2023年05月30日

【オンライン講演】政府メディア戦略とマスコミの機能不全 映画『妖怪の孫』公開直前 内山監督が語る=鈴木賀津彦

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 映画『妖怪の孫』の公開直前の3月12日、「政府のメディア戦略の現状とマスメディアの機能不全」をテーマに、監督の内山雄人さん=写真=を講師にJCJオンライン講演会が開かれた。
内山さんは「岸田政権が原発推進や米国の言いなりの軍拡路線を進めるなどして、この国がこんなに危険な状態なのに、マスコミが『おかしくないか』とも言わなくなっている。こんな現状をどうやって変えていくのかを、この映画で問いたかった」と述べ、「自粛するマスメディアの現実」に危機感をあらわにした。

 「安倍晋三とはいったい何者であったのか。この国に遺したものは何だったのか」と安倍政治を問うた映画『妖怪の孫』で、内山さんは「なぜ安倍政権は選挙に強かったのか、何が国民の多くを引き付けたのか」という視点で、政権のメディア戦略を掘り下げている。
 誰もが発信者になれるインターネット時代の自民党のメディア戦略が成果を上げ、テレビなどマスメディアが政権批判をしないよう「自粛」し、機能不全になっている現実がなぜ起きているのかを分析した。
 しかし、メディアは政府機関などとは違い、組織として闘うのだという姿勢になれば、闘えるはずだと強調。映画では政治を難しく伝えるのではなく、娯楽として家族で見に行けるエンタテイメント性を工夫するなど、正しいことを伝えることがビジネスとしてもきちんと成り立つようにしたかったという。

 安倍政治を支えている構造に切り込んだこのドキュメンタリーを「政治ミステリー劇場」と打ち出したのは、分かりやすく伝えるため。菅前首相を追った前作『パンケーキを毒見する』を「政治バラエティ」として示した手法と同様、長期政権を支える仕組みをミステリーの謎解きのように提示し、観る人が「自分ごと」として受け止められるようにした。
 放送法の問題では、報道の自由を守るために「公平性」が強調されるのであって、政権が逆の言い方をして介入しようとすることにメディア側が問題にしていないことも「自粛」だと話した。

 後半の議論では、参加者から「国民が反対らしい反対もしないうちに、いつの間にか軍拡政策が決まっているようになってきたのは何故なのか」と質問があり、内田さんは「そこに一番危機感がある。岸田政権のヌルヌルしたやり方は、たちが悪い」と捉え、こうした状況だからこそ「マスコミが問題意識を持って問題を明確にしていかねければならない」と語った。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年05月29日

【メディアウオッチ】深まる新聞の危機 購読料値上げ、東海で夕刊廃止の朝日 読売は値上げせず生き残り狙う=編集部

 朝日新聞は4月5日、朝夕刊セットの月ぎめ購読料を5月1日から500円値上げし、現在の4400円(税込)から4900円に。朝刊のみ統合版の地域は、3500円から4000円とすると発表した。朝刊1部売りも、180円と、現在の160円から20円アップ、夕刊は60円から70円になる。他紙に先駆け、朝刊150円を160円、夕刊を50円から60円にしてからさほど時間をおかない再度の値上げで、いずれも10%を超える大幅値上げだ。

 月ぎめ本体価格のアップは1993年12月以来。朝日は、値上げの最大理由として新聞用紙の高騰をあげるが、新聞各社全体では21年7月に消費税転嫁による値上げもあった。在京の同業他社、東京、毎日、読売の3社を例にとり比較すると、1部売り価格は東京が120円、毎日、読売は150円。夕刊は3社とも50円。ここでも朝日の値上げの突出ぶりが際立つ。朝刊で30円から60円、夕刊で20円の1部売り価格差と月ぎめ購入料値上げが今後の朝日の部数にどういう影響を及ぼすか。各社ともするところだろう。
 朝日は今回、毎日新聞に続く東海地区での夕刊発行廃止も告知した。
 一方、読売新聞は「少なくとも1年間」値上げを見送ると3月25日発表。購読料をめぐる大手3紙の対応が分かれたが、各紙とも発行部数の減少は著しい。言論・報道機関としての位置を、どう維持していくかが問われている。
 
一般紙発行部数
3000万割れ
 新聞協会によると、2000年に5370万部を記録した新聞の総発行部数も、昨年10月には3084万6631部となり、一般紙では2869万4915部と、初めて3000万部を割り込んだ。
 2000年には1・13部だった世帯数当たり部数も0・53部と、新聞を取っていない世帯が半数になる状況だ。
 また、日本ABC協会によると、22年下期(7〜12月)の平均販売部数は、読売663万6073部、朝日397万4942部、毎日185万9147部、日経168万0610部、産経99万9883部。「コロナ」から3年で、部数の4分の1が減少した。

「経営」に悩む
ジャーナリズム
 「新聞の危機」がいわれて既に20数年。ネットの台頭で、米国では多くの地方紙が廃刊し、新聞がない州都も出て来たりする状況だ。
 日本でも「新聞経営」の立場からネットをどう位置づけるか。「紙媒体」をどうしていくか。経営から独立して報道と論評を兼ね備えた「ジャーナリズム」をどう堅持していくか。依然として大きな課題が待ち受ける。
 結局、「ジャーナリズムを率先して担う存在」(「新聞の挑戦」98年新聞協会)としての対応が求められているのだが、日本でそれを貫くことができるのかどうか。ジャーナリズム性を強めることこそ「生き残り策」の第一だろう。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年05月28日

【映画の鏡】各地で広がる自主上映会『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』=鈴木賀津彦

                          
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劇場公開は2月に終わったが、直後から各地で自主上映会が開催され、さらに脱原発団体だけでなく多様な団体からの上映申し込みが相次いでおり、本作品に注目が集まる。

 原子力発電所の推進に舵を切った岸田政権は、60年を超える運転延長を可能にする法案など5つの法改正案を束ねた「グリーントランスフォーメーション(GX)脱炭素電源法案」を2月28日に閣議決定したが、原子力規制委員会では反対意見を多数で押し切るなどスケジュールありきで、国民の疑問に何も答えないままで進めているのだ。

映画に登場する樋口英明・元福井地裁裁判長は、こんな政府のデタラメぶりを誰もが分かるように説明してくれる。2014年、関西電力大飯原発の運転停止命令を下した判決で、原発が頻発する地震に耐えられない構造であることを指摘、また「環境問題を原発の運転継続の根拠とすることは甚だしい勘違いである」と明快に述べている。映像は樋口氏が定年退官後に、日本の原発に共通する危険性を説いて回っている姿を追う。

一方、被災地の福島では、若い農業者が畑の上で太陽光発電するソーラーシェアリングに挑戦し、農業復活にかける力強い思いをカメラが捉える。新たな農業の形を伝え、「希望」がどこにあるのかを示してくれる。日本の未来は原発ではなく、ここにある!と。
 政府の進める「GX」とやらに少しでも疑問を持ったら、まずはこの「希望」の映画を観てほしい。身近な所で自主上映会を気軽に企画し実現してはいかがだろう。上映申込は専用サイトから=https://saibancho-movie.com/wp/
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年05月27日

【おすすめ本】水島宏明「メディアは『貧困』をどう伝えたか」―「自己責任論の壁」の弊害 報道陣の葛藤にも触れる=中村真暁(東京新聞記者)

 メディアは貧困問題を、どのように社会に問い掛けてきたのか。本書では、テレビ制作者として貧困問題を取材してきた著者が、リーマン・ショック期とコロナ期の貧困報道を検証。テレビ放送に関するデータベースを駆使し、自身の取材経験なども振り返ることで、その系譜を縦覧する。
 注目するテーマは「ワーキングプア」や「ネットカフェ難民」、「生活保護バッシング」、「生理の貧困」などさまざまだ。メディアによる議題設定がどのような社会背景から行われたかを整理し、あるべき報道の姿を問うていく。

 特に考えさせられたのは、貧困者をどう描くかという問題だ。実際の貧困者は家族や障害、教育などに起因する生きづらさを背景に、頑張ることすらできないことが少なくない。貧困問題の難しさは、そういった複雑さにこそあるとも言える。
 しかし、そういった実像は分かりにくく、共感されにくい。結果的に「本人がいくら頑張っても報われない。かわいそうだ」といったステレオタイプな報じ方に集約され、「頑張らないように見える人は落ちても仕方がない」という自己責任論につながってしまうのだ。本書はこうした「自己責任論の壁」の弊害を指摘しつつ、報道人の葛藤にも触れる。記者の端くれとして貧困報道に力を入れてきた私には、身につまされる思いがした。

 何度も通った民間団体の食品配布会場には、コロナ不況からの回復が兆しを見せても、長蛇の列ができている。問題の解決が待ったなしの今こそ、本質を突く報道が必要なのだと思いを強めている。(同時代社1800円)
 
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2023年05月25日

【オンライン講演】核のごみ受け入れますか「地方は課題の先進地」23年度JCJ賞受賞 HBC報道部デスク・山ア裕侍さん=古川英一

 北海道の人口2700人余りの小さな町・寿都町が、揺れている。町長が過疎化脱却を図ろうと、核のごみの最終処分場の調査に手を挙げたからだ。昨年度のJCJ賞を受賞した北海道放送(HBC)の番組、「ネアンデルタール人は核の夢を見るか〜核のごみと科学と民主主義」は、この町の動きを2年に渡って取材し、まとめたものだ。
 3月26日に開かれたJCJ賞受賞作品のオンライン講演会には、この番組の制作にあたった山ア裕侍報道部デスクが、この番組に込めたメッセージや、ちょうど国会で明かるみに出た放送法への政治家の介入問題について語った。

核のごみは何を問う
 「2020年8月に北海道新聞のスクープでこの問題は明らかになりました。以来HBCは、この問題に関して、この3月までで430回近く取り上げてきました。政府は原発の稼働を60年に延長することを打ち出しましたが、そうなると核のごみも増えます。その視点からも今月、放送を出しました。WBCで盛り上がる中でしたが、伝えていくことが大事だと思ったからです」
 寿都町は調査を受け入れることで、交付金をもらうのだが、山アさんはこうした構図について「交付金は過疎対策にはなりません、道内で原発のある泊村は依存している原発が休止しているため財政難に陥っています。地方に迷惑施設を押し付けることでしかありません」と指摘し「鈴木知事は核のごみの調査には反対しているのですが、泊原発の再稼働については明言しておらず矛盾しています」と手厳しい。そのうえで、核のごみの問題が浮き彫りにした点について次のように整理した。
〇本来は国レベルで考えなければならないことが地方の問題にされてしまう。迷惑施設が地方に押し付けられる、沖縄の辺野古基地建設と同じように。
〇核燃料サイクルと同様に核のごみ政策も破綻が指摘されている。しかし政権は科学的知見を無視している。一方のメディアも科学的な検証報道を殆どしていない。

放送法をめぐって
 国会で放送法への政治家の介入が明らかになったが、山アさんは放送法の政治的公平とは何だろうか、と問う。そして「放送法は、戦前の反省から、表現の自由を守るものだ。政治的公平とは、放送事業者の倫理規範であって、そもそも放送の内容に政治家が口出しすること自体が、問題だ」と語った。HBCではすでに5年前に憲法を考えるシリーズの中で表現の自由と不偏不党について取りあげている。講演会ではそのビデオも合わせて紹介された。
 最後に山アさんは「地方は課題の先進地であり、憲法と民主主義の現場であり、記者はその最前線にいる」「地方で頑張っている記者たちの話をもっと聞いてほしい」と呼びかけた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年05月24日

【沖縄ジャンプナイト現地調査】石垣島編 軍は人も守らない 戦争マラリアの証言=川田マリ子

 マラリアに罹患した人の話を初めて聞いた。
 山里節子さん、家族8人のうち弟以外全員が罹患し、母と祖父を亡くした。
彼女は3日間熱を出し数日は落ち着くがまた3日間40度の熱にうなされるという繰り返し。1、2ケ月たつと髪の毛が抜けてケロイド状になる。脾臓が腫れて妊娠したように腹がふくれる。症状は人によるらしいが彼女の場合、踵がジンジンと痛く冷たくなり、それがだんだん身体の上のほうにあがっていき骨の髄まで寒くなる。どれだけ寝具を重ねてもダメ。軍部に薬はあったけど、使えたのは上官だけだったと後で聞いた。
 そんなマラリアの蔓延する山の中に軍は住民を強制移動させた。
山里さんの妹は生後4ケ月で栄養失調で壕の中で死んだが、その壕は軍が住民を動員して掘らせたもの。戦争に勝つようにと勝代と命名された妹は死ぬために生まれたようなものだと淡々と話される。

 そもそも軍が守るという「国」とは本来国民であり、国民の暮らしではないのか。
 会議室で誰かが戦争を街に招き入れ、そこに住む人々がその犠牲になる。
 山里さんが抱く国に対する不信感はこうした体験によるもので、守らなければならない住民をこのように扱った憤りが抑えられないという彼女は、いま自分の島が自衛隊基地によって無残な姿にされるのを阻止することに力をそそいでいる。
 山里さんが死なないで本当によかった。しかし、いままた彼女の平穏な暮らしを守れないことに私たちも心が痛い。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号

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2023年05月23日

【沖縄ジャンプナイト現地調査】新安保政策が直撃!!石垣島編 平和の島、軍事要塞化 住民保護や環境なおざり=菊地正志

(1)_石垣島のミサイル基地(建設工事中)=拡大.jpg
    緑豊かな山麓に白く浮かび上がる陸自石垣駐屯地=1月28日、菊地正志撮影

石垣島は亜熱帯の自然と都市が調和した日本有数のリゾート地。戦後70年以上にわたり軍事基地がなかった。そんな平和の島にミサイル基地が開設された(3月16日)。「島を戦場にするな」。軍事要塞化に抗する市民たちは今も声を上げ続けている。
 石垣島を訪れたのは1月末。ミサイル基地となる陸上自衛隊石垣島駐屯地は年度内の開設に向け、急ピッチで工事が進められていた。
軍事基地をつくらせない市民連絡会(市民連絡会)事務局、藤井幸子さん(75)の案内でバンナ公園の展望台に立った。
「於茂登岳のふもとにあるのがミサイル基地。右端が弾薬庫です」と藤井さん。約60bの高台で元ゴルフ場と市有地。クレーンが林立し、むき出しの白っぽい土砂が目に飛び込んできた。周辺に広がる緑豊かな森や畑とはまったく違う。異様な光景だ。

貴重な水源地
 基地周辺は、水道水の20%を賄う地下水や農業用水の貴重な水源地。大規模で特殊な軍事基地では、化学物質などによる水の汚染や工事による水の流れへの影響が懸念されている。
「地下水への影響を調べてほしい」。市民や専門家の意見に対し防衛省は「排水は浄化槽で適正に処理するから問題ない」と繰り返し、真摯に耳を傾けてこなかった。
「地下水は一度汚染されたら回復はほぼ不可能になる」と藤井さん。環境アセスメントも、県の条件をすり抜けるような形で工事が進められた。
さらに周辺は国指定天然記念物で絶滅危惧種、カンムリワシの優良な生息域でもある。
(4)駐屯地開設記念式典抗議の現地集会=4月2日、市民連絡会提供.Jsrc=

住民投票を拒否
 「非武装の島」にミサイル配備計画が浮上したのが2015年5月。その直後から配備反対の市民運動が起きた。
建設地周辺の4自治組織(嵩田=たけだ=、開南、於茂登=おもと=、川原の各公民館)は配備反対決議を上げたが、防衛省や市はその声を無視し工事を強行した。
有権者の4割が求めた住民投票も実施されていない。「(配備に反対でも賛成でも)住民同士に分断を生まないように、『ちょっと立ち止まって考えよう』が出発点だったのに…」。住民投票を求める会(求める会)の設立メンバー、宮良麻奈美さん(30)は悔しがる。
宮良さんら求める会の若者は二つの裁判の原告(一つは敗訴)となり、今も住民投票の実施を求め続けている。

ミサイルの標的
 石垣島に配備されたミサイルは地対艦と地対空の2種類。12式地対艦ミサイルは、現在の射程200`bを千`b超に改良する計画。安保3文書では「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換え、防衛費を今後5年間で43兆円に増やす大軍拡も進んでいる。
長射程ミサイルの配備は未定だが、石垣市議会は昨年12月、「他国を直接攻撃することが可能となり、近隣諸外国を必要以上に刺激する」とする意見書を賛成多数で可決した。
ミサイル基地容認派の中にも「長射程ミサイルを配備すれば、島が標的になる恐れがある」と不安の声が広がっている。

 石垣市国民保護計画(13年3月策定、19年12月改定)によると、「ミサイル攻撃や着上陸侵攻など壊滅的な事態に6万5300人が島外に避難する」とある。民間航空機だけを使用した場合、全市民が避難するまでに10日間かかる想定だ。
同市の担当者は「市民の安全を担保できる計画を考えるが、実際に島外避難が可能かどうか分かりづらい。ハードルが高くて物理的に厳しい」と不安を口にした。
市民連絡会は4月2日、「万一に備える住民保護・避難の態勢もないままに(基地開設を)強行することに、強く抗議する」という抗議文を防衛省に提出した。
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いのちと暮しを守るオバーたちのスタンディング=1月29日

「闘い続ける」
 南西諸島で進む軍事要塞化に、沖縄戦の体験世代は「戦争の足音が近づいてきた」と危機感を募らせている。
「いのちと暮らしを守るオバーたちの会」の会長、山里節子さん(85)もその一人。55年5月から1年半、米国の地質調査に加わったことで「軍事利用に荷担した」と償いの思いがあるからだ。
毎週日曜日、仲間のオバーたちと島内各地でスタンディングを続けている山里さん。
「自衛隊が存在する限り、生きている限り闘い続けます。オバーは神出鬼没ですよ」。ユーモアたっぷりに語る節ちゃんオバーの優しく、柔和な笑顔が忘れられない。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年05月22日

【フォトアングル】武器見本市会場前で抗議のダイイン=酒井憲太郎撮影

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日本で2回目となる政府支援の武器見本市の会場前で抗議が行われた。「幕張メッセでの武器見本市に反対する会」「安保関連法に反対するママの会@ちば」の2団体が主催する「武器見本市はいらない幕張メッセ前大抗議アピール」で300名以上(主催者発表)が参加した。「だれの子どももころさせない」の幕を中央に、「武器見本市NO!」「NO WAR」のチラシを高く掲げて「武器見本市はおことわり」「死の商人はおことわり」などのシュプレヒコールを叫び、参加者が死者になりきることで抗議の意思表示をするダイインを実行した。=3月15日、千葉市幕張メッセ前
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年05月21日

【オピニオン】権力の放送介入は国を滅ぼす メディアは本来の役割果たせ=砂川浩慶(立教大学社会学部長・教授)

  3月15日、朝日新聞夕刊の素粒子は「問題の核心は放送番組への政治介入。だが他にも、見過ごせぬ話や気になる動きが。◎大臣にこう答弁させよ。コントロールできる議員に質問させる。文案も作る、首相補佐官。国権の最高機関の実態。◎発覚以来NHKや多くの民放の姿勢に淡泊さを感じるのは何故。見えないブレーキが働いたなら権力は既に目的を達成。WBCに興ずるうちに。」と伝えた。

 3月2日の立憲民主党・小西洋之参議院議員が公開した放送法関連文書。昨年の参院選挙前に自身の出身母体である総務省の官僚から持ち込まれたとするが、なぜ今まで表に出さなかったのかは定かでない。総務省が「行政文書」と認め、報道発表したのは3月7日。取扱厳重注意の印が押された「『政治的公平』に関する放送法の解釈について(礒崎補佐官関連)」と題した文書はA4判78ページに及ぶ。
 2014年11月26日、礒崎陽輔総理補佐官の「・放送法に規定する『政治的公平』について局長からレクしてほしい。・コメンテーター全員が同じ主張の番組(TBS サンデーモーニング)は偏っているのではないかという問題意識を補佐官はお持ちで、『政治的公平』の解釈や運用、違反事例を説明してほしい」から始る。
 翌年5月12日の参議院・総務委員会での藤川政人・自民党議員からの「政治的公平」に関する質問に対し、礒崎補佐官と調整したものに基づて、高市大臣が答弁までの経緯が詳細に記載されている。

 一読して感じるのは、安倍政権中枢が特定の放送局を名指しで批判の対象とし、行政解釈をねじ曲げようと無理強いし、その対応に汲々とする総務省官僚の姿だ。絵に描いたような国家権力の介入の証拠文書だ(総務省報道資料で公開)。
 しかし、今回の文書を改めて読み返し、政治の力によって放送局の個別の番組に圧力をかける政治家の時代錯誤ぶりを実感する。2022年度の
「報道の自由度ランキング」はG7最悪の71位。ジェンダーギャップ指数2022もG7最低の116位だ。多様性を認めない国、日本の姿だ。多様性を認めない国がG7議長国となる悲喜劇を感じる。

 放送法は憲法21条・表現の自由をベースに制定されており、それは戦前の国家の情報統制が戦争を招き、国を灰燼に期したことの反省にる。それを今の時代に堂々と主張する政権がいることに唖然とする。
 磯崎補佐官や高市大臣という“安倍取り巻き”は北朝鮮や中国、ロシアのような国家による情報統制を望んでいるとしか、思えない。

 政治権力が情報を統制すれば、国民に有益な情報が遮断され、国家は滅びる、という問題の本質をメディアはもっと伝えるべきだ。しかし、新聞もテレビも分断され、全体として十分な報道がなされていない。当事者ともいえるTBSは頑張っており(私自身、「ニュース23」「サンデーモーニング」「報道特集」などにVTR出演した)、朝日・毎日は一定程度伝えたが、NHKの初動は首都圏ニュースのみ、フジテレビや日本テレビは高市大臣の辞任問題に矮小化している。これでは視聴者・国民に本質が伝わらない。

 今回の問題をみるまでもなく「権力は腐る」。国際周波数割り当てにより、国民の共有財産である電波を一私企業・組織が独占できるのは、国民の側に立ち、国家権力をチェックするからだ。それを行わないメディアに存在価値はない。そして、それを認めない国に未来はない。



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2023年05月20日

【おすすめ本】矢部太郎 原案 長谷川嘉哉―ホノボノと「ぼけ」の日常生活を描く=萩山拓(ライター)

町で友人に出会い、顔は覚えているが、名前が思い出せず、名抜きで近況につき話を交わしたことがある。 その夕方、 風呂に入って顔を洗ったとたん、フッと名前が出てきたのだ。「ぼけ」は始 まっている。
 本書は人気漫画家・矢部太郎が、その「ぼけ」 を巡って描く全編描き下ろしのマンガ。認知症専門医・長谷川嘉哉氏の実話をもとに、3つの家族の視点を通じて認知症患者の日常を描く。

 四季折々に遭遇するドラマに、笑って泣けて、 そして不安が和らぎ、心ホノボノとする貴重な一冊。まさに「ぼけ日和」 バンザイ!
 一口に「認知症」とい うが、世の中には多くの誤解と対応が蔓延している。軽度の認知障害(M CI)であるにもかかわらず、認識不足のため、 対応がまずくて深刻な家庭内騒動や親子断絶・高齢離婚にまで発展してしまう悲劇が多い。
 今や日本には65歳以上の7人に1人は軽度の認知障害にかかり、その数は400万人になる。
 「幻覚」「モノ盗られ 妄想」や「夕暮れ徘徊」 「嫉妬妄想」などなども「認知症」の周辺症状ととらえ、薬で抑えることができる。そうすれば1〜2年で落ち着く。

 対応のコツは、「認知 症」そのものを「ありの まま」に受け入れ、「モ ノ盗られ妄想」で疑われるのは「介護の勲章」で あるなど、逆転の発想が大切という。
 矢部さんは介護の仕事をしてきた母を持つ。今度は親の「介護」を視野 に入れて描く、そのホッコリとした鉛筆風タッチが、効果を上げている。(かんき出版1000円)

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2023年05月19日

【出版界の動き】「紙の本」を扱う新しい試みへの期待=出版部会

●23年3月の出版物販売金額1371億円(前年比4.7%減)、書籍905億円(同4.1%減)、雑誌466億円(同5.7%減)。月刊誌398億円(同5.0%減)、週刊誌67億円(同10.1%減)。返品率は書籍25.6%、雑誌39.6%、月刊誌38.7%、週刊誌44.2%。

●丸善グループ(子会社47社・関連会社3社)の連結決算によると、売上高1628億円(前期比78億円減)、当期純利益17.7億円(同18.3%減)。主要な部門の売上高は丸善ジュンク堂などの「店舗・ネット販売事業」663億円、丸善雄松堂の「文教市場販売事業」が480億円、TRCの「図書館サポート事業」337億円、岩崎書店や丸善出版などの「出版事業」41億円。
 丸善ジュンク堂などの108店舗は赤字、TRCなどの図書館事業で利益が計上されている。

●民事再生のマキノ出版がブティック社と資産譲渡契約を締結。ブティック社がマキノ出版の雑誌、書籍、ムックの版権およびウェブサイト事業を引き継ぐ。月刊誌「壮快」と「安心」を6月下旬からそれぞれ隔月刊として発行。ブティック社は、月刊誌「レディブティック」やニット、手芸、料理、園芸、ネイル、ビーズ、住まいなど、実用書を出版している。

●俳優・音楽家がAIのもたらす権利侵害などについて危険性を訴える。俳優や音楽家らでつくる日本芸能従事者協会は、AI(人工知能)によって芸術・芸能の担い手が失職する可能性を指摘し、権利擁護の法整備を求めた。実演家は「著作物の伝達」に重要な役割を果たしているため、著作隣接権で守られている。それが侵される危険性を指摘している。

●『レコード芸術』(音楽之友社)が7月号で休刊。1952年創刊のクラシック音楽界の重要なメディア(発行部数10万部)が消滅する。ヤマハの子会社となっていた音楽之友社にもかかわらず、苦境に追いやられていた。また日本棋院が発行する唯一の週刊専門誌『週刊碁』も9月に休刊。ピーク時20万部も今や2万部まで激減。

●「本屋と紙の本の未来」について、吉永明弘・法政大学教授(環境倫理学)が提言(「SYNODOS」5/15付)をしている。要約すると、以下のような内容である。
 紙の本に対する電子書籍の割合が増えたことにより、リアルな「本屋」の存在意義が問われ始めている。その一方で、新たにリアルな「本屋」を始める人たちがいる。また、新しい形で「紙の本」をやりとりする場所が各地で生まれている。新しく本屋を始めた人たちの思いと、紙の本をやりとりする現代的な意義を再確認すべきだ。
 例えば日本各地で開かれている「一箱古本市」は、まさに個人がお寺・神社の一角を借りて、段ボール一箱分の本を個人が売る本屋を開く試みである。本を売ることを通じて本好きの人たちと交流するのが一つの楽しみになっている。
 あるいは個人が本屋のなかの「棚」を借りて蔵書の貸出と販売ができる本屋スペースを運営する。また自宅を開放して「八畳一間と玄関土間だけの小さな古本屋」にする。客が減少したスナックに古本屋を開設する事例もある。こうした既存の建物を利用しての「本屋」の試みは、きわめて有効なエコ活動でもある。
 リアルな「紙の本」を直接やりとりする「本屋」は、人との出会いを強め、交流が始まり、さらにはコミュニティの拠点としての機能も持つ。その可能性への期待は大きい。
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2023年05月17日

【寄稿】安保3文書を考える 軍備依存は破滅の道 へ平和的解決の努力こそが外交だ 再びの災禍避けるには=元外務省局長 孫崎亨さん 

                           
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 岸田政権は昨年12月、安保関連3文書の閣議決定をした。三文書中、国家安全保障戦略と国家防衛戦略は、敵のミサイル発射基地などをたたく反撃能力を保有することを明記している。反撃能力は従来敵基地攻撃能力と呼ばれてきた。安保関連3文書の改定を受けて、日経新聞が行った世論調査では5年間で防衛力を強化する計画を支持するとの回答が55%で、支持しないが36%である。日本の多くの人はこれで日本の安全が高まったと思っているようだが、逆である。

真珠湾攻撃 真の成功か
 戦争の歴史で、敵基地攻撃が戦術的に最も成功したものに、真珠湾攻撃がある。米国の戦艦、爆撃機等に多大な損傷を与え、米側戦死者は2,3
34人に上る。確かに敵基地攻撃は成功した。しかし当時の国力の差は1対10位の格差があり、結局日本は軍人212万人、民間人は50万人から100万人の死者を出し降伏した。敵基地攻撃の大成功は日本国民の破滅につながった。敵基地攻撃だけで優位に立てないのは今日の戦闘でも同じである。
 ウクライナ戦争では、12月26日ロシア中部のエンゲリス空軍基地にウクライナ軍のドローン攻撃があり、3人死亡した。それでどうなったか。12月29日、ロシアはウクライナ全土計120発のミサイル攻撃を行った。中国は日本を攻撃しうる2千発以上のミサイルを配備していると言われ、核兵器を搭載しうる。日本が今後防衛費をGDP比2%にしたところで、軍事衝突では日本は必ず負ける。敵基地攻撃や反撃は必ず中国の軍事的反撃を招く。その際には中国が日本に与える被害は、日本が中国に与える被害の何倍も何十倍も大きい。

反撃能力と孫子の兵法
 戦略の古典に孫子の兵法がある。中に次の記述がある。「軍隊を運用する時の原理原則として、自軍が敵の10倍の戦力であれば、敵を包囲すべきである。5倍の戦力であれば、敵軍を攻撃せよ。敵の2倍の戦力であれば、相手を分断すべきである。自軍と敵軍の兵力が互角であれば必死に戦うが、自軍の兵力の方が少なければ、退却する。敵の兵力にまったく及ばないようであれば、敵との衝突を回避しなければならない。だから、小兵力しかないのに、無理をして大兵力に戦闘をしかけるようなことをすれば、敵の餌食となるだけのこととなる」。
 安保関連3文書の動きは本質的には「小兵力しかないのに、無理をして大兵力に戦闘をしかけるようなことをすれば、敵の餌食となるだけのこととなる」状況である。
 では私達はどうしたらいいのか。

戦争国家に なぜ変質か
 日本は平和憲法を保有する国である。どうして平和憲法を保有する国が戦争をする国家へと変質しようとしているのか。
 私は護憲勢力、リベラル勢力に問題があるとみている。護憲勢力、リベラル勢力は武力を使わないことを主張し、武力を使う国を糾弾してきた。しかし、大切なことを行っていない。国際紛争を平和で解決する道の探求をしてこなかったことだ。

ウクライナ和平と日本
  国際紛争を平和で解決するには一方の当事者の見解を100%通すことでは達成できない。お互いに妥協して初めて解決できる。日本が世界で最も平和的な国家であるなら、すべての国際紛争を平和で解決する努力を最も行う国であらねばならない。 ではウクライナ問題で、日本はいかなる努力をしたか。国際社会を見ると、ベネット・イスラエル元首相、トルコ・エルドアン大統領、インド・モディ首相、インドネシア・ジョコ大統領、中国、マクロン・仏大統領などは和平への仲介の意向を示した。日本の政治家の誰が和平を主張し、仲介の動きを示したか。ウクライナ和平と日本日本でどれ位、国際社会の中で和平を求める動きがあることを知っているであろうか。日本はあまりにもロシアへの糾弾と制裁だけを主張したのではないか。

NATOは不拡大約束
 和平が実現するためには、過去の経緯、各々の主張を精査する必要があるが、ここではいかなる和平案があるかに絞って論じてみたい。
 私は個人的に和平案として@NATOはウクライナに拡大しない、Aウクライナの東部二州は住民の意思により帰属を決める、を示してきている。
 上記の二項目が、過去の経緯、国際条理で適当であるか否か。 
 話は1990年まで戻る。1990年ドイツ統一が国際政治の最大課題であった。この時、ソ連はドイツ統一に反対であった。ドイツが統一し強力な国家になって、ナチのように、再度ドイツがソ連を攻撃するのを恐れたのである。
 それでベーカー・米国国務長官等がゴルバチョフ大統領等に「NATOは一ミリたりとも東方に拡大しない」と約束したのである。「NATOはウクライナに拡大しない」は1990年当時、西側諸国がソ連(当時)に約束したことであり、それを今日実施するのに不条理はない。
 「Aウクライナの東部二州は住民の意思により帰属を決める」については、国連憲章を参照にすればいい。国連憲章第一条は国連の目的として「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること」を掲げている。必要なら国連が住民投票を主催してもいい。結果としてこの土地にはロシア系が7割程度居住してきており、ロシアとの併合を選択するとみられるが、それは大多数の住民の意思である。

国交正常化 合意が出発
 日本で今、戦争をする国に変質しようとしている大きな理由は、リベラル勢力が、国際紛争はすべて妥協に基づく平和的な解決の道があることを示すという努力を怠ったことに起因する。 
 和平を求める動きは台湾問題でも同じである。我々はまず、過去の約束を出発点としなければならない。では西側と中国は過去どのような約束をしたか。1978年12月米中は国交回復に際し共同コミュニケを発出したが、ここでは「米は、中国が唯一の合法政府という主張を認めている」。日本もまた中国との国交樹立に際し、「中国は、台湾が国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中国政府の立場を十分理解する」としている。」
 台湾の住民の意思をどうするかという問題はあるが、過去の合意の上でどう対応するかを米中、日中で協議することが何より重要だ。尖閣諸島問題でも、棚上げにするという田中・周恩来会談の合意、日中漁業協定の枠組みを守ることが先決である。
 軍備に依存する議論の前に、紛争になりうる問題をいかに外交的に解決するかの考察から始めるべきである。それが今日の日本社会に欠如している。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年05月16日

【焦点】「五輪災害」で反対運動 パリで過激化 日本も「外苑」再燃=橋詰雅博

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  2020年東京オリンピック開催(コロナ禍で1年延期)が決まった13年に巨額な財政負担や施設建設に伴う環境破壊、IOC(国際オリンピック委員会)のカネ儲け主義などを理由に結成された市民グループ・反五輪の会は、「東京そしてパリ終わらないオリンピック災害」と題した集会を3月25日に都内で開いた。
 フランスのパリ夏季五輪は来年7月下旬から8月上旬の日程で開催される。パリ五輪が決定した15年から「IOC解体」などを掲げて五輪反対活動を始めたグループの一員の佐々木夏子さんは=写真=(ライター兼翻訳者)パリ五輪災害≠フケースとして5つ挙げた。
★選手村建設のため外国人労働者アパートを取り壊す
NPO法人が1960年代から運営していた単身の黒人やアラブ人ら外国人労働者が住むアパートを選手村建設ためサン・トゥアン市は取り壊した。追い出された住人は仮設住宅で生活。五輪終了後に前の場所で暮らしたいと行政とオリンピック施設整備公社に訴えたが、交渉は不調に終わる。
★学校の真横に建設の高速道路ICへの反対運動起きた
選手村とパリ五輪競技場を結ぶためサンド・トニ市に新たに高速道路ICが幼稚園と小学校の真横に建設に。大量の排気ガスによる児童への健康被害を心配した保護者が中心となりIC反対運動が展開された。裁判で保護者側は敗訴した。
★メディアセンター建設が県立公園に悪影響及ぼす
メディアセンターはEU指定の県立公園に隣接。木が伐採され緑地は縮小、鳥やカエルなど生態系にも悪影響があると住民らは建設中止を求めて裁判を起こしたが敗訴した。
★五輪水泳選手の練習用プール建設で市民菜園消滅
練習用プールがつくられることで、1世紀近い歴史があるオーベルヴィリエ市の市民菜園が壊されることが判明。菜園利用者や近隣住民、戦闘的な環境保護団体「守るべき土地」の活動家らが菜園を占拠した。テントや小屋に寝泊まりする活動家は、住民登録し工事を阻止。しかし裁判で負けて菜園は消滅したが、昨年9月にパリ行政控訴院は、工事計画の見直しを命令した。
★AI監視カメラが合法化され監視社会が強化に
群衆の中で不審な行動者を検知するAI搭載監視カメラ導入を含む「オリンピック法案」をフランス議会は3月に可決。人権を侵害するとEUの各市民団体が法案撤回を求めていたが、議会は押し切った。五輪終了後もAI監視システムのもとで国民は暮らす。
 佐々木さんは「五輪支持の共産党影響下にある労組や市民団体以外の人たちによる練習用プール工事の阻止や選手村工事現場の停電を仕掛けるといったラディカルな妨害行動が起きている。ブルジョアの高学歴の若い白人が目立ちます」と過激になる反対運動を心配した。
 東京五輪災害と言えば、神宮外苑再開発が代表例だ。五輪口実に外苑一帯の諸規制を東京都は大幅に緩和し新国立競技場が建設された。さらに三井不動産が主導する秩父宮ラグビー場と神宮球場の建て替え、高層ビル建設などを盛り込んだ事業計画を小池百合子都知事は認可した。自然環境保全運動にも積極的に取り組んでいた故坂本龍一さんは大量の樹木が伐採されると再開発に反対し、周辺住民らも事業計画認可取り消しを求め東京地裁に提訴した。
 「五輪災害」に真剣に向き合う時がきた。
   JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年05月15日

【沖縄リポート】「言葉狩り」する司法を許せない=浦島悦子

 耳を疑った。弁護団からも「前代未聞だ!」との声が上がった。
 私たち辺野古・大浦湾沿岸住民ら20人が、玉城デニー知事の(辺野古埋め立てに関する)設計変更不承認を取り消した国土交通大臣の裁決は違法だと、その取り消しを求める抗告訴訟の第3回口頭弁論が那覇地裁で開かれる(3月23日)、その前日のことだ。原告意見陳述を予定していた私の陳述内容について、裁判所から、「穏当でない」表現があるので、書き換えなければ陳述を許可できないと、担当弁護士に連絡があったという。

 私は今回、辺野古新基地建設問題について、生物多様性の観点から陳述を行った。人間活動による地球環境=生物多様性の劣化がこれ以上進めば人類の生存そのものが危うくなるという危機感を共有した世界の国々が結んだ生物多様性条約を、日本政府も批准している。率先して生物多様性を保全する義務を負う政府が、それと真逆に、世界の中でも稀有の生物多様性を残す「奇跡の海」=辺野古・大浦湾を、国民の血税を使って自ら破壊していることを、私は「国家犯罪」だと指摘した。
 そして、国のこの行為が合法か否かを吟味することなく「原告適格なし」と判断するなら、裁判所も後世の人々から破壊の片棒を担いだと「断罪」されるだろうと書いた。
 書き換えを要請された文言は、これら「罪」という文字の入った4か所だった。「修正」を拒否して意見陳述しない選択もあったが、弁護団と相談のうえ、私は「極めて不本意だが」と前置きして陳述を行い、弁護団は厳しく抗議した。福渡裕貴裁判長は「訴訟指揮の範囲」だと居直った。

 同裁判長は、埋め立て承認撤回を巡る住民の抗告訴訟で昨年、「原告適格なし」として却下した(現在控訴中)前歴がある。
 原告・被告の率直な言い分を聞いて判断する中立の立場を投げ捨て、行政権力に忖度し、「言論・表現の自由」に反する検閲や「言葉狩り」を行う司法を許すわけにはいかない。原告・弁護団は今後の対応を検討中だ。
  JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4月25日号
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2023年05月14日

【月間マスコミ評・出版】週刊誌は、終わりなのか=荒屋敷 宏

5月末をもって休刊する『週刊朝日』のカウントダウンが始まっている。「2022年12月の平均発行部数は7、4125部」(朝日新聞出版の社告)というから、まだまだ売り上げが期待できる週刊誌である。

 「朝日歌壇に詠まれた『週刊朝日』休刊」など、休刊まであと8号の同誌4月14日特大号には、送別会のような企画記事が掲載されている。「この国が軍拡に舵を切る最中『週刊朝日』休刊決まる」(静岡県・白井善夫さん)の短歌が目を引く。
 休刊に際した特大スクープを期待したのは野暮だった。同誌同号の「日本の安全保障を支える以外な『会社』」に付された囲み記事「予算増で熱気にわく防衛展示会 中小企業も事業機会に照準」は、千葉・幕張メッセで開かれた防衛産業の国際展示会「DSEI JAPAN」(3月15日〜17日)をたんたんとリポートしている。

 岸田政権が大軍拡を打ち出したこともあり、「3日間で2019年に開催された前回約1万人の2倍超となる約2万2千人が来場」「65カ国から250社以上が出展した」という。中小企業のビジネスチャンスの角度からの記事で、この種の軍需産業イベントが市民から「武器見本市」「人殺しの道具の商談」として批判されていることに一言も触れていない。
 一方で、吉田敏浩氏による『サンデー毎日』4月16日号の連載記事「昭和史からの警鐘C―松本清張と半藤一利が残したメッセージ」がタイムリーだ。「台湾有事 悪夢のシナリオを暴く!」と題して、「戦場となって大被害を受けるのは日本で、アメリカ本土まで戦場となる可能性は低い。中国も核戦争につながるアメリカ本土攻撃は控えるはずだ。結局、日本が犠牲を強いられる。悪夢の戦争シナリオである」と指摘している。

日米安保条約を通じて日本がアメリカの軍事戦略に組み込まれ、戦争に巻き込まれる危険があるというのが、この間の日本の安全保障問題の核心である。吉田氏の連載は第1回「軍事膨張の果てには悲劇しかない」が昨年7月3日号、第2回「松本清張と半藤一利が警戒した自衛隊クーデター計画 : 『三矢研究』と自民党改憲案の危険な関係」が昨年9月11日号、「第3回「反撃能力とは『戦争のできる国』のこと」が今年1月29日号の掲載だから、正真正銘の「不定期連載」である。
 吉田氏の不定期連載を読むかぎり、週刊誌の役割は、捨てたものではない。むしろ、奮起を求めたい。 
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年4 月25日号
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2023年05月13日

【放送法】官邸の圧力 白日に 総務省文書 磯崎補佐官ら暗躍=編集部

 安倍政権下の2014年から15年にかけて、当時(安倍内閣)の礒崎陽輔首相補佐官が放送法の解釈を変えさせようと総務省に圧力をかけていた状況が、総務省の内部文書で明らかになった。
 3月2日、小西洋之参院議員(立憲民主党)が記者会見して、これを明らかにした総務省文書を発表した。総務省もこの文書を「行政文書」と認め、7日ホームページで公開した。
  文書によると磯崎氏は「1つの番組でも明らかにおかしいものがある」「コメンテーターが『あすは自民党に投票しましょう』と言ってもいいのか」と働きかけ、「この件は局長ごときが言う話ではない。俺と総理と2人で決める。俺の顔を潰すようなことになれば、ただではすまない。首が飛ぶ」などと発言、「補足説明」を出させた。
 
解釈変更を迫る
 放送法は「不偏不党・真実と自律の保障」を決め「表現の自由」を確保すること(第1条)を決め、誰からも「干渉」「規律」されてはならず(第3条)、編集では「公序良俗」とともに「政治的公平」と「事実を曲げない」「対立している問題ではできるだけ多くの角度から論点を明らかにする」(第4条)よう決めている。この「政治的公平」は個々の番組の中での公平性を求めているのではなく、ある放送全体のバランスを求めていると解釈されている。
 磯崎氏の「解釈変更圧力」は、これを個々の番組にも及ぼさせようとするもので、磯崎氏の発言に符合するように放送への「圧力事件」が続いた。

続出した「圧力」
 磯崎氏の総務省への要請はちょうど、14年12月の総選挙直前から。
 当時の安倍首相は11月18日、TBSの「NEWS23」で街頭インタビューの映像に政権批判が多いとして「全然声が反映されていない」と反発。20日には自民党が在京テレビ各社に「報道の政治的公平を求める」とする文書を出すなど、放送への圧力を強めていた。その「背景」が明らかにされた形でもある。
 こうした中で、15年5月、安倍内閣の高市早苗総務相(当時)は参院総務委員会で、「政府のこれまでの説明を補足する」と断りつつ、「1つの番組だけでも、極端な場合には政治的に公平性を確保していると認められないことがある」と発言、16年2月の衆院予算委でも「行政が何度要請しても全く改善しない放送局に何の対応もしないとは約束できない。将来にわたり可能性が全くないとはいえない」と答弁。「電波停止発言」として問題になった。
 18年3月には政府の規制改革推進会議が放送法4条の廃止を盛り込んだ「放送事業改革原案」を作成。反対で立ち消えになっている。

自由へ闘い続く
 安倍内閣の官邸が、各社の番組をモニターし、さまざまな形で圧力をかけてきたことは比較的よく知られている。この文書当時大きな話題になったのは、「サンデーモーニング」への攻撃は、TBSの株主総会などでも行われていたが、16年3月には、テレビ朝日の「報道ステーション」古舘伊知郎キャスター、NHKの「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターが降板するなどの「事件」もあり、「放送の自由」をめぐる闘いは今なお続いている。
      
高市経済担当相「捏造」と強弁するが
  総務省が「行政文書」と認めた「放送法の解釈変更圧力」について、高市早苗・経済安保担当相は3月3日の予算委員会で、問題の総務省文書について、「ねつ造」と決めつけた。
「仮にこれがねつ造でなければ議員を辞職すると言うことでよろしいですね」と追及する小西洋之議員に「結構ですよ」と応じた。
 その後、総務省が「行政文書」と認めてホームページで公開すると「私について書かれた4枚については捏造。相手様が証明しなければ」などと弁明していたが、10日には「当時総務大臣だった私としては、一部正確性が確認されていない文書が保存されていたと言うことは責任を感じます」と陳謝した。
 大臣と議員の辞職については、「内容が不正確」で逃げ切れるかどうかわからないが、野党側はいまなお高市氏の再回答と磯崎氏らの参考人招致を求めている。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2023年3月25日号

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2023年05月12日

【JCJオンライン講演会】「主権は官邸にあらず、主権在民! 〜映画『ハマのドン』松原文枝監督が捉えた横浜市民の選択」 お話し:松原文枝(テレビ朝日)21日(日)午後2時30分から4時30分

                         
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 横浜市での「カジノ誘致」の是非をめぐる動きを追ったドキュメンタリー映画『ハマのドン』が5月5日から公開になった。
コロナ禍の中で、市民は住民投票を求めて法定数の3倍を超える19万超の署名を集めたにも関わらず、市議会がその声を無視し、住民投票は実現しなかった。しかし2年前の夏の市長選では、反対派の市長を誕生させた。
 この一連の市民運動の中で注目されたのが「ハマのドン」と呼ばれる横浜財界の実力者、藤木幸夫氏の存在。
「裏の権力者とされる藤木が、市民とカジノ反対の一点で手を結び、時の総理と官房長官が推し進めた『カジノ誘致』の国策阻止を成し遂げた」(映画公式ページの解説から)のだ。それは、当時の菅義偉首相退陣のきっかけにもなった。
 カジノ阻止に立ち上がった藤木氏を追うカメラの向こうに何が見えたのか。今、民主主義に何が問われているのか、保守とは何かも含め、多角的視点から、松原文枝監督に語っていただきます。
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■お話し:松原文枝さん   
1991年テレビ朝日入社。1992年政治部・経済部記者。2000年から「ニュースステーション」、「報道ステーション」ディレクターを経て同番組チーフプロデューサー。2015年に経済部長、報ステ特集「独ワイマール憲法の教訓」(2016年)でギャラクシー賞テレビ部門大賞、JCJ賞。テレメンタリー「史実を刻む〜語り継ぐ“戦争と性暴力”」(2019年)でアメリカ国際フィルム・ビデオ祭銀賞。2019年放送ウーマン賞。2019年からビジネスプロデュース局イベント戦略担当部長を務める。
■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://jcjonline0521.peatix.com/)で参加費をお支払いください
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