 なのに日本は、労働組合の「連合」が岸田政権にスリ寄り、ストライキすら打てない腰抜けの姿をさらしている。

「安保条約」発効から71年目の現実
もう一つ、4月28日がある。いまから71年前、「日米安保条約」が発効した。米国との単独講和により日本各地に米軍基地が設けられ、米国の重要な軍事拠点とされた。とりわけ沖縄には米軍基地が集中し、米軍の飛行機事故や米兵の犯罪など社会問題が頻発している。
1960年に「日米安保条約」が改訂され、新たに締結された「日米地位協定」では、「米兵に対する日本の第一次裁判権」や「日本の警察による米兵の身柄確保」まで放棄し、63年間にわたって一度も改訂されず、国内法および日本の主権が侵害され続けている。
 加えて在日米軍の駐留経費を負担する「思いやり予算」は増え続け、いまや2千億円を超える。独立どころか「対米従属」ズッポリの日本の姿は、悲しいとしか言いようがない。
しかも2014年、安倍政権は米国の要請に応じ米国と一体になって、集団的自衛権が行使できるよう憲法解釈を変更し、海外でも自衛隊の武器使用を認める安保法制へと変えた。
 米国の戦争に巻き込まれるだけでなく、日本国憲法9条にある「戦争放棄」まで捨て、敵基地への「先制攻撃」すら準備する。また相手国からの反撃に備えるべく自衛隊の基地を地下壕に移築するという。まさに暴挙の限りを尽くす事態だ。旅行に出る気など失せてしまう。(2023/4/23)
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2023年04月22日

【オンライン・シンポ】統一教会と自民党のジェンダー不平等 神国ニッポン&恁か 怪しい家族国家観に迫る=池田恵理子(元NHKディレクター)

  安倍元首相銃殺事件後、統一教会と自民党右派に関する報道は燃え上がったが、その癒着の全貌が解明されないまま、”賞味期限“が切れたかのように下火となり、収束感が漂ってきた。
 
「NHKとメディアの今を考える会」は事件後の昨秋、自民党と統一教会の関係などについてシンポジウムを連続開催した。3回目となる今回は2月27日、大半のメディアが見落としている「統一教会と自民党のジェンダー平等への介入〜性・結婚・しばられる家族」にテーマを絞って、オンライン・シンポジウムを開催した。
 自民党保守派と宗教右派によるバックラッシュや性差別的な政策の調査・研究を続けてきた社会学者の斉藤正美さんと、性的マイノリティの当事者であり、その相談業務に携わってきた日本キリスト教団牧師の堀江有里さんを迎え、ジャーナリスト・金平茂紀さんの司会で議論は大いに盛り上がった。

 統一教会や日本会議などの宗教右派と自民党が連携し、90年代後半から夫婦別姓、性教育、男女共同参画といったジェンダー平等や同性婚、LGBTの権利保障などの阻止を行ってきた経緯を斉藤さんが報告し、問題提起した。これらは安倍元首相たちによる歴史修正主義の「慰安婦」バッシング…中学歴史教科書への干渉やNHKの番組改ざん事件で暴露されたメディアへの政治介入と繋がっている。そのため、メディアの萎縮・忖度・自主規制が強まり、現在に至っている…という報告である。
 
 地方政治へも働きかけてきた統一教会は「家族」に価値を置き、子どもを産み育てることを家庭の役割として、同性婚や性的マイノリティを認めない。自民党保守派も、性と生殖を家族が管理し繁栄させていく…とする「家族国家観」を持っている。彼らが唱える「家族を大切に」という言葉は緊密に連動しているのだ。

 ところが男性中心主義的な日本のメディアは女性からの情報提供を軽視し、フェミニズムと宗教には無関心だ。だから統一教会がジェンダーやセクシュアリティにこだわってきた歴史を見落とし、人権の視点からの検証が欠けている。日本でジェンダー平等が広がらず、人権後進国となっている裏には、このような問題が横たわっているのである。堀江さんは、憲法24条の⾃⺠党「改正」案や家族国家観、婚姻平等の切り捨て、トランス⼥性排除などから、メディアが「天皇制」や「慰安婦」問題をタブーにしてきた状況を、「“神国ニッポン”の復権か?」と問いかけた。

 金平さんは、日本社会に根付いている伝統的な家族観や「長幼の序」「男尊女卑」などの根底には「儒教」があるのではないか…と言う。メディアが家族やジェンダーの問題を低く見て、旧い価値観に安住していては問題は解決しない。この混沌(カオス)の中であがき、語り合っていくしかないのではないか。
 各自が自論を展開して時間切れの閉会となったが、「予定調和的な結論にまとめないのがよかった」「宗教を自分の問題として考えていかねば…という問題を突きつけられた」「もっと議論を聴きたい」などの声が寄せられた。統一教会問題はまだまだ終わらない。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
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2023年04月21日

【オンライン講演】地域から物言う難しさ 「リニアの現場に誘うように」信毎取材班 長期連載を報告=保坂義久

 JCJ賞受賞者を招いたオンライン講演会「土の声を『国策民営』リニアの現場から」を3月5日に開いた。信濃毎日新聞報道部の島田誠デスク、青木信之記者、飯田支社の前野聡美記者が顔をそろえ、島田デスクが連載の概要を説明した。

7部構成で連載
 連載記事は、22年1月から6月にかけて、社会面に69回が掲載。それ以外に1面や社会面に関連記事を掲載している。連載は「集落消滅」「沈黙の谷」「残土漂流」「夢と現実」「暗中掘削」「電力依存」「事業再校」の7部で構成した。
 なぜ今、リニア中央新幹線を取り上げたか。島田デスクは工事の進行につれ、見えてきた問題点があること、新型コロナ流行以降、オンライン会議の日常化など価値観や生活が変化していることを指摘。リニア新幹線について地元には期待があるだけに行政発信などでもポジティブな情報が多いとし、リニアの問題点も取り上げなければ地元紙として歴史の検証に耐えないと思いを語った。

描写にこだわる
 続いて青木記者が実際の取材を語った。
 長野県駅(仮称)は県南の飯田市に造られ、青木記者は駅建設のため移転する200軒を取材。住民の思いを聞き取った。補償は十分か、用地交渉を担う飯田市職員の思い、移転者の中にもあるリニアへの期待についても記事に取り上げた。青木記者は連載記事を書くにあたって、細部の描写を大切にし、読者を現場に誘うような文章を心がけたという。長野県が土石流の危険があると公表している場所が、残土処分場の候補地となっている。しかも県もJR東海もそのことを住民に知らせていない。
 飯田市など地元はリニアの駅を飯田線に隣接した場所に造るように要望した。しかしJR東海は、駅は造りやすい場所に造ると、市の郊外に駅を造ると決定した。
 
有力者の反発も
 次に前野記者が報告した。
 JR東海は残土を産業廃棄物ではなく、建設資材として活用するよう求める。リニア全線では7割の残土の処分先が決まったとされるが、長野県では3割しか利用先が決まっていない。残土を別の場所へ運び出せば、工事期間中にダンプカーの交通量増加が懸念される。坑口の近くに処分地を造ると、急傾斜地の多い山間部では土砂崩れの危険性がある。
 リニアに疑問を持っていても、村八分を恐れて声があげられない実情もある。長年、地域の悲願として掲げてきたので、JRの姿勢が住民に寄り添わないものでも、ものを言いにくいうえ、地域の長や経済の中心人物が良かれと思って推進してきた、国ベースで進んでいる事業に地域から声を上げるのは難しい。反発も多かった。
国ベースで進んでいる事業に地域から声を上げるのは難しい。
 初期の試算ではリニアの電力は東海道新幹線の3倍とされていたが、JR東海は比較せず、。電力供給については電力会社に任せるとしている。リニアの建設目的の一つが災害時の大動脈二重系化であるとするなら、それで本当に機能するのか疑問だ。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
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2023年04月19日

【支部リポート】北九州 国が強いるのは「違憲」 医師らの提訴めぐり学習会=久田ゆかり

 軽快な音楽に乗せ著名タレントが所持を急ぐようアピールするマイナカード(マイナンバーカード)。来年にも健康保険証を廃止しマイナカードに健康情報をも集約する国策が今年4月から本格的に開始される。その第一歩である病院窓口等での「オンライン資格確認」に反対の声を上げる動きが医師・歯科医師から急速に高まり2月、「マイナ保険証は憲法違反」として東京地裁に提訴した。この動きは全国に波及し二次訴訟へと拡大する勢いだ。

 東京などの医師ら274人が「病院窓口等でオンラインで資格確認をしたり必要な体制を整えさせるよう国が強いるのは違憲で、公法上の義務は無い」ことの確認を求め国を提訴した。会見した原告団長の佐藤一樹医師は「零細な医院までもが義務化されることで過疎地や離島では深刻な影響が出始めており廃業する医院が目立つ。従来のような自由な医療が受けられなくなる」と強調した。北九州支部は、この問題を深く知りたいとの声があり急きょ、杉山正隆支部長を講師に、週刊金曜日読者会と学習会を共催した。

 杉山支部長は「病院に掛かる際には毎回、マイナカードの提示と顔写真撮影が必要で、持参しなければ自費扱いの10割負担となる。薬の重複を防ぐことが出来る等の利点もあるが、例えば、同じ病気で意見を聞きたくても、別の病院には掛かりにくくなる。日常的なWindows のupdateでマイナカードを読み取る等の機器に不具合が出たとの報告が全国各地から寄せられているが、こうした場合は診療は出来ない」などと4月以降、医療への掛かり方が激変することを解説した。

 また、「マイナカードの常時所持は『実印を常に持ち歩く』ようなもので危険極まりない。紛失すると再発行まで1カ月ほど掛かり、基本的に病院等では10割負担となる。マイナカードの所持を拒否したり紛失時用に資格証を発行するが、資格証を利用すると窓口負担が高くなる等のペナルティがある」と話した。
 参加者からは「国民から確実な徴税をし、病歴や投薬の情報、顔の情報を多数収集することで国民を管理するもの」「諸外国でも導入の動きはあったが、ほとんどの国では中止しており危ういものだ」等、懸念の声が多く上がった。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号

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2023年04月18日

【寄稿】沖縄はまた「捨て石」か 「有事」報道洪水の罠=高嶺朝一 

                    
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 私たちは、毎日、テレビや新聞、インターネット媒体で、空に戦闘機、海に艦船、陸にはミサイルが林立するイラストを見せられている。琉球列島は全て無人島で人々の暮らしは存在しないかのようだ。どうしてメディアは、軍事化した出来事と見方を大量に流すようになったか。私たちは、いま巨大な誘蛾灯に引き寄せられる虫のような心理状況に陥っているのではないか。
「台湾有事」報道の洪水に危機感を抱いているのは私だけではないだろう。「有事」という用語は使ってほしくない。用語には人々を呪縛する力があり、「有事」対応が既定方針かのような意識にとらわれ、世論が形成される危険性がある。
 人々は、どうしてこうなったかを探るより最新の展開に強い関心があり、それゆえメディアは最新の情報を流し続ける。現在の問題の原因は過去のどこかにあり、将来、起こりうる不幸な事態を避けるためには、現在の問題を明らかにすると同時に、過去に戻って検証する必要がある。

安保関連3文書の本質

「…万が一、我が国に脅威が及ぶ場合も、これを排除し、かつ被害を最小化させつつ、我が国の国益を守るうえで有利な形で終結させる」(国家安全保障戦略V我が国の安全保障の目標)、前段は「…我が国自身の能力と役割を強化し、同盟国である米国や同志国等と共に、我が国及びその周辺における有事、一方的な現状変更の試み等の発生を抑止する」とある。当然、台湾や尖閣が念頭にある。
 太平洋戦争末期に大本営が「戦略持久」と称して採用した「沖縄捨て石」作戦とどこが違うのだろうか。
 開戦当時、沖縄は、日本本土と南方資源地域を結ぶ海空の連絡拠点にすぎず、防衛強化は太平洋の主導権が米軍の手に移ってからだ。1943年12月末、大本営陸軍部は兵棋研究の結果、国防圏の縦深を強化しておく必要から南西諸島の戦備を強化することになった。翌年3月、南西諸島防衛のために第三二軍が編成され、11月に決定された第三二軍の新作戦計画では、米軍の本土進攻を遅らせるために「戦略持久」と称して「焦土作戦」がとられ、住民の4人に1人が亡くなった。
 2015年7月、安保法制審議の衆院特別委員会地方参考人会が那覇で開かれた時、私は安保法制に反対する立場から次のようなことを主張した。
・東シナ海、南シナ海の小さな島々の領有権をめぐる争いは、漁業権や資源の探査をめぐるものであり、水産庁や漁業団体、海上保安庁などが中国や台湾の関係機関や団体と話し合えば解決可能。
・自衛隊が出てくれば軍事的な対立になる。「トゥキュディデスの罠」に陥るのを避けるべきである。古代アテネの軍人・歴史家は衰退する大国と台頭する大国との間で戦争が起こることを指摘した。
・尖閣問題は、米軍のアジア太平洋地域での兵力体制維持と予算獲得のため、そして自衛隊の役割拡大のために利用されてきた。安保関連法でいくらか縛りとなる条件をつけたにしても、日本人のメンタリティーからすると、米国の要求を拒否できるとは思えない。自衛隊の活動範囲は地理的な概念や任務の内容も際限のないものになる。
・平和憲法とともに歩んできた日本は、中国など周辺の国々と率直な対話を始めることが先で、あえて緊張を高めるような軍備の強化に前のめりになるべきではない。

日米同盟再定義の軌跡

 米国から見た安全保障環境の時期区分によると、ポスト冷戦期には米国が世界で唯一の超大国になり、ロシア、中国、その他の国も、米国の地位または米国主導の国際秩序に重大な挑戦をもたらすとはみなされなかった。ソ連という「共通の敵」を失った日米政府は、同盟再定義を迫られた。
 1995年9月、沖縄で3人の米兵による女子児童暴行事件が発生、米軍基地撤去を要求する声が高まり、クリントン政権は、対応を迫られた。大田昌秀知事の2期目だった。大田氏は学徒動員で沖縄戦を経験した元琉球大学教授。1996年4月、橋本首相とクリントン大統領による首脳会談で「日米安全保障共同宣言―21世紀に向けての同盟」が発表された。大田知事は、アジア太平洋地域に米軍兵力構成「約10万人」態勢の維持が首脳会談で合意されたことに反発した。将来も沖縄にアメリカの兵隊が居残り、米兵犯罪もなくならない。さらに「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)で決まった基地負担軽減策「米軍の施設及び区域を整理・統合・縮小」計画は、多くが県内移設を条件付きなので、住民の反対が予想された。
 米国のアジア太平洋シフトは、同盟国日本を取り込む形でポスト冷戦期に始まり、現在の「新たな大国間競争の時代」に軍拡が顕著になった。
 1995年2月、国際政治学者ジョセフ・ナイ氏がクリントン政権の国防次官補として「東アジア戦略報告(EASR)」を作成し、冷戦後の米国の東アジア安保構想を示した。これは、1997年の日米防衛協力の指針につながった。その後も対日外交の指針としてリチャード・アーミテージ氏らと超党派で政策提言した。2021年1月、バイデン政権発足で、アメリカ国家安全保障会議インド太平洋調整官兼大統領副補佐官(国家安全保障担当)に就任したカート・キャンベル氏は、ナイ氏に近い。二人は、最初から普天間飛行場の辺野古移設計画にかかわっていた。クリントン政権でアジア・太平洋担当国防副次官補、オバマ政権では東アジア・太平洋担当国務次官補を務めたキャンベル氏は著書「The Pivot: The Future of American Statecraft in Asia」(2016年)で中国の台頭に対応していくために米国の対外政策をアジアにシフトするように提言した。
 ナイ、キャンベル、アーミテージ、マイケル・グリーン氏ら超党派の元政府高官・政策立案者グループは、日本のメディアへの露出も多い。

冷戦思考の亡霊いまも

 「トルーマン以降の政権は、1989年に共産主義が崩壊するまで、ジョージ・F・ケナンの『封じ込め』政策のいろいろなバリエーションを採用してきた」(米国務省歴史課)。封じ込めの手段として政治、経済、軍事のいずれに比重を置くかの違いはあるにしても、歴代の政権は、対立と陣営選択を各国に迫った。バイデン政権も「封じ込め」政策の変形を推進している。冷戦思考は過去の亡霊ではない。朝鮮半島で生まれたある宗教が冷戦の戦士、「保守の政治服」を着て、日本と米国の政治に影響力を及ぼしたのは一例であって、さまざまな場面でワシントンと東京の政治を縛っている。
 日本は、多くの人が10年前にはタブーと考えていた「敵基地攻撃能力」(反撃能力)を保有することになる。国内総生産(GDP)比で1%に制限してきた防衛費を2%に増やす。次は安倍前政権の主な目標であった憲法改正である。まさか、と思っているうちに世論は時勢に流されてしまうかもしれない。憲法の平和主義を過小評価すべきではない。外交と民間交流の現場でもっと活用されるべきだ。前文と9条には隣の国々、地域、人々と仲良く暮らす方策が書かれており、国際社会で「名誉ある地位を占めたい」という決意が込められている。
                      ◇
 たかみね・ともかず 元琉球新報社長、著書に『知られざる沖縄の米兵』(高文研)、共訳書『調査報道実践マニュアル―仮説・検証、ストーリーによる構成法』(マーク・りー・ハンター編著)
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
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2023年04月17日

【好書耕読】高杉晋吾『袴田事件・冤罪の構造』―暗闇に進む道を示す灯火=秦 融(ジャーナリスト)

 1933年生まれの高杉晋吾さんは、秋田県生まれのジャーナリスト。袴田秀子さん(90)に「ご存知ですか」と問いかけると「もちろんです」と即答し た。
 「他人様で巌のことを『無実ではないか』と言ってくれた初めての人ですから」
 66年、静岡県清水市 (現静岡市清水区)で起きたみそ会社専務夫婦と子供二人の一家四人が惨殺された放火殺人事件。高杉さんは「冤罪」として報じた最初のジャーナリストだった。拘置所で袴田さんと面会し、文通を重ね、現場を歩き、捜査のいかがわしさを雑誌「現代の眼」(廃刊)に告発。袴田さんに死刑判決が出た翌年の1918に『地獄のゴングが 鳴った―無実のボクサー 袴田巌』(三一書房)として 書籍化し、世に問うた。

 拷問まがいの取り調べ、 突然みそタンクから出現した「五点の衣類」など、新聞やテレビなどの大手メデ ィアが正面から取り上げようとしなかった問題点を検証し、冤罪の可能性を浮き彫りにした。迫真の作品は、支援活動をする人たちにとって、暗闇に進む道を示す灯火の役割を果たす。

  80年ごろから支援活動を続けている清水市の学習塾経営山崎俊樹さん (袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会事務局長)は「当時は頼るべき情報が一切ない。高杉さんの本だけが頼りだった」と話す。2014年、静岡地裁が再審開始を決定すると、高杉さんの著書は『袴田事件・冤罪の構造: 死 刑囚に再審無罪へのゴン グが鳴った』(合同出版)として復刻版が刊行された。

 自白ありきの捜査、警察捜査情報を垂れ流す新聞報道が冤罪づくりの共犯≠ニなる構図を描く。冤罪事件に挑むジャーナリス ト必読の書である。
13日、東京高裁は再審開始を認めると決定した。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
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2023年04月16日

【今週の風考計】4.16─「チャットGPT」がもたらす人間・世界支配の怖れ

1億人を超える利用者
先日のJCJ 出版部会で、「チャットGPT」が話題となった。「チャットGPT」は米国のマイクロソフト社が出資する<オープンAI>社が開発した、対話型「生成AI」を駆使する無料のチャットサービスである。
私たちの質問や要求に対し、Web上にある大量のデータを集積して、的確な文章にまとめクオリティの高い回答をしてくれる。メール作成、詩や小説の執筆、各種計算ソフトの作成、料理の献立、作曲など、あらゆる分野のニーズに応えてくれる。昨年11月に公開されるや、わずか2カ月で利用者が1億人に到達した。
 この状況を他のIT企業が見過ごす訳がない。3月にはグーグルが「バード」を米英2カ国に限定公開した。

世界に広がる規制の動き
だが「チャットGPT」には、個人情報の漏えい、情報の信ぴょう性について、多くの懸念や疑問が提起され、「チャットGPT」の規制が世界で広がっている。
 イタリアではプライバシー侵害などへの懸念から、「チャットGPT」を3月末、一時的に使用禁止にした。そのうえで<オープンAI>に対し、4月末までに個人情報の収集や利用者の年齢確認など、厳密化への具体策を求めている。
ドイツやフランスでも規制論が浮上している。「チャットGPT」が回答の精度を上げるために、本人の同意なく大量のデータを収集することは、EUの「一般データ保護規則」違反だと指摘している。

国会答弁も「チャットGPT」
さて日本はどうか。岸田首相は10日、来日した<オープンAI>社のアルトマンCEOと会談し、「チャットGPT」の積極的な活用へと前のめりになっている。西村経産相は「チャットGPT」で、国会答弁の作成も視野に入れるという。
 国会答弁まで「チャットGPT」にまかせたら、情報管理の安全性や不正確な文章の挿入だけでなく、いまでさえ血の通わぬ国会答弁なのに、ますます事務的で空疎なものになるのは目に見えている。
学習・教育分野でも悪影響を懸念する声が相次いでいる。「チャットGPT」は論文やリポート、読書感想文などを短時間で作るため、著作権を侵害する可能性や差別・偏見を助長する答えを返す恐れもある。
 東大や上智大などでは、リポート作成に「チャットGPT」を利用すれば、ひょう窃の懸念も含め、他人に依頼して作ったものとして認めない旨を学生に通知している。

「生成AI」が悪用される恐れ
もっと深刻なのは、元グーグル社員で元ニューヨーク大研究教授のメレディス・ウィテカー氏が指摘する「監視ビジネスによる人間・世界支配」だという。インタビューに答えて、次のように述べている(朝日新聞・電子版4/6付)。
 「独占的な巨大IT企業は、世界を舞台にGメールやフェイスブックを通じて膨大なデータを集めて分析し、クラウド顧客に効果のあるサービスを提供し収益化する。その収益によってインフラ費用をまかない、またデータを集約して生成AIを高度化する。
 この生成AI自体が個人の内面にまで踏み込み、プライバシーを明らかにし、独自の監視機能の役目を果たす。AIと監視モデルの関係が、さらに強まる恐れがある」(要約)
まぎれもなく巨大IT企業の「生成AI」によって、私たち一人ひとりの性格や嗜好、財産、思想・信条まで監視・データ化される事態が生まれるのだ。13日には米国のアマゾンが、企業向けに新たな「生成AI」の提供を始めると発表した。
 こうして「生成AI」を多種多様な企業や組織が使いだしたら、個人のプライバシーや人権が損なわれるだけでなく、意図的に国家や企業・政党などの存立や民主主義を危うくするために、悪用される危険性も視野に入れなければならない。まさに恐ろしい時代に入っているのだ。(2023/4/16)
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2023年04月15日

【オンライン報告会】「島を戦場にさせない」〜石垣新基地開設、現地からの報告〜報告者:藤井幸子さん「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」事務局 22日(土)午後2時から4時

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南西諸島に次々と展開する自衛隊基地。国防の「空白地帯」とされてきた石垣島にも、ついに陸自ミサイル基地が開設された。自衛隊と米軍の一体化も進められようとしている。政府が打ち出した対中国「南西シフト」とは、すなわち南西諸島の要塞化であり、石垣島の住民にとっては、有事の際には真っ先に攻撃目標となることを意味する。敵基地攻撃能力の保有など新安保政策が直撃する島々では、否応なく危機感が高まっている。南西諸島要塞化の「最後のピース」といわれた石垣島で、基地反対運動の先頭に立ってきた藤井幸子さんに、島の現状とミサイル基地の問題点を伝えていただく。
※JCJ沖縄ジャンプナイト:JCJ の中で沖縄の米軍基地をテーマとして討論会などを行っているチーム。今年1月に自衛隊ミサイル基地化する宮古、石垣を取材。

■報告者:藤井幸子(「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」事務局)   
1947年生まれ。2005年、大阪から基地のない石垣島に移住。2007年、島の女性たちと「いしがき女性9条の会」を立ち上げ、平和運動に取り組む。2015年、石垣島への自衛隊配備が明らかになった当初から反対の住民運動に参加。いしがき女性9条の会事務局長、石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会事務局。

■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://jcjonline0422.peatix.com/)で参加費をお支払いください。
JCJ会員は参加費無料。jcj_online@jcj.gr.jp に別途メールで申し込んでください。

主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
   03-6272-9781(月水金の13時から18時まで)https://jcj.gr.jp/ 
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2023年04月14日

【出版界の動き】 2冊の風─凪良ゆう『汝、星のごとく』と村上春樹『街とその不確かな壁』=出版部会

●23年2月の出版物販売金額997億円(前年比7.6%減)、書籍634億円(同6.3%減)、雑誌363億円(同9.7%減)。月刊誌305億円(同8.9%減)、週刊誌58億円(同13.4%減)。返品率は書籍31.0%、雑誌41.2%、月刊誌39.9%、週刊誌47.3%。

●新刊本の値段が11年連続上昇し、この間に159円高くなっている。出版科学研究所によると、2021年の上昇率は2.8%に達し25年ぶりの大きさ。2022年になると新刊書籍・税抜き本体価格は平均1268円(前年比2.2%増)。特にエネルギー価格が高騰し、製紙に加え印刷、輸送コストの膨張が大きな要因だ。
 さらにインターネットを使った娯楽の普及などで販売部数の落ち込みが止まらず、出版社が少ない部数でも利益を確保するため、値上げを続けてきたという事情もある。

●いま書店業界や本好きな人々の間では、芥川賞や直木賞など、出版社が主催する著名な選考委員による「お墨付き本」より、本屋さんの店員などが推奨する「○○本」と銘打つ「お薦め本」が人気を呼んでいる。この12日に発表された「本屋大賞」の凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社)は、さっそくコーナーが特設され店頭に積み上げられた。
 村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社)の発売と合わせ、久しぶりに購入客で活況を呈している。

●千葉県富津市は、「イオンモール富津」内に図書館流通センター(TRC)を指定管理者として市立図書館を開館。面積446坪、座席数134席、蔵書数6万5千冊、開館時間10時〜20時。同市は公共図書館がなく、初の公共図書館となる。

●有隣堂が新規に41店目を開設。東京・台東区の「上野マルイ」地下1階に書店「STORY STORY UENO」を出店。店舗面積166坪で、書籍6万冊のほか文具、雑貨、食品なども取り扱う。「『昨日より楽しい自分』を見つける場所」をコンセプトに、本がもつ物語を紡いで人生を豊かにするワークショップを毎日開催する。

●図書館でも本屋でもない施設「8BOOKs SENDAI(エイトブックス仙台)」が注目されている。宮城県を拠点に不動産・リノベーション事業を手がけるアイ・クルールが運営。本を読んでも読まなくても、子どもが遊んでもOKの会員制の図書施設。利用料金を払えば館内にある約1万冊の蔵書が読めるほか、施設内を自由に利用することができる。ただし本は貸出も販売もしていない。
 2階には授乳室やおむつ替えシートのスペースやキッズ・コーナーも設置、靴を脱いで遊ぶこともできる。

●KADOKAWA、アニメホテル事業から撤退。ところざわサクラタウン内にある「EJアニメホテル」と成田国際空港にある「成田アニメデッキ」は集客に苦戦し、収益確保が困難と判断し撤退を決めた。
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2023年04月12日

【沖縄リポート】70団体参加 那覇市街地で声上げる=浦島悦子

                         
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「島々を戦場にするな!沖縄を平和発信の場に!」緊急集会とデモが2月26日(日)午後、開催された。「台湾有事」を口実に、急激に進む琉球弧のミサイル基地化・軍事要塞化=「第二の沖縄戦」に危機感を募らせる県内の市民団体や個人が昨年末から議論を積み重ね、開催に漕ぎつけた。
議論の中で、シニア世代の運動スタイルに対する若者世代の違和感や、今まさに自衛隊基地が作られつつある与那国・宮古・石垣の島々(会議にはオンライン参加)と沖縄島との危機意識の落差などが率直に話し合われ、共同作業ができたことは大きな成果だ。会合を重ねるごとに参加団体も増え、70団体を超えた。

会場となった県庁前県民広場は、主催者目標の1000人を大きく上回る老若・親子連れを含む1600人の参加者で埋まり、右翼の街宣車の妨害をものともせず、ミニライブや各島々・地域からのトークが展開された。集会実行委員長を務めたガマフヤーの具志堅隆松さんは「ものが言えなくなると戦争になるのは経験済みだ。今はまだものが言える。声を上げていこう!」と呼び掛けた。
「私たち沖縄県民は平和を愛する民です」から始まる集会宣言文は、政府に対して二度と戦争を引き起こさないことを求めるとともに、全国の自治体に対し、中国との平和交流の強化を求めた。コロナ禍以来、久方ぶりのデモ行進が那覇の市街地を練り歩いた=写真=。
今後は、さらに大規模な集会、そして、戦争をさせない全県組織の結成を目指す。しかしながら一方で、それが間に合わないと感じるほど戦争への動きは待ったなしだ。

与那国・宮古に続き陸上自衛隊の駐屯地建設が進む石垣島では、16日の開設に向け5日午前、市民の猛抗議の中、ミサイルを含む車両150台が搬入された。
沖縄島でも、うるま市の自衛隊分屯地へのミサイル配備、沖縄市の自衛隊弾薬庫建設、そして米軍辺野古弾薬庫の増設&新ゲート建設工事と目白押し。住民を巻き込んだ「持久戦」の準備が着々と進むのが恐ろしい。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号
 


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2023年04月11日

【月刊マスコミ評・新聞】自民党大会に見る論調の大きな差=白垣詔男

 これほど同じ日に、自民党に対する新聞論調の姿勢に大きな差が見られるのも、珍しいだろう。2月26日に開かれた自民党大会についての翌27日の朝刊社説だ(毎日だけは28日)。見出しだけを見てもその差が分かる。
 朝日「教団問題もう忘れたか」、毎日「自民地方議員と教団 党の実態調査が不可欠だ」とジャーナリズムの基本である「権力の監視」をきちんと踏まえており、自民党には強く「異論」を唱えている。なるほど、安倍晋三元首相が亡くなってから噴出した、旧統一教会が自民党候補の選挙を支援していた問題、それに続く自民党の自浄作業不足≠ノついて、党大会で何の議論もなかったのはおかしいし、それを指摘するのは、まさに正論だろう。
 ところが、読売は「政治の安定へ足元見つめ直せ」、産経「保守の矜持で改革進めよ」と、自民党「応援団」を強く前面に打ち出し、自民党に、具体的に耳の痛いことは言わない姿勢がはっきりしている。

 読売は「岸田内閣が、防衛力の強化や原子力発電の積極的な活用などを決断してきたことは評価できる」と手放しでほめる。産経は、防衛力強化に「党を挙げて取り組んでもらいたい」と主張。その他、「憲法改正」「皇位の男系(父系)継承」を訴える。
 しかし、読売、産経とも、自民党批判は全くない。両紙は、ジャーナリズムを放棄している姿勢に終始しているうえ、こう如実に「自民党にすり寄る姿勢」を見せられると、もう、新聞の役目までも放棄していると確信する次第だ。

 一方、朝日、毎日が指摘しているように、自民党大会で演説した岸田文雄首相は、旧統一教会との関係に触れないままだった。自民党各級議員と旧統一教会との関係を語らないというのは、自民党は、自らの「汚点」は、時がたてば国民は忘れると考えているのかとも思いたくなる。
さらに、統一地方選で、旧統一教会問題について忘れたように触れないで、反省なしで選挙運動を展開する候補者ばかりになるのではないかと予想されるところだ。
 国民、有権者がなめられていると言っても過言ではなかろう。こうした自民党には猛省してもらわなければならない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号

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2023年04月10日

【焦点】神宮外苑再開発 認可取り消し求め提訴 伐採知事≠フ正体は=橋詰雅博

                        
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 東京・明治神宮外苑の再開発事業をめぐり事態が大きく動いた。住民ら約60人が東京都の施行認可の手続きは違法だとして東京地裁に2月28日に提訴した。と同時に判決確定までの認可の執行停止も申し立てた。大量の樹木の伐採による景観悪化、建設される超高層ビルのビル風や日照の減少、工事に伴う騒音などの理由で1年前ほどから始まった再開発反対の住民運動は高まり、事業見直しを求めるオンライン署名も12万筆を突破した。しかし、小池百合子都知事は2月17日に認可し、工事着工へゴーサインを出した。住民は反対の声を無視する小池知事に対し反撃≠ノ出た。
 訴状の主な内容は@神宮外苑の環境を大きく毀損、A事業者の不十分な情報公開、虚偽の報告のままでの環境影響評価など重大な瑕疵がある、B13年にも及ぶ工事期間は住民生活を長期にわたり不便、不利益を与える―。

 小池知事はなぜ住民の声を黙殺するのか。反対運動を展開する住民団体が主催した2月21日のオンライン講演で元都庁幹部職員の澤 章氏=写真上=はこう解説した。
 「そもそもこの再開発事業計画は2005年夏の森喜朗元首相と石原慎太郎都知事との都庁での会談が発端。その後、庁内に東京が2度目の五輪開催を目指すという噂が流れた。後日聞いた話だが、電通がつくったとされる神宮外苑再開発に関する企画提案書(04年ごろに出回る)を森元首相は持参したという。老朽化した国立競技場の移転(当初は晴海に新競技場を建てる予定)、都営霞ヶ丘アパートの取り壊し、複合スポーツ施設や業務施設の建設などを行う外苑再開発実現のため五輪招致を2者会談で決めたようです。森元首相が電通案に乗ったのか、案作成を指示したのかは不明です。元文科相で自民党の萩生田光一現政調会長(東京24区選出)も絡んでいる。小池さんはこの案件と『私は関係ない』という姿勢です。反対の声に耳を傾けず無視を貫けるのは、3年前の都知事選で290万票獲得した自信に由来していると思います」

 知事本局計画調整部長や中央卸売市場次長などを歴任した澤氏は、20年3月出版した『築地と豊洲』で小池都政を批判したことで東京都環境公社理事長を解任された。「批判を許さず」が小池知事のやり方だという。都庁で33年間働いた澤氏は神宮外苑再開発計画の裏側で政治家や事業者などの意向を汲んだ都市整備局が暗躍したと断言する。
 「外苑再開発事業を進めるには用途地域の変更、容積率アップ、緑の量をどのくらいにするなど都市計画の大幅な変更が絶対必要です。これを司る都市整備局が各方面に根回し。ダークサイドの仕事として少数の幹部だけが関知できる案件だと思います」(澤氏)
                       
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 小池知事の「正体」を澤氏は「小池さんは、偉くなること、政敵を追い落とすこと、政治家としてランク上げることが目的化していて、何をするかが一切ないちょっと異様な人です。女性の味方や子ども味方、地球温暖化の女性戦士みたいな仮面をかぶっていますが、理想とか理念とかに裏付けられているではなくて、その着ぐるみをどう見せるか、どうカッコよく見せるか、その時々のトレンドを追っているにしか過ぎないが私の見立てです」(2月22日、自身のYouTube『都庁watchTV』)と底が浅いと指摘した。
 葛西臨海公園や日比谷公園の樹木なども都は切る計画だ。伐採知事≠フ暴走は止まらず―。
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