町で友人に出会い、顔は覚えているが、名前が思い出せず、名抜きで近況につき話を交わしたことがある。 その夕方、 風呂に入って顔を洗ったとたん、フッと名前が出てきたのだ。「ぼけ」は始 まっている。
本書は人気漫画家・矢部太郎が、その「ぼけ」 を巡って描く全編描き下ろしのマンガ。認知症専門医・長谷川嘉哉氏の実話をもとに、3つの家族の視点を通じて認知症患者の日常を描く。
四季折々に遭遇するドラマに、笑って泣けて、 そして不安が和らぎ、心ホノボノとする貴重な一冊。まさに「ぼけ日和」 バンザイ!
一口に「認知症」とい うが、世の中には多くの誤解と対応が蔓延している。軽度の認知障害(M CI)であるにもかかわらず、認識不足のため、 対応がまずくて深刻な家庭内騒動や親子断絶・高齢離婚にまで発展してしまう悲劇が多い。
今や日本には65歳以上の7人に1人は軽度の認知障害にかかり、その数は400万人になる。
「幻覚」「モノ盗られ 妄想」や「夕暮れ徘徊」 「嫉妬妄想」などなども「認知症」の周辺症状ととらえ、薬で抑えることができる。そうすれば1〜2年で落ち着く。
対応のコツは、「認知 症」そのものを「ありの まま」に受け入れ、「モ ノ盗られ妄想」で疑われるのは「介護の勲章」で あるなど、逆転の発想が大切という。
矢部さんは介護の仕事をしてきた母を持つ。今度は親の「介護」を視野 に入れて描く、そのホッコリとした鉛筆風タッチが、効果を上げている。(かんき出版1000円)