3月15日、朝日新聞夕刊の素粒子は「問題の核心は放送番組への政治介入。だが他にも、見過ごせぬ話や気になる動きが。◎大臣にこう答弁させよ。コントロールできる議員に質問させる。文案も作る、首相補佐官。国権の最高機関の実態。◎発覚以来NHKや多くの民放の姿勢に淡泊さを感じるのは何故。見えないブレーキが働いたなら権力は既に目的を達成。WBCに興ずるうちに。」と伝えた。
3月2日の立憲民主党・小西洋之参議院議員が公開した放送法関連文書。昨年の参院選挙前に自身の出身母体である総務省の官僚から持ち込まれたとするが、なぜ今まで表に出さなかったのかは定かでない。総務省が「行政文書」と認め、報道発表したのは3月7日。取扱厳重注意の印が押された「『政治的公平』に関する放送法の解釈について(礒崎補佐官関連)」と題した文書はA4判78ページに及ぶ。
2014年11月26日、礒崎陽輔総理補佐官の「・放送法に規定する『政治的公平』について局長からレクしてほしい。・コメンテーター全員が同じ主張の番組(TBS サンデーモーニング)は偏っているのではないかという問題意識を補佐官はお持ちで、『政治的公平』の解釈や運用、違反事例を説明してほしい」から始る。
翌年5月12日の参議院・総務委員会での藤川政人・自民党議員からの「政治的公平」に関する質問に対し、礒崎補佐官と調整したものに基づて、高市大臣が答弁までの経緯が詳細に記載されている。
一読して感じるのは、安倍政権中枢が特定の放送局を名指しで批判の対象とし、行政解釈をねじ曲げようと無理強いし、その対応に汲々とする総務省官僚の姿だ。絵に描いたような国家権力の介入の証拠文書だ(総務省報道資料で公開)。
しかし、今回の文書を改めて読み返し、政治の力によって放送局の個別の番組に圧力をかける政治家の時代錯誤ぶりを実感する。2022年度の
「報道の自由度ランキング」はG7最悪の71位。ジェンダーギャップ指数2022もG7最低の116位だ。多様性を認めない国、日本の姿だ。多様性を認めない国がG7議長国となる悲喜劇を感じる。
放送法は憲法21条・表現の自由をベースに制定されており、それは戦前の国家の情報統制が戦争を招き、国を灰燼に期したことの反省にる。それを今の時代に堂々と主張する政権がいることに唖然とする。
磯崎補佐官や高市大臣という“安倍取り巻き”は北朝鮮や中国、ロシアのような国家による情報統制を望んでいるとしか、思えない。
政治権力が情報を統制すれば、国民に有益な情報が遮断され、国家は滅びる、という問題の本質をメディアはもっと伝えるべきだ。しかし、新聞もテレビも分断され、全体として十分な報道がなされていない。当事者ともいえるTBSは頑張っており(私自身、「ニュース23」「サンデーモーニング」「報道特集」などにVTR出演した)、朝日・毎日は一定程度伝えたが、NHKの初動は首都圏ニュースのみ、フジテレビや日本テレビは高市大臣の辞任問題に矮小化している。これでは視聴者・国民に本質が伝わらない。
今回の問題をみるまでもなく「権力は腐る」。国際周波数割り当てにより、国民の共有財産である電波を一私企業・組織が独占できるのは、国民の側に立ち、国家権力をチェックするからだ。それを行わないメディアに存在価値はない。そして、それを認めない国に未来はない。